●巨鳥ファイヤード かの巨獣は大空を飛ぶ鳥である。 全身を炎のような羽毛で包み、翼は本物の炎に覆われている。 恐ろしげな鳴き声と共に炎を吐き、空を飛ぶ鳥を焼き殺すと言われる。 かの巨獣が大地に降りたが最後、大地は炎に焼かれるだろう。 巨獣は名を、ファイヤードと言う。 ●巨獣空中迎撃作戦 この巨獣は『境界の戦女医』氷河・凛子(ID:BNE003330)らが翼の加護により空の警戒を強めたことによって発見された。 それまでも一応観測はされていたが、直接的な被害に繋がると分かったのはこの時からである。 フュリエの族長シェルンは現在の状態を次のように話した。 「巨獣ファイヤードは複数の群れで行動し、時折上空を旋回する程度でしたが、橋頭堡に人が集まっていることを知って仲間を集め始めています。 今のままならさほど大きな脅威ではありませんが、他の巨獣と合わさり大群になってこられれば、それは大変な被害を生んでしまうでしょう。 そうならぬよう。今の内にファイヤードたちを倒してください」 現在、ファイヤードの数は12体。 大鷲のようなシルエットをしており、双翼を炎で覆い、炎を吐くと言われている。 リベリスタ達はただちに翼の加護支援を受け離陸。 空中で決着を付けて欲しい。 「どうか皆さん、宜しくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月10日(火)23:02 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●炎の鳥を見ると素直に焼き鳥を連想できてしまう所がアーク・リベリスタの強かなところ 「今夜は、焼き鳥パーティだァ!」 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は両手両足をフルに伸ばして天空を舞った。 炎を纏い炎を吐き、フュリエ達に恐れられる巨獣ファイヤードを前にしてこんなことを言えるのも、彼らがアークのリベリスタだという言い証拠なのかもしれない。 一応、人によっては泣いて逃げる状況である。 「倒した獣はしっかりと喰ってやらねばな、世のコトワリに反するってもんよ。コトワリってどういう字かくんだったか覚えてないが、まあいいか! 焼き鳥、フライドチキン、食べ放題! 1280円!」 「ええい落ちつホラごらんよ見事な焼き鳥!」 『フォートプリンセス』セルマ・アルメイア(BNE003886)が便乗し始めた。ツッコミが六文字しかもたない有様である。 双眼鏡越しに接近するファイヤードを観つつ、口角のよだれを拭った。 「あんなに燃え盛って中身はさぞやウェルダァーンかつジュースィーに……」「いやアレもとからだ」 「もとからなの!? すげえ! っていうか食えるか?」 だよなあと頷く緋塚・陽子(BNE003359)。 「太腿辺りは食えてもいいよな」 「レッグか。手羽先は……毛皮剥けばイケるか!」 「もはや食う前提かよ……」 食欲ってのはすげえなあってなもんである。 えっちらおっちら飛んでいた『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)が、竜一の後ろからおずおずと顔を覗かせる。 「あの、既に焼かれてるように見えるんですけど……この場合も焼き鳥ってカテゴリでいいんでしょうか」 「非焼き鳥……」 「逆焼き鳥未満……」 「非逆焼き鳥未満前……」 「ええいややこしい! 奴の名前は焼き鳥でいいだろうが!」 「いやファイヤードだが」 ……などと、これから戦闘をするとは思えないムードを出し続ける先頭集団。 『神斬りゼノサイド』神楽坂・斬乃(BNE000072)はチェーンソーをぶらぶらさせながら優雅に空を泳いでいた。 「こっちで初めての仕事が空中戦とは面白いじゃないの。……容赦なく叩き落としてあげよう!」 「『面白い』の後に続く言葉が『叩き落とす』って、どんなスラムだこの世界……っていうか、うおおぉ……すげぇ、地面すげぇ遠い!」 椎名 真(BNE003832)は覚束ない様子で右へ左へふらふらしている。 「俺空飛んでる! すごい、夢みたい、すげえ!」 「何回『すごい』って言うんだよ。ま、気持ちは分からんでもないけど」 「空飛ぶなんて生まれて初めてだもんなあ! すごい変な感覚! いっそ怖ぇ!」 がやがやと。 わいわいと。 リベリスタ一向は迎撃ポイントで滞空を始めた。 そんな中、『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は咥え煙草をかたかたと動かし空に語りかけていた。 「これまで無害だった巨獣を簡単に倒してくれってのはどうなのかしらね。まあ、怖いのは分かるし、お仕事だし、やるけどね。これが『ご飯狩ってきて』でもやること一緒だったろうし」 「んん……」 分厚い本を固く抱く依子・アルジフ・ルッチェラント(BNE000816)。 「ラ・ル・カーナ……この世界なら、ノーフェイスのひとの進行、止められるかな……」 「いや、寧ろ悪化するかもしれないな。思いもよらない危険な状態を生むとも限らん、試してみないことにはわからんが」 ふう、と『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)は短く息を吐いた。 「そう言う私もまた、こっちに来ることになるとは」 ばさりばさりと、翼の音が近づいてくる。 瞳は耳を澄ませ、来るべき敵に集中した。 ●VSファイヤード 12体もの巨獣の集団に対し、リベリスタたちがとった作戦はとてもシンプルなものである。 竜一に言わせるとこう。 「俺が前に出ぇーの、敵引き付けぇーの、ばぁーってやりぃーの、俺ら勝ぃーの、とつ――」 「やかましい早く行け!」 蹴りだされるようにぎゅいーんとカッ飛んでいく竜一。 目標、ファイヤードの中心。 剣をおもむろに、そして翼の如く広げ、凄まじい螺旋回転と共に突撃した。 「セルフ焼き鳥なら手間が無いぜ、俺の血肉の糧となれぇ!」 これに驚いたのは他ならぬファイヤードである。 まさか人間サイズの物体が空を飛んで突っ込んでくるとは夢にも思わなかったのかもしれない。 交戦的なファイヤードは竜一の迎撃の為に翼を広げ威嚇放火。正面から突っ込む形になった竜一と激突し、かるくもつれ合って空中を泳いだ。 「よしいいぞ、やってやれ壱和ぁ!」 「はいっ!」 壱和は長ランの裾を大きくはためかせると、拳を横一文字に振った。がしゃがしゃと展開した木刀が直線状に伸び、壱和の手に握られる。 一度木刀を天高く掲げたかと思うと、ファイヤードの群れにびしりと突きつけた。 「メラメラ燃えて火を吐くだけが能ですか! ちんたら飛んでないで――」 じろりとファイヤードたちが壱和を睨む。 壱和の目に、それまでのおどおどは無い。燃える炎が両目に宿り、12羽の巨獣との睨み合いに真っ向から受けて立った。 「かかって来なさいっ!」 途端、空間が歪んだ。 そう見えた。 大量の熱が複雑な陽炎を生み、ぐにゃりと歪んだ景色を飛び越え大量のファイヤードが壱和へと殺到したのである。 「こここ怖っ……怖くないです! ないですっ!」 ビビる壱和と意地を張る壱和が高速で入れ替わる。 そんな忙し壱和の前に、セルマが素早く回り込んだ。 「12時前方より敵接近! っかぁー、いいねコレ! 言ってみたかったんだよコレ!」 などと言いつつ剣と盾を眼前に交差。 全力で体当たりしてくるファイヤードを気合で受け止めた。 一発ではない。たくさんである。 ちょっと死ぬかと思った。 「引きつけ過ぎじゃね!? 死ぬんじゃね!? でもゴメン、セルマちゃんよりこちゃんのカバー行かないと!」 「だ、大丈夫です! なんとか! お二人が来てくれる筈なので!」 と言った途端、左右両サイドから二つの赤い影が高速接近してきた。 「はっはー、熱く燃えてるね!」 「悪いがフォローはしねーぞ、こちとら攻撃が最大の防御ってガラなんだよ!」 斬乃のチェーンソーがファイヤードの首から背中にかけてのラインを思い切りぶった切る。炎と血しぶきが同時に上がり斬乃を染め上げたが、彼女は気にせず次の対象へととびかかって行く。 「あたしのことも燃やしてみなー! 焼き鳥ィー!」 一方の陽子は大鎌を両手持ちで振り上げると、全身を斜めに回転させて自分の上下にいるファイヤードをいっぺんに斬りつけた。 両サイドと後方を挟まれたファイヤードはあふれ出るように壱和の後方や上下へと流れていく。 壱和のアッパーユアハートが効いたのはファイヤードの中でも半数程度で、他の連中はつられて移動しただけに過ぎないようだ。そして彼らは勢いのまま後方のメンバーへと突っ込んで行く。 「おおっと、待て俺のスモークチキン!」 空中で豪快にターンをかけて舞い戻ってくる竜一。 だがここで大変なのは依子たちである。 「ッ……!」 複数のファイヤードが突っ込んでくる光景に、思わずびくりとする依子。 横に並んでいた瞳がキッと視線を鋭くした。 「呼吸音――火炎放射、来るぞ。備えろっ!」 複数のファイヤードがサイコロ目のような編隊をとりつつ火炎放射を浴びせてくる。 「直線型だ。配置に気を付けろ、回復弾幕っ!」 空気ごと焼き払うかのような炎の柱である。集中攻撃をかけられていないだけまだマシだが、かわすだけの技術がこちらにはない。 瞳はすかさず天使の歌を発動。 依子も本を盾にするように顔の前に翳し、天使の歌を思い切り発動した。 「よっしよく頑張ったわね。あのハゲもっと引き付けとけってのよ、全身啄まれろってのよ」 「おいそれ酷くないか!?」 「ってワケでとりあえずいつもの!」 杏は翼を広げて制動をかけると、辺り一面にチェインライトニングをまき散らした。 電撃に刺激されたファイヤードが炎を乱射してくる。 空気中を電撃と炎がぐねぐねと入り乱れ、互いの身体を滅茶苦茶に焦げさせた。 一見対等だが、高威力全体攻撃で尚且つ回復支援のついた杏の方が圧倒的に有利である。 「うおすげえ、すっごい派手! 俺も見習わないとなっ!」 等と言いつつ、実際的には杏の陰からアサルトライフル(小銃)を構えてファイヤードを狙い撃ちにする真である。 だがなんというのだろう。 空中でこうやって鉛玉を高速でばらまいていると……。 「あ、アドレナリン出てきたーっ!」 ちょっぴり引き攣る笑顔を浮かべ、真は小銃の銃口を軽く上げる。片手だけでマガジンを抜いてそのまま足元に落とすと、腰から抜いた予備弾倉を装填。側面から回り込もうとしてきたファイヤードへ徐に向け、思い切り連射した。 狙いはなかなかいいもので、数発外しただけで他は綺麗に命中。背後に回り込まれる前にファイヤードは煙を吹いて墜落した。 「真、敵機撃墜ッ!」 彼は今、男のロマンを体感していた。 かくして大乱戦に突入した空中戦。 壱和の引き付けが大きな効果を発揮していたのは序盤だけで、徐々に発生率が下がって行った。彼自身の疲れも多少はあるが、半数を瞬く間に撃墜されたファイヤードが必死になり始めたと言うのが大きな理由である。 混戦状態は引き付け役の壱和を中心に渦を巻くように入り乱れ、やがて力による削り合いへと発展していく。 「瞳ちゃん下がって!」 「それは私のことかっ?」 斬乃が瞳を庇って螺旋状に重なった炎を受け止める。 当の斬乃が高い耐久力を持ち、その上炎をものともしない身体であるため、ファイヤードたちの攻撃から回復担当の瞳たちをかなりの間庇っていられた。が。 「っつう、そろそろヤバいかもね!」 眼前に翳したチェーンソーは既に焦げ付いている。その状態を瞳は冷静に判断した。 「確かに危ないな。今回復を――」 手を伸ばそうとしたその時。斬乃の身体がファイヤードの翼が強かに打ちつけられた。 目を大きく開く斬乃。こらえようとするが身体が言うことを聞かない。ダメージが蓄積しすぎたのだ。 撥ね飛ばされるようにきりもみ回転し、眼下に落下していく斬乃。 「しまった、ぐっ!」 反射的に両腕を交差する瞳。別のファイヤードが翼による体当たりを繰り出してきたのだ。 斬乃が受けたものと同じ攻撃だが、耐久力は全く違う。瞳の意識は一瞬でブラックアウトし、仰向けのままラ・ル・カーナの広い大地へと落下して行ったのだった。 「ひ、瞳さん、斬乃さん!」 慌てて振り返る壱和。 しかし頭上と右手から炎を浴びせられている最中だ。動けない。 「怖くない、怖くない、こんなの、どってことない……!」 遠のきそうになる意識を気合でひっつかみ、何とか持ち応える。 そこへ、陽子が高速回転をかけて飛び込んできた。 独楽がチェス駒を弾くようにファイヤードを押しのける。一旦跳ねて空中制動。 「意外とギリギリだな。まあアレだ、死ぬ前にぶっ殺すぞ。それまで死ぬなよ?」 「は、はははい!」 さりげなく無茶振りをされたが、壱和はこくこくと頷いた。 頭上から焼け焦げた竜一が降ってくる。 慌ててキャッチすると、メガネが若干ズレていた。 「ふっ……俺は……ここまでのようだ。後は、任せ……」 「はっ、竜一さん! 死んじゃだ――」 「と見せかけて復活! 不死身っぷりじゃ負けねえ!」 竜一は跳ねるように空中へ舞い上がると、再び剣を広げて回転。襲い来るファイヤードを叩き伏せる。余りの衝撃にその場で硬直するファイヤード。 そこへ杏がボウガンで照準を定めた。 「よーしハゲ、そのまま抑えといてハゲ、あとハゲ」 「お前ハゲって言いたいだけじゃないのか!? そろそろデレてもいいんだぞ?」 「あんたアタシがデレる相手がこの世に何人いると思ってんのよ。数えるわね、いーち、いーち、いーち、あ、攻撃忘れてたとりチェ!」 チェインライトニングをまき散らす杏。ボウガンの照準とは何だったのか。 そうこうしていると、電撃や炎の間から依子がぱたぱたと手を振っているのが見えた。 あらゆる意味で壮絶なのか、もはや涙目である。 でも役目は忘れていないらしく、天使の歌を連発でかけてくれた。 そんな依子が現在戦力の要になっていることを、別に察したわけではないのだろうが、ファイヤードが渾身の火炎放射を依子へと浴びせてきた。 今度こそ真の出番とばかりに間へ挟まるセルマ。 「奥義セルマちゃんソウル&フェイト全力ガァードッ! 説明しよう、奥義セルマちゃんソウわああお熱っ! ちょ、これシャレになんないんだわさ! 避けてぇー! みんな避けてぇー!」 「避けられるならとっくに避けてるよ!」 巻き添えをくらわないように斜め後ろに陣取っていた真が、相手のファイヤード目がけて小銃を乱射する。 「焼き鳥にしてやる!」 「もう焼き鳥だろあれ!」 「えーっとじゃあ焼かれてるけどなんかもっと焼いたりなんかしてああわけわかんなくなってきた!」 「要するに?」 「食ってやるーう!」 殆ど炎を正面から浴びるような形になりつつ、真は気合で小銃乱射。 最後は彼の気合が勝って、ファイヤードはふらふらと墜落したのだった。 それが最後の一羽だったと気付いたのは、荒い呼吸を整えた後の事である。 ●焼き鳥前夜 ビニールシートの上に横たわった斬乃と瞳を、依子は丁寧に介抱した。 落下の途中で支援係のリベリスタ達にキャッチしてもらっていたらしく、戦闘以上の怪我は負っていない。それでも酷い怪我だが。 「…………」 顔をあげ、傍らに横たわるファイヤードを見やる。 調べてみたが、一羽残らず死亡していた。 そう言うものなのだろう。 殺したら死ぬ。世の理そのままの姿である。 黙って見ていると、満身創痍の陽子が近寄ってきて、黙々と肉だの毛皮だのを刈り取り始めた。 殺したら食う。これもまた、世の理そのままの姿である。 「全部はともかく、こんだけあれば今夜は焼き鳥パーティだぜ……!」 怪我をしていても元気な陽子だった。 そこへふらふらと降下してくる真。 「うぁー……物凄く疲れた……お腹すいた、すごくすいた、それもう食べれる?」 「生肉だけど……それでよければ」 「よくないよ。流石に……あ、でもなんだろういいにおい。肉が焼けるいいにおい!」 目を光らせて振り返る真。 そこには、肉焼き器を設置し、職人の眼差しでファイヤードの腿を火にかけるセルマの姿があった。 何かの目安にしているのか、妙なBGMを口ずさみながらくるくると肉を回している。 それを反対側からまじまじと見つめる壱和。 「あの……これ焼けるですか?」 「毛皮剥いたら意外とイケた」 「そして毛皮は俺が貰った」 頭からだらだらと血を流しつつ、両手いっぱいに何かの羽を抱えている竜一。夜に出会ったら全力で逃げるだろうなと壱和は思って、口には出さずに飲込んだ。 「返って彼女にプレゼントするんだ。そして耐炎防具とか作るんだ……」 「それ違うゲームじゃない? あと血抜いて干さないと、臭いヤバいわ」 何をとち狂ったのか(恐らくダメージの受け過ぎで頭が混乱しているのか)髪の毛に大量の羽を突き刺した杏が現れた。 壱和は昼でも逃げたくなった。でも飲込んだ。 「まあとにかく、今日は焼肉パーティということで」 ぽむんと手を打ち、壱也は話をおしまいにしたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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