●這いよるモノ ジワジワと、雨に追いやられるようにして、そいつは町に降りて来た。度重なる大雨により、すっかり住み辛くなった山から、少しずつ、少しずつ、それはこの町に近づいてきていたのだ。 百の足を持つソイツは、所謂百足という虫である。 ただ、その身体があり得ないほどに巨大。長く、太い。巨大な身体と鋭い爪を忙しなく蠢かせる。 雨に濡れたアスファルトを削り、土煙を上げて、音もなく進むのだ。 身体の長さは悠に10メートルを超えるだろうか。 やっとの思いで辿り着いたのは、小さな町であった。山から程近く、豊かな自然と美しい川が未だに残る、そんな町だ。 そんな自然に囲まれた町だったことが、不運だったのか、それとも幸いだったのか。 つい数時間前に、避難勧告が出され、すでにこの町から人の気配はなくなっていた。 人のいない町を徘徊する大百足。既に非難済みの住人達がその脅威に晒されることはない。 とはいえ……、このまま大百足を放置するわけにもいかない。 雨が止めば、百足は山に帰っていくだろう。或いは、町の住人が戻ってくる方が早いか……。 それとも、リベリスタ達が百足を討伐するのが先だろうか。 黒光りする巨体に雨水を浴びながら、大百足はビルの隙間へと潜り込んでいくのだった。 ●大百足討伐指令 「百足って、苦手……」 実に嫌そうな調子で、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がそう呟く。 モニターに移されたのは、ビルの立ち並ぶオフィス街だ。空に向かって伸びるビルとビルの隙間に、大百足が潜り込んでいく。 無数の足を細かく蠢かせ、その巨体からは考えられないような速度でビルの壁を這う。 鋭く尖った顎から、ドロドロとした毒液を垂らし、雨水を避けて移動していた。 「E・ビースト(大百足)が1匹。フェーズは2。水が苦手らしく、山から下りてきたみたい」 百足の動きは早く、あっという間にモニターの画像から姿を消した。 「噛みつかれると、麻痺や毒の状態異常を受ける可能性が高い。また、素早い移動速度を活かした突進や締め付けなどにも注意して。お腹が減っているみたいだから、ビル街を歩いていれば襲ってくると思う」 この町にはビルの密集した地域が存在する。百足は現在、そこに潜伏中とのことだ。 「ただ、襲ってはくるけど危険だと判断した場合、逃亡を図る程度の頭はあるみたい。逃がさないでね。早いから、1度逃がすと面倒……。移動の際、あまり音を立てないみたいだし」 不意打ち、強襲に注意して、とイヴはいう。 「それじゃあ、百足退治、行ってきて」 イヴは小さく手を振ってリベリスタ達を送りだすのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月09日(月)23:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●雨の降る街 天に向かってそびえ立つビルの群れ。突きさす先には、空いっぱいの雨雲。人気はなく、滝のような雨は降りやまない。コンクリートジャングルは大変に水履けが悪く、避難勧告が出されたのだ。 その代わり、と言わんばかりに山からソレは降りてきた。 全長は悠に10メートルを超えるだろう、大百足だ。 音もなく降りてきて、そのままコンクリートジャングルの中に、そいつは身を潜めた……。 「早々に発見して倒したいところですね……。私、どうも百足のような昆虫は好きになれなくて」 むしろ苦手なのですが、なんて嫌そうに顔を歪めながら『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)は他のメンバーより少しだけ先を進む。ESPによる索敵を行い、奇襲に備えるためだ。 百足は、多少の隙間さえあればどこかでも侵入し、どこへでも逃げ去る。 「百足……私は嫌いではありません」 そう言ったのは『節制なる癒し手』シエル・ハルモ二ア・若月(BNE000650)だ。 一生で一度しかつがいを持たず、つがいを殺されれば如何に強大な相手でも復讐に現れ、其の毒で相手を苦しめる。そうい迷信も伝わる生き物なのだ、百足とは……。 「エリューション化さえしなければ……。残念です」 目を伏せ、シエルはそう呟いた。 「ですが街に出てくれただけ助かったかもですね。山での戦闘は避けられたわけですし」 雨合羽の襟を締めながら雪白 万葉(BNE000195)が溜め息を吐く。 「そんなものがいる山って、さっさと調査した方が良いと思うんだけど……。ま、まずはこの気持ち悪い百足退治だね」 羽柴 双葉(BNE003837)は、雨の苦手な大百足対策として、屋根のない場所を選んで歩いている。自身が濡れることくらいは、気にならないようだ。 雨音以外に音はないビル街を、8人は歩く。人の気配はなく、生き物の気配もない。 野良猫や野良犬、鳥などはどこへいったのだろうか……。雨を嫌がって逃げているのか、或いは……。 なんて、一向に変化のない灰色の風景と雨の線を眺めていると、少しずつ集中力が千々に乱れていく。余計なことも考えるし、疲れも溜まる。 そろそろ嫌気が差してきた、そんな時。 「あ、あ! 目標発見! 向こうに居るよ!」 ビルとビルの間を指さし『歩くような速さで』櫻木・珠姫(BNE003776)がそう叫んだ。すぐさま、戦闘に備え、支援スキルを展開する。 「コソコソしてないで出てこぉーい!! いや、カサカサか!!」 大太刀の先に、暗黒のオーラを収束させ『骸』黄桜 魅零(BNE003845)が前へ出る。太刀を振るって集めた闇を百足へと放った。雨粒や間にあった看板を消し飛ばしながら、黒い閃光が百足に迫る。 大百足との戦闘は、リベリスタ達の先制攻撃で幕を開けた。 ●灰色の街 黒い閃光を回避し、大百足がビルの壁を這い上がっていく。一度、姿を隠し、死角から襲いかかるつもりか、或いはそのまま姿を隠すつもりだろう。 「流石に……あれだけ大きいと、気味の悪さを通り越していっそ荘観ね」 呆れたように溜め息を吐いて『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)がマスケット銃を構える。高速でビルを這い上がっていく百足に照準を定め、引き金を引いた。 放たれた弾丸は、狙い違わず百足へ迫る。しかし、百足はその巨体をわずかにくねらせ、弾丸を回避した。ちっ、と小さく舌打ちする。熱感知により百足の位置は把握できているが、しかし壁が邪魔で狙えないのだ。 「百足か。強靭な肉体に素早い動き……。宜しい結構。闘争の相手として不足なし」 ニヤリと肉食獣のような笑みを浮かべ『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)はヘビースピアを構え、前に出る。先ほどまでは百足の強襲を警戒し、ビルから多少離れた場所を歩いていたが、居場所を見つけた今となっては目的が変わってくる。 今度は、百足をおびき出す必要があるのだ。 「さぁ戦おうか」 幸い、というかなんというか、百足は飢えているらしい。そんな状態で、獲物のいない街に降りてきて、気が立っていることだろう。そこへのこのこ現れた餌が8人。 このまま逃げる筈がないと踏んだ。 「百足様は人知れず這いよってきそう……。上下左右、気は抜けませんね」 翼をはばたかせ、シエルは言う。音もなく高速で移動する百足。補足するだけでも一苦労だ。 ビルを駆け上がった百足は、その長い体を伸ばし、隣のビルに移動する。そのまま、ビルの周囲を巻きつくように走り、屋上へ。 8人はそれを追ってビルを回り込む。と、同時にビルの屋上から大百足が飛び降りてきた。 「今度は逃がしませんよ」 雪白が気糸を伸ばし、百足の目を狙って貫く。百足が顎を開き、苦しげに悶える。しかし、突進の勢いは止まらない。屋上から飛び降りたスピードそのままに雪白へとぶつかっていく。 弾き飛ばされた雪白が、アスファルトの上を転がっていく。それを追って、百足が走る。 「ぎゃあああああこっちこないでぇええええ!!」 黄桜が悲鳴を上げる。それでも、退くつもりはないのだろう。雪白と百足の射線上に入り、大太刀を構えた。キラリと、雨水に濡れた刃が光るが、百足の勢いは止まらない。 鋭い牙をむき出して、黄桜に襲い掛かった。 「あ、きゃ!」 牙を太刀で受け止めるも、衝撃で地面に倒れる黄桜。彼女の身体を弾きながら、その横を百足は高速で駆けていく。 「大きくたって虫は虫よ、踏みつぶしてあげる」 鋼の脚を振りあげ、踵を百足目がけ振り下ろすミュゼ―ヌ。バチバチと雷電を纏い、鋼の脚が空を切る。 百足の胴に、ミュゼ―ヌの脚が突き刺さった。しかし、外殻が硬いのか、致命傷には至っていないようだ。ミュゼ―ヌの細い体を弾き飛ばしながら、百足は走る。 「ブロックの人数、足りない感じ?」 「大百足と言えば、俵藤太の昔話を思い出すけど、こいつにも唾って効くのかな?」 後衛担当の櫻木と羽柴が、迫りくる百足を見て顔を青ざめさせた。武器を構え、攻撃に備える2人の前に、水無瀬とシビリズが移動した。 「出ましたね……!」 「逃がすわけにはいかん、なんとしてでも此処で仕留めて見せよう」 長刀を手にして水無瀬が、地面を蹴って飛び上がる。まっすぐに地面を走る百足の頭部を飛び越し、背中へ着地。百足の外殻が硬いのは、先ほどのミュゼ―ヌの攻撃により分かっていた。刀をその体の下に突きいれると、気迫とともに一気に振り抜く。 胴から体液を迸らせながら、百足の身体が宙に浮いた。 そんな百足の身体の下に、シビリズが駆け寄りヘビースピアを持ち上げる。 「はぁ!」 怒号と共に、スピアを突きあげる。百足の身体に突き刺さり、その身を弾き飛ばす。地面を転がり、百足の身体はビルから離れた広場へと転がっていった。 アスファルトが削れ、広場にあった大理石のオブジェクトが砕け散る。土煙りが舞い上がるものの、雨に濡れ、すぐに晴れた。 「皆様の御怪我、只管癒してみせましょう……」 今の内に、とシエルが傷ついた仲間の治療に移る。辺りに淡い光の粒子が漂い、傷を癒していく。 広場での戦闘に備えようと、羽柴が自身の周りに4色の光弾を展開させ、百足に狙いを付ける。 しかし……。 「百足が逃げるよ!」 異変に気が付いたのは、櫻木であった。咄嗟に真空の刃を投げつけるも、百足には当たらない。 その間に、百足は排水溝の蓋を突き破り、地面の下へと潜っていく。狭い隙間に身を潜らせようとしているからだろうか、今のところまだその姿は視界にあるものの、逃げられるのも時間の問題。 あと数秒もしたら、逃げ切られてしまうだろう。 そんな百足の背に、雪白が飛び乗った。 「生気に貴賎はありませんが、余り気持ちのいいものではありませんね」 鋭い犬歯を剥き出しにして、皮肉気に笑う。 そして、そのまま百足の脚の付け根に喰らいついた。 ヴァンパイアの固有スキルである「吸血」だ。体力や気力など、相手から吸い取って回復することが出来るのである。 鬱陶しげに百足は身を捻る。しかし、しっかりと百足の背にしがみついたまま雪白は離れようとはしない。その間に、仲間達が百足に駆け寄っていく。 地下に潜るのを諦めたのか、百足は頭部を排水溝から出すと、牙を剥いて雪白に襲い掛かった。不気味な色の毒液を滴らせる百足の牙が、雪白の胴に突き刺さる。 「うぐっ……」 百足の背から引き剥がされた雪白の身体が、百足に咥えられたまま宙に浮き上がる。一気に顔色を悪くする雪白の身体から、力が抜けていくのが分かった。 彼の身体を咥えたまま、百足は雨を避け、すぐ近くのビルへ走る。 一際巨大なそのビルは、この街で一番有名で、大きなホテルだ。入口の扉をぶち破って、百足がホテルのロビーに逃げ込む。団体客にも対応できるよう、このホテルのロビーはかなり広く作られているようだ。 百足の後を追って、他の仲間達もホテルに飛び込んでいった。 ボト、っと絨毯の上に雪白の身体が落ちる。顔色を失い、グッタリとしているものの、意識はあるようだ。シエルが駆け寄り、助け起こす。 「来たれ癒しの息吹……」 シエルが囁く。彼女の周りに生まれた光の粒が、雪白の身体に降り注いでいく。 一方、シエルが雪白の治療をしている間に、他のメンバーはホテルロビーで百足を包囲していた。上体を持ち上げた状態で、百足はリベリスタ達を威嚇する。大きく開いた顎の端から、ボタボタと毒液が滴っていた。毒液は絨毯に落ちると、煙を上げ、その部分を変色させる。 「黄桜、お水沢山もってきたー!! お水が苦手ならお水で包囲してやるんだから!!」 複数のじょうろをひっつかみ、黄桜はそのなかみをそこら中に蒔き始めた。百足が、鬱陶しそうに体を捻って、水しぶきを避ける。 「くふふふ、ほらほら、苦手なお水だぞーぅ!」 じょうろを宙に放る。中に入っていた水が飛び散って、百足を濡らす。百足は頭部を使ってじょうろを弾き、そのまま黄桜に襲い掛かる。外で見せた高速移動だ。黄桜が、闇の閃光を放って応戦するも、百足はそれを回避する。 百足の迫る先には、黄桜。その後ろにはシエルと治療中の雪白の姿がある。 それを見て、羽柴が射線上に飛び出した。体の周りに展開させていた4色の光弾を百足目がけ撃ち出す。頭部に光弾を浴び、百足がのたうち回り、進路がずれる。しかし、急に止まることはできないのか、羽柴を巻き込んで壁に激突した。 「双葉様!!」 シエルが悲鳴に近い声を上げた。崩れた壁に半ば埋もれながらも、羽柴は弱々しく手を上げ、シエルに応える。 「ほら、やっぱり回復って重要だし……」 額から流れる血によって、彼女の髪が頬に貼りついている。すぐに癒します、と羽柴に伝え、シエルは雪白の治療に戻る。 「今のうちっ!」 壁にぶつかって動きを止めた百足に、黄桜が闇の閃光を放つ。闇の弾丸は百足の脚を数本纏めて消し飛ばした。百足は、壁から頭を抜くと、黄桜に視線を向ける。 百足と目が合って、黄桜の身体がびくっと跳ねた。 「たとえ外殻は硬くても……そこはどう?」 ロビーにミュゼ―ヌの声が響く。いつの間に移動したのか、ロビー脇にある階段の途中から、身を乗り出すようにしてマスケット銃を構えていた。不安定な場所にも関わらず、その銃口は百足の頭部を捕らえている。上体を持ち上げた百足の頭部と、丁度並行に並ぶ位置取りである。 ふわり、と羽でも触るような優しさで引き金が引かれた。火薬の弾ける音と、勢いよく飛び出す銃弾。空気を切り裂く音がそれに続く。 そして、弾丸は吸い込まれるように百足の目に命中した。 百足の目から体液が溢れる。痛みのためか、百足はその場でのたうち暴れた。全長10メートルを超える巨体で暴れまわるものだから、ロビーの机や椅子、花瓶が割れてそこら中に散らばってしまう。 身の危険を感じたのか、百足は暴れるのを止め、その場から逃げ出すために進路を探る。目についたのは、ピンクの髪の華奢な少女の姿だった。 一番安全だと判断したのだろうか、櫻木に向かって百足が駆けだした。数多ある脚を忙しなく蠢かせ、絨毯を削りながら高速で走る。 迫りくる百足に対し、櫻木はダガ―を構え、迎え撃つ姿勢をとった。 床を蹴って、櫻木の身体が宙へ浮く。彼女の真下を百足が駆け抜けていくが……。 「逃走防止! ブロックに回るよ!」 天井にぶら下がっていたシャンデリアを蹴って、櫻木は百足の頭部に着地した。振り払うために百足が頭を振りまわす。櫻木は、落とされそうになりながらも、手にしたダガ―を百足の目に突き刺した。 先ほど、ミュゼ―ヌの弾丸を喰らい潰れた目だ。そこに追撃を貰い、百足の身体は大きく傾いだ。 暴れる胴体に弾かれ、櫻木の身体は絨毯の上を転がっていく。それを受け止めたのは、方手にじょうろを持ったままの黄桜だった。 そのすぐ傍では、傷つきショック状態にある羽柴をシエルが助け起こしている。 一方、百足の眼前には治療を終えた雪白の姿がある。気糸を伸ばし、百足の目を差し貫く。執拗に弱点ばかりを攻撃され、百足は怒り心頭といった様子で雪白に襲い掛かった。 「気を引き締めて参りましょう」 そう呟くと、雪白はホテルから飛び出していった。百足もそれを追いかける。もう一度、逃げ場の少ない広場か大通りに誘導するつもりなのだ。 外に飛び出した雪白は、地面を滑り広場へ飛び込む。 そのすぐ後ろを、傷ついた百足が追いかけてくる。 百足の牙が、雪白に迫った。 その時……。 「足止めはします、攻撃をお願いします!」 百足の動きが急に止まる。動きを封じたのは、水無瀬であった。百足の背後から迫り、長刀をその長い胴に突き刺し、地面へと縫いつけたのだ。 気合い一閃、硬い外殻ごと百足を貫いた刀は、見事その体を固定することに成功した。 長い髪が、吹き荒れる風に踊る。凛とした眼差しで百足を睨みつけ、水無瀬は刀を握る手に力を込めた。 刀が抜けないよう、力一杯に百足を抑え込む水無瀬。そんな水無瀬の後ろからミュゼ―ヌが飛び出す。 雷電を纏った脚を、百足の胴に叩き込んだ。 水無瀬とミュゼ―ヌ、2人がかりで百足の動きを封じる。その隙に、百足の正面には、シビリズが回りこんでいた。 「あぁ、そうだ。最後まで我々と戦って貰うぞ化け物よ。どうした。逃げるな、臆するな、死すまで付き合え。ここからが楽しいのではないか! ハハハハハハ!!」 実に楽しそうな笑い声をあげながら、シビリズが大上段からヘビースピアを振り下ろす。それを百足が受け止め、牙を繰り出す。安全靴で牙を受け止め、蹴り返し、スピアを突き出す。或いは、薙ぎ払うように叩きつけたり、口腔内目がけ突きいれたりと、両者一歩も引かない攻防が続く。 この場から逃げ出したい百足と、なんとしてでも百足を仕留めたいシビリズの戦闘は、わずか数十秒ほどで決着が着いた……。 シビリズのヘビースピアが、百足の目に突き刺さったのだ。 ゆっくりと、地面に倒れる大百足。 額から血を流し、体中に百足の体液を浴びながらも、シビリズは最後までそれを見届け、地面に膝を突いた……。 ●雨上がりの街 いつの間にか、雨があがっていた。遠くの空には、晴れ間も見える。 大百足の死体を前に、8人のリベリスタが集まっていた。 「黄桜、まだあんまり依頼してない方だからこんな怖いもの目の前にしたら卒倒するかも、って思ったけど、それでもがんばった!」 横たわる大百足の規格外の大きさに、改めて感心しつつ黄桜は誇らしげに胸を張る。 「風を引かないうちに帰ろっと。お風呂とかあれば入っていきたい気分だよ」 近くにあった案内板で、この街に温泉かなにかないか探しながら羽柴は大きなため息を吐いた。百足も倒し、雨も上がった。 「貴方は大きくなっただけの、ただの虫なんでしょう。あるべき理の中に還りなさい」 目を閉じ、何か祈るようにミュゼ―ヌはそう呟いた。 さて、と一声上げて雪白が大百足に近寄っていく。 「放っておいたら戻って来た方が驚くでしょうからね、神秘の秘匿の為にも解体し埋めておきましょう」 そう言った雪白を、櫻木と水無瀬は嫌そうな顔で見る。百足の解体作業など、想像したくもないのだろう。それも、こんな規格外の大百足である。 「殺めた生命……粗末には扱えません。可能なら体の一部、持ち帰らせて頂きとうございます」 百足は東洋医学では、高貴薬として扱われることもある。シエルは、死んだ百足に鎮魂の祈りを捧げながら、誰にともなくそう言った。 そんな彼らから少し離れて、シビリズは空き地の隅に穴を掘っていた。百足を埋めるためのものだろうか……。激闘を繰り広げ、そして死んでいった大百足に対し、彼はなにを思うのだろう……。 雨が止み、涼しい風が吹き抜ける。 梅雨の気配が去っていく……。そんな気がした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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