● 三つの月が照らす荒野で、義理を果たせと拳を握る。 『菊に杯』九条・徹。酔わせてみせるぜ喧嘩の酒を。咲かせて見せるぜ喧嘩の華を! 今宵の一戦、忘れさせねぇぜ! ――――九条・徹 ● 「と、真正面から責めずに夜襲のお返しをするわけだ」 『菊に杯』九条・徹(nBNE000200)は、集まったリベリスタを前に呵呵大笑。クリミナルスタアここにあり、といわんばかりのワル顔笑いである。 視線の先には荒野と赤の巨人達の大部隊。隠すつもりなどないのだろう。彼らは巨獣に乗ってアークの橋頭堡を攻めてきた。 徹たちはその迎撃として、橋頭堡の外に出たのだが……。 急遽徹に集められたリベリスタは、微妙な顔をする。なんと言うか『そういえばこの人、昔美術館襲ってたよなぁ』『妙に悪事とか慣れてるんだよなぁ。元フィクサードだし』……このところ花鳥風月なお誘いばかりだったので忘れてたが。 「ま、あれだ。バイデンや巨獣だってメシを食わなけりゃ戦争もできない。水だって飲むだろうさ。そいつを奪うなり燃やすなりすれば経戦能力ががくんと下がるってもんだ」 理屈としては理解できる。だが、バイデンだってそんな重要なものを守る為に兵を割かない、とは思えない。そんな質問に徹はにやりと笑い、 「抛磚引玉――磚を抛げて玉を引く(れんがをなげてたまをひく)ってな。 要するに連中にとって重要なモノをオトリにして、その隙をつく寸法だ」 重要なモノ? そんなものが今すぐに用意できるはずが―― 徹が後ろにある橋頭堡を指差す。……まさか? 「ここの道をフリーにする。連中も馬鹿じゃないから、多少の警戒はするだろう。進行スピードはプラスマイナスでトントンか。 その隙に俺たちは砂に紛れて連中の後方を突く。炎でも上げれば連中は慌てるだろうよ。あるいは後がないと慌てふためくか」 リベリスタ達は浮かべる言葉を失っていた。効果はあるだろう。だが、施設への道を開けるのには抵抗がある。 「ま、そういう案もあるってことだ。乗ってくれるやつだけでいいぜ」 徹は黒い棍を片手に笑みを浮かべる。正攻法とは程遠いが、奇策をねってこそ成功する戦もある。 アナタの答えは―― |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月27日(金)23:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 荒野色の外套で身を包み、九人のリベリスタは荒野を進む。駆け抜けていったバイデンの部隊を見ながら、彼らは真っ直ぐに食糧を蓄えてあると思われる場所に進む。 荒野の土を巻き上げる風。闇ではない視覚の妨害はリベリスタにもバイデンにも等しい。強いて視覚の優位性を確保できるのは、 『キギィ……!』 「巨獣の方に気付かれたようだ。目線が高いからな」 『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)が巨獣の唸り声を聞き取り、『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)があわただしくなる気配を察する。不意はつけなかったが、不意を討たれることもなさそうだ。 リベリスタ達はそれぞれの破界器を構え、倉庫のほうに疾駆する。時間はそう多くない。時間をかければ異変を察したバイデンたちが戻ってくるだろう。そうなればその末路は―― 「グズグズしててもきりねぇわな?」 『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)が拳の炎を宿して唇を笑みに変える。ここまでくれば後は全力で殴るのみ。バイデンたちもリベリスタにむかって雄たけびを上げる。鬨の声は荒野に高く響いた。 時間にすれば二分半。見方の施設への道を犠牲にした電撃作戦の開始である。 ● 「敵さんの後方にある拠点に侵入して破壊工作か」 『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)は外套を外して一直線に巨獣の方に向かう。手にする破界器の名前は『Naglering』。英雄の剣と同名の破界器を自らのオーラを乗せて振り下ろす。剣は蜘蛛に似た多足形の巨獣に手傷を負わせた。 「こんな面白いものに誘ってくれるとは嬉しいもんだぜ。なら、全力でその期待にこたえてやら無いとな」 「好いねェ九条の旦那! その勝負、俺も張ったッ!」 【明天】【昨天】と呼ばれる手甲型の破界器を突き出し『錆天大聖』 関 狄龍(BNE002760)が吼えた。両手の指先から放たれる弾丸のシャワー。抜き打ちと同時にバイデンを襲う鉄の一撃。バイデンの赤肌を次々と穿ち、体力を奪っていく。 「西の方では寧ろこういうやり方の方がなれていまして。ご一緒させて頂きますよ」 ユーキ・R・ブランド(BNE003416)は『菊に杯』九条・徹(nBNE000200)の悪い作戦にむしろ軽快な笑顔で賛同した。西(オルクス・バラスト)で戦った経験もあり、真正面から出ない戦いの経験も多い。ユーキは自らの闇のオーラを身体に纏わせながら、バイデンたちの猛攻に備える。 「成程、正々堂々だけが戦いではない、という訳か」 逆に優希はこういう戦いからは初めてだった。もとよりリベリスタになった経緯が『巻き込まれた』のがこの世界に入ったきっかけであり、戦いの術は死線の中で得てきた。こういった狡い戦術とは無縁である。紫電を拳に纏わせて、荒野を蹴る。 「面白い、ここで確実に潰してくれる! 翔太、巨獣は任せたぞ!」 「よっし優希、そっちは任せたからな!」 応じるように翔太が巨獣の方に向かう。今回ばかりは『めんどくせぇ』は封印である。なにせ時間がない。罠に嵌めて分離したバイデンの本隊が戻ってくれば、ひとたまりもないのだ。目の前の巨獣は通さない。バイデンを親友と仲間達に任せ、翔太は己の任務を口にして、決意を固めた。 「こっちは任せろ!」 「悪いことするのって、柄じゃないけれど……こんな攻め方もあるものね」 『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)は『悪いこと』をして高まる鼓動を押さえながら、自らの魔力を矢に変えて即席で作られた倉庫に向かって解き放った。ちらちらと背後を見る。橋頭堡への道を開けたことで、味方が危機にさらされてはいないか少し不安になってきた。それでも、もうサイは投げられたのだ。 「こんなこと滅多にしないから……ちょっとだけ、そわそわだわ……」 「気にしすぎでござるよ、あひる殿は!」 腰の鬼影兼久を抜き、『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)は口を笑みの形に変える。最初は娘の友人に向ける笑みで、すぐに獰猛な獣の笑みへと変わる。鬼影兼久の刀身にラ・ル・カーナの月が写り、その月光を照り返す。共に敵地に走る火車に声をかけた。 「フォローをするでござるよ。一人より二人の方が安定するでござるし」 「そうだなぁ。とっとと行ってすべてぶっ壊すぜぇ!」 炎の拳を振りかぶり、火車は虎鐵と共にバイデンのほうに走る。火車はバイデンの目の前で、自らの胸を叩きそれをつぶすジェスチャーをする。かつて戦ったバイデンが行なった挑発。その挑発に乗ったのか、バイデンは火車に向かって斧を振り下ろす。 「……っ! そいつで終わりかぁ?」 その攻撃を避けきれなかったが、挑発は止まらない。言語は通じないが、それを超える気迫が火車の消えない戦意を示していた。 吼えるバイデン。そして巨獣。石の斧が思っていたよりも鋭く洗礼された動きでリベリスタを襲い、巨獣が獲物を捕らえようと足を動かし、牙を突き立ててくる。 戦闘の動きで荒野の砂が舞い上がる。熱く乾いた砂は、闘気によって激しく上昇した。 ● 巨獣が吼える。低く振るえる様な音を出して自らを押えている翔太とディートリッヒに牙を向ける。翔太は持ち前の回避力を生かしてその牙を避け、ディートリッヒは潤沢な体力と再生能力をもってその打撃に耐える。 「はぁっ!」 「そこだ!」 翔太は巨獣の身体を足場にして駆け巡り、ディートリッヒは風の刃を飛ばす。目標は共にバイデンに。石の斧で弾き、鍛えた肉体で風の刃に耐える。再生能力を持つとはいえ、集中砲火を受ければバイデンも長くは持たない。 だがバイデンも立っているだけの案山子ではない。後詰を任されているのはクジ運もあるが、それが適任であるから。相応の実力があるからこその警備役。それを示すように斧を振るい、優希と虎鐵と火車を傷つけていく。単純な破壊力というだけなら、確かにバイデンに分があった。 「貴様らの相手はこの俺だ」 優希は機械化した右腕に稲妻を纏わせる。握った拳にこめるのはバイデンに対する怒りと平穏を守りたいという紅蓮の意思。かつて心穏やかだった少年は、悪意によって革醒者の戦いに自らを落とす。命に変えてでも平穏を守る。そのために、 「一刻も早く潰してくれる!」 拳は大地を穿ち、電流はそこから広がりバイデンたちに絡みつく。その荷電に怒りの表情を浮かべるバイデンたち。 「ひゃはっ! 殺ァッ!」 弾丸を放つ感覚に快楽を覚えながら狄龍はバイデンたちを撃ち貫いていく。指先から放たれる弾丸はバイデンの腕を、脚を、身体を狙い放たれる。仲間を巻き込まぬように時に立ち居地を変え、弾装全てを撃つ尽くす。 「こっちも負けてられませんね」 ユーキが狄龍の攻撃で生まれた隙を縫うように自らのオーラを霧に変換して、バイデンを包み込む。霧状のそれは傷を与えることはないが、しかし様々な災厄をバイデンの一人に植え付ける。不意をついた襲撃には成功した。ならばあとはスピード勝負。 「ファイトだよ……! あひるが、サポートしてくからね……!」 少しはなれたところで低空飛行するあひるが、癒しの歌を奏でる。バイデンに負けないように強く、攻撃で倒れないように優しく。魔力を乗せた癒しの歌は、リベリスタ達の傷を癒していく。 「ふん、今宵の拙者の太刀筋は鋭いでござるよ?」 虎鐵はバイデンの一人と切り結んでいた。重量のある斧を真正面から受けるのではなく、斜めに反らして滑らせるように。柔よく剛を制し、それでいてその太刀筋は剛剣。踏み込みと同時に振るわれた雷刀が、バイデンの命を露と化す。 「攻撃はテメェ等の御家芸じゃねんだよぉ!」 仲間の一人が倒れ、驚愕するバイデンに向かい、火車が拳に炎を宿して迫る。やられたらやり返す。この作戦もそうだ。向こうから攻めて来たから、攻め返す。そしてここで攻め返せば、今度はこちらから攻める。 「ま、本当はこっちから攻めたかったんだがなぁ!」 炎の拳がバイデンの腹部に突き刺さる。何度も叩き付けられる拳が衝撃で体力を奪い、炎が熱量を持って肉を焦がしていく。 残ったバイデンは虎鐵の方に矛先を向ける。最大火力を封じてしまおうと言う思考だ。バイデンの戦闘経験は、けして浅くはない。戦斧は虎鐵に集中して振るわれる。今までのダメージの加味されて虎鐵はゆっくりと膝を、 「こんな所で倒れる拙者ではないでござる!」 膝をつかない。運命を削り、その場に踏みとどまる。だがその疲弊はバイデンの目にも明らかだった。 ――策により橋頭堡への道を進んでいたバイデンの部隊が異変に気付いたのは、丁度この頃。倉庫の襲撃を悟り、バイデンの大軍が転進する。 ● 巨獣が足を振るう。その一撃がディートリッヒの胴に当たり、その意識をうばいとる。 「は。寝るにはまだ早いな!」 意識を運命を燃やして取り戻し、ディートリッヒはバイデンに向かって剣を振るう。この戦いは負けてはいけない戦い。成功させるために、巨獣の押さえを外すわけには行かない。巨獣に傷つけられながら、それでもバイデンに向かって風の刃が飛ぶ。 再度ディートリッヒに振るわれる巨獣の足。避けきれず身を固めるディートリッヒ。だが、 「おおっと、危ない危ない」 「翔太!」 ディートリッヒを庇うように割って入った翔太が足の打撃を食らう。翔太は回避力に優れており、いままでまともに巨獣の攻撃を受けてないためにこの一撃で倒れるということはなかった。 「時間限られてるんでな。俺より火力あるのだから続けて攻撃してくれってとこだ」 「余計なお世話だ……と言いたいが助かったぜ。しかし無茶はするなよ」 「あひるの援護もあるわけだしな。巨獣の攻撃は俺が受け続けてやる」 後方で回復を続けるあひるを指差し、翔太はマントを前面に出して巨獣の動きに備える。指されたあひるは、皆を回復させながら拳を胸の前で握り締める。彼女なりの『頑張る』というジェスチャー。 「が、がんばるから……っ!」 「ま、皆の強さを信じるまでだよ」 繰り返そう。単純な破壊力だけならバイデンに分がある。このパーティの最大火力である虎鐵よりも高い攻撃力を持つバイデンたち。 だが、リベリスタ達はそれを上回るほどのチームワークを発揮し、互いをフォローしながらバイデンたちを一人ずつ傷つけていく。 「抑えるのが目的じゃあねぇ! 邪魔ぁ全て潰し抜いて! この先にあるモン全部掴むのが目的だ!」 「貴様らの相手はこの俺だ、一刻も早く潰してくれる!」 火車と優希。炎の稲妻の拳が交互に交差する。紫電が駆け抜けたと思えば、灼熱が爆ぜる、フェリエたちの抵抗とは違い、拳で直接伝えられる一撃。 「いてェだろ? いてェ所を狙ってるからなァ! いてェから、生きてるって実感できる! 充足する、飢えを充たす!」 狄龍は硝煙と銃撃の反動によって得られる快楽を愉しんでいる。指先から放たれる弾丸のシャワーがバイデンたちの足を止め、肉を削り、痛みを与えている。その光景に酔い、そして生を感じていた。 「お覚悟を!」 ユーキが繰り出す闇のオーラを纏わせた一閃は、じわじわとバイデンを蝕んでいく。自らの闇に肉体を蝕まれながら、鋭い眼光で自らの行動の効果を確かめる。最適の攻撃手段を選び、行動していく。質実剛健。結果重視はオルクス・バラスト流か。 だがバイデンも負けてはいない。 リベリスタの猛攻を持ち前のタフネスと再生能力で耐え忍び、狂戦士の如く雄たけびを上げて斧を振り下ろす――否、如くはいらない。神話における狂戦士の伝承は、もしや彼らがボトムチャンネルに下りたのでは、と思えるほどの猛攻だ。出鱈目に見えて、太刀筋は通っており。力任せに見えて、体幹は安定している。戦いの民族の名は、けして伊達ではない。 「ぐお……!」 バイデンからの集中砲火を受けていた虎鐵が、斧の痛打で意識を失う。あひるの回復もあったのだが、バイデンの攻撃はそれ以上だった。 稲妻の拳は厄介と見たのか、斧の矛先は優希に向く。鋭くそして力強く繰り出される斧の攻撃は、優希に運命を使わせるほどの猛攻だった。 「この一打でおわりだ。一気呵成に撃ち貫く!」 起き上がりざまに優希は歩を進める。一歩一歩をしっかりと。速度ではなく力ではなく。型どおりに構え、足を踏みしめ拳を突き出す。基本に忠実に、それでいて戦場に合わせた変幻自在の型。 拳から突き出された衝撃がバイデンの鎧のような筋肉を通し、内臓に直接打撃を加えた。体内で暴れまわる衝撃に怒りの表情を浮かべ、バイデンは斧を優希に振り下ろし、 『ァァァァァ……!』 そのまま崩れ落ちる。斧は優希の腕を掠めただけ。戦士の最後の意地を見せたバイデンはそのまま大地に倒れこむ。 残りのバイデンは一体。純粋な戦いなら勝利の流れだろう。巨獣を押さえ込みながらバイデンを攻め続ければ、リベリスタはバイデンを掃討できる。 だがしかし、彼らの目的はバイデンの殲滅だけではない。バイデンが護る食料庫の破壊も目的に含まれているのだ。 遠くから聞こえるバイデンと巨獣の足音。時間という第三の敵がリベリスタを精神的に追い込んでいく。 ● 「てめェらが破壊の申し子なら、俺らは究極馬鹿なお人好しの集まりなンだよ!」 叩き付けられる黒鉄のシャワー。狄龍の銃撃を受けて最後のバイデンが倒れる。 「どうだ参ったか! 分かったら疾く死ね!」 「……ぐ、ぁ!」 ディートリッヒを庇っていた翔太が、巨獣の一撃で吹き飛ばされる。運命を削って耐えるが庇い続ける限りいつかは倒れるだろう。そうなれば、巨獣がリベリスタを蹂躙してしまう――その流れが容易に想像できた。 巨獣を抑えるために誰かがフォローに走るか。それともこのまま倉庫を攻め続けるか。戦場の誰もがその選択に悩み―― 「倉庫を叩きましょう。時間がありません」 「ハッハー! 違ぇねぇ。俺たちゃそのために来たんだからな!」 ユーキがその方向性を決め、狄龍が口火を切る。まだ起き上がっているリベリスタ達も、徹の戦闘指揮の下、的確に倉庫を破壊していく。 「燃えろ……燃えろぉ! 燃え散らかせぇ!」 「はぁぁぁぁぁ!」 銃撃打撃剣戟。骨と岩の倉庫がリベリスタ達の攻撃で揺らぎ、軋み、そして崩れ始める。 「がんばって……あひるもいっぱい治すから……っ!」 巨獣から加えられる攻撃を全力で癒すあひる。最後の癒しを放ち、彼女の魔力が空になる。振り下ろされる巨獣の脚。その一撃で翔太が意識を失い―― 「――退くぞ!」 倒れているものを抱え、リベリスタはあひるの用意したトラックに乗り込む。 巨獣が暴れたと偽装する案もあったが、わずか数十秒では偽装する時間もない。それよりは倒れているものを抱えて逃げ出す方が重要だ。 「ギリギリだったな。だが俺たちの勝ちだ!」 背後には燃え盛る倉庫。ギリギリで破壊に成功したリベリスタ達。荷台に動けないものたちを乗せて、荒野を駆けるトラック―― 明らかにこの世界ではない存在。舗装されているわけでもない道を揺れながら進む鉄の塊。 バイデンの大部隊が、それに気付かぬはずがなかった。 大部隊のうち何体かの巨獣がこちらに襲い掛かり、トラックを攻め続ける。荷台に乗っているリベリスタ達は、その衝撃で傷ついていく。なんとか仲間を落とさないようにしながら、必至に耐えていた。 「わ……、まず……い……っ」 あひるがその衝撃を受けて、意識を飛ばしそうになる。フェイトの導きで意識を保ち、トラックは部隊から離れていく。 「……ふぅ、やばかったぜ」 ハンドルを握るディートリッヒは、過ぎ去った嵐に安堵のため息をつく。帰りも荒野に紛れた方が安全だったかもな。そんな悪態がでるのも、危険が去った安堵ゆえか。 「やったな、相棒」 「ああ」 倒れたままの翔太に優希が近づく。二人はそのまま拳を付き合わせた。 「帰って一杯やりたいところだぜ」 「拙者も付き合うでござる! ……あたたた」 「無茶するなよ。でもまぁ、ビールで喉を潤したいね」 徹と虎鐵とディートリッヒが勝利の酒を味わうように、笑いあった。 「よぉおっさん。オレぁ来年酒解禁なんだよ……今から良いの仕込んどけ?」 「欧州では飲酒最低年齢が十六から十八歳なのですが、この『完全世界』ではどうなのでしょうね?」 「異世界なら大丈夫だろう。一杯いこうぜ」 火車が口元を歪め、ユーキが首をかしげる。狄龍が肩を叩いて酒を勧めようとしたところをあひるが止めた。 「だめーっ! 悪いこと……しちゃ、いけないだよ……っ」 「いま散々悪いことしてきただろうが」 その言葉に、リベリスタの表情がほころんだ。そしてすぐに戦士の顔に戻る。 向かう先は橋頭堡。今だバイデンの攻勢止まぬ我等が施設。 ――戦いはまだ、終わっていない。 「まだやれるか。お前等」 応、と威勢良く言葉が返ってきた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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