● 「今回は、アザーバイドの送還をお願いしたいんだけど」 アーク所属の変人だけど、無駄に美形のフォーチュナ、仲島が、言った。 「これが、見た感じわりと美形の青年二人なんだけど。自称伯爵と、自称執事でね」 「はー」 とか、メモっていうか、メモしてますよ、って雰囲気を醸し出しつつも、完全に落書きしながら、芝池は相槌を打つ。 「場所は、二階建の洋館で、今は廃墟になってる。D・ホールは、二階の寝室にあるみたいなんだけど、伯爵は何せ、執事青年が居ないってんで、身の危険が心配だ! とか、パニックになっててね。すんごい探してる最中なのよね」 「はー」 「もうあれよね。伯爵的には執事が見つかるまで絶対帰る気とかないです、って感じなんだよね」 「でも、同じ屋敷内には居るんですよね」 「居る」 「じゃー要するに執事を見つけて、伯爵と引き合わせて、D・ホールに放り込めば終わりっていう話なんですね」 「問題が二つある」 「何でしょう」 「まず、E・フォースが出現する。フェーズ2が2匹とフェーズ1が6匹。どうも以前にここで暮らしてた人達みたいなんだけど、ドレッシーな感じで、踊りながら出現してくる。で、踊りを強要してくる。もちろん踊っちゃったら戦いにならないから、巻き込まれないよう気をつけて。フェーズ1は、とにかく踊りを踊って、戦いの邪魔をしてくる感じなんだけど、踊りのついでにバシッ! とか殴って来たりもする。フェーズ2は、一緒に踊ってくれないと、怒りだして殴りかかってきたり、冷たい息とか吐き出して攻撃して来たりするから、こちらも気をつけて」 「踊らないと殴りかかってくるとか迷惑極まりないですよね」 「あと、執事は、逃げてる」 「え?」 「だから、執事は、逃げてるの」 「え、敵からですか」 「いやあのー伯爵から」 「え、伯爵から逃げてるんですか」 「んーどうもねー。この伯爵がさー、執事の事大好き過ぎて、大好きな余り、苛めて喜んでる性格破綻者みたいでね。執事はそんな伯爵に我慢ならなくて、こっそり逃げ出そうとして、実際逃げ出したんだけど、そしたらこー逃げてる最中にさ、何をどう間違ったか、D・ホールくぐっちゃって、しかも伯爵にも発見されちゃって、みたいな」 「あー何だろう、その執事の人、凄い親近感沸いて、沸き過ぎて同情して泣きたくなってきました何か」 「でもさ、伯爵はさ、分かってないのよねー、執事が逃げたいなんて思ってるってことは。だから何だったら自分がちょっと目を離した隙に、散歩とかに出ちゃった執事の後をストーカーしてたら何か、変な所に出ちゃった、くらいの感じで。しかも、気付いた時には、一緒に居たはずの執事居なくなってるし、踊り強要してくる変なのは出てくるし、これはもうすぐにでも大好きな執事君を見つけだして、助け出してだね。もちろん一緒に帰る気満開なわけ。迷惑よねー」 「って言ってる仲島さんも相当性格破綻者で迷惑ですけどね」 「でも俺は、あれだよ。芝池君に対する嫌がらせは、ああ嫌がるんだろうなーって、分かっててやってるんだもん。気付いてない伯爵とは、何だろう、レベルが違うよね」 「そのレベルはきっと、上がらない方がいいレベルですよね」 「まーとにかく今回はそんな感じで、エリューションの討伐と、アザーバイドの送還ね。最悪、アザーバイドは二人揃えてD・ホールに無理矢理放りこんじゃってもいいけどね。抵抗されたら、わりと強めだから気をつけて。フェーズ3くらいかなあ。だもんでまあ、するっと帰って貰うのが本当は一番楽だけど、その辺りはリベリスタの人達に任せるってことで。じゃあ、芝池君、資料作成、宜しく頼むよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:しもだ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月21日(土)22:55 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ふと見ると、『┌(┌^o^)┐の同類』セレア・アレイン(BNE003170)が、部屋の一角にある絵画を眺めながら、ぼーっとしていた。 とかいう後ろ姿がもう何か、若干不審なくらい大人しかったので、『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)は思わず、 「あれ? 何か、あるんですか?」 とか、問いかけてみることにした。 のだけれど、返事は返ってこないので、ちょっと待ってみたら、わりと待つことになってしまって、その場が一時停止の映像のように、凄い静止した。 「え、あれ、セレアさん?」 暗転。 ●『その頃のとあるセレアさんの妄想と叫び。~紙芝居風~』 ドドン。 昔々ある所に、伯爵と執事が居ました。 伯爵は執事が大好きだったので、毎日ちょっとした意地悪をしていたのでした。 例えば、今日は、自分の靴紐だとかを、解いたりしながら屈みこんでいるその華奢な横顔をぼーっと見下ろし、見下ろしてる内に、その儚い横顔があんまりにも可愛くて可愛くて可愛いので、何だかもうムラムラムラムラムラムラしてしまって、してしまって、してしまって。 ドーン。 真っ赤な太字で大きく書かれた「あたしもそんな執事苛めたい!」の文字。 更に次。 「物憂げな青年みたいな執事の困った顔を見て、によによしたい!」 次。「苛められてる執事に「今どんな気分? どんな気分?」って聞いて、更に追い詰めたい!」 次。「しかもそうやって泣きだす寸前くらい苛めておいて、ごめんね、嘘だよ、とか言って、撫で撫でしたい!」「いや撫でるのは伯爵に任せて、そこをのんびり鑑賞したい!」「そんな二人を写真に撮って、未来永劫ながめてニヤニヤしたい!」「ニヤニヤしながら飲む酒は、きっと美味いに違いない!」 暗転。 ● そしたら何か、それまで凄いぼーっとしていたセレアがいきなり、 「私の心はー、ホモォを求めて~」とか、凄いぼんやりとした表情のまま、小声で歌いだした。 ななせはまず、歌いだしたとかいう現象に、ちょっとえ、ってなって、遅れてその歌詞の内容を考え更にえ、ってなった。 衝撃的だった。 それはつまり、伯爵と執事の解釈がホモということで、じゃあそういう解釈したら、どうなるんですか、伯爵は執事さんが大好きで、ちょっと意地悪しちゃいたいS系の人って事になるんですか、執事さんも、嫌がりながら実はどこかで伯爵の弄りがないとなー、みたいな感じになるんですか! なるんですか! なるんですね! 驚きです! 大変です! 衝撃です! 今日はそんな日野宮ななせです! よろしくお願いします! とか。 まー何かそのままちょっとした旅に出かけてしまい、逆にトリップ状態から戻って来たセレアは、トリップして歌まで歌ってしまったにも関わらず、「あ、え何でしたっけ」って凄い普通の顔で、振り返った。 そしたら何か、茫然と虚ろな目で俯いているななせ、を飛び越えた後ろの、『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)と目が、合った。 彼はその、紅蒼の双眸を苦笑色に細めながら、 「いやまあ何というか。確かに個性的な主従関係ではあるよね。神秘の世界は広いなと実感するよ」と、とっても微妙な距離感を感じさせる文言を、とっても微妙な距離を置きながら、述べた。「あと、この部屋には何もなさそうだから、次、行こうか」とも、言う。 「つかあれっすね」 そしたらその後ろでタンスの中とか覗いていた、『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)が、「最近Dホールを気付かぬうちに通り過ぎたり、逃げ込んだりする事が流行ってるんすかね?」とか、呆れたように、言った。 「何にしてもとりあえず、その伯爵とか執事とか、果てしなく面倒臭いっすよ」 「うん、あのーあれよね。送還しなきゃいけないアシタババイドね」 とか、凄いいい加減な感じでセレアが言う。 「まあ、アザーバイドだけどね」 遥紀が、さりげなく訂正をした。 「つかもうそれセレアあれすよね。完全に仕事する気とか、ない感じっすよね」 ● 「いやないでしょやる気とかはー」 その頃、別の班として行動する『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は、煙草の煙をすっぱーとか吐き出しながら、そんな事を呟いていた。 そして煙をぼーっと見つめて、 「はーたいぎい」 と、虚ろな目で、零す。 そしたら後ろから、 「気持ちは分からないでもないが同志雲野、これは仕事なのだから、終わらせねばならない。つまり何というか……、そろそろ次の部屋に移動せねばならないので、一先ずはそのソファから立ち上がって頂きたい」 とか、わりときりっとした真面目な顔で、『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)が、お願いをしてきた。 そんな若干の不器用さ漂うビーストハーフ(イヌ) の顔を振り返り、杏は、ちょっと何か、ぼーっと見る。 とかいうその顔が何かもう、「え?」ってちょっと、逆切れしている気もする。 言われてないけど、「え?」って凄い威圧感で言われてる気がする! とか、きりっとした顔して内心ビビりまくっているベルカだったのだけれど、むしろ、杏の身体から放出される雷術とかが怖かったのだけれど、そこはもう、頑張って頑張って、踏ん張った。 でも尻尾が緊張でピーンとなっていた。 「んーもう。健気よねえ、ベルカちゃんはー」 そしたらいきなり、杏が巨乳をぼよん、と動かしながら、腕を伸ばして来て、ベルカをムギューっとした。 「分かったわ。ベルカちゃんがそう言うなら、頑張って働いてあげるわね」 「うむ。有難い、同志雲」 とか、直立不動で言ったベルカの髪を今度はわしゃわしゃやりながら、杏は、「ま、あれよね。アザーバイドの伯爵とやらに、好きな人の可愛がり方っていうのを教えてあげるのも一興よね」とか、何か言って、 「うむ、ちょ、うむ」 ってあんまりのわしゃわしゃに、ちょっと引き気味になりながらも、ベルカは、頑張って、耐えた。 「さ」 って、気が済むまでそんな彼女を弄った杏は、「じゃあ行くわよ」と進みだそうとし、そこでやっと仲間の二人が居ない事に気がついた。 同じ班として行動していた『マッハにゃーにゃーにゃー!』加奈氏・さりあ(BNE001388)と、『花護竜』ジース・ホワイト(BNE002417) が居ない。 「あれ? 二人は?」 「先に隣の部屋に移動を」 と、ベルカが説明しようとしたまさにその時。 隣の部屋から、「にゃー!」とかいう叫び声と、「おいちょ、待てって!」とか何か言うジースの声が聞こえた。 ●その少し前のくだり。 部屋に入った途端、ジースは隅っこの方に蹲る人の影を見つけた。 後ろに続いているさりあを振り返り、「あれ、執事なんじゃねえの」と、ひそひそと囁く。 「にゃー……そうかもなのにゃ」 うん。 と、二人は顔を見合わせて、何か頷き合った。 ジースが意を決したように人影に近づいていく。 そしてそろーっと、微妙な距離を開けつつ、 「おい、大丈夫か? そんな所で蹲って、気分でも悪いのか?」 と、声をかけた。 途端にハッ! と、凄い勢いで人影が顔を上げる。やはり、執事だ。と思った瞬間には、わー執事の顔ーって気付いた時にはもう通り過ぎている。 「にゃー!!」 って何か、その駆け抜けていく執事の風圧に、くるくるーって周りながら、さりあが叫んだ。 「おいちょ、待てって!」 バッと、ジースは執事を追いかけ、部屋を飛び出る。 すると、隣の部屋から出て来たらしい杏とベルカに通路を塞がれ、今しも踵を返そうとしている姿が、見えた。 「お前、伯爵から逃げてんだろ」 すかさずジースは、気を引くように叫んだ。 「え」と、執事が、不審がるような表情を浮かべる。 「そのまあ何だ。いろいろまあ、あってさ。俺達、あんたらの事を知ってんだよな。だからまあ、何つーか。そんなに嫌なら逃げるのしょうがねえんじゃねえの、って思う所もあるんだけどよ。でも、本当にこのまま逃げるだけでいいのか? きちんと話し合ってからの方がいいんじゃないか? この逃亡で意思表示をしたつもりでも、その理由とか意図とかをさ、ちゃんと言ってからじゃないと、この逃亡は意味が無いと思うぜ。現状を打破したいなら、目を背けずにさ。俺達が付いててやるから伝えに行こう。な?」 「落ち着いて話の出来る環境を作ることは、約束しよう」 更に力づけるよう、ベルカが言う。その声に振り返り、思案するかのような目で彼女を見やっていた執事が、次の瞬間、ハッと引き攣った表情になり、何かを呟いた。 どうもうまく聞き取れなかったけれど、何とか様、とか何か言った気がする。 のは、明らかにどう見ても、ベルカと杏の後ろに、「伯爵っぽい奴」を見つけたからで、くっそーもう少しだったのにー、とか思ってももうどうしようもない。伯爵が走り出し、執事は途端に踵を返し、ジースとさりあの間をぴゅーっと駆け抜けて行く。 「ああもう少しだったのににゃー!」 って、またくるくるくるーとか回転しながらさりあが叫び、ちょっと回転の勢いが凄過ぎて止まれなくなって、にゃー! って言いながら思わず何かを、はしっと掴んだ。 のは、伯爵の服。 ムンッと、何だか良く分からないけれど、凄い勢いで睨まれ、あわわわわわ、って慌てて手を離す。 「ま。待つにゃ! 無理やりな関わり方を続けると執事に愛想を尽かされるにゃ、彼の気持ちもきちんと聞いた方が良いにゃ。ずっと一緒に居たいなら、相手をどう喜ばせるか考えてかないとにゃ! 大丈夫にゃ! 二人の間は邪魔しないにゃ!」 「うむ。そういうことだ。必ずや2人を対面させる環境づくりを行うと約束しよう」 ベルカが言うと、それまで何となーく事の成り行き見守ってましたーみたいな杏が面倒臭そうに、言った。 「だいたいあれでしょ。アナタ追いかけらんないわよ。見て、敵のお出ましだもの」 そして通路の先を指さす。そこには、軽やかにステップを踏みつつ近づいてくる、6匹のE・フォースの姿が。 「私達がちゃんとあの邪魔者を追い払って、執事に合わせてあげるわよ」 不敵に微笑んだ杏が、大型の弦楽器を模したヘビーボウガン「"序曲"ギヨーム・テル」をダウンロードする。 「E・フォース、みつけたら、かんぱついれず、ぶちころせ!!」 そして全身から、バチバチバチーっ! と、電気を放出させながら、チェインライトニングを発動した。 バリバリバリドーンッッ! と、放たれた一条の雷が、次々にフェーズ1のE・フォースを激しく貫き、殲滅していく。 傍らで、顔には出してないけど尻尾をガンガンけば立たせ、つまりは怖くてたまらないのを必死で堪えながらベルカは、ディフェンサードクトリンを発動。 そうして仲間の戦闘防御力を上げておいて、後方へ、つまりは雷から遠くへ、一歩後退。 しようとしたそこへすかさず、する、と飛び込んで来た杏が、彼女の手を取り、暴れ狂う雷の中で華麗にステップ。 「アナタらが踊るなら、アタシも踊るわよ。さあベルカちゃんも踊りながら戦場を指揮してみせなさい」 「同志雲野、それはむ、無茶な……ひっ!」 バリバリドーン! とかいうその間にも、 「何かいろいろあって、伯爵は確保した! 執事は相変わらず逃亡中。そっちは頼んだ!」 とか、AFで別班へと連絡を取ったジースが、爆砕戦気を発動し、残ったフェーズ2へと突進していく。 彼の身体から発散される闘志に呼応して、ハルバード「Gazania」の竜の瞳が青い光を放つ。 「ごめんな、綺麗なおねえさん。踊りたいのは山々なんだが、あいにく同じステップは踏めそうもない」 ダンシングリッパーを発動し、舞踏を舞うような鮮やかな動きで、周囲の敵を切り裂いていく。 「だっておねえさんには、足がないしね」 「そうなのにゃー。踊りは断るのにゃー!」 その後ろから、ソニックエッジを発動したさりあが凄い勢いで飛び込んで生きた。 そして、 「さー受けてみろー! 連続ねこぱーんち!」 とか、とにかくクローで相手の事を自慢のマッハにゃーにゃーにゃー! で引っ掻く、引っ掻く、引っ掻く、にゃーにゃーにゃー、飛び跳ね回転、にゃーにゃーにゃー、とにかく引っ掻くにゃーにゃーにゃー、で、敵を完全に追い詰めた。 息も絶え絶えになった敵から一旦距離を置き、どーんと最後にはキックを放つと、それを目掛けて踊るベルカがカースブリットを放つ。 呪いの弾丸に撃ち抜かれた敵は、その場でしゅう、と消滅して消えた。 ● その頃、別班の四人もまた、戦っていた。 というか、フラウが戦っていた。 ソニックエッジを発動し、両手に構えた「魔力のナイフ」を自由自在に操りながら、残ったフェーズ2の敵に向け、澱みなき連続攻撃を仕掛けている。 「踊りは強要するものじゃねーっすよ」 速さに魅せられたその体で、時に回転し、時にナイフを持ちかえ、うねり、広がり、敵の至る所を切り裂いていく。 「そしてこれが本当の、戦いという踊りっす! さぁさぁ、もっと華麗に踊るがイイっすよ!」 で。 そこから少し離れた所では。 一緒に出て来たフェーズ1の討伐を終え、フェーズ2はフラウに任せます、みたいな感じで、執事と向き合う残りの三人の姿があった。 というか、厳密に言えば、執事と向き合っているのは、遥紀だった。 従容とした様子で、自分達はこの世界の住人であること、害意は無いこと、運命を視る力に導かれやってきたことなどを説明している。 執事はその、焦点が定まっていないようにも見える、だからこそ威圧も生活感も薄い、オッドアイをじーっと見つめている。 「だから。大変な人に仕えているらしいのは分かるけどね。でも、きちんと思いを言わないと伝わらないタイプなんじゃないか、伯爵は。例えばここで上手く逃げ切れたとしても、想像してごらん。自分以外の人が伯爵のお世話するのは平気? 貴方はそれでいいの?」 「僕意外が、伯爵のお世話を、ですか」 「そう」 「それは……」 と、俯いた執事を、父性のような物を滲ませながら少し笑って見やった遥紀は、 「逆に貴方が躾けてしまうというのはどうだろうか。嫌な事をされたらつんと、嬉しい事をされたら優しくすれば良い。要は駆け引きさ、大丈夫、俺達も付いている」 そしてそっと、その肩に手を添える。 とかいうのを、凄い真剣な表情で、うんうん頷きながらセレアは見守っていた。 そしていきなり、「執事、合格」とか、呟いた。 「ええ、合格ですね」 気付いたら隣にななせが居て、同じような表情で呟いている。 「執事のビジュアル、合格」 また呟いたセレアが、小さく拳を握る。 「あとは伯爵……」 同じように拳を握りながら、ななせが呟く。 ●そんなこんなで。 二階の寝室で、つまりは、D・ホールで落ち合ったリベリスタ達は、伯爵と執事を送還すべく、説得を開始していた。 と、いう風情で、わりと好き勝手な事をやっていた。 杏などは、「アナタこの子の事、好きなんでしょ。苛めて喜んでちゃ駄目だよ」と言いつつ、ベルカを引き寄せ、「見せてあげるわ。これが正しい愛情表現」 と、その頬を撫で撫でし、「よしよし」、髪の毛をもふもふし、「んーさっきの雷、良く我慢したわねー。偉いわベルカちゃん。もふもふしてあげる。はい、もふもふ」、そして首の下を撫で撫で「すりすり」、からーのー、ぎゅーって抱擁、ぼよん、ごろん。して、お腹の上に着地。 「ね。こうよ? 分かった?」とか、伯爵に教えている。 「それはそうと、つまりその、差し出がましい様だが、伯爵閣下」 と、すっかり頬を赤く染めながら、けれど真面目な表情で立ち上がったベルカは、言った。 「主従の間柄とは言え、配下の心を推し量れない様では主君たり得ない。本当に相手の事を想うならば、押し付けは厳禁だ。執事殿の方も、逃げるだけでは解決しない。嫌な事、嫌な物はハッキリと断るのだ。何かに一線を引くべきだな。例え、私達にはここで終わりでも、貴方がたはあの向こうでの生活が続くのだから」 「そうだね。そしてこれが良いきっかけになることを祈ってるよ」 執事を見やりながら、遥紀が言うと、彼は、先程の言葉を思い返すような表情で、小さな頷きを返した。 「なるほど。愛情表現か……」 伯爵は伯爵で、切れ長の瞳でぼーっとか執事を見下ろし、徐に手を伸ばしたかと思うと、杏がやったようにいきなり頬を撫で撫でし、髪の毛に頬ずりをし、 「え、何を、やめてくだ」 「しかしこれは愛情表現だ」 「いえ、ちょ、や」 首の下を撫で撫で、すりすり、からーのー、ぎゅーって抱擁、ベッドにボフ、ごろん。して、お腹の上に着地。そして、「悪かった。今後は少し、お前の気持ちも考える。優しくする」耳元に囁いた。 「にゃー!」 さりあが悲鳴を上げながら目を覆う。 「てーか、結局イチャイチャっすか、爆発しろ」 フラウが呆れたように二人を見下ろす。 「でもこれわりとときめきますね……」 って手を組み合わせ、目をきらきらさせながらななせが言った。 「さあさあ、和解の記念に一枚。えーっと写真機、あれ? ない? あれ、ない! どうして! 写真機ない!」 セレアが、頭を抱えた。 「じゃあ、そういうわけで、お帰りはこちらから」 その間にもジースが、二人をD・ホールへと誘導する。 その姿が消えるのを待って、ブレイクゲートを発動した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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