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<裏野部>Nasty Egoist


「なあ、書類とっくに書き終わってだけどさぁ、まだ終わんねえの? ……ああ? んなもん放っとけ。さっさとしろよ」
 部屋の中で一人、男は面倒くさそうに悪態を吐く。肩と頭に挟まれた携帯電話から言葉はほとんど聞き取れないが、その向こうで釈明がなされているのが、男の表情からうかがい知れた。
「あれから結構経ってんだぜ、目処位立ったっていいんじゃねえか? お前そこまで無能じゃねえだろ。……明日? プラス三日? アホらし。言えねえ程の理由かよそれ。物がぶっ壊れてるとかなら話はわかるが無傷なんだろう?」
 義紀はイライラしたように、タバコを灰皿に押しつけて潰す。
「……ああ、はいはい。まああそこ不定期営業だから仕方ねえか。でも状況くらい言えよ。イラつくだろうが。
 まあ、んなこたどうだっていいんだ。聞きてえのは物についてだ。本当に用意できたんだろうな? 無賃でこんなことやらせたんなら落とすかんな」
 新たなタバコを加え、義紀は火をつける。白煙を吐いてから、ニヤリと笑って楽しそうに言う。
「いいねぇ、いいねぇ。上出来だ。じゃあ四日後、前と同じ場所、同じやり方な。……早い? こんだけ待たせたんだ。むしろ良すぎる条件だと思わないか?
 しゃあねえな。五日だ。それまでに何とかしろ。そっちはどうせ部下よこすんだろ? 何人だ? ……そうか、じゃあ全員こっちに来させろ。そっから俺が指示すっから。ああ、じゃあな。楽しかったぜ」
 そう言って義紀は通話を切る。眼下の駐車場に難なく出入りする車が平和を示している。煙を吹かしながら、彼は不機嫌そうに外を見ていた。


「フィクサードの取引を差し押さえて欲しいのです」
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はそう告げる。予知の映像に映るフィクサードを、和泉は菅沼義紀と呼称した。裏野部の所属であるらしい。彼と裏野部、あるいは別の組織のフィクサードが、取引を行うことになっているのだと言う。
 かたやとある実験の資料。義紀がその組織に頼まれて行ったアーティファクトの実験における結果と分析をまとめた資料であるという。これはその組織にとっては幾ばくかの利益になるに違いない。
 かたや何らかのアーティファクト。義紀が実験の見返りにその組織に対して要求したものであるらしい。それが何であるかは定かではないが、菅沼義紀という男が裏野部の所属であるということを顧みれば、人畜無害な代物であることを望むべくもない。
「彼らの落ち合う場所は某マンションの三階。菅沼義紀が現在根城としている場所です。そこそこの広さはありますが、さすがに大人数が入ると少し窮屈な感は否めません。フィクサードは車に乗ってやってきた後、菅沼義紀と合流し、それからまた車でどこかへ。駐車場は結構広いですね。また彼らを追って取引場所まで行くという手もありますが、彼らとて簡単にしっぽは出さないでしょうね。
 ともかく、フィクサードの利益になることは潰してしまいましょう。後にどんなことが起こるか、分かったものじゃありませんから」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:天夜 薄  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年07月22日(日)23:07
 天夜薄です。

●依頼達成条件
・フィクサードの取引を阻止する

●フィクサード
菅沼 義紀
 裏野部所属のフィクサード。ジョブはナイトクリーク。種族・スキル詳細は不明。

フィクサード×5
 所属不明のフィクサード。ジョブはマグメイガス・ホーリーメイガス・デュランダル・ソードミラージュ・インヤンマスターを確認。

●状況
 フィクサード五名は車に乗って現れます。それから菅沼義紀の根城とするマンションの一室に訪れます。菅沼義紀とフィクサードはそこで落ち合った後駐車場に行き、車に乗ってどこかへ去っていくでしょう。
 なお、それ以前のフィクサードの所在・行動はわからないので、アプローチをかけることは難しいです。

 では、よろしくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
大御堂 彩花(BNE000609)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
ソードミラージュ
ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
デュランダル
ノエル・ファイニング(BNE003301)
インヤンマスター
風宮 紫月(BNE003411)
ダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)
覇界闘士
ヘキサ・ティリテス(BNE003891)


 閑静な住宅街に立つマンションがある。その三階に菅沼義紀は住居を構えていた。とは言ってもそれは一時的なものであり、裏野部の所有していた事務所の一つを貸し与えられているに過ぎない。
 ただ、主流七派が一つ、裏野部のフィクサードが、こうして堂々とマンションの一室を構えて済んでいるという事実に、『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)はゾッとしない話だと感じている。淡々と流れて行く平和の一部が、どうしようもない黒で染められている光景は、何とも目に痛い。
 何れにせよ裏野部、それが欲しがる破界器がろくでもないものだというのは確かな事だ。義紀と取引する組織の素性や、彼らの行った事件の内容も気になる所。
 その取引、ご破算にさせていただきます。思いつつ、リセリアは鋭い目で周囲を観察する。
 ただ、裏野部と関わりのある以上、ろくでもない研究の結果なのだろうと風見 七花(BNE003013)は考える。ろくでもない研究は、後にろくでもない未来を生じさせ得るものだ。未来に起こるかもしれない事件を阻止するために、フィクサードの取引を成功させるわけにはいかないだろう。
「どうせ碌でもない取引なのでしょうが」
 七花の思いに乗っかるように、『鉄拳令嬢』大御堂 彩花(BNE000609)は言う。ろくでもないにろくでもないが積み重なって、きっとろくでもない未来を生み出そうとしているのだろうけど、彼女は彼らの仕事熱心な姿勢に感心しない事も無かった。無意味な理念に情熱を捧げるその行為は、一転すれば賞賛にも値することになるだろう。
 けれどもそれとこれとは話は別。
「折角の仕事の成果ですがここで潰させて頂きますね。
 フィクサードのお仕事の邪魔をするのが私達の仕事なので」
 そういえば以前、裏野部の手の者らしき人物が遠くから監視しているような事案があったという報告書を見た記憶が、『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)にはあった。確かその報告書にも、『義紀』という名前が欠片程あったようにも思える。確たる関連性があるとは限らないが、今目の前で起きようとしているフィクサードの企みは、確たる事実だ。ならば潰すまでとノエルは意気込む。
「裏野部……ですか」
 『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)が思わず漏らした呟き。その思う所は、先日邂逅した裏野部の首領、裏野部一二三。最も過激、最も危険と称される勢力の長。その下につく者、となれば、一体何を考えているのか、少なからず分かるというものだ。
 ただ今後の事は二の次だ。
「詳細は後、今は……此方の目的を先ず果たしましょう」


 一台の車が平穏の中、駐車場へと入ってくる。真っ黒なボディのセダンで、フロント以外の全ての窓をスモークガラスで覆っている。中の人物はカジュアルな格好をしてごまかしてはいるが、五人の大人が緊張した面持ちで車内に並んでいる姿は、チラと見ただけで不穏な空気を感じ取れる程に奇妙であった。
 ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)はその傍らで、影の中にジッと身を潜めている。彼女に近付いて来るフィクサードはもちろんの事、こちらに目を向けている義紀に気付かれる事があってはならない。まず予知の情報通り、彼らが揃って駐車場に姿を現す事。そうでなければ、待ち伏せの意味は薄れてしまう。
 車はゆっくりと駐車場の一角に停車し、やがて五人は太陽の下に姿を晒した。内一人は銀色のアタッシュケースを所持している。五人はやはり警戒しているのだろう、周囲に何度も気を配っている。やがて十分な確認を行うと、彼らは義紀の居るマンションへと歩を進めた。五人全員が立ち去ったため、彼らの車には見張りはついていない。
 なーんか、あからさまな悪巧みだなー、と『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)は冷ややかに思う。テレビなどでよくありそうなそれだが、彼は決してこういったストレートな仕事は嫌いではない。敵はどうかではなく、単純に全員蹴っ飛ばせばいいだけなのだから。
 七花はフィクサードに見つからぬように注意しつつ、周囲の物体や地形の把握を行った。監視カメラは周囲に見当たらない。駐車場には車が幾つかある以外にものはなく、地面は平坦であった。駐車場の出入り口は、車で通行可能な場所は一カ所、降車し、マンション近くに出る事の出来る通路がもう一カ所。囲んでしまいさえすれば、フィクサードを逃す事は無くなるだろうと思われた。
 紫月はフィクサードの様子、そしてマンションの中にいる義紀の様子を観察している。フィクサード五名はぞろぞろと義紀の部屋に向かい、義紀はその様子を追っていた。フィクサードに聞こえないようにと、紫月はテレパシーで彼らの挙動を伝達する。
 『骸』黄桜 魅零(BNE003845)が物陰に身を潜め、うずうずとしながら待ち構えている横を、ふとヘキサが通り過ぎた。彼はフィクサードの乗ってきた車に慎重に近付くと、鋭い蹴撃でタイヤを切り裂いた。続いてヘキサは七花の手助けを受けて義紀の車のタイヤを切り裂く。これで義紀を含むフィクサードが、車で強引に駐車場を抜け出す事は、出来なくなった。
 紫月が義紀の表情や行動見る。ヘキサが元の配置に戻るのと同じ頃、彼は不敵に笑っていた。何かを企むように、ニヤリと。もしかしたら取引の成功を確信したのかもしれない。七花は思いつつ、義紀の動きを追う。彼は最初に居た位置から、ゆっくりと訪れたフィクサードの方に寄っていく。上機嫌に話す傍ら、フィクサードの表情は芳しくない。
 フィクサードが義紀と落ち合う最中、リベリスタは各々の配置につく。彩花は駐車場内の影に、リセリアと紫月は駐車場から死角となる位置に、七花、ノエル、魅零、そしてヘキサは、それぞれ適当に物の影に身を隠した。ユーフォリアは車などの作り出した影に身を落とし、不意打ちのときを待った。マンション内部や外への出口など、どこにも逃げられぬように。フィクサードが駐車場に入った瞬間に、包囲できるように。そして確実に、仕留められるように。
 パンクしたタイヤでは逃げる事ももままならないだろう。ならば彼らは走って逃げるしか無い。アーティファクトや資料を潰すためにも、退路を断つのが重要だ。

 フィクサードたちは談笑とも密談とも取れる会話を数刻の間行うと、揃って部屋の外へと歩を向けた。七花はそれを受けて、リベリスタ全員にフィクサードに動きがあった事を伝える。
 しかし、フィクサードの様子は、どこかおかしくもあった。
 義紀がきっちりと部屋の鍵を閉め、ゆったりと余裕を持った歩きをしているのに対し、他のフィクサードはどこか焦っている。目をカッと見開きながら階段を駆け下りていく様子は、何らかの恐怖に突き動かされているように見える。
 フィクサードは階段を下りきると、一目散に駐車場に停めた彼らの車へと向かった。
 一方の義紀は駐車場を一瞥し、フィクサードを鼻で笑うと踵を返し、駐車場とは反対の方向へと、駆け出した。
 これは、まずい。こちらに向かって来るフィクサードに嫌でも意識が行くが、義紀が逃げていく方が問題だ。どうしてだろうか。隠れる場所がマズかったのか。あるいは、とフィクサードの移動方法を潰したり、周囲の確認を行ったときの行動や、本格的な配置についたときの移動がどうだったかを考える。義紀が視認可能な場所で、行動をしたに違いないのだ。義紀は彼の部屋から駐車場を見る事が出来た。それならば、彼が外を見た時、リベリスタのうちの誰かが、行動しているのを見られた可能性は否定できないし、また事実として義紀はこの場から去っているのだから、彼はそれを見たのだろう。
 けれどもフィクサードは七花を含むリベリスタが逃げる義紀に意識を移す間も与えず、駐車場内へと飛び込んで来る。リベリスタは予定通り、襲撃を開始する。
「走って、跳んで、蹴ッ飛ばすッ!!」
 車に向かおうとするフィクサードを遮るように、ヘキサは連続攻撃を繰り出した。続いてリセリアがフィクサードの元へ到達し、鋭く切り込んだ。その後も続々とリベリスタが駐車場に集結し、フィクサードを瞬く間に取り囲んでいった。
「な、なんだ、こりゃあ……?」
 フィクサードの一人が絶句したように口にする。別の男が、持っていたアタッシュケースを守るように、胸に抱えた。
「菅沼が居ないのは癪です……が、貴方たちは絶対に逃がしはしません」
 リセリアは冷静に言う。彩花はしどろもどろになっている彼らを見つつ、隙あらばと一気に間合いを詰める。狙うは彼らが義紀に渡すはずだったという、アーティファクト。
「お仕事ご苦労様。無駄に終わったようで何よりです」
 強烈な一撃を以て男を地面に叩き付ける。その衝撃はしかし、ケースを手放させるには至らない。
 それでも攻撃は次々と飛ぶ。七花は彩花のそれを追うように、雷で彼らを貫通する。魅零は周囲の車を見境無く、暗黒の瘴気をぶつけている。紫月によってフィクサードには氷の雨がまき散らされ、ノエルは強烈な一撃を爆裂させた。
 突如訪れた攻撃の応酬に、フィクサードは意味も分からず、思考も追いつかせられず、ただ一方的に傷を受けるばかりだった。彼らは周囲を見回し、探している目標が存在しないのに気付く。やがて状況が飲み込めたのか、あるいは現状に対し踏ん切りがついたのか、攻撃の色を取り戻していった。
「くそっ、くそぉ! こうなりゃヤケクソだ!」


 男が積極的に前進し、ノエルを素早く二回斬り付ける。ノエルは受け身を取りつつ男から距離を取る一方、男の脇腹をリセリアは鋭く叩いた。男は苦悶の表情を浮かべながら、続いてやってきた七花の雷撃をかわさんと身を傾けた。
 伐の男が、雷を受けながらも七花に向けて、剣を振り上げて突進する。破壊的な一撃を受けた七花が思わず後退し、代わりに魅零が接近する。
「所属不明のフィクサード!!君達の飼い主は誰だかはいてもらうからね!! めったんめったんにやっつけてから聞くから、元気なときには吠えておくといい!!」
 吹き荒れる暗黒の瘴気が、フィクサードを余すところなく飲み込んでいく。
 瘴気の渦を抜けながら、アタッシュケースを持ったフィクサードが彼らの車の方へと近付いていった。
「待ちなさい!」
 彩花が威風を吹かせつつ、そのフィクサードに向けて叫ぶ。男は恐れを抱きつつ、彩花の方をチラと見る。風格漂うその態度から、男には彼女の顔が鬼の形相にも見えていた。
 思わず彩花から目を逸らせなくなった彼に向け、どこからともなく一撃が振り下ろされる。
 男は痛みも忘れ、思わず振り返る。肩には深い傷がついていた。
「油断してると〜倒しちゃいますよ〜?」
「……え?」
 気の抜けた顔をした男は、続いて繰り出されたユーフォリアの二撃目を一切の防御無く受けた。わけも分からないまま男は転がり、蒼白な顔で起き上がった。
 攻撃を受けた男はもちろんの事、他のフィクサードも突然のユーフォリアの登場に、狐につままれた顔をしている。けれども押し寄せて来るリベリスタの攻撃を、現状を無理矢理理解してでもさばかねばならなかった。ただ倒されないために、攻撃を、防御を、続けていた。
 ガラガラと何かが地面を擦れる音がした。彩花が目を向けると、男が持っていたアタッシュケーヅが転がっていた。ユーフォリアの攻撃のために、それは男の手から離れていた。見ると、男はすぐに気付いてそれを回収せんと走り出している。
「させません!」
 彩花は男よりも先にケースとの間合いを詰め、雪崩のごとき衝撃をそれに向け一気に振り下ろした。轟音を響かせた一撃は、中に入っていたアーティファクトもろとも、ケースを粉々に砕いてしまった。破片が飛び散る光景に、フィクサードの顔が尚更蒼白になっていった。
「貴様ら、よくも大事な──!」
「もう、必要ないでしょう?」
 冷静にいいながら放たれた七花の雷撃が戦場を駆ける。言葉は心に、雷は体に、深く突き刺さる。
「君たちの好きにはさせないよ!」
 吹き荒れるは暗黒。徐々に、徐々に、奪われる体力を、福音が僅か程癒す。けれども攻撃の勢いは止まらない。
「くそっ、どこか、どこか」
「こちらとしては、逃がす心算はなく。……最も、そちらはそうではないでしょうが」
 紫月は冷たく言う。彼らとて、十分に理解していた。多勢に無勢、確実な逃げ道は見当たらない。刃を突き立てるには遅かった。
 フィクサードは諦めにも似た笑みを、フッと零した。けれども逃れなければ彼らの未来が無い事もまた、彼らは知っている。


「菅沼はどーしたんだよ、おい」
 イライラした口調で、ヘキサは対峙しているフィクサードに問う。
「知らねーよ」
 悪態を吐きながら、彼はピッと指をヘキサに突き立てる。
「『さっきお前の車を誰かが覗き込んでたぜ、感付かれてんじゃねぇのか』なんて、あいつが言うから何かと思えば、リベリスタとは。ついてねーよなあ!」
 ヘキサの周囲を不吉な影が覆った。彼はそれから逃れようと身を逸らすが、完全に避けるには一歩遅く、僅かに影が彼を傷つけた。
「ついてねーな、お互いに、な!」
 ヘキサの繰り出した連続攻撃が、男を地面へと転がした。同時にヘキサは不穏な気配を感じ、自身の真上を見る。大鎌が彼の首を刈り取らんとその刃を向けていた。
 已の所でそれを認識した彼は咄嗟に体を逸らし、首に浅い傷をつけられるに留まった。リセリアは大鎌を呼び出した男を素早く襲撃し、斬り付ける。
「隙ありです〜」
 よろけた男に素早く寄って、ユーフォリアが追撃する。鋭い強襲が与えるダメージもまた、鋭い。
 彩花が鋭い蹴撃で男を蹴散らし、また雷撃と暗黒が駐車場を席巻した。やがてそれが消えてなくなった頃、ノエルがオーラをConvictioに込め、男に向け思い切り振り下ろした。連撃が男の体を刻み、その力を、意志を、削り取っていった。
 彼がその身を地に伏した時、雌雄は決した。

「おいコラ、さっさと吐きやがれ! ……もう一発蹴飛ばされてーか?」
 ヘキサがフィクサードの顔を弄りながら問うのは、主に義紀がどこに行ったのかという事だ。だが確実な返答は帰ってこない。彼らは皆、『囮にされた』のだと口を揃えて言う。
 恐らくは義紀は自分たちをリベリスタの居る駐車場へと送り込み、その隙に彼は行方を眩ましたのだとフィクサードは言う。彼が果たして、駐車場にいるのがリベリスタだと完全に分かっていたかは定かではない。しかし何か不穏な気配や状況を感じ取ったのだったら、リベリスタの何らかの動きを発見したのなら、彼がその行動をとることはなんら不思議な事ではない。そしてそれは恐らく正しいに違いない。
 もちろんそれはフィクサードに勘ぐられぬよう、取引を中止とした上で、だ。それでも義紀の話した資料はまだ彼の手元にあるはずだ。
 ノエルは先ほど義紀の部屋を調べようとしたが、残念ながら鍵がかかっていた。開ける手段も無いため、捜索は無理そうだ。
「それで、君たちの所属はどこですか!!」
 魅零が率先して尋問を行っている。義紀が逃げてしまった以上、彼に関わる情報源から、手がかりを得る他ない。
「……黄泉ヶ辻、だ。ボスとあの男、義紀と言ったか、そいつが昔馴染みらしくてね」
 それで実験を依頼したのだと、男は言う。ただ取引するはずだったアーティファクトは、それとは全く関係のないものであるそうだ。
「アーティファクト、何に使おうとしてたのか、いってください!!」
 魅零はフィクサードに、アーティファクトの用途を問う。しかし返ってきたのはただ一言、知らん、という言葉。
「だって中身なんて聞かされてないし」
 でも、と他のフィクサードが口にする。
「……人を、殺さずに殺すもの、と言ってたような気がするな。壊れちまった今となっては、それが何なのか確認しようがねーけど、さ」
「所詮は末端のフィクサードって所か」
 ノエルは誰にも聞こえないように呟く。その言葉の端には微かな苦みが交じっていた。


■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
 感付かれない、という部分が少々甘かったです。
 どういう行動をどういったタイミングでするのがマズいのか、ということは、全員が共通認識としてもっておくべきだったと思います。
 ただきちんと成功すればよい作戦ではあったでしょうね。
 ともかくお疲れさまでした。
 次の機会があればよろしくお願いします。