●方程式の構築 「……やっぱりダメですかね?」 「ダメだな。瞬間的、短期間の効果なら確かに強力な効果を発揮できるかも知れねえが、単純な温度の問題じゃねえからな」 「やっぱり素体みたいな物があれば、って事でしょうか?」 「ああ、抗体だけじゃねえ。反発する力も利用して障壁を破る力に変化させることも出来る筈だ」 「……分かりました。じゃあ、早速」 「……お前は決めたらテコでも動かねえからな……まあ爆発慣れしてる分、危機回避能力みたいなのは多少あるか」 「ひ、酷いですよっ!? 別に私だって好きで爆発させてる訳じゃ」 「好きでやってたら、とっくにクビだ。まあ……気を付けていって来い」 「はい、がんばります……あんまり御迷惑かけないように」 ●エリューション退治と素材採取 「今回の依頼はE・エレメントの退治になります」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って端末を操作する。 すぐにディスプレイに、宙に浮いた炎のような存在が表示された。 「炎のエリューション・エレメント。以前、ファイア・エレメントと呼称した存在です」 出現した場所も、以前E・エレメントたちが出現した場所と同じのようだ。 以前の依頼で相対した方もいると思いますが……フォーチュナの少女はそう前置きしてから、説明を開始した。 フェーズは1。特殊な能力は持つが、決して強力な個体ではない。 「攻撃は、近接範囲の対象に炎を燃え移らせるというもののみになります」 直接的なダメージを与えてはこないが炎に対する耐性を持っていない者は、高い確率で火炎の効果を受けてしまうようである。 動きもそれなりに機敏。 耐久力はないが、炎の塊という形状のせいか物理攻撃はやや効き難いようだ。 「あと、ダメージを受けて倒されそうになると自爆し、周囲にダメージを与えてきます」 受けたダメージで破壊力が変化したり等はなく、攻撃力は一定。 攻撃範囲はく炎を燃え移らせる近接攻撃と同じで、こちらもやはり火炎の効果がある。 「以前の戦いでは、自爆で巻き込まれた他の火の玉が自爆して……みたいな事もありました」 ですが、今回は数の方も少ないですし、前のようにフェーズ2も存在しません。 「敵は、ファイア・エレメント5体のみとなります」 ただ、今回は撃破以外にもお願いがあります。 マルガレーテはそう言って、待機していた少女に声を掛けた。 「ヤミィと申します。リベリスタの皆さんには、いつもお世話になっております」 少女はそう言って頭を下げる。 「実は今回のエリューションの……残骸みたいなものの回収する為の協力を、皆さんにお願いしたいんです」 表現が難しいという感じでマルガレーテが困った顔をし、ヤミィと名乗った少女が頷いて皆を見回した。 「このエリューションは気体みたいな存在で、倒せば消滅してしまいます」 ただ、倒したとたんに完全に消滅するという訳ではない。 短時間、数秒程度でしかないが、周囲の空気を燃やすように炎を残す。 「それを回収する協力をお願いしたいんです」 回収する為の道具は準備してありますと少女は説明した。 そう、回収だけならば彼女はできる。だが……倒すことができないのだ。 「そこで……お手数掛けますが、倒すのを皆さんにお願いしたいんです」 ある程度近くで倒して頂ければ、消滅する前に私がそのE・エレメントの残滓みたいなものを回収しますので。 そう説明するヤミィの言葉に、マルガレーテが付け加えた。 「ヤミィさんの方、最低限戦闘訓練とかは受けてますが……その、皆さんと比べると……」 「あ、マルコちゃん。気遣わなくて大丈夫ですよ? すごく弱い、一撃で倒れるって言ってくれて」 フォーチュナの気遣いに苦笑すると、ヤミィは真面目な顔をしてリベリスタたちを見回した。 「戦闘に関しては皆さんの足元にも及びません。ですので宜しければ……色々御指導頂ければと思います」 戦闘には加わらずとも、敵撃破時、もしくは自爆時にある程度近くに居てもらうとなると……確かに考えるべきだろう。 近距離でE・エレメントが自爆するような事になれば、直撃を受けたら……おそらく彼女は耐え切れない。 「度々のE・エレメントの出現は、この近くに封印されているアザーバイドが原因ではないかと推測されています」 以前封印が緩んだ際にアークのリベリスタたちが力を削ぎ封印し直したアザーバイドの力がこちら側へと漏れ出し、E・エレメントを誕生、あるいは呼び寄せている可能性があると少女は説明した。 本来なら封印は、傷付いたアザーバイドを完全に封じ込めることができる筈だったのである。 「……崩界か?」「はい」 一人の問いかけに、少女は静かに頷いてみせた。 しっかりとした理論的として証明されている訳ではないが、崩界によって封印の力が弱まっていると考えるのが妥当だろう。 「ですので……そのアザーバイドが、再び出現する可能性があるんです」 しかも前回よりも封印の弱まった状態で。 その前に、出来る限りの調査や研究を行いたいんですと少女は説明を締めくくった。 「色々と御面倒おかけしますが……どうか、よろしくお願いします」 ヤミィはそう言ってもう一度、集まったリベリスタたちに頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月05日(日)22:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●残滓回収に向けて 「以前封印したアザーバイドが復活するかも知れない……その対策を整える為の大事な仕事、怠り無く臨みたいです」 呟いてから源 カイ(BNE000446)はヤミィへと視線を向けた。 色々頑張っているようすの彼女に、少しでも協力できれば。 「今回は頼もしい方ばかり揃ってます、油断は禁物でも気負わずにいきましょうね」 「……ありがとうございます、カイさん。今回はよろしくお願いします」 緊張した様子の少女は、そういって青年に頭を下げる。 「以前ステキなものを作ってくれたヤミィさんの頼みとあらば、全力を尽くさずにはいられませんよね」 『極北からの識者』チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)は笑顔でヤミィに声をかけた。 「どんな事だろうと、私達がどーんと解決しちゃいますよー!」 「あ、チャイカさんはこないだの実験ではありがとうございました」 ヤミィも笑顔でお礼を言い、お願いしますと頭を下げる。 挨拶する少女を眺めながら『小さな侵食者』リル・リトル・リトル(BNE001146)は呟いた。 「炎集めッスか」 (リルは殺すか倒すしか能がないっすから、新鮮ッスね) そんな想いを抱きつつ、リルはヤミィに話しかけた。 「緊張してるみたいッスけど、迷惑掛けると思うんなら、存分に迷惑掛けてほしいッスね。望む所ッス」 「……え、あ、その……」 「リルには、難しいこと分かんないッスけど、それが大事なことだってのは分かるッスから、リルたちをもっと頼って欲しいッスよ」 「…………リルさん、ありがとうございます」 それじゃ、遠慮なく頼りにさせてもらっちゃいますねと何かちょっと目元をこすりながら、ヤミィは丁寧に礼を言う。 「エリューションの残滓の回収ね」 『chalybs』神城・涼(BNE001343)は、そんな少女に視線を向けつつ呟いた。 (ま、アレじゃん? イケメンの神城としてはさ。ほら、おにゃのこの役に立てるならたとえ火の中水の中。せやろ?) 「と言う訳で、ま、頑張って行こうか」 ファイアエレメントの撃破……? 「ま、難しいかもしれないけどもカッコいい所を見せれるように、いっちょ頑張っていくかあ」 ヤミィには聞こえないように口にして、涼は自身の刃を確認した。 ●緊張と、リラックスと 「考えてみると結構難しそうだよね? 固体じゃないのは倒せばすぐに消えちゃうもん」 四条・理央(BNE000319)の言葉に頷いてから、『クロスイージスに似た何か』内薙・智夫(BNE001581)は身震いした。 「回収作業、頑張らないと」 そう口にした彼の頭の中では、来る前に確認したレポートの内容が繰り返されている。 (アークが封印しなおしたっていうと……炎帝竜っていう奴かなぁ?) 今回は別にそのアザーバイドと戦う訳では無いけれど……正直、想像するだけで震えが起こり冷たい汗が滲んでしまう。 いけないいけないと自分に言い聞かせて、少年は何とか頭を切り換えた。 一方で本来の暑さで汗だくになるのを我慢して、『神斬りゼノサイド』神楽坂・斬乃(BNE000072)は厚着をした状態で今回の任務に望んでいる。 「服を燃やされたら大変だからね……」 大丈夫とは思うが、備えというものである。 暑くてちょっとぐったりしているのは事実だが、ヤミィちゃんの回収任務の手伝いがんばっちゃおーという気持ちは本物だ。 (フレイム・タイラントの封印が弱まっているのね) かつて戦い封印し直したアザーバイドの事を思い出しながら、『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)は淡々と呟いた。 「再びこの世界に害を為すと言うのなら倒すだけよ」 それから思い出すように彼女はヤミィへと声をかけた。 「ところで、ヤミィは残滓で何を作ろうとしているの?」 「ええと、まだ研究中なのですが、一応……」 「貴女の噂は聞いているから爆弾だとは思うけれど」 「!? あ、いえ、何と言いますか……確かに私は恒常系じゃなくて瞬間、短時間効果を発揮する特性と相性が良いような気もしますけど、別にそう……」 「爆発癖も聞いているから素材は多い方が良いわね」 「ち、違うんですってばっ!?」 そんな会話をしながらさり気なく緊張を解しつつ、皆と作戦を確認して。 8人は、E・エレメントが出現した場所の付近へと到着した。 ●任務の開始 「緊張したら、深呼吸して人って字飲むといいみたいッスよ」 E・エレメントの姿を確認して再び緊張し始めたヤミィにむかって、リルはそう助言した。 「あ、ありがとうございます」 ヤミィはお礼を言って深呼吸した後、人という字を書いて~を何度か繰り返し。 「そ、それでは皆さん、宜しくお願いします」 「ふふっ、大丈夫だからもう少し肩の力を抜きなさい」 氷璃は苦笑しつつ話しかけた。 「適度な緊張は必要だけれど緊張し過ぎは良くないわ」 「そ、そうですよね。がんばって肩の力を抜かないと……」 その発想が既にリラックスから程遠い。 「貴女は実験中もそんな風に緊張しているのかしら? そうだとすれば爆発させてしまう原因もそれでしょうね」 「……うぅ……そ、そうかも知れないです。もしかしたら……」 「大丈夫よ。ダメな時は万華鏡が感知してくれるから」 ヤミィは何かが胸に突き刺さった様な表情をしたものの、固さのようなものも表情から減少したように見えた。 「大丈夫、5つ総てを回収するつもりよ」 1つや2つでは爆発させて終わりそうだから。 虐めているかと問われれば否定はしないが、氷璃としては励ましている心算である。 「みんながサポートしてくれてるから大丈夫、上手くいくよ」 智夫はそう言って微笑みかけてから、皆へと翼の加護を使用した。 リベリスタたちは慎重にエリューションへと距離を詰める。 8人を確認したファイアエレメントたちも、ゆらゆらと揺れながら彼ら彼女らに向かって近付き始めた。 両者の間は一気に詰まり、攻撃の届く距離へと入ったところで、チャイカが真っ先に動く。 幾つかの判断基準の中でこの場合に当て嵌まるのは、一番ヤミィに近い敵である。 「エレメントさんこちら、手の鳴る方へー♪」 彼女が放った気の糸がE・エレメントを直撃し、それを確認しながら斬乃は別の1体に狙いを定めた。 (さーてと、やり過ぎない程度に加減しながら……) 「炎の固まりだけあって、確かに物理は通じにくそうだねー」 チェーンソーを頭の上でブンブン回転させながら、E・エレメントへと距離を詰める。 もっとも、今のところは本気で攻めるつもりはなかった。 自分の今の役目はあくまで足止めである。 氷璃も別の1体の前へと立ち塞がりつつ複数の魔方陣を展開し、自身の魔力を爆発的に高めていく。 一方で遊撃を引き受けるリルは、チャイカの攻撃した火球の様子を見つつ、まずは待機して様子を窺った。 涼の方はというと、自身のギアを切り換えて全身を速度、反応速度に最適化した状態へと変化させる。 「火の粉が掛からない様、頑張って壁になりますね」 「お世話になります。お気を付けて」 ヤミィと言葉を交わすとカイはエレメントの1体と対峙するように前進し、自身を援護させる為、意志持つ影を創成した。 智夫はヤミィに合わせる為に様子を窺い……続いて、火の玉たちが動きだす。 斬乃、氷璃、カイと対峙した3体はその体から炎を噴射し、3人を炎で包みこんだ。 カイは変幻自在な影の動きを利用して直撃を避け、炎を凌ぐ。 斬乃は炎に身を包まれたものの、能力によってその力を防いでいた。 激しく燃える炎は空気を焦がしはしても、彼女自身を焼く事はできない。 もっとも、このエリューションにはそういった状況を判断する能力はないようだ。 残った2体のうちの1体は、揺れながらチャイカへと近付いてくる。 もう1体はカイへと近付くと、同じように炎を噴射した。 こちらはかわし切れずに直撃を受け、カイも炎に身を包まれる。 だが、それに続いて動いた理央が、その1体の周囲に幾重もの呪印を展開し、それによってエリューションの動きを束縛した。 4人のリベリスタが、4体のエリューションと対峙する。 それを確認しながら、待機していたリルが動いた。 「自由に移動はさせないッスよ」 逃げ道をふさぐように位置を取ると、凍てつく冷気を拳に、凶爪に宿らせる。 踊るような動きから繰り出された一撃がエリューションを捉え、その表面を氷結させた。 智夫はヤミィを庇いやすいようにと、彼女のやや前方に位置を取る。 彼女は緊張した面持ちで、じりじりと……リルと対峙している一体へと近付き、目見当で10mくらいの位置を取った。 リルの攻撃した火球はそのまま氷を解かせなかったものの、理央の呪縛を受けていた一体は動きを取り戻し、チャイカによって誘導されていた一体も辺りを確認するように揺れ動く。 それを許さず更に、チャイカは気の糸で追撃を仕掛けた。 ●回収の為に 直撃した気の糸が、更にエレメントを挑発する。 「はーい、一本釣り成功ですよー! 狙い撃ちにしちゃってくださーい」 攻撃しつつ呼び掛け、彼女は敵の状態を仲間たちへと伝達した。 「通らせはしないよ……先にあたしを焼き尽くしてもらおーかっ!」 斬乃も挑発するように口にしながら、チェーンソーを振り回しエリューションを牽制する。 攻撃は控えめにして、敵の動きを捉え損ねないように。進路妨害を、最優先。 他の敵に関しては仲間たちを信じて。 陣形を維持し、自分は目の前の敵に専念する。 一方で氷璃は高めた魔力を基に呪いの力を帯びた氷の矢を創り出した。 直撃を受けたエリューションは更に凍結し、呪いによって抵抗力を奪われていく。 続くようにリルも更に速度を上げ質量を持つ分身を作りだし、先程と同じエリューションに向かって全方位からの同時攻撃を仕掛けた。 的確に弱点を突かれ多重攻撃によって圧倒されたE・エレメントに向かって、更に涼が黒耀ノ翼を振りかぶる。 大きく揺らぎ防御力を弱めた炎の塊へと、澱みなき連続攻撃が次々と叩き込まれた。 続いたカイの精密射撃が決定打となった。 攻撃を受けた炎の塊は、弾けるようにばらばらと、空気を燃やしながら飛び散っていく。 それらを気にせずに他の4体が動き、続いた理央は神の光によって、味方を焼こうとする炎を打ち消して。 リルの声とほぼ同時に、ヤミィは飛び出した。 彼女を庇うように智夫も続く。 「もうちょっと気楽に構えてもいいッスよ。アンタを守ってるのは、あのナイチンゲールッスし」 すれ違う彼女を応援するように、リルは小さく声をかけて。 「大丈夫、貴女なら出来るわ」 氷璃の言葉は、少女の耳に、心に、届いたか。 古めかしい瓶詰めに使うような口の大きな瓶で、すくい取るように。 ヤミィは飛び散る炎を瓶の中に収めるとコルク栓に似た蓋を閉め、縁を密閉するように何かを塗り込んだ。 保存するという力が籠められた品なのだろう。様子からみると、どうやら成功したようだ。 少女が安堵するように息をもらしたのを見て胸を撫で下ろした智夫は、一旦後方に戻ろうとヤミィに声をかけた。 ●それぞれの役割 8人は5体全ての残滓回収を目標としていた。 そして、それを実際に果たせるように作戦を実行していたのである。 一体ずつを誘き寄せ他を足止めするという作戦は単純ではあるものの、だからこそ全員の理解が容易だった。 複雑な作戦であればあるほど全員の理解が難しくなり、齟齬も発生し易くなる。 だからといって単純ならば実現が容易という訳でもない。 挑発、足止め、回復、敵の状態確認や動きを封じる能力……それらが連携によって上手く組み合わさった結果だった。 チャイカは瞬間記憶を利用して敵の状態を把握しつつ、常に敵のうち一体が自分を狙ってくれるように心がけて攻撃を繰り返していた。 エリューションはチャイカの攻撃による挑発からはほぼ確実に回復していたが、行動前の挑発はそれだけで充分な効果を発揮していた。 相手が自爆しそうになった場合に注意していたものの、幸い味方によってその可能性は大きく減じている。 リルと涼による攻撃の結果だった。 ふたりは各々それぞれの攻撃によって、E・エレメントの行動を封じ込めていたのである。 どちらかの攻撃が直撃すれば、エリューションは動くことが……つまりは自爆する事もできなかったのだ。 2人の攻撃がどちらも直撃せず、しかもエレメントが自爆する程度に傷付くという可能性は極めて低かった。 勿論それは、他のエレメントを確りと足止めした者たち、足止めしつつ可能な範囲で攻撃を行った者たちの存在あってこそである。 斬乃はいざという時、敵が自爆した際は庇えるようにと意識しながらエリューションを足止めし続けた。 皆の慎重な行動によってその可能性は大きく減じていたが、彼女は油断なく戦い続ける。 火球の炎を無効化する能力を使用している彼女は、自身の再生能力を使用する事無く、E・エレメントの牽制に成功していた。 氷璃も攻撃の合間にエネミースキャンの能力を活用してエリューションの状態を確認する事で、敵へのダメージコントロールに一役買っていた。 カイは特にダメージを与えた事による自爆に警戒しながら攻撃を加えていく。 対象は自爆する事で他のエレメントの自爆を誘発する可能性がない位置にいるエリューションのみ。 不用意な攻撃は、決して行わないように……彼は慎重に、敵の状況を確認しながら攻撃を行っていく。 理央は様々な状態を想定し、それらへの対処という任務を自身に課していた。 足止めや敵への牽制攻撃。援護や回復、異常治療等、様々なスキルの使用。 攻撃に関しては、他の行動の必要がない場合に限る。 (初級とは言え、使い慣れてないマグメのスキルは連発しない方が望ましいしね) 出来得る限り皆が、それぞれの能力を活かせるように。 敵の数が減少すれば、氷璃やカイが早めに攻撃に専念できるように自身はE・エレメントの足止めに専念して。 一人で足りそうになったら、火炎無効化能力を持つ斬乃に任せてヤミィの護衛をする智夫に協力するようにやや後退する。 智夫はヤミィを庇いつつ、回復不要時は十字の光によってエリューションへの攻撃も行っていた。 実際、回復が必要とされる状況は殆んど訪れなかったのである。 後は無事に回収を成功させる、それだけだった。 ●任務完了 「全くこんな暑い時期に……! 本気でいくぞー!」 4体目のE・エレメントの撃破と残滓回収が終わったのを確認すると、今までの鬱憤を晴らすように斬乃はチェーンソーを振りかぶった。 全身の闘気を爆発させ武器へと注ぎ込み、爆裂する一撃を叩き込む。 呪氷矢を放った氷璃に続くように、リルや涼も攻撃を仕掛けた。 能力の使用による消耗は大きかったが、チャイカの配慮によって2人の力はある程度まで回復されている。 漆黒の、鍔のない片刃の長剣を高速で振るい、途切れる事のない連続攻撃で涼はエリューションを追い詰めた。 物理的な攻撃は炎の塊に対してやや手応えが悪かったが、それを補うだけの攻撃力を彼の斬撃はもっていたのである。 耐え切れず、E・エレメントは千々に舞い散るように様に切り裂かれ……それに向かって距離を詰めるヤミィに、リルは今までと同じように声に出して情報を伝えた。 自身の能力を活用して、エレメントの消滅から炎が消えるまでの時間、タイミング等を、つぶさに観察した情報を……できるだけ端的に、分かり易く。 少女は微かに頷くような仕草をしながら瓶を構え、緊張した表情で腕を振るい、すばやく栓を締め縁を密閉する。 一瞬周囲を沈黙が支配し、ヤミィがこぼした安堵の息に応じるように……皆が肩の力を抜いた。 「ありがとうございます、本当に」 みなさんのお陰です。 念の為にと周囲の安全を確認する皆へと、少女はお礼を、感謝の言葉を述べ、頭を下げる。 それに笑顔で応え、あるいは労いの言葉をかけて。 「暑い相手だったけど、まだまだあたしを焼くには熱さが足りなかったねっ」 (こいつらの根源のアザーバイドなら、もっと熱く燃える戦いになるのかな……) 「その時を思うと血が滾るよっ」 斬乃の言葉に応じるかのように、少女はぎゅっと拳を握りしめた。 「ここからは、私のお仕事です。これだけ皆さんに協力して頂けたんですし」 必ず成果を、と意気込む少女へとカイは応援をおくり、氷璃も言葉をかける。 ひとつの決着は、次の始まりを予感させていた。 それでも……今回の結果が、未来への力となる事は確かだろう。 ひとつの任務を終えたリベリスタたちは、こうして帰途へと着いた。 次なる任務へと、赴くために。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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