●プール開きの惨劇 夏が始まり、各地でプール開きが始まっていた。 6月にプール開きをする学校も多かったが、その中学校では7月初頭にプール開きが行われる予定だった。 学校指定の水着を身に着け、生徒たちが入ってくる。 雲1つない晴天で、絶好のプール日和であった。 はしゃぐ者もいれば、かったるそうにしている者もいる。それは、どこにでもあるような、ごく当たり前の授業風景だった。 水に入る直前までは。 教師の合図で水に入ろうとした瞬間、1人の女子生徒の悲鳴が青空に響いた。 1つの悲鳴を皮切りに、いくつもの悲鳴が連鎖する。 プールの水が動いていた。 まるで触手のように伸びた水が生徒を捕らえ、飲み込む。 もがく彼女の口元からは空気の泡があふれていたが、身動きはできないようだった。 水の触手は次々に生徒たちを捕らえて、水中へと引きずり込んでいく。 逃げようとした生徒が、あふれ出した水流に飲まれてコンクリートの壁に叩きつけられ、動かなくなる。 やがて、プールが静かになった。 生徒たちも教師も、すべて水に飲まれて、命を落としていた。 ●ブリーフィング 「お主ら。最近、暑くなってきたとは思わんか」 アークのブリーフィングルームでリベリスタたちを待っていたのは、『マスター・オブ・韮崎』シャーク・韮崎(nBNE000015)だった。 「喜べ。今回行くことになったのは、プールで戦う依頼じゃ」 フォーチュナからもらってきたらしい資料を、シャークは机の上に置く。 それによると、とある中学校のプールがエリューション・エレメントとなって生徒たちを襲うらしい。 単体ではあるが、なにしろプールいっぱいの水だ。かなりの強敵のようだった。 「敵は水だが、半固体といった状態でな。物理攻撃は通じる」 ただ、そんな状態になっているおかげで、プールの水を抜いたとしても流れていってはくれないようだ。 攻撃手段としては、まず水の触手。 鞭のように伸びた水が範囲の敵を捕らえようとしてくる。ダメージを受け続けるのはもちろんのこと、身動きができない状態にされてしまうのも厄介だ。 それから、あふれる水。 プールから爆発的な勢いで溢れ出す水は、周囲にいる者をすべて吹き飛ばし、ダメージを与えてくる。 「上空にまで届くそうじゃから、本当に驚異的な勢いじゃな。一般人ではひとたまりもあるまい」 さらに水鉄砲のように水を噴射することもできるらしい。 噴射された水は破裂して範囲に対してダメージを与えてくる。食らえば、攻防両面に渡って不利になるうえに、エリューション化した水を取り込んでしまうことで毒のような効果も受けてしまう。 とりあえず、仕事としては単純なエリューション退治のようだ。 表向き、リベリスタたちは清掃業者ということになっているらしい。プールの清掃に問題があったため、特別の業者を呼んで掃除することになった……という名目になっているとか。 そのため、潜入などは特に必要ない。 それよりも気になっていたことをリベリスタのうち1人が質問する。 すなわち、なぜフォーチュナではなくシャークがそれを伝えているのか。 「もちろん儂も行くからじゃ。気温もだんだん上がってきたからのう。エリューションを片付けたら泳いでいいそうじゃぞ。お主らも存分に泳ぐがいい」 答えは予想通りだった。 なぜに女の子ではなく50過ぎのじじいとプールに行かなければならないのか。 幾人かの顔には、確かにそう書いてあった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:青葉桂都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月27日(金)22:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●プールに行こう! 夏の太陽がリベリスタたちを照らしていた。 「暑いぜ……」 頬にしたたる汗を、『花護竜』ジース・ホワイト(BNE002417)は腕でぬぐう。 「だけど、護るべき人たちが居るんだ。暑さなんかに負けないぜ!」 気合を入れる少年の背後を無邪気に少女が走り抜けた。 「プールだ~やっほ~♪ 最近じめじめむしむしで暑いから楽しみだね」 ゴスロリの衣装に身を包んだ『エターナル・ノービス』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)は校門をくぐり、一直線にプールへと向かう。 アークから学校へは『特別な清掃作業』ということですでに連絡が入っている手はずだ。 「こらこら、プールの前にまずエリューション退治じゃろうが」 『マスター・オブ・韮崎』シャーク・韮崎(nBNE000015)微笑ましげに目を細めながらも少女をいさめる。 「エリューション退治?」 きょとんと首をかしげたメイが、あわてて小さな手を振って見せる。 「……あはは、忘れてないよ、お仕事だもんね」 山川夏海(BNE002852)も柵で囲まれた中学校のプールを見上げた。 「プールかぁ……最後に遊びで泳いだのっていつだったかな? 仕事でもそんなに泳いで無い気がする」 夏海は首周りに鱗を持つワニのビーストハーフだ。尻尾も生えている。ただ、泳ぐ機会は最近なかった。 メイとは1つ違いで、まだ小学校に通っているはずの年齢だったが、最近は行った覚えがない。学校の授業では泳ぐ機会も出ている時期なのだろうが。 「ま、それはともかくさっとぶっ飛ばして遊ぼうっと」 学校という状況もあってか、メイや夏海と同年代はもう1人いた。 「遊ぶとかどうでもいいっすよ。夏の太陽とかマジでウザすぎます」 3人目の少女、『働きたくない』日暮小路(BNE003778)は今にも背負った布団で寝そうな勢いだった。 いや、すでに半分寝ている。 戦いが始まるまでに目覚めるかどうか不安を覚えるような様子だった。 「プールはよいものだぞ。水中トレーニングに使用するのはもちろん、娯楽施設としても申し分ない」 アークの制服の下に隠しきれない肉体美を納めた、『鋼鉄の信念』シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE002710)がプールを見上げて眼鏡を直す。 程度の差はあれ、皆プールは楽しみにしているようだった。 「プールで触手やと? エロ依頼やね、分かります」 ……ちょっと不純な楽しみを期待している様子の『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)もいたが。 欠けた眼鏡の形をしたアクセス・ファンタズムから仁太は禍々しい巨銃を取り出した。 「迅速倒して麻奈ちゃんの水着を楽しむ!」 妹の水着のために『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は気合を入れていた。 「兄ちゃんと一緒にお仕事、かぁ。随分久しぶりな気がするね」 テンション高い兄を『他力本願』御厨麻奈(BNE003642)はちょっとだけ困ったような顔で見ていた。 「ま、終わったら遊んでええみたいやしさくっと済ませたいところやね」 麻奈が見ている先で、プールの水がうごめき始めた。 万華鏡の予測どおりだ。 「それでは皆様、戦いを始めましょう」 ロザリオを聖別された二丁の銃に持ち替えて、『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)は祈りを捧げて、集中力を高める。 「我等にご加護を」 その頃、皆とは反対側から『地火明夷』鳳天斗(BNE000789)は柵を乗り越えてプールに入った。 オイルマッチの形をしたアクセス・ファンタズムから苦無を引き抜くと、ざわめく水面へと投擲する。 水面が勢いよく伸び上がり、天斗へと襲いかかった。 ●襲いくる水面 天斗は水の触手を跳躍して回避しようとする。 「最初に女子中学生襲うってか、随分といい趣味を持ってんな!」 柵を蹴った天斗の脚を、鞭のようにしなった水がかすめる。それだけで、彼の体勢を崩すほどの攻撃力がエリューションは持っていた。 「でも残念だったなアンタの敵は お れ だ」 空中で姿勢を立て直し、濡れたプールサイドに着地した彼が苦無を構え直す。 反対側の柵の向こうからは、仲間たちが攻撃をしかけ始めた。 「……全然ちゃうやないか、ヤダー!」 まったく欠片もエロくない戦いの様子に、仁太が抗議の声を上げた。 声を聞きつけたか、水弾が彼の眼前で破裂した。 さすがに天斗だけ狙うというわけではないが、明確な意図で攻撃の対象を選んでいるわけでもない。 「期待通りのアホだな。だったら嫌でも俺を狙わせてやろう!」 追ってきた触手を、天斗は加速して回避。 逆に苦無を弾力のある水面に突き立てて敵の注意を引いた。 他の仲間たちは柵の向こう側に陣取る。実に、天斗以外は1人残らず接近を避けていた。 ジースは全身に激しい闘気をまとっていた。 汗ばんだ手のひらに握っているのはドイツ式ハルバード。祖父からもらった逸品だ。『あなたに誇りを』……そんな花言葉を持つ花の名がついている。 模されているのは、小さな花を守る竜の意匠。その瞳が青い輝きを放つ。 「あんじょうよろしゅうしたってや!」 麻奈が仲間たちへと声をかける。敵の動きを読んで、彼女は仲間たちに指示を出す。 小路も日陰からレイザータクトの技を使っていた。 「いくぜぇ!」 彼女たちの合図に応じて、ジースが薙ぎ払った刃から放たれる不可視の斬撃。 「普通のエリューションならさっさと倒すに限るぜよ。暑いし早よプール入りたいしな」 仁太やリリ、夏海の放つ弾丸も、うごめく水面を穿っていた。 「ああ。怪我人や死亡者を出すわけにはいかないからな。プールを利用する者の為にもエリューションは撃破せねばならない」 シャルローネや夏栖斗の蹴りから放たれた技も敵へと飛んだ。 メイは後衛に攻撃が飛んでくるたびに回復している。 それなりにダメージは与えているが、柵を壊さないようにするとどうしても直撃しにくい。 長期戦の予感をジースたちは感じていた。 「ぐぁあ、暑いぜぇ……ッ!」 黒のノースリーブで汗をぬぐう。水はすぐそばにあるのに、エリューションのせいでまだ近寄れない。 薙ぎ払うハルバードが放つ斬風も、この暑さに熱をはらんだ風を化していた。 リリは仲間たちの中央付近で銃の引き金を引いていた。 聖別された二丁の銃に付けられた名は『十戒』と『Dies irae』。いずれもキリスト教において重要な意味を持つ言葉である。 祈るように引き金を引くと、魔力が付与されて貫通力を増した弾丸が水面に突き刺さる。 水の触手に天斗の姿が取り込まれたのはそんな瞬間だった。 「天斗様! ご無事ですか!」 絶え間なく力を加えていた指先を外し、リリは彼に声をかける。 水に捕らわれた彼は、石と化したように身動きが取れないようだ。 「今お助けします!」 ロザリオが輝きを放ち、天斗を解放する。 「いいぞ……冴えてきた……」 追い込まれた彼は、逆に動きが冴えているようだ。 (どんな大きさや姿かたちをしていようと、この祈りの魔弾で貫くのみ) リリもまた、再び引き金を引き始めた。 シャークは影人の援護を受けつつ、後衛と共に戦闘に参加していた。 「奴を不吉な影で包んでやっとくれや、シャークさん!」 「おう、任せろ!」 仁太の呼びかけに応じて、シャークは印を結ぶ。 不吉の影がプールを覆った。無論、それはただの影ではない。 果たしてプールの水に運命があるのかはわからないが、少なくともその攻撃は敵に有効打を与えている。 「いい調子じゃけん、がんがん行くぜよ」 「こんな暑い中でいつまでも戦いたくないからのう」 柵の間から狙い撃ちながら声をかけてくる仁太と、シャークは言葉を交しあう。 シャルローネは力強く蹴りを幾度も繰り出していた。 プールサイドでは天斗がぎりぎりの戦いを繰り広げていた。 (サポートしてやるつもりだったのだがな) 自己回復能力を付与する技は、近距離からしか使えない。そのため、別の場所から進入した天斗に使ってやることはできなかった。 「あっ、天斗ちゃんが危ないよ!」 メイやシャークが回復しようとする。 だが至近距離まで行かなければシャークは回復できないし、攻撃を受けない位置まで下がっていたメイにとっては射程外だ。 天斗が水の触手に巻きつかれ、水没していく。 どうやら、意識を失ったようだった。 「やられたか、天斗。水の触手か……どんな形状の敵であれぶっ潰す」 脚甲に覆われた脚を薙ぐ。 切り裂いた部分から、半固形の状態だった水が切り裂かれ、ただの水に戻ってあふれ出している。 戦いは長く続いた。 柵越しの攻撃は、巨大な敵にさえなかなか直撃を与えられない。 敵も条件は同じだが威力が違う。天斗に続いて小路も倒れていた。 夏栖斗は意識を集中し、狙いを付ける。 棍型の盾を構えながら利き脚を引く。ただ、そろそろ強力な技を使い続けるのも厳しくなってきていた。 この一発が分岐点だろう。 「さっさと倒れやがれ!」 脚を振り抜き、集中していた力を解放する。 蹴りの威力だけが敵へと向かっていく。貫かれた水面から、水柱が上がった。 「まったくいつになったら倒れるものやら」 「弱音なんてらしくないぜ」 小鬼を召喚し直すシャークと短く言葉をかわし、夏栖斗は再び敵に意識を集中する。 夏海は自分に向かって飛んできた水弾を見て身構える。 彼女は敵の気を引くために仲間よりも少し前から攻撃していたため天斗の次に狙われやすい。 目の前で破裂する水。 直撃した夏海は身体をのけぞらせた。 「まだまだ! 何度でも立ち上がるぞんびあたっくだよ!」 緑の髪が地面に触れそうになった直前で、夏海はどうにか身を起こす。 運命を味方にするほどの強い意志力が、少女を立ち上がらせていた。 「夏海様、大丈夫ですか?」 声をかけながらリリが銃弾を敵に叩き込む。 メイが後方から吹かせた微風が夏海の身体を癒してくれた。 麻奈は気糸を紡ぐ手を止めた。 手にした聖遺物を仲間へ向ける。それは蛇腹状に折りたたんだ厚紙といった外見をしていた。片側は開かないように留めてあり、もう片側は扇状に開いている。 一見するとまるでハリセンのようであった。 皆の消耗は大きいが、彼女がいる限りまだ限界ではない。 まずは回復役であるメイに意識を同調させ、その力を回復させる。 「さて、次はっと……」 「麻奈ちゃーん、僕もー!」 夏栖斗が手を振ってくる。 彼とは最近互いに存在を知った兄妹だ。家族が増えたのがずいぶん嬉しいらしい。 「待っときや、すぐに兄ちゃんも回復したるさかい」 次に兄を回復するべく、麻奈は意識を同調させた。 メイは敵の攻撃が届かない距離で、ひたすら回復をしていた。 長い戦いで強烈な敵の攻撃をしのげた理由の1つは、間違いなく彼女の回復だ。 あふれ出すほどの生命力があろうと、敵に回復能力は無い。 破裂する水がシャルローネの強靭な肉体を打つ。 「まだ、へばるんじゃねーぞ! しっかりしろ!」 ジースのハルバードが太陽を照り返して輝く。 「そうだよ、あと一息なんだから!」 福音が響き渡り、シャルローネや仲間たちを癒していく。 回復した彼女の蹴りが、遠間から敵を切り裂いた。 仁太は柵の隙間を狙って銃弾を放ち続けていた。 敵はもう十分に弱っている。見た目から状態を判別するのは至難の業であったが、些細な点も見逃さない観察力で彼はなんとかそれを見抜いた。 禍々しい巨銃を水面に向ける。 「そろそろ終わりにしちゃるけぇの!」 銃口から放たれたのは、悪夢の如き漆黒の弾丸。 漆黒は伸び上がる水面を圧する。 押し潰された水が弾けて飛び散る。 水音は、まるで断末魔のように周囲に響き渡った。 ●楽しい水遊び 戦いが終わった後は、プールを利用してもいいという話だった。 長期戦になったため多少時間は短いが、まだまだ太陽は空にある。 真っ先に水着に着替えたのはメイだった。 どうやらゴスロリの下に水着を着ていたらしい。依頼ということもあってか水着は用意できなかったらしい。通っている学校指定のものであろうスクール水着だ。 まだ成長の乏しい体つき。性別不詳のメイだが、水着になっても男か女かは判別がつかない。 スクール水着を着ているということは女なのかもしれないが、そもそも普段着がゴスロリである。 ともあれ。メイが飛び込んでも水が動き出すことはもうない。 元気なメイを見て、プールサイドで柵に寄りかかっている天斗は疲れを隠せない声で呟いた。 「おっちゃんにはこの後遊ぶような余裕もないわ」 倒れるまで水の猛攻をしのいだ彼に体力は残っていなかった。 小路にいたっては更衣室で安らかな眠りについている。 メイに続いて着替えが早かったのはシャルローネだ。彼女は迷うことなく服を脱ぐと、その肉体美を炎天下にさらした。 マイクロビキニからはみ出さんばかりの肉体。 綺麗に割れた腹筋がまず目に入る。胸以外脂肪の薄い肉体には迫力のあるカットが浮き出ている。 女性ながら古代ギリシャの彫刻を思わせる美に、仲間たちの何人かが感嘆の声を上げた。 「どうだ? すばらしいだろ? このボディ」 「ほう……見事な肉体じゃな。だが、儂も負けてはおらんぞ」 ビキニパンツのシャークも齢50とは思えない鍛えた肉体で対抗する。 「シャークさんもすごかったが、シャルローネちゃんもなかなかのもんやね」 仁太は少し遅れて着替えを終えていた。出遅れたのは、脱ぐとすごいと一部で評判なシャークの着替えを覗いていたからだ。 マッチョな老人は彼の守備範囲であるが、彼はどっちもイケる質だった。 肉体美を競い合うように、シャルローネとシャークはプールサイドで準備運動をする。 玉のような汗が筋肉に浮かび、流れ落ちる。 「プールを使っていいとは粋なはからいではないか。ありがたく使用させてもらう」 やがて、体操を終えたシャルローネは水中トレーニングのメニューをこなし始めた。 「すごいなあ。ボクも、この夏のうちにプールの端まで泳げるようになるんだ!」 「その意気やよし。トレーニングが終わってからでもよければ、少し手ほどきをしてやろうか?」 手を叩くメイにシャルローネが言った。 麻奈は夏栖斗と仲良くプールサイドに並んでいた。 「どう? 似合うとる?」 着ているのはビキニだが、シャルローネと違ってちょっと大人しめ。 「きゃっわいいねー!」 けれど、スタイルのいい妹の姿に夏栖斗は歓声を上げた。 「ありがとな。お世辞でもうれしいわ。せっかく天気もええし、よかったら日焼け止め塗ってくれへん?」 「オーケー、僕に任せときなよ、麻奈ちゃん!」 バスタオルをしいて寝転ぶ麻奈の背中に、夏栖斗は日焼け止めを塗り始める。 さりげなく夏栖斗の視線を追ってみる。だが、どうやら、今日のところは彼の視線は妹に釘付けだ。 2人が突然水をかぶったのは塗り終わる頃だった。 「隙ありー!」 犯人は夏海だ。プールの中で子供っぽく笑う。 スクール水着を身に着けた彼女のスイカップに、麻奈の眼が思わず吸い寄せられた。 「これ、一番大きいサイズらしいけどきついんだよね……まあ、仕方がないかな」 視線を受けて呟く夏海。どこがきついかは、一目瞭然であった。 「アレで小学生とか……メイちゃんと殆ど変わらん歳ってのがびっくりや。神秘の一端を垣間見た気がするで……」 麻奈もスタイルは抜群であったが、もしかするとサイズでは負けているかもしれない。 というか、小学生と比べる時点でなにかに負けているような気もする。 「どうしたの? ねえ、遊ぼうよ」 「……そうやね。お兄ちゃんも、一緒に遊んであげよ」 「うん、麻奈ちゃんと一緒なら喜んで!」 仁太やシャークも巻き込んで、楽しげに3人は遊び始めた。 ジースは1人、プールに浮かんで空を仰ぎ見た。 耳に入ってくるのは少女たちの声。それが、まるで想い人の声のように聞こえる。 「杏里の水着、見たいな……いや、浴衣も捨てがたいよな……」 黒髪が綺麗な彼女を思い浮かべる。水着も浴衣も絶対にかわいいだろう。 疲れた様子の夏海が彼の前を横切って、プールサイドにしいたバスタオルに寝転ぶ。 「夏には海に遊びに行くのもいいかなぁ……」 持って来た飲み物で喉を潤しながら、少女が呟く。 「海か……。一緒に、プールか海に行ければ……でも、忙しいか?」 「さっきから、なにを呟いてるの?」 プールサイドから夏海がジースの顔を覗き込んでくる。 「はっ! ……な、何でもねぇ!」 恥ずかしげに、彼はプールに頭を静めた。 着替えずにプールサイドにいたリリは、シャークに話しかけられる。 「お主は泳がんのか?」 「そうですね……思案中です」 「たまには息抜きもよかろう。お主の神も、七日目には休んだのではなかったかな」 「……それもそうですね」 シャークの言葉に、リリは綺麗な微笑を浮かべた。 やがて、日が傾き始める。 プールでしっかりリフレッシュしたリベリスタたちが引き上げていく。 「手、繋いで帰ろうよ」 兄が妹に差し出した手。 少しの逡巡と、それから握られる柔らかな手。 「仲良きことは美しきかな、というところじゃな」 スポーツドリンクで水分補給しながら、シャークは2人を見送った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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