● 三の月が昇り切った深い夜がラ・ル・カーナに満ちる。 荒野を過ぎる風は、やたらに優しく乾いた土を攫って落とす。 けれども音のない風は、勇ましい足音に向きすら強引に変えられて、ラ・ル・カーナ橋頭堡に低い地響きを連れて戻った。 「――バイデンが」 その情報は警戒班から拠点中をすぐさま駆け巡った。バイデンの集団が列を成して荒野の彼方からやって来ようとしている。 その数、見渡す限り。 これまでにもリベリスタ達が対峙した彼らの使役する巨獣の獰猛な影すら伴って、彼らは意気揚々と武骨な武器を手に進み来ている。 アークの設置した拠点よりは暫くの距離を取り、その侵攻は一時止まった。そのまま此方の出方を伺うように、不気味なまでの静けさを保つ。 しかしその嵐の前の静けさに、リベリスタ達は取り乱すこともなかった。 「とうとう、我慢ならなくなったらしい」 戦闘狂め、と軽口めいた言葉を交わして、各々が武器を取る。――予期できたことだ。好戦的なバイデンらがそう遠くない内に総攻撃を仕掛けて来るだろうとは。 だからこそ、リベリスタ達はこの拠点の防御をこれまで高めて来た。リンクチャンネルを守り抜かねば、ボトム・チャンネルへバイデン達が侵攻してしまうかもしれない。 「守り抜くよ」 何しろ自分達は、正義の味方なもので。 相手取るは、巨大な体躯と強靭な肉体を持った、野蛮な強者達。 悪役にはもってこいじゃないか、嘯いて、彼らは荒野へ刃を向ける。 ● 「――来るぞ!」 危険を承知の上で遊撃へと繰り出した仲間の心配ばかりもしていられない。確実に侵攻して来るバイデン達を遊撃だけで止め切れないことは先刻承知だ。 リベリスタ達は拠点の外周で敵を待ち受ける。防御施設がある以上、有利なのはこちらだが、気を抜く隙などありはしない。 揃い踏んだバイデンの隊列。数が多いのは一目瞭然の事実だ。そしてそれのみならず、ずしりと重い音を地に響かせながら迫り来る巨獣の影が――二体。 ここから把握できるだけの数だ。恐らくもっと多くの巨獣が居るだろう。だが今は、あの巨獣二体とバイデンをできるだけ食い止めることが先決だ。 「あれは……蛇?」 「相当デカいが、そう見える」 巨獣にはぼってりと太った腹に、長い首と尾、鋭い牙と長い舌。そしてぎょろりとした目が三つあった。高さは目測で五メートル近い。その上にバイデンが五人余り乗っている。それが二匹、まるで鏡でも挟んであるかのようにぴったり対照的な動きで迫る。 「動きは速くないが……相当重いぞ、あいつ」 尾がうねって通った後の地面を睨んで、誰かが呟く。そこには膝まではすっかり入りそうなほどの溝ができあがっていた。 一度でもあれに叩かれればいくら屈強さに自信があれど、重傷は免れないだろう。 そしてあの長い首のその上に乗ったバイデン達。あれがあのまま拠点の水堀の際から伸ばされれば、易く内部に侵入されることもありうる。 そしてそればかりではなく、共に侵攻して来ている歩兵のバイデン達にも対応しなければならない。 下手を打てば、敵の侵入どころか、重量級の巨獣によって拠点を防御している壁なども破壊されてしまうかもしれなかった。 「さしずめミラーバイパーってとこかね」 リベリスタはずるりずるりと、いっそ重機でも近づくような地響きを伴って近づいて来るそっくりな二体の大蛇を見上げ、その上から来襲するであろうバイデン達もろとも強く睨み付けた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:野茂野 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月26日(木)23:21 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 夜が吠える。 迎撃に向かった仲間達がバイデンと切り結ぶその音が、侵攻を止めずに進み続ける軍勢の勇む足音が、猛りの声が――すぐ目の前にまで、迫っている。 その音を全身で感じながら、リベリスタ達は真っ直ぐにこちらへ突進して来る大蛇の一軍を睨み付けた。 「数だけは立派っすね」 皮肉るように言って、『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)は発射台に身を添わせる。そして戦友に語りかけるように、囁いた。 「さて、準備はイイっすか? ――蛇狩りのお時間を始めるっすよ」 その発射台にはレバーがあった。細身のフラウにはやや重いそのレバーを、引く。放たれたのは巨大な岩だ。それは先頭にいた大蛇二体の前に派手な音と土煙を伴って落ちた。 それまで揚々と進んでいた大蛇の行進が止まる。夜闇と土煙でよく見えないが、どうやら予想外の攻撃に驚いたようだった。 「この程度で驚いて貰っては困ります」 『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)の言葉と共に放たれた岩は大蛇の前へと出てきていたバイデンの歩兵達を蹴散らす。 続けて二発、三発と撃つ。即席の発射台では大量に続けて撃つ事はさすがに難しい。――だが、十分だ。 一発が片方の大蛇の腹に当たった。それまで左右対称の動きで迫っていたその二匹は、そのとき『同時に後ろへ後退した』のだ。 「ミラーバイパー……その名は、あながち間違いではなかったのですね」 ――あの大蛇は左右対称に動く。ダメージまで同様に与えられてはいないふうに見えたが、それでもこれで一体を止めれば、もう一体も確実に止まることはわかった。 それを確認して、発射台の下で待機していた仲間達が距離を詰めて来た大蛇目がけて飛び出して行く。 撃ち込まれる岩を避けようとルートを変えた大蛇を先頭にしたバイデン達は、計算通りにそのルートを選ばされたことを知らない。 「うちらだけだと思っちゃ、甘いっすよ」 ● 高く掲げられた銃がある。それを目にして、バイデン達はそこに待ち構えられていたことをようやく知った。 「――この世界は私の守るべき世界ではないし、あなた達に恨みもないわ」 それでも、と『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)は集中を高める。 「私達の世界に危害が及ぶかもしれない以上、その芽、早々に摘み取らせてもらいましょう!」 銃口を向けたその宣言は明らかな挑発だった。だがそれをわかろうがわかるまいが、バイデン達の行動は変わらない。 雄叫びを上げて、雄々しく突進した。だがその先には、リベリスタ達が作り上げた罠が待ち構えている。 ある者は落とし穴に、ある者は仕掛けられた閃光弾に、発射台と合わせて、拠点の防衛力は決して低くはない。歩兵のバイデンの多くがそこを通り過ぎることができなかった。 そしてそこを通り過ぎたとしてもその先で迎え撃つ者達がいる。 大振りな動きで闇を抜けて襲い掛かってきた赤い影に、しかし『硝子色の幻想』アイリ・クレンス(BNE003000)は足鎧を鳴らして踏み止まると、弓を盾のように構えた。 「受けて立つぞ。そなたらもそれが望みであろう」 衝撃と共に青のドレスが翻る。戦場にいささか不釣合いなその装いは、しかし彼女を引き立ててやまない。その色のように澱みない連続攻撃は、武器を殴りつけたバイデンを反対に襲った。 勢いでバイデンが弾き飛ばされる。だが同時に巨大な影が、彼女達に迫った。 「ストップストップ! こっから先は行ったらあかんよっ」 足元から伸びる影を相棒のように伴った『さすらいの猫憑き旅人』桜 望(BNE000713)が前に躍り出る。身軽さを武器とする望に巨大なバイパーは動きが遅い、狙いやすい大きな的のようなものだ。長い尻尾を靡かせて、望は間合いを自分のものにする。 「さぁさぁいくよっ、あーし達のスピードについて来られる?」 死の刻印を与えるべく、にゃんこグローブがその見目の可愛らしさとは裏腹な威力を持って腹に埋まる。 その隣から、二本の鋭い閃光が十字を描いて強くバイパーを撃った。 「通しはしません」 守護の光を纏った『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)が、巨大な大蛇を見上げる。 ユーディスの攻撃で仰け反ったのは、やはり攻撃を加えられている片方だけではなかった。隣で進んでいたもう片方も全く同じ動きで仰け反って、しかしダメージがない分、そちらのバイパーは立ち直りが早い。そして一方が立ち直れば、もう一方も半ば強制的に体勢が整えられる。 「……予測は正しかったようですが、これは厄介ですね」 その呟きが終わるか否か、長い首が二本、対照的な動きで望に、その後方のユーディスに頭から突っ込んだ。噛み付こうと言うのではない、邪魔者を振り払うように、そしてその上にはバイデン達が乗っている。 唐突に怒ったようなその動きは、ユーディスのジャスティスキャノンが余すところなく決まりきったことを示していたが、ミラーバイパーのこの図体で集中的に狙われては否応なく周りの仲間を巻き込んでしまう。不味いと悟ったときには、ユーディスも望も太い首に体当たりを食らって、弾き飛ばされた。 「……ッ!」 尾ほどの威力はないとは言え、強力な攻撃であることは確かだ。強かに打たれたその身を曲げて二人は咳き込む。酷く身は軋んだ。だが骨までは至っていない。 ユーディスは自ら付与していた光の護りが、そしてそれを底上げし、望を致命傷から守ったのは『狂気と混沌を秘めし黒翼』波多野 のぞみ(BNE003834)があらかじめ発動していたディフェンサー・ドクトリンのおかげだ。 だがすぐにはさすがに立ち上がれない。そこに大蛇の牙が迫り――その上の三つ目を、痛いほどの閃光が焼いた。 「――大丈夫ですか!」 黒の翼が揺れて広がる。後方に吹き飛ばされた二人を庇うように前に立ったのはのぞみだ。彼女が放った閃光弾は大蛇を、そしてその上にいたバイデン達をも驚かせたらしい。まともに食らった片方が仰け反ったままぐらぐらと揺れている。そのせいで、そこまで食らわなかったもう片方も道連れだ。 「隙、みっーけ」 大きな攻撃の機会を見逃すはずもない。闇を身に纏った『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)は無邪気な口調でそう言って、既に傷ついた腕で、しかしそれを気にした様子もなく、その痛みを攻撃に換える。 まだあどけなさが残る容貌で、少女は首を傾げた。 「痛いけど、私、死ぬ方が怖いから」 死をも恐れぬ勢いで、戦いを好むバイデン達。けれどもシャルロッテは死ぬ事が怖い。一度は死の淵に瀕したことがあるからこそ、それが怖ろしいものだと嫌と言うほど思い知った。 (死ぬのが怖くないなんていう人は、本当に死に直面したことがないひとだよ) 「だから、戦うね」 そしてバイパーは、シャルロッテの攻撃に追随した魔弾の雨に晒された。 「Amen!」 二丁の銃を連射しながら合流を果たしたのはリリだ。傷ついた仲間を見れば表情に影を落としたが、すぐに武器を構え直す。 「援護します。――私は神の魔弾。どんな強大な敵であろうと、この祈り、必ず貫いてみせます」 「……頼もしいですね。では一匹の足止めは任せてください! 流石に二匹同時相手は辛いですからね」 のぞみが集中砲火を浴びていないバイパーのほうへ閃光弾を投げる。一方の動きが阻害されれば、自然もう一方も同じことだ。 目を焼かれて狙いも定めずに加えられた攻撃は引いてかわし、のぞみは天使の息でより重傷そうだった望に癒しの風を与える。 痛みを抱えながらも立ち直ったユーディスと望は、再び武器を構え直す。 「倒れて、られん。……今のあーしにできる事を精一杯がんばるんやでっ!」 ● 「陣形が乱れたか。……どけ!!」 前衛二人が後衛のところまで吹き飛ばされ、体勢を立て直そうとしている仲間を見渡しつつ、アイリは一旦身を沈めてバイデンの攻撃を避けた。 罠にかかってバイデンの数は大幅に減ったが、罠を回避したバイデン達は迷わずリベリスタに牙を向く。 アイリは素早く身を返し、ぎりと弓を引き絞ってバイデンごとバイパーを射抜いた。 「なんとかバイパーの足は止まったわ。今のうちに、ありったけを!」 ミュゼーヌの掛け声と共に放たれた連射は片方のバイパーを撃ちのめす。合わせてバイパーの周りにいたバイデンの歩兵達も撃ち抜いて行く。だがさすがに数発でバイデンを倒すまでには至らない。 バイデンを全て倒すと言うのはさすがに困難に思われた。だがせめてこの巨獣だけでも、何とかせねばならない。 「そろそろこっち、ダメそうっすね」 速く軽い動作で集中攻撃をされているバイパーに飛び乗ったのはフラウだった。キャスケットを被り直す動作と共にナイフを抜けば、攻撃によって仰け反る巨体に動じもせずに駆け上がる。 バイパーは片方に与えられた麻痺の効果のおかげで、満足に動けてもいない。それに不利を感じたのか、乗っていたバイデン達が飛び降りている。好都合だ。 「受けるっすよ、うちの速さを!」 フラウは無防備に晒されたバイパーの脳天へ、躊躇いも澱みもない連撃を食らわせた。 バイパーが牙を剥く。けれどもそれは攻撃の動きではなく、断末魔をあげるためのような動きだった。 ずるりと巨体が傾く。フラウはその頭上から離脱して、仲間の前列へと降り立った。傾いたバイパーは相変わらず左右対称の動きで、その二つの頭を寄せ合うように倒れる身体をぶつけ合う。一方の身体が不自然なほど大きく波打った。その重量に押されて、地面が沈み込む。地面が揺れるような衝撃がひとつあり――次の瞬間には、ミラーバイパーは一つの尾に二つの頭を持つ大蛇へと変貌していた。 「さあ、ココからが本番です!」 誰も倒させませんよ、とのぞみは後方から仲間の傷を癒す風を送る。ここからが自分の本領だとばかりに、視野をぐんと広げて、戦況を確認する。 「……降りて来たバイデンと、後から降りて来るであろうバイデンが、やっかいですね」 のぞみのその読みは正しかった。だが、早いところバイパーを止めなければ、バイデンたちの侵入を許してしまう。それは、不味い。 「ようやく合体したわね」 ミュゼーヌはリボルバーを引いて、一つになったバイパーを狙い撃つ。肩のコートが弾丸と共に翻った。 バイパーから新たに降りて来たバイデンらはほぼ無傷でリベリスタ目がけて攻撃を仕掛けて来る。銃弾がかすっても怯まぬその精神は正に戦闘種族のものだ。 彼らは力押しで、この場を通り抜けようとしている。 「させぬよ。――そなたらは早々にこの舞台を降りよ!」 アイリの防御する暇さえ与えぬ連続攻撃がバイデンを貫く。 それに続いてユーディスの光の十字が別のバイデンへと刻まれ、膨れ上がった怒りはその刃を迷いなくユーディスへ向ける。 「此処で一兵でも多く打ち倒さなければ……!」 自分の身を危険に晒しても、痛みがどれほどのものでも構いはしない。ここを突破させてはならない。その意思は、彼女に強く武器を握らせる。 武器に光を宿す。それを振り抜く。手応えと共に、敵の攻撃が我が身を抉る。 「エーレンフェルトさん!」 のぞみの詠唱と共に、柔らかな微風がユーディスの傷を癒した。 だが突破しようと進むバイデン達は止まらない。その足を止めるべくまた自分へと標的を変えさせては、ユーディスはその身に攻撃を受ける。 「全てを打ち倒すことは、できなくとも」 ダメージの蓄積は小さくない。膝を着きそうになるのを気力で持ちこたえ、澱みのない視線を敵へと向ける。 「――漸減して見せましょう」 この身に代えても。 輝く武器が目前に迫ったバイデンを貫く。だがそのバイデンの頭上から、バイパーの上にいた残りのバイデン達が降り立って来る。視界の向こうで、仲間が一体となった大蛇へ集中砲火を浴びせている。その猛攻に、巨獣を使った侵入を諦めたようだ。 しかし、新たなバイデンの攻撃を受けきれるほど、今のユーディスに力は残されていなかった。だが瞳に灯った光は決して翳らない。避けきれない軌道で振り上げられた武器が迫る。 光の軌跡を残して、ユーディスの身体が倒れるまで、その目は敵の姿を揺らがず映していた。 ● (我らにご加護を) 心で祈りを捧げて、リリは二丁の銃を腕を交差させて構える。 ――この祈りが、今の私の全て。 この弾丸に込められるは、祈り。だからこそその弾丸は敵を貫く。貫かねばならない。この祈りが届くように。 光弾はバイパーを見捨てて降りようとするバイデンを巻き込んで炸裂する。 バイパーが一つになる前に受けていた麻痺は未だ鈍く続くようで、リリの、ミュゼーヌの弾丸を浴び、二本の頭を絡ませて、巨体をのたうたせていた。 「悪い奴には望ちゃんの熱いキッスで猛毒と致命のプレゼントやでっ♪」 畳み掛けるように、しかしいっそ楽しげに、望が死の刻印をバイパーに刻み込む。傷を庇いながら、それでも鈍い動きの攻撃を避けるくらいは並外れた反射神経を持つ望に取っては易いことだ。 「あーしが待ってたのはこういうしびれる展開やったのかもしれへん……」 にい、と笑って身軽に宙へ飛ぶ。その誘うような動きの影から、シャルロッテの攻撃がバイパーを襲う。放たれた黒いオーラは大蛇を取り囲み、鈍りきったその巨体から、防御力すら取り上げる。 「痛いの痛いの、あげるよ」 バイパーは巨体を苦しげにうねらせ、痙攣させ、しかし最後の力を振り絞るように前へ突進する。 「行かせない!!」 ミュゼーヌがその動きに弾かれたようにその尾に飛び乗った。バイパーは痛みに狂ったように鈍く暴れる。いくら鈍くともその巨大さは脅威だ。ミュゼーヌはその尾を打ち抜いた。――途端にその身は尾に打ち飛ばされる。 声は出なかった。ただ息ができず、身体が嫌に軋む。 近くで仲間が呼ぶ声が聞こえた。だが応える声が、潰されたように喉で詰まる。 視界の端を、青いドレスが走った。声がする。 「のぞみ、ユーディスとミュゼーヌを! ――大蛇よ、貴様はここで終われ!」 地響きがする。ああ、あの大蛇は倒されたのか。――よかった。そう思ったのを最後に、ミュゼーヌの意識は闇に落ちた。 ● 「残るんはあんたらだけやね、バイデン!」 望が荒い息をつきながらも、グローブを構える。 「ここから先、行かせないっすよ」 フラウも息を整えながらナイフを構え、拠点を背にリベリスタ達が立ち塞がる。その足元で、倒れたユーディスとミュゼーヌをのぞみが支えていた。 そこへ、一人のバイデンが突っ込んで来る。リベリスタ達の迎撃をものともせずに、屈強な戦士そのものの様相を呈して、その武器を振りかぶる。 「のぞみ!!」 バイデンの攻撃は仲間を支えていた仲間へ向いていた。アイリが叫ぶ。 のぞみが舌打ちして閃光弾を放った。だがそれがバイデンを焼くよりも、その武器が振り下ろされるほうが速い。 しかしそれより速く、その攻撃を受け止めた者がいた。 「――させま、せん」 ユーディスの輝く武器が、 「通さない、わよ」 ミュゼーヌの銃身が、バイデンの攻撃を、防いだ。 次の瞬間、閃光が弾ける。 攻撃を受けながらも目前に迫ったバイデンが吹き飛ばされ、沈む。そしてその光が収まった時、バイデン達は散って撤退を始めていた。 罠にかかっていた者達も抜け出して、後退して行く。 「待て! 逃がさぬ!!」 アイリが矢を放つが、それは倒れたバイパーの長い尾に突き刺さっただけだった。 「逃げられちゃったね」 「ま、あの数っすから。好都合っすよ」 シャルロッテにフラウが返して、武器を収める。その傍らで、二つ頭の大蛇はもう動かない。 「……この舞台は閉幕、だな」 アイリが弓を下ろしながら、呟いた。 争いの音は未だ夜の中に響き続けている。だがこの場でひとつ、その音が消えたことは間違いなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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