●破壊と殺戮 デパートの一角で突然起こった爆発が、幾人もの客たちを吹き飛ばした。 急な出来事に唖然とする者たちに、さらに銃弾の嵐が襲いかかる。 ようやく事態を理解し……つまりはパニック状態になった一般人達に追い打ちをかけるように爆発が起こり、銃弾が発射された。 もっとも、それらは虐殺の為に行われたものではない。 2人のフィクサードが、互いを攻撃しあった結果として発生した流れ弾のようなものである。 どちらも周りで死んでいく一般人等に興味は無かった。 簡単に壊れ、弾けた際に視界をふさぐ動く障害物、程度の認識である。 「手前の顔は見たことあるぞ。クレイジーイワンとか言ったか。ピロシキ野郎」 細身の、鋭利な刃物のような雰囲気を漂わせた男が口を開いた。 「よりによって勝負の最中に……まあ、いいさ。纏めてぶっ飛ばしてやる」 「……煩い奴だ。ザコほどよく喋る」 対象的にガッシリとした体格のサングラスを掛けた男は、それだけ言って銃を構えた。 再び爆発が起こり、階を支える巨大な柱の一部が吹き飛ぶ。 破片をかわしながら、サングラスの男が引き金を引いた。 放たれた銃弾を細身の男は避け、身を低くしたまま距離を詰めながら床を、飛び散った破片に触れる。 爆発が起こり、銃声が響き、2人ではない別の人間の悲鳴が響き、辺りに濃い鉄の香りが……拡がっていく。 テロか、爆撃でも受けたかのようにデパートの一角が破壊されていく。 そう、惨劇は終らない。 始まった……ばかりなのだ。 ●狂気がもたらすもの 「デパート内で2人のフィクサードが戦い始める。被害は……大きい」 『リンク・カレイド』真白・イヴ(nBNE000001)はそう言って顔を歪めたものの、すぐに表情を変え、急いで現場に向かって欲しいとリベリスタたちを見回した。 「急いでも戦いの始まりには間に合わない。でも、被害を減らす事はできると思う」 フィクサードたちが戦うのは、あるデパートの1階である。 リベリスタたちが到着する頃には戦いの余波で周囲には既に被害が出てしまっていることだろう。 それを出来るだけ広げないように、被害を出来るだけ少ないものに留められるように。 「フィクサードたちを撃破、最低でも撃退して欲しい」 イヴはそう言って素早く端末を操作し、画面にフィクサードたちのデータを表示させた。 「一方は裏野部所属、クレイジーボマーって呼ばれてる」 ナイトクリーク系とでも言うべきか。 「オーラで爆弾を作るハイアンドロウと、それに似た派生能力みたいなのを使ってくる」 基本は触れたものにオーラで作った爆弾を植えつけ炸裂させる訳だが、物質等にも植えつけられる他、爆発までにタイムラグを作ったりすることもできるらしい。 「ちなみに彼だけの能力じゃない。そういうアーティファクトを所持してるみたい」 アーティファクトの名は、テロリストのマーチ。 生命力、エリューション能力、運命の加護。 そういったものを代償に爆弾を作り出す能力のようだ。 出来上がる爆弾はナイトクリークの能力で作成する物に酷似している。 「無数の爆弾を作り出しそれで相手を翻弄するっていうのが、戦い方」 触れた相手の一部を爆破する他、物体を爆弾に変え投擲したり、移動しながら各所に設置した爆弾を一斉爆発させたり等の攻撃を行ってくる。 イカレた雰囲気ではあるが、自身の能力を最大限に活かせるだけの冷めた理性も持っているようだ。 極めて攻撃的ではあるが、反面に守りに入るともろい。 とはいえ攻撃的なのは自身の能力が守りに適さないと考えての事なのだろう。 迂闊に敵を追いこもうとすれば、自分たちが陥れられる可能性もある。 「こちらに気付かない内はフィクサード同士で争ってる。それを利用するべきかも知れない」 そう言ってイヴは、もう一方のフィクサードの説明に移った。 「呼称はクレイジーイワン。こっちはフリーのフィクサード。何故ここにいたのかは 不明だけど、とにかくボマーと戦って一般人に被害を出している以上、放ってはおけない」 こちらは銃を武器に、スターサジタリーやクリミナルスタアに似た戦い方をするらしい。 「武器は銃だけれど、決して打たれ弱くはない。寧ろかなりタフだと思う」 そのタフさを活かし、敵に何度も銃撃を浴びせ、或いは鈍器として使い叩きのめし、確実に屠っていくのだそうである。 「メタルフレームの無限機関に加えて、再生能力も持っている」 加えて異常無効化の能力も幾つか持っているようだ。 「そっちに能力を割いてる分、攻撃能力の種類は少ないっぽい」 単体を攻撃するものと、複数を攻撃するもの。ただ、複数の方の範囲は不明。 充分に注意してと言ってイヴは説明を終えると……リベリスタたちを見回した。 「今回の任務の最優先は、フィクサードたちの撃破。それが難しいなら戦闘続行を不可能にして撃退して欲しい」 一般人の被害については……優先度は、フィクサードの次となる。 「……一般人に気を取られて撃破に失敗すれば……更に多くの人命が失われる」 白さを通り越して手が青白くなるほどに握り締めて、イヴは、言った。 「こんな事をこれ以上……許す訳にはいかない」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月07日(日)23:02 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●戦場へ 「裏野部が暴れるのはいつもの事ですが、フリーのフィクサードがそれに対峙……ですか」 呟き、今回の事件に想いを馳せて。 「……如何な者であれ、フィクサードというだけで命を断つには十分」 『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)は誓うように言葉を紡いだ。 「フィクサードの凶行に一般人が巻き込まれるのは、不運でしかありません」 一人でも多く助けたい。 それが『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)の想いである。 「全力で参ります」 口にする言葉にも、迷いや澱みは欠片もない。 「傍迷惑な連中だな」 (撃破優先と言われても、難しいところだ) 呟きつつ、『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)は仲間たちへと視線を向けた。 イヴにはそう言われたものの、それを好としない連中は大勢いる。 ならば、出来る筈だ。力を合わせれば。 「被害は食い止めてみせる」 小さく、けれど力強く、言葉にする。 「フィクサード同士の争いのために一般人への被害が出ることは看過できません」 浅倉 貴志(BNE002656)も、真っ直ぐな言葉を口にした。 そんな皆を見回しつつ…… 「人助けはあまり慣れぬのだがな」 『紫煙白影』四辻 迷子(BNE003063)は呟いてから、偶にはリベリスタをやるのも悪くはないかと言葉を発する。 (原因は何か、そこが判れば歩み寄れる可能性もあんねんけどな……) 『他力本願』御厨 麻奈(BNE003642)も今回の事件について考えながら……フリーのフィクサードという人物について考え込んだ。 もちろん、考え込みつつ急ぐ足を止めはしない。 この瞬間にもリベリスタたちは、戦場とされてしまうデパートへと向かっていた。 「関係ねぇ一般人にまで迷惑かけやがって……ケンカなら他所でやりやがれ!」 (言っても聞かねーなら纏めて蹴ッ飛ばす!!) 『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)が怒気も露わに口にする。 到着した8人は、そのままビルの内部へと駆けこんだ。 「大の男が大衆の前で見っともない喧嘩なんてして恥ずかしくないかしら?」 (理由が何であれ、罪のない一般人まで傷つけているあんた達に自分の正義を語る権利なんかないわ) 遠目に戦いらしきものを確認した、芝原・花梨(BNE003998)も感情露わに言葉を向けた。 正義は、必ず勝つ。 「あんたたちなんて、ここであたしにぼっこぼこにされちゃえばいいのよ!」 ●介入 幻視も使いつつデパートへと突入したリベリスタたちは、強結界を発動させると直ぐに二手に分かれた。 凛子と杏樹に一般人の救出を任せ、他の者たちはフィクサードたちへと距離を詰める。 道すがら一般人を確認した麻奈は、そのまま状況を確認しつつフィクサードたちへと接近した。 凛子は仲間たちへと翼の加護を施すと、直ちに救出作業を開始する。 フィクサードの近くにいる者から……そう考えてはいたが、2人の活動場所は自然、離れた場所になった。 戦いによって、付近の一般人たちは既に絶命していたのである。 銃撃や爆発によって内部は破壊され始めており、床や壁を赤いものが染めていた。 その戦いに、他の6人が乱入する。 「見敵必殺ってな!」 誰よりも早く動いたヘキサが、高速の蹴りによって作りだしたカマイタチを一方に、ボマーと思われる人物へと放った。 それが両者の戦いを一時的に中断させた。 2人のフィクサードは介入してきた者たちへと警戒を強め、遮蔽を確保したのち事態を確認しようとする。 突然の乱入者に警戒してはいるものの、両者ともに戦意は欠片も衰えていないようだった。 貴志と迷子が流れる水の如き攻防自在の構えを取り、麻奈は先ずはと能力を使用してボマーの分析を開始する。 「あんじょうよろしゅうしたってや!」 非戦闘スキルは用意してきているのか? 本人の能力は、どれ程のものなのか? 花梨も皆と共に一般人に更なる被害が出る前にと、先ず優先対象であるボマーの方へと注意を向けた。 注意すべきは、相手が仕掛けようとする爆弾である。 「……あの爆弾魔に何かしら縁でもあるので?」 警戒しつつ距離を少しだけ詰めて、ノエルはイワンへと話しかけた。 可能であれば、一時的な休戦を持ちかけようというのが8人の出した結論だった。 もっとも、相手はフィクサードである。 無理なら無理で構わない。 彼女に続くように貴志ら幾人かが、イワンへと一時的な共闘や休戦を提案した。 その間も他の者たちはボマーの動向に警戒する。 ●休戦か、停戦か 「確かにお前たちと戦う意味はない」 だが、ヤツと戦う意味もない。 リベリスタたちとボマーの双方に警戒しつつ、イワンはそう答えた。 「お前達がボマーを攻撃しようとするなら妨害はしない」 だが、協力する気もない。 自分は引かせてもらう。 「ヤツを倒した後で、お前らが俺を狙わないという保証はない」 直球過ぎる程に隠しもせずにフィクサードは口にした。 戦わずに済むのなら……しかし、フィクサードを逃がすのは…… 幾人かの内に迷いが生まれる。 (襲ってきたら押さえるつもりじゃったが) どうしたものかと考えつつ、迷子は両者を警戒した。 ボマー撃破後に交戦も考えていたノエルにしてみれば、みすみす逃すという選択肢は受け入れ難いものである。 もっとも、現時点では余裕も何も推測できない。 そしてその間も、事態は膠着したままではなかった。 動こうとするボマーを牽制するように、ヘキサが再び鋭い蹴撃で生み出したカマイタチを放つ。 一方で麻奈は……表情は読めなかったものの、ハイテレパスを使用してイワンへとコミュニケーションを持ちかけた。 (ウチだけにでも教えてくれへんか? 他言はせぇへんし、皆だって説得する) (……それを言えばどうなると思う? お前の頭に数十発の鉛弾を叩き込むだけでは済まなくなるぞ) 短い間の後、フィクサードはそう返答した。 つまりは遭遇は想定外としても、何らかの目的でこの建物を訪れたという事で間違いなさそうである。 「一般人の射殺は俺の任務ではない」 戦いになれば構わず巻き込むが、戦う必要が無ければわざわざ銃を撃つ必要もない。 銃弾もタダではないと、男は表情も変えずに言い切った。 そうであるのだとするならば、麻奈としては……無理に巻き込む必要はないのでは、とも思う。 爆発が起こり、新たな残骸がリベリスタたちとボマーの間に作りだされた。 「ホントなら直々にブッ飛ばしてーけど……逃げるっつーなら止めねーよ」 ボマーへと警戒を向けつつヘキサが言った。 (今オレたちが戦って、更に周囲に被害が出ちまうかもしれねーしな……) 「さっさと行けよ、次会ったら逃がさねーからな」 その言葉に頷きつつも、リベリスタたちへの警戒は維持したまま……イワンは遮蔽を確保しつつ戦場から距離を取った。 念の為に気を配りつつも、6人は意識をボマーの方へと向けていく。 幾つかの瓦礫を挟んで、距離を置いて、両者は睨み合う形となっていた。 時間にして数十秒だが、相手は爆発を起こしつつ周囲の状況を確認していたに違いない。 戦わずに一方を退ける事ができたとはいえ、油断は禁物だった。 ボマーにしても、イワンに気を配らずにリベリスタたちに専念する状況ができたという事である。 それでも6人は攻勢に転じなければならない。 凛子と杏樹は一般人への誘導を開始したばかりなのだから。 ●誘導と牽制 「今は急いで外へ避難してください」 動けない者は背負って、凛子は一般人たちを誘導する。 杏樹も強い口調で、要点をまとめ端的に避難を促した。 もっとも、どうしても言葉だけでは動けない者が多い。 突然の出来事に動転し、どうしていいか分からなくなっている者が殆んどなのだ。 比較的落ち着いてであれ恐怖に駆られてであれ、動ける者は殆んどが避難したのだろう。 結果として2人は直接安全な場所まで一般人たちを直に誘導していく作業を繰り返す事となった。 それでも、錯乱して暴れたりする者がいなかったのは幸いといえる。 或いは……そういった者は真っ先に犠牲になったのかも知れないが。 凛子は一般人たちに対し、デパートで火事が起こったという形に記憶を操作した。 事後処理等で封鎖を行ってくれているアークの者達が色々してくれるだろうから、時間はかけず誘導ついでにできる程度の操作に留める。 終わり次第、急ぎ皆に合流しなければならないのだ。 一階の一般人を完全に避難させる為に。 杏樹と凛子は作業を急ぐ。 その間も、内部での戦いは続いていた。 もっとも、白兵戦の距離へと近付いて切り結ぶという戦いではない。 距離を置いて、幾つもの遮蔽物を挟み対峙して……リベリスタたちはボマーへと接近する機会を窺っていた。 周囲の一斉爆破、ジェノサイドを警戒しての事である。 ヘキサは一般人、柱、階段等へと接近させぬように斬風脚でフィクサードを牽制した。 貴志も障害物を利用して慎重に近付きつつ、感情探査能力でボマーの心理状況の変化を探ろうとする。 麻奈もエネミースキャンでの解析を狙って、フィクサードの姿を確認しようとしていた。 「くだらぬ遊びしておるな。一般人なんぞ殺して何が楽しいのじゃ?」 挑発するように呟きつつ、念の為に。迷子は能力も使用して周囲を確認しておく。 確率は低いだろうが、姿を消したイワンが両者の疲弊した瞬間を狙って現れるという可能性も無いとは言い切れないのだ。 ついでにボマーの様子も窺い、何かに触れたと思われる時はテレパシーで皆へと連絡する。 花梨は味方と挟撃を行うように反対側から回り込むようにして、 ボマーの移動を妨害するように移動していた。 彼女も同じように、可能な範囲でボマーの動きを観察し、何かに触れるような動作をした場合はそれを心に留めておく。 幾つかの動きは恐らくカモフラージュなのだろうが、判別する方法が無い以上、選択肢は2,3しかなかった。 アタリを付けるのでなければ……覚えられるだけ覚えるか、無視するかのどちらかである。 速度の遅さを活かし様子を見つつ移動したノエルは、特に不自然に開けた場所や踏み込みやすそうなスペースを警戒しつつ、距離を詰めた。 「何が目的で暴れているのかは知りませんが……その命はここで貰い受けます」 呟き、白銀の騎士槍を握り締め。 そして、リベリスタたちは一気に動いた。 ●ボマー強襲 範囲攻撃に巻き込まれ難いようにと適度に距離を取って、数人がボマーへと距離を詰める。 そこへ投擲された瓦礫が爆発し、迷子と花梨を巻き込んだ。 ヘキサが斬風脚で援護し、貴志は敵の側面へと回り込むように移動する。 麻奈は分析を行いつつ、テレパスでそれを皆に伝えた。 事前情報通り相手は機敏さや器用さ、精神的な強さに優れているらしかった。 物理的な攻撃能力の高さは、迷子などが挙げていたようにアーティファクトの力かも知れない。 もっとも、其方の詳細については分析し切れていない。 情報を可能な範囲で共有しつつ、迷子も前進しながら跳躍した。 フィクサードまでの直線上を薙ぎ払うように、超高速の蹴りで全てを貫く。 相手の力量を窺うように鉄槌を振るった花梨は、ボマーの機敏さを確認すると、命中させる為にとその動きに意識を集中する。 ノエルも一気に距離を詰めた。 下手に爆弾を爆発させればボマー自身も巻き込まれるように。 使用を躊躇うならよし、躊躇わねば本人を負傷させられるかもしれない。 どちらに転んでも悪くはない。 3人が接近するのを確認したボマーは迎撃を優先し周囲の爆弾を一斉に爆破したが、怪しい場所を避けるように接近していた2人は直撃を何とか免れた。 一方で設置されたとおぼしき箇所は、破壊しても破片等が残っていれば威力は弱まるにしても爆発そのものは発生するようだった。 どちらにしても無視できないダメージなのは事実である。 癒し手である凛子が到着していない事を考えれば、尚の事。 ノエルは騎士槍を振りかぶり、全身の闘気を爆発させた。 渾身の力を籠めた一撃をフィクサードは身体を捻るようにして回避する。 直撃こそしなかったものの、その一撃は強力だった。 続いたカマイタチを回避したボマーは、素早く、軽く突きを入れるように花梨へと攻撃を仕掛ける。 触れられた直後、体の数ヵ所で爆発が起き、倒れかけた花梨は運命の加護でかろうじて膝に力を入れ直した。 回り込むようにして前進した貴志が、そこに加わる。 敵の動きを確認した彼は攻撃を命中させるのは容易ではないと判断し、ボマーの動きに意識を集中させた。 一方で麻奈は情報を伝達する事で戦闘を支援しつつ、仲間たちの消耗を確認する。 迷子は流れるような動作で構えを取り直し、花梨はそのまま相手の動きに意識を集中する。 ノエルの闘気を爆発させた刺突が、フィクサードの身を傷付ける。 それでも男は直撃を避け、迷子を狙ってデッドエンドを仕掛けた。 直撃を受けた彼女も、運命の力を手繰り寄せそのまま戦いを続行する。 直撃を避けながらも攻撃を続け、仕掛けた爆弾を炸裂させる事で、ボマーは確実に6人へのダメージを蓄積させていった。 だが、それが限界を迎える前に。杏樹と凛子が戦線へと復帰する。 8人はそのまま、フィクサードへと立ち向かった。 ●総力を挙げて 周囲の魔力を取り込んだ凛子が癒しの息吹を具現化させた。 狙われ難いように。力の発動後、僅かに後退する。 一般人たちの逃げた側へと立ち塞がるように位置を取った杏樹は、女神の名を冠したボウガンの狙いをボマーへと向けた。 30m。ギリギリの距離から敵の動きを予測し、魔力を籠めたクォレルを放つ。 魔弾と化した矢は正確に目標を貫いた。 もっとも、効果の方は正確には分からない。 物理との両攻撃を試してみるべきか。 麻奈の分析を判断材料にしつつ、杏樹は弦を絞り次矢を弓床へと装填する。 一気に畳み掛けるべく、ヘキサも距離を詰めた。 速度を活かした高速の連続攻撃で、少年はボマーを追い詰めようとする。 それらに対処する為に、ボマーは周囲に仕掛けておいた爆弾を、一斉に爆発させた。 (この人がおれば立て直しのチャンスがあるかもしれんし) そう考えていた麻奈は、咄嗟に凛子を庇う。 距離を取っていた杏樹と庇われた凛子以外の全員が深い傷を折ったものの、凛子は詠唱によって即座に息吹を呼び寄せ仲間たちを治療した。 完全には回復し切れなかったものの、皆の負傷は大きく軽減される。 貴志は敵の動きを読みつつ掌打を繰り出し、そこから破壊の気を体内へと送りこんだ。 迷子は超高速の蹴りで一線を薙ぎ払いながら、敵の動きと自身の攻撃を比べるように攻撃を続けていく。 充分に狙いを定めた花梨は、鉄槌にオーラを纏わせ渾身の力を籠めて振るう。 ボマーが柱に触れぬようにと杏樹はフィクサードの動きを先読みするようにして、1セント硬貨すら撃ち抜くほどの精密な射撃でボマーの手を狙い撃った。 ノエルは信念の名を冠した白銀の穂先に、力と闘気を籠めてフィクサードへと向ける。 杏樹に狙われながらも壁や柱の付近に位置を取り、戦い続ける敵の動きに凛子は逃走の可能性を見出した。 皆に警戒を呼びかけようとしたその時、再び周囲を巻き込むように激しい爆発が起こる。 床や天井すらも巻き込むような爆発で新たな瓦礫が生み出され、建築材から舞い上がった砂煙が辺りを満たした。 迷子と花梨が倒れ、それを庇うように貴志とノエルが位置を取る。 爆発に構わず凛子はフィクサードを探し、麻奈がそれを追いかけたが……ボマーの姿はもう無かった。 それでも暫し警戒は解かず、念の為に周囲を索敵して。 リベリスタたちはフィクサードの撤退と、戦いの終わりを実感した。 ●戦いの後、破壊の痕 「クレイジーな奴を相手にすると疲れるわね」 あいつらあたしがどれだけ熱く正義について語っても耳を傾けないだろうしね…… 「早く帰ってシャワーを浴びたいわ」 本当に疲れ切ったという様子で、花梨が口にする。 (撃破にしろ撃退にしろ、終わったらとっとと逃げねーと) 「……けど、この階は相当崩壊してんだろーな」 大きく息を吐いてから、ヘキサはそう口にした。 ガレキの下敷きになってる一般人がいるかもしれない。 そう考え、彼を含め幾人かが一通りフロアを見回ってみる。 (この惨状は多少オレたちのスキルも原因になってんだ……ケジメはつけるさ) 「このまま逃げたら、無責任に暴れてったバカ二人と変わらねぇ」 一方で杏樹を含めた数人は、念の為にイワンがビル内に残っていないかを調査した。 幸い、と言うべきか……フィクサードの姿は建物内のどこにも見当たらない。 「目的は達したのか? それとも、狙う場所を間違えたか」 杏樹の呟きに応えられる者はいない。 だが、少なくともこのデパートから脅威が去ったのは事実だった。 被害は出たものの、フィクサード達が戦い続けた可能性を考えれば……被害は大きく減じたと言える。 後始末を、現場に残ったアークの者たちへと任せて。 リベリスタたちは傷付いた仲間へと手を貸しながら、戦場となったデパートを後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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