● 多くのリベリスタが尽力して作り上げたのは、ひとつの水路。 青い、清き水が流れるそこに、『クロスイージスに似た何か』内薙・智夫(BNE001581)は警戒がてら水浴びに来ていた。 両手で触れば、冷たく、気持ちよく。 口に含めば、喉を潤す優しい触感。 「冷たくて気持ちいい~!!」 今日はとっても良い天気。その下で水浴びができるとは、なんだか警戒を通り越して、休暇を満喫しているようだ。 素足を水路の中に入れながら、水飛沫をあげて楽しんでいた。 だが、どうしたことか。 「あ、れ? なんか水が……」 みるみるうちに水路を流れていた水が減っていく。ついでに何かしら粘ついたアメーバ状の何かまで流れてきた。 これは異変だ、大変だ。 即座に水浴びを切上げ、智夫は走り出した。 ● 「どろどろ、ぬるぬるの生物がおりまして。私達も時折悩まされています」 そう話すのはフュリエの族長、シェルン。手を顎に当てながら悩むその姿は深刻そうだ。 とはいえ、せっかくの水路で水が流れない、更には汚物が混ざるのは少々頂けない話。 折角の水洗トイレがどろどろぬるぬるでつまってしまったり、飲み水が飲めないなんて笑えない冗談だ。 「おそらく、水路を塞いでいるのはスライムという生物で……」 「スライム?」 「はい、スライムです」 「……スライム?」 「はい、スライムです。知っているのですか?」 想像がつきやすい。それが生物だというのだから、流石ラ・ル・カーナ! 「とはいえなかなか動いてくれないですし、増殖したりしますので、少々厄介かもしれません。 けれどとても温厚な性格をしています。 なんとかして頂けると嬉しいです、よろしくお願いしますね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月11日(水)22:07 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ねばねばしたやわらかいなにか 折角作った水路なのに、まさか変なものが住み着くだなんて。その処理のための広場を探す、リベリスタ達。 とは言え、此処は見知らぬ土地ならぬ、見知らぬ世界。 手当たり次第に探すが、途中でおかしな生物や、摩訶不思議な植物が生えているのに出くわす。 ましてや、バイデンなんかに出くわしたらいけないと、行ってはいけない場所の線引きはシェルンから教わった。 それを最低限守りながらも、草木を掻き分けやっと見つけたのが、水路から少しばかり離れた草道であった。 「うん、ここで大丈夫かな」 「はい、問題無いとは思います」 『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)と、その横に『もそもそ』荒苦那・まお(BNE003202)だ。 AFを起動。その場所を仲間へとまおは伝える。 『はーい、了解しましたのです。ではそろそろいきましょうか』 と、AFの通信の先で『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)の元気な声が聞こえた。ただし、では~からは声が若干震えていた気がしなくもない。 『はいはーい! 僕場所知ってるから任せてね!』 また違う声が聞こえる。『クロスイージスに似た何か』内薙・智夫(BNE001581)は水路の原因を見つけた張本人だ。 水浴びにいったら異変だなんて、どこで何が起きてもおかしくないこの世界では普通の事。 『いやーまさかあんなの見つけるなんてね! 僕一人じゃどうにもできないけど、皆来てくれて助かったよ!』 『水路が使えないのは死活問題だ。さっさと終わらせるぞ』 『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)の声も聞こえた。 水は何処の世界においても、おそらくライフラインなのだろう。仕方ないが、この一大事は放っておけないと駆けつけた櫻霞。 再び通信の奥から櫻子の声が聞こえた。先ほどよりもはっきりと震えて。 『ででででも、絡みつかれて凄いことになったりしませんでしょうか……!?』 『大丈夫、大丈夫、なんとかなるって!』 「智夫さん、それフラグです」 『うっそー!? そんなことないよ!!』 「それもフラグです」 ところで、異世界なのにAFの通信ができていることには突っ込んではいけない。 「青い空! 煌めく水! そしてぬめるスライム! 寿々貴さんはただいま、異世界なーうっ!!」 『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)は……っていうか満喫している!!? ゆるい彼女はとことんゆるい。放っておいたら恐らくデジカメとか取り出して、スライムを激写するに違いない。 という訳で全員集合。 (温厚な性格……なのにそれを一方的に攻撃なんて気が引けるわね。 ……でも、油断すればこっちが狩られるかもしれない世界なのよ。その緊張感が私を大きく成長させるはず。 もしも追い払うだけで、再び同じことになったら元もこうも無いわね。仕方無い、ここは割り切って――) 「よっしゃ! 皆、準備はいいか? いくぜー!」 手を顎にあて、冷静に敵を見つめていた『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)を後方から、一目散に駆けていく『花護竜』ジース・ホワイト(BNE002417)。 一気にシリアスがブレイクした気がしなくも無いが、戦いの火蓋はかなり元気に切って落とされて投げられて爆発した――かの様に見えて。 「俺は前方の一体を狙うから、そっちのスライムは頼んだ!!」 「わーー!!? ちょっと待って!! ジース君待って!!」 「ん?! どうしたんだ!?」 戦闘中断。智夫がジースとスライムの間に入って、身を挺してジースの進行を止めてみた。 「ごめんね、私の準備が終わってないからね。どうせなら万全の準備で仕掛ける方が効率的じゃないかしら」 エルフリーデのその一言に納得したジースは静止。ここから盛大な自付タイム。 「あ、あぅぅ……スライムさん……見た目が、見た目がっ!」 櫻子が体内の魔力の循環を効率的にあげる。だが、目の前のスライムを指差しながら震えていた。 櫻霞はコンセントレーションを発動。己の感覚を研ぎ澄ませ、命中を更に確実なものへと変化させんとす。 智夫が翼を仲間に授ければ、皆の足が少しだけ浮き、あらゆるペナルティを皆無にした。 まおがテラーオブシャドウを発動。己の影を手足の如くに使い出す。 エルフリーデはプロストライカーを発動。オートマチックを握りしめ、交戦に備えた。 更には寿々貴のディフェンサードクトリンが重なって、数秒前とは見違える程に全員の能力が強化された。 「それでは改めましてー、皆、準備はいいな!! いくぜー!」 ●おやくそくです 智夫の拳、空気を凍てつかせる氷を纏ってはスライムへと。 エルフリーデが、高速射撃から放った光弾が、スライム達へと。 ジースが Gazaniaを振り切り、風の刃をスライムへと。 それでスライムを水路の中から出して、誘き寄せ、先ほどの場所で移動させる作戦――だったのだが。 「寿々貴さん思ったんだけどね」 「どうした?」 今度は寿々貴が顎に手を当てる。それをエルフリーデが反応した。 エルフリーデの背後に隠れていて、こんなこというのもなんだかと、ほんの刹那だけ躊躇いながらも言う。 「此方の遠距離が当たるということは、あちらの遠距離も当たるということじゃないかい?」 「「「「「確かに」」」」」 キリッとし、頭の上で電球が光る寿々貴の言葉に、全員が声を揃えた。 「ということは、つまり」 そう、つまりだ。 「こういうことなんですうぅうううううう!!!!!!」 尻尾の毛を逆立てて一気に叫んだ櫻子の手前。 ボン! 爆発したような音が聞こえた瞬間、スライムの触手、否、身体の一部が吹き飛ぶようして伸びてきた。 「ぎゃぁあ! 気持ち悪いいい!!!」 「らめぇぇえええええ!!! 僕、お婿さんに行けなくなっちゃううううう!!!」 「く!? 不覚!!」 「まお達は美味しくないので食べないで下さいー」 「絡め取れ不可視の……なっ!?」 それは直線上に居た、ジース、智夫、エルフリーデ、まお、櫻霞を襲った。 粘つく感覚が、服の上を辿っているのを感じた。 ぎちぎち、べとべと。嗚呼、折角の服が汚れてこれもう捨てたほうが良い。新しい服を買いに行かなければと何人か現実逃避を始めた所で。 「スライムさんは嘘つきっですーーっ」 と、櫻子が浄化する真っ白は光を放った。 誰だ、温厚だなんて言った奴は。シェルンか、シェルンか、シェルンだな。 いやほんとに、フュリエって大変だなと噛み締めたリベリスタ達。早く地球に、日本に、三高平に帰りたいかもしれない。 そんなことをしている間に、他の三体のスライムがこっちにやってきた。けれども全部を水路から離さないと意味が無い。 さておき、作戦は大幅に変更。 もう仕方無いからその場で倒す!! という手っ取り早い方法に切り替えるのだ。 恋人の叫びに、復活した櫻霞は動く。絡め取る前に纏わりつかれてしまった穴埋めはしよう。 「そもそも流動物に弱点があるのか……?」 トラップネストだ。放った気糸は精密にスイラムの一体を捕えて見せた。だが、そこで他のスライムが此方へと向かってくるのが見える。 少々まずったか、いや? これも恋人を護る為に役立てば良い。 一体の進軍を止めた櫻霞は、近づいてきたスライムに絡みつかれて飲み込まれて、もうスライムだらけ。 「きゃぁぁぁああ!!! 櫻霞様ぁあぁぁあああ!!!」 普段はゆるい櫻子の叫び声が聞こえた。尻尾を逆立て、千切れんばかりに伸ばしながら呪いを払う光を放つのだ。 所かわって。 「だめだめだめだめだめだって!!! 僕に絡み付いても何も出ないし、何も叫ばないし!! っていうかほら、変なとこ触ったりされたら、僕もうほんとにだめなんだって!!! あ、でも、近づかないし、水に落ちなければ絡みつかれないよね。 さっきは変なのが飛んできたけど、もう慣れたし、よし、僕はもう大丈夫だね!!!」 「智夫さん、フラグです」 「うっそー!! ぁぁあひぃいい!! らめええええええええええ!!!!!」 まおの突っ込みも的確に、前衛に立っていた智雄はうっそー!と反応した瞬間にスライムに絡みつかれた。 ―sound only― 「あああひい、ダメだって、あっこら!! そんなとこ入ってきたらダメだって!! あっ ていうかもうー!! 僕お婿いけ、あっ、ん……っ、ちょっとー!!!! あ、服ダメ、それだめってもおおおおお誰か助けて!!! 歪曲させてえええ!!!!」 ―― 「うわああああ、大丈夫か?! 手を掴め!!」 「ありがとう、ジースさん。もう凄い感謝する!!」 ここでジースが臨機応変に智夫へと手を伸ばす。絡みつかれて、顔にまでいって、息ができなくなったら大変だ。 なんとかして早く助けてやらなければと手を伸ばし、同時にブレイクフィアーを放とうとし……。 「ぎゃあああああああ俺も捕まった!!!!」 「うああああああああジースさんも捕まった!!!!」 ジースまで絡みつかれた。そっと寿々貴がジースへと天使の息を送り届ける。 「南無。見てるこっちは楽しいぞー」 「「いや、南無じゃなくー!!!?」」 「増殖されると厄介だ、早々に縛らせて貰う」 「みんな、大丈夫か!?」 櫻霞が身体に粘りついたスライムの片鱗を地面に叩きつけ、即座に気糸を編み上げた。 それをジースに絡んでいる一体に縛りつけ、その行動を縛った。 更にはエルフリーデの光弾がリベリスタを器用に避けつつ、スライム達へと幾重に当たっていく。 それから呪縛から解放されたジースが怒り混じりにスライムを切り伏せれば簡単にスライムが静止していく。そこで、やっと一体。 「今、回復しますからね!」 「いやほんとに、楽しい激戦?」 櫻子と寿々貴は、お互いにカバーし合いながら回復をしている。 幸いなことに、スライムが与えたダメージよりかは、回復の方が勝っている。だが逆に言えば、その分攻撃の手が足りていないとも言えた。 「少し……時間がかかりそうね」 「大丈夫でしょう、なんとかなります」 エルフリーデはオートマチックを構える。まおは先陣を切ってぺちぺち。ぺちぺちぺちぺちぺち(BS致命)。 まおの努力あってか、吸い付かれても回復されることは少なかった。続けようぺちぺちを。砂を入れたお鍋は、投げても跳ね返されてしまっていた。それは少ししょんぼりだったが、それよりも致命は大きな貢献だ。 「ところで……まおは、G様ホイホイならぬ、スライムほいほいが欲しいです」 「まず、スライムが粘着するのかが問題ね」 ブラックコードでスライムをぺちぺち(BS致命)しながら、おどけてみせたまおに、瞬時に弾丸を放つエルフリーデが率直に感想を述べた。 そんな平和な二人の耳に叫び声が響く。 「らめええええええ!!!!!!」 「あぅう、あぅぅぅうっっ!!!」 捕まっているのは智夫と櫻子だった。 「蜂の巣に……してやる」 心の底から出した、低い声。櫻霞が切り替え、両手の魔力銃を構えた。 一体はブロックしているというものの、抜けた一体が後衛に居た櫻子に届いたのだ。恋人が捕らわれて、いやーんあはーんだなんて、一瞬、ほんの一瞬だが役得かと考えたが、もはや一瞬は一瞬。 冷静そうに見えて、心の奥で何を飼っているのか解らない櫻霞は、殺意を込めて引き金を引いた。 戦場は叫び声と、粘つきの乱舞。 それも終りへと向かうのは、もうすぐの話しであった。 ● 「スライム、と言っても、いつかたたかったアザーバイトよりはよほど可愛いもの、ね」 エルフリーデは、スライム塗れのオートマチックを拭きながらそう言った。思い出されるのは鬼か、それとも。 だが、遥かに温厚()であったことは間違い無い。 「さて、皆様、お掃除ですよ」 まおが水路へと足をつける。スライムのエメラルドを描き出しては、ぽいと捨て。 「バスタオルは、沢山持ってきたので大丈夫ですよ」 「もういい、拭かなくても乾くし」 「ダメですよ! 櫻霞様が拭かないのであれば、私が拭きます!」 櫻子が櫻霞の頭へタオルをかける。だが、身長差から、櫻子は手を伸ばしても届かない。そんな姿に櫻霞は小さく笑った。 「おりゃ!!」 「っだ!?」 そんな横でジースが智夫にスライムを投げつける。べちゃんと当たり、どろりと落ちていくスライム。 「やめてよ! もうスライムはしばらく見たくないってのー!」 「あははは、もういっちょ!!」 「こら、やめなさい」 はしゃぐ男子に、エルフリーデはチョップをくらわす。さらにその横では。 「こんなこともあろうかと、下着をもってきた!!」 「「「「「それ、何処で着替えるんだ!?」」」」 寿々貴が全員からつっこみを受けるのだった。 ともあれ水路はリベリスタによって浄化された。これでまた綺麗な水が流れるであろう。 帰り道、櫻霞が振り向く。 「一応片は付いたか、第二第三の……」 イーグルアイと透視をかけあわせて、周囲を覗く。そこには―― 「なんて流れは遠慮願いたいところだな」 ――ただ静かに、ラ・ル・カーナの世界が広がっていた。 |
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■あとがき■ | |||
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