●最悪のシナリオ 「……何者だ」 リベリスタ達から逃げ去り、放浪を続ける冴崎 司郎。 否、そうあった者というべきか? 現在はその体をアーティファクトが動かしている。 SN1、Single Number 1と名付けられたアーティファクトの意思は本来多少のものだった。 しかし残った全てを賭けた願いにより、SN1は冴崎 司郎の全てを取り込み、主たる意思を担っている。 そんな彼だった者の前に現れたのは、怜悧な風貌をした青年だった。 「冴崎 司郎、彼に貴方の移送を依頼した者ですよ。Single Number 1さん」 彼と自分を引き離す存在とも言えよう答えに、彼は自身を抜刀すると共に臨戦態勢をとる。 「事を構える気はありません、お話がしたいだけです。貴方にとても悪い話ではないと思いますし、気に入らなければ切り捨てて頂いて構いません」 両手を挙げ、己の意思を示す青年だが、構えを説く様子は無い。 「続けろ」 「所謂ギブ&テイクです。私達は貴方がほしい、使用者は問いませんし、状態も気にしません。こちらの話を理解してくれる方ならば、誰でも結構です。代わりに私達は貴方に安全に休める場所を提供しましょう」 力を貸してくれれば追われる事もない、追われたとて組織同士の戦いとなれば一人でいるよりは安全だろう。 「……しかし、何故俺にこだわる?」 武器としては欠陥品、碌な制御も難しく、おまけに失敗すれば大怪我する様な危ない代物だ。 その問いに答える様に、青年は手甲状の装備を取り出すと、印字された部分を指差す。 DN10、その文字に司郎は訝しげな表情を見せた。 「私が欲しいのは最初で最後の者、貴方達はきっとその道を示してくれる筈ですから」 ●全身全霊の決戦 「せんきょーよほー、するよっ!」 『なちゅらる・ぷろふぇっと』ノエル・S・アテニャン(nBNE000223)は平常運行、元気いっぱいにキメ台詞を口にする。 兄の紳護も相変わらずの落ち着いた様子で妹を見守っていた。 「いちばんを捕まえてほしいの、つかまえないと、わるい人と一緒にどこかいっちゃうんだよ?」 広げられたスケッチブックには、棒のようなものを持った人影と、眼鏡をした人影が子供の下手な絵で描かれている。 前者には『いちばん』の文字、眼鏡をした方には『おそれやま』とグネグネの平仮名で振られていた。 いちばん、それを指し示すものが直ぐには浮かばないだろう。 それを察すると紳護が口を挟む。 「SN1といわれるアーティファクトだ、今はフィクサードの冴崎 司郎の体を使い、行動している。以前回収任務を行ったのだが……残念ながら失敗に終わった」 簡単な説明を入れると、直ぐにノエルが言葉を続ける。 「ノエルが見た夢ね、いちばんとわるい人が会うのは、もうちょっと先なの。だから、会う前に捕まえちゃえば大丈夫!」 予知を予知通りにさせないのが今回の作戦だ。 「ノエルが予知した場所なんだが、上手くいけば地の利を得られそうだ」 紳護はコンソールを軽やかに叩き、現場の地図を投射する。 司郎が次に現れると予測されているのは、建設途中で廃棄されたビルだ。 「中は廃材やそのまま放置されたキャビネットやパーテーション等が乱立し、不意打ちに持って来いだ。場合によっては障害物ごと奴を攻撃してしまえばいい、それに……攻撃は当てるだけでいい」 以前の話を知らないリベリスタ達は首を傾げるのも分かる、紳護は言葉を続けた。 「奴は自分が攻撃を受けたと認識すれば……SN1から解き放たれる、ノエルの予言を読み解くならそういう事になる」 絶対の自信を誇る回避力、プライドともいえようそれに傷を付ける事が勝敗に繋がる。 「直接的に被害を与えるには難しいと思うが、即興ながら使えそうな物を準備した。上手く使ってくれ、間違っても自滅する結果にならないようにな?」 所謂トラップだが、待ち伏せて設置する程余裕はないだろう。 隙を見て仕掛け、上手く追い込めれば勝利にも繋げられる筈だ。 「とにかく徹底して、直撃させるプランで戦ってもらいたい。尚、奴の攻撃パターンも変化してきているので、それは資料を参照してくれ」 一通り説明が終わると、今度はノエルが口を開く。 「それとね、いちばん を、ただのお道具って思っちゃダメなの。いちばん は、いちばんで、お道具だけじゃないの」 たとえ司郎から離れても、ある程度の自我は残る事になる。 下手にただの武器と手にしようものならば……酷い目に合うだろう。 「あとね、いちばんは『おれにおまえのぜったいのすべてをしめせ、すべてでおれをのみこめ』って言ってたの。できる人は、いちばんとおともだちになれるかも?」 こてんと首を傾げるノエル、あれから夢の中でみたSN1の情報は変わらなかったのかもしれない。 「冴崎の戦闘データは以前のものから進化している、より手強くなっているが逃げられるわけには行かない。心して掛かってくれ」 紳護の言葉に頷くリベリスタ達、ちょこちょことノエルが数歩前に出ると彼らを見つめる。 「いちばん は、すっごく何かを大切にするの、それを傷つけると……すっごく怒るからきをつけてね? あと、ノエルは……ちゃんと皆が帰ってきてくれる方がうれしいの、だから……ちゃんとかえってきてね?」 以前の失敗が不安となって少女の心を曇らせる、ならば晴らすのみと彼らの決心もより強くなったことだろう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月12日(木)22:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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