● 此方の世界と出会ってから、日々の鍛錬を怠らないリベリスタ達。 今この時までは、平和を維持し、小さな事件を解決してきたが、それもそう長くは続かない。 憤怒と渇きの荒野の彼方から、バイデンが、巨獣が、近づいてきているのを警備のリベリスタがいち早く察知した。 隠す気さえ見えない大胆不敵なその行動に、すぐに仕掛けてくるとも思えたが、統制がとれているのであろう。此方の様子を伺っている。 これはもはや、戦いの火蓋が切って落とされるのは目に見えている。もはや言葉での解決なんて無駄だろう。いや、それは最初から無駄か。 リベリスタの拠点を制圧されてしまえば、あらゆる不安が此方に流れ込むだろう。それだけは止めなければならなかった。また、『ラ・ル・カーナ橋頭堡』はこの状況を予期していた為、一定の防御力を保持している。 今この状況をなんとしてでも打破し、拠点を守らなければならないのだ。 ● 夜空には三つの月が、空を彩る。その真下。 「くそ、さっきから口のニヤケが止まらねェ……」 突如世界に現れた、我等バイデンさえ苦戦を強いられる相手達と戦う時が巡ってきたのだ。この日のため、いや、戦うために研ぎ澄まされた己の力、技が唸るだろう。 そんな祭りを見逃さない訳が無い。 「あいつの顔も、いい表情してやがったしなァ」 思い出すのは共に技を磨き、獣を狩り、時には反発し合った親友の顔だ。 そういえば前回、共に狩りに出た時は巨獣の一番良い肉を友にやった。その恩か、友はこう言った。 『今回の誉れはお前に譲ろう』 それは今回、己自身が良い肉を貪る番であることだ。だが逆に言えば、友は美味しくない部分を承ると言う事でもあった。 友が囮となり、それを己が奇襲し一網打尽にする。普通ならば、友の安否への不安が募る所だが、このバイデンは違った。 「あいつはやるって言ったら絶対にやる奴だ。俺はその信頼を絶対に裏切らねェ」 親友への厚い信頼が、その不安さえ吹き飛ばしていた。 だからこそ心が躍らない訳が無い。ましてや一番の親友がこの自分自身のために戦ってくれる。それこそ一番の喜びであり、顔の緩みが止まらない最大の原因でもあった。 「楽しすぎるなァ。相棒……てめェの力も必要だ。期待してるぜェ」 相棒と呼ばれた、像の様なマンモスの様な巨大な生物の足を撫で、話しかけた。相棒は主とシンクロしたか、嬉しそうにその鼻を振り上げる。更に言葉を続く。 「おまえらもよォ……供に来てくれて嬉しいぜェ。俺の背中は任せたからなァ!!」 「「「おおおおお!!!!」」」 もはや、このパーティーの意欲はメーターを振り切れている程だろう。 己の身長よりも遥かに長い剣の先を進行方向――いや、その先に居るリベリスタへと突きつける。 「完膚なきまでにぶっ潰す。このヴェルディード様がお相手だ!! いくぞぉおオラァア!! 我が友の下へ、特急で勝利の運ぼうじゃねェか!!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月30日(月)00:06 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●荒野の果てから 「完膚なきまでにぶっ潰す。このヴェルディード様がお相手だ!! いくぞぉおオラァア!! 我が友の下へ、特急で勝利の運ぼうじゃねェか!!」 敵、バイデンの軸でもあるヴェルディードの咆哮が聞こえる。とは言え、バベルが無いとリベリスタ達には何を言っているのか全く分からないが。 「来たみたい、此処から先には行かせない……いくよ!!」 『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)が仲間のリベリスタ達へそう言った。リベリスタ達は皆、一度だけ頷き走り出す。 「異世界で、カレー作るのが目的だったのに……バイデンいっぱいせめてきた」 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)がダブルシールドを構えてそう言う。 聞いたところによると、バイデンは脳筋だと言う。脳筋とは脳が筋肉でできているとか、そういう意味だっただろうか。 それほど単純で、力こそ正義だ、という感じであり、今目の前のヴェルディードにとってはお似合いの言葉であろう。 近づいてくる、その脳筋達、主にテンションの高いヴェルディードはリベリスタ達に言う。 「―!!? ―――――!!! ――――!!!」 「「「「!!!!」」」」 「全然、何言ってるかわかんねーな!!」 「――――!!」 『戦闘狂』宵咲 美散(BNE002324)は解読不能の言葉に頭を捻るが、分からないものを分かろうとしても無駄なので止める。 言葉でわらか無くとも、肉体言語で分からせれば良い。禍月穿つ深紅の槍を構え、交戦に備えた。何より、バイデンと戦うために此処に来た美散。これほどの好機は無いと踏んでいた。 「バイデンの野郎をぶっつぶし、リベリスタ様の勇姿をみせてやら……じゃ、ほな、皆がんばってあだだだだだ!!」 「アホいうななのじゃ、おぬしも此処で一緒に戦うのじゃて!?」 『√3』一条・玄弥(BNE003422)がナチュラルに帰ろうとした所で、『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)がその耳を引っ張って連れ戻す。 「凄い砂埃じゃのう。どうやら全力でここを落としに来たようじゃな」 レイラインはバイデンの後ろから巻き起こる砂埃を目にし、少し身体を震わすが。 「他人の縄張りを荒らす飼い主はペット共々躾けてくれるわ!」 と、すぐに強い意志へと切り替える。 もはやぶつかるのも時間の問題。と、レイラインが。 「ん? さっき、ぶっ飛ばしてそのまま通るとか聞こえた気がするのじゃ」 さあ、始めよう、異世界での戦争を。 ●少し時は戻り…… 近づいてくる、その脳筋達、主にテンションの高いヴェルディードはリベリスタ達に言う。 『ああ!? 邪魔だよ、んなとこに突っ立ってんじゃねェ!! もういいからこのままぶっ飛ばしてそのまま通るぞォ!!』 「「「「オオオオオォォオ!!!」」」」 という事を言っていたのをレイラインだけは聞いていた。逆に。 「全然、何言ってるかわかんねーな!!」 『あっちの言葉、全然意味わかんねェな!!』 という事もあったりした。 接近してきた敵に、いち早く飛び込んだのはレイラインだ。 ヴェルディードへと一直線に向かい、Edge of Nailを強く握り締める。 身体が軽い、トップスピードを発動させた瞬間に次の攻撃へと手が伸びた。速さに任せたまま、切り刻まんとヴェルディードの硬い皮膚を切り裂く。 「そう簡単に、わらわに触れられると思うでないぞ!!」 『な!!? おまえ、おまえの言葉は分かるぜ!! なるほどなァ、言葉が分かる奴も居るってかァ!!』 レイラインだけは意思疎通の手段を持っていた。それを聞き、ヴェルディードはレイラインに興味を持つ。 巨獣には、アンジェリカ、『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)、小梢が向かった。 小梢は自身の防御力を武器に、巨獣の行く手を阻む。更に、ゲルトの光の一撃が巨獣の怒りを買った。図体のでかさに比例して、回避する力は弱いと見える。 ならば、彼女の動きは止まらない。最速だ。最速で、アンジェリカは巨獣の足を足場にしながら、その身体を登り始める技を行った。その頂点へと来た瞬間に、両手に気糸を形成させる。 「大きいのを縛るのは、ちょっと大変なんだよね」 その気糸を相棒へと巻き、その動きを封じる。これで、巨獣は押えられたと言えよう。 残ったのは騎馬兵や、歩兵であるバイデンだ。 「ぼちぼちと仕事するかねぇ」 玄弥は罠の方向へと若干後退し始める。それでバイデンを釣って、罠に陥れたら優位になるだろう。玄弥が一歩後ろへ後退する度、歩兵であるバイデンも前へと出たのだ。勿論、ヴェルディードの攻撃の範囲に入らない細心の注意は払ってあると見える。だが、敵が攻撃範囲より向こう側へ行かれてしまうのは、こちらとしても困るのだ。 「そうそう、そうやって前に来い、そうだ、そうだ……」 どうやらバイデンは至極単純。この男にしてやられて、罠にかかるのも時間の問題だ。 振り上げたのは、炎の拳。 煌々と燃えるその手を、回転の力を使ってヴェルディードへと突きたてた『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545)。 「此処から先には行かせないよ!!」 敵が居る、ならば考える間も無い。それを止めるのが役目である! 凪沙の拳は、ヴェルディードの横腹へと向かう、だが流石のバイデンのリーダー格だ。 (あ、掠った……ッ!) 炎が燃え移るまでにいかず、その拳はかすってしまう。 その時に、お返しだといわんばかりにヴェルディードの巨大な剣が、まるで野球バットのように軽々しく振られたのだ。 それは凪沙を始め、向かっていたレイラインをも巻き込んで吹き飛ばす。 『あーったく、俺様はこんなところでこんなことしてる場合じゃ……ッ』 二人を吹き飛ばし、そう言いつつ後頭部をボリボリと掻きはじめた、その時――! 「宵咲が一刀、宵咲美散。推して参る!」 『あ?』 振り向いたときには、もう、遅い。 美散の槍が既にその頭を目掛けて、振られ―― 『ぁあ゛!!?』 そのヴェルディードの顔を叩き潰した。 ● 美散の一撃は、純粋な火力。 例え、直撃は免れたと言えども、その威力は体力を大きく削ってくれたことには限らない。 『んの、くっそやろお、少しは骨のあるやつぁぁ……ああ、でも』 「なんだ、戦闘種族と言われるくせに、その程度か?」 美散がヴェルディードへと、掌を上に来いとジャスチャーしてみせる。もし、彼が『約束』さえ無ければその挑発には乗っていただろう。 此処でヴェルディードは、吠えたのだ。 「オイ、てめーら馬鹿か!! 俺の部下なら賢くやりやがれ!! 俺たちはんなところで、時間潰してる場合じゃねーんだよ!!! 思い出せ、あのグラングラディアが身体を張って餌を押えておいてくれている。 なのに、俺たちはこんなところで相手にしている獲物が、ちがうだろーがよ!!!! 俺は行く、グラングラディアの下へ、こんな所で戦っている場合じゃねえ、そうだろ!!」 それはレイラインだけが聞こえる。 「そういうことかえ、わらわ達に恐れをなしたから下がるってことじゃろ!」 「ハッ、ちげえよ、俺は友との約束は絶対に守るヴェルディード様だ。だから、今はお前らと遊べねェ。それだけだ」 リベリスタは、何か勘違いをしていたかもしれない。この依頼の目的とはなんだっただろうか。 ヴェルディードに攻撃し、業炎を拳に纏わせた、凪沙がレイラインに聞いた。 「何? レイラインちゃん、あいつなんて言ってる!?」 「友との約束を守る為に、ここを離脱すると言っておるのじゃ……」 「それって、つまり……」 ヴェルディードは、友であるグラングラディアの押えているリベリスタ達の背後をついて、一網打尽にすることが目的だ。 施設破壊や、施設の侵入、または侵略なんて全く考えていないのだ。 このままヴェルディードを行かせてしまうのはマズイ。何より、向こうのリベリスタ達が危なくなってしまう。 「行かせない様に、しないと!!」 「うむ、なんとかして止めるのじゃ!!」 しかし――敵の数が多い。 「キャァアッ!!」 ヴェルディードと巨獣の相手をしている間に、後衛へとバイデンが攻撃し始めたのだ。その狙いは回復役である『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・マルター(BNE002558)。 レイラインはすぐさまリサリサの下へと向かった、そして盾となる。 「大丈夫じゃ、わらわが居るのじゃ」 弓矢が飛んでくる中で、レイラインはリサリサに笑顔を向けた。それは彼女の優しさであり、配慮。はっとしたリサリサが、レイラインの背中に手を置き、そこから純白の鎧を形成した。 「反射効果を付与しました。 これで敵も攻撃を行えば唯ではすみません……この戦いどんな些細なダメージでも与え続けることできっと光明を生むはずですっ!!」 「やはり鎧は、頼りになるのじゃ!!」 「脳筋バカと突進獣どもは美味しく食べられてまぇ、くっけけっ」 下がった玄弥が、罠にかけたバイデンは二体。その二体が罠にかかったため、罠に気づかれてしまう見返りもあったが、それでも十分な数字だろう。 玄弥が笑いながら、バイデンを挑発していた。 『くそ、こんな、異世界の奴らに……!』 罠に嵌っているバイデンは、悔しそうに顔をゆがめた。 そのまま玄弥は暗黒のオーラを放ち、弓を持つバイデンへとそれを放った。己をも傷つけてしまう攻撃だが、それでも大人数のバイデンへと攻撃が通る。 更にそこに、レイラインの反射が襲う。なかなかのテンポで体力は削れるが、バイデンの回復能力が半分の傷を治してしまうのだ。 ● そんな中で、美散は変らずヴェルディードへと一直線へ向かっていた。 邪魔だと何度も後退させられるものの、すぐに起きては最大威力の一撃を食らわせんと動くのだ。だが……。 「っち、またか!! 逃げねえで、勝負しやがれ!!」 ヴェルディードと、美散の間には騎馬兵のバイデンが割って入った。そしてその攻撃はそのバイデンが肩代わりしてしまう。同じく凪沙もそうだ。 それはヴェルディードの命令一言が、軸だからだ。逆に言えば、ヴェルディードさえ倒すことができれば、この纏まりは崩すことができる。 「こいつら、本当にヴェルディードの部下に忠実ってやつだね!?」 幾度と続けた、業炎撃。庇うをされ、攻撃が吸い込まれてしまう。ヴェルディードへ到達するまでの壁が多すぎるのが問題だった。 「リベリスタ、舐めないでよ!!!」 四度目の業炎撃が、庇う騎馬兵の胴を貫く。更にそこに美散のデッドオアアライブが重なり、バイデンの身体を木っ端微塵に粉砕した。 だが、まだ――騎馬兵は居る。 そこに力強い言葉が響き渡った。 「皆さん、頑張ってください! どんなに傷ついても、ワタシが、ワタシが癒し続けますっ!!」 リサリサの声だった。その瞬間に、聖神の光が辺りに響いた。だからこそ、リベリスタ達はまだやれると立ち上がる。 ヴェルディードが再び、美散のデッドオアアライブを食らった時ような顔をしたのは、相棒の事でだった。 リベリスタ達は巨獣はかなりの健闘をしていた。終始、アンジェリカの麻痺が相棒を縛り続け、ゲルトの怒りが、忠実を壊していた。だからこそか、小梢の手が空いていたのは勿体無いところである。 「ごめんね、君に恨みは無いけど、倒すよ」 「もう少しで倒れるだろう……流石巨獣といった所か、体力があるな」 再びアンジェリカが気糸を形成、それは今度は足に巻きつけた。その瞬間に方向した相棒。 更にはゲルトのジャスティスキャノンは重ねられ――そのときだった。相棒が、最期の咆哮をした。それを聞いたヴェルディードがピタリと止まり、その巨大な剣を振り回す。 「来る、危ないっ」 咄嗟に梢がアンジェリカを突き飛ばし、ゲルトは寸前で身をかがめて避けた。 「――――!! ―――!!」 ヴェルディードは何か言っている、それは悲しい声に聞こえたが、リベリスタには何を言っているかは理解ができない。奴にとって相棒は相棒であったが、リベリスタはその壁を一つ、壊すことができたのだ。 だが、ヴェルディードも負けられない。その剣は、遠距離にまで届く。 巨獣を止めていたリベリスタを掠り、更に振られた剣は、レイラインの胴を容赦なく切り裂いたのだった。 その一撃は、レイラインにとって致命的なものとなってしまう。既に弓のバイデン六体に四十秒集中攻撃を受け、フェイトの恩恵も使い果たしていた。 もはや、リサリサの回復だけでは追いつかないのだ。 身体を動かす体力さえ無い。地に伏したレイラインに、近寄ったのはヴェルディードであった。 「そういえば……俺の親友がよォ……獣混じりを欲しがっていたなァ……」 「っ!?」 レイラインの身体がびくりと震える。これは、獲物を見つめる獅子の眼だろうか。 ヴェルディードの手が、動けないレイラインの腕を掴み、上へと。そのまま流れるように、レイラインの足は地面から浮いた。 そのままレイラインの身体を肩で担ぎ、そのまま向かう――友の下へ。 「待って、ヴェルディード!! レイラインさんを、レイラインさんを返せ!!」 後方から、リサリサの声が聞こえる。 自らを庇ってもくれたレイラインが、連れて行かれる。だが回復で手がいっぱいだ。 「リサ……リ」 そのままレイラインの意識は切れた。 ● 「っく、レイラインちゃん!!」 美散と凪沙がすぐに応戦した。だが、やはり騎馬兵がネックである。 というより、二人では少々火力は足りなかったのかもしれない。玄弥の暗黒も重なるが、それで騎馬兵が倒せたころは、既にヴェルディードは追いつけない所まで居る。 巨獣の死体と、罠にかかったバイデンや、騎馬兵は息をしていない。ヴェルディード側も大きく戦力を削られたことだろう。 だが、ヴェルディードは友の下へと行ってしまった。その先には、リベリスタが居た。その彼らがどうなったかは未だ我等には解らない。 この戦い――負けはリベリスタである。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|