●ゆうかんなおはなし ラ・ル・カーナの三つの月の下。一人のフュリエが居ました。 彼女の名前はアラザン。淡い藍色の瞳がとても綺麗なおんなのこです。 何処か拗ねた様な彼女が思うのは別の世界から帰ってきた末の子の事でした。 「変なヤツに助けられたって聞いたけど、そいつらを連れてくるとか!」 アラザンにとってニンゲン――アークのリベリスタはよく分からないヤツらでしかありませんでした。 なんたって、彼女は『正義の味方』なのだから。 アラザンは自分一人でどんな『コワイモノ』にも勝てると思っていましたし、現れた変なヤツが『正義の味方』にとってかわってしまう可能性が彼女はとってもとっても怖いのです。 「エウリスは末っ子だから、まだ弱いけど、ボクならどうにかなったもん!」 彼女にとって『おねえさま』達が一番でした。 勿論『おねえさま』――他のフュリエ達を脅かすものはたくさんあります。 そんな『コワイモノ』から『おねえさま』を護ることが自分には出来るとアラザンは思っていました。 「ボクがおねえさまたちを護るんだから!」 『コワイモノ』たちから『おねえさま』を護るべく彼女は集落を飛び出したのでした。 ●ゆうかんなる君を追って 「お集まりいただきありがとうございます」 フュリエ族の長であるシェルンは何処か落ち着かない面差しでリベリスタ達を見つめた。 彼女は同胞の話しをする。人懐っこくて、何処か幼さの残る彼女らの同胞、アラザンは『勇者』になることを夢見ているという。 そんな彼女の目の前に力ある者――アークのリベリスタが現れたのだ。 ここで負けてられない!と彼女は集落から飛び出してしまう。 「彼女に巨獣達に打ち勝つ力などありません」 行動は立派なのだが、何も考えていないというアラザン。 とても怖がりで、臆病だけど頑張り屋さんで其処が良い所でもあるのですがとシェルンは微笑んだ。 「――本題を。彼女が向かっている先にバイデンが居る様なのです」 それは『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)の感情探査で判明した事柄であった。 小さくレーダーに触れた思いに双眼鏡を覗き込んだ先、居たのは一人のフュリエと三人のバイデンとそれの乗り物と思わしき巨獣。 大きな岩の周りをぐるぐると追いかけっこしているその様子は何とも呆れる光景であった。 「皆さんの遊びで鬼ごっこ、というものがあるそうですね。其れに少し似た状況なのかもしれません」 そんな状況なのですが、危険なことには変わりない、彼女はそう言い頭を下げた。 宜しければ助けてあげてください、と。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月05日(木)23:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 空に浮かんだ三つの月が異世界の気配を感じさせる。肌に触れる冷たい空気が夜である事を感じさせた。 この世界の夜は長い。明けない夜はないけれど、自分たちがいた世界とは違う時間の長さ。 「ラ・ル・カーナでの仕事は初めてですが……」 小さなため息を漏らしたのは鶴の翼を風に揺らした『紅瞼明珠』銀咲 嶺(BNE002104)だ。 何時もの様に場と戦力を踏まえる。慌てず騒がず。本部オペレーターの彼女は出張して状況を開始する。 「さあ、参りましょう?」 眼前にそびえる大きな岩。その後ろでエリス・トワイニング(BNE002382)は髪を夜風に靡かせて佇んでいる。 「勇者……英雄、というものは……」 彼女は英雄譚を語る。多くの人々の憧れた伝承、伝説。語り継がれる『勇者』のお話し。 勇者に必要なのは勇気。其れととても似ている感情がある。其れが無謀。勇気と無謀は違う。その身を滅ぼしていくものが無謀。区別がつかなければ、取り返しがつかなくなる。 「ああ、勇敢な心も情熱も、誰かを護りたい気持ちも立派だ。無くすべきではない」 『紅炎の瞳』飛鳥 零児(BNE003014)はエリスの語る伝承に耳を傾けながら頷く。 立派な行動、それはきっと抱く事が難しい気持ち。だが、無謀な行動で傷つくのは、また違うのだ。 傷ついてほしくはない――だが、戦いは過酷だ。時に仲間と協力して誰かを護ろうとするその姿が大事であると、彼はその身を持って伝えたいと考えていた。 その背中を見つめる『Fuchsschwanz』ドーラ・F・ハルトマン(BNE003704)の気持ちも零児と一緒だ。 どれだけ強くたって一人では出来る事が限られる。頼り合いと庇いあい。仲間がいなければいけないのだ。 小さな小さな勇者に仲間の存在を分かってほしい。一緒に居ることで心強く頼れる存在になれればいいと、彼女の目標でもあり、そんな存在がいると言う事を分かって貰いたい。 「仲間は、良いものなのですよ」 彼女はちらりと背後を仰ぐ。後ろに立っていた『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)は何処か居心地が悪そうに目を逸らす。 「勇者、ね……」 勇者。含むように言う。その気持ちだけで誰かを救えるのならアークの『お人よし』が悔しげに俯いている様を見ることなんてないのに。 俯き悔しげに涙をこらえる仲間達をよく見てきた。だからこそ思う、その現実を知っているからこそ、何処か、彼女は居心地の悪さを感じていた。 綺沙羅の様子を眺めていた『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)はその口元に小さく笑みを浮かべて見せる。 「でも、大切な人を護りたい、って意思は大事だね」 それでも傷ついたり、大切な人を悲しませるのはいけないこと、と優しげに微笑む。脳内にちらつく大切な人の顔。 もしも、悲しませたら、喪ったら――取り戻せないのは分かっている。何処か拗ねた表情を浮かべた彼らの前に暖かな風が吹く。 勇者、勇者。 「アザラシを……確保、します」 「エリス、アラザンだよ」 綺沙羅の冷えた声が暖かな風に交じって響いた。 ● 追いかけっこが続いている。すばしっこいが疲労困憊のフュリエの少女。ぜいぜいと肩で息をする彼女らへと影がかかる。 「異世界のみなさん、ごきげん麗しゅう!」 『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は何と吃驚、岩の上から登場。 其れに続いて、『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)が堂々とその表情に『勇者』を浮かべて登場した。 「アラザン! すけだちいたす!」 たどたどしいフュリエの言葉。伝わっていないかもしれないが、イーリスははっきりと宣言する。 自分たちがフュリエの小さな勇者――アラザンにとっては変な奴らであることは分かっている。通じぬならその心で、その言葉で、その態度で示すしかない。 「私! ゆーしゃなのです!」 夏栖斗は岩の上から飛び降りて、岩の周りでぐるぐると追いかけっこをしているアラザンとバイデンたちの間へと現れる。 其れに続いて嶺も翼を揺らし、岩の上から飛び降りる。まるでその様は勇者というよりも子供向けのヒーロー番組の様子にも見て取れる。 バイデンは呆然としているし、其の背後でジラジラが形容しがたい鳴き声をあげている。鬼ごっこはストップした。 勿論、岩の上から現れた『よく分からない奴ら』にアラザンもぽかん、と口を開いたままでいる。 「――!?」 「こんにちは、大丈夫、助けに来た、頑張ったね、偉いよ」 微笑みながらアラザンに声をかけた夏栖斗。迷子のフュリエが教えたという単語を駆使し、たどたどしく語りかける彼の言葉は通じたのか彼女は何処か泣き出しそうなほどにくしゃくしゃに表情を歪めた。 「シェルンに頼まれて来た」 此処は任せて、と綺沙羅はちらりとアラザンを仰ぎ見る。少女は敬愛する長の名前を聞き、ぽかんと口を開く。 きっと優しき長が心配してこの『よく分からない奴ら』を送り出したのだろう。どうやら、良く分からない世界の勇者も派遣されてきたようだ。 助けに来た、と伝えたエルスはエネミースキャンを使用し、目の前の何処か子供っぽさを感じさせるバイデン達を解析しようとする。しかし、全てが上手くいくわけではない。辛うじて得れた情報を彼女は仲間たちに伝え、背後に下がった。 剣と思しき鉄塊で行く手を阻んだ零児はバイデンら三体のうちにガキ大将と思わしき風貌のバイデンではなく連れ添っていたいじめっ子風の2人へと向き合う。 零児が抑えきれなかったバイデン――チャブキの前に立った綾兎はその身に風を纏う。 「バイデンボーイズばお任せしますよ」 アラザンを背後に隠した夏栖斗の後ろ、守るために、と彼女の頭を撫でつけて優しく微笑んだ嶺の視線はバイデンらの奥でクケーだかガギャーだか形容しがたい鳴き声を上げてすらりとした脚で地面を踏みしめるクジラ的物体――ジラジラへと向けられる。 「クジラに足ですか、しかも美脚……」 何処か悩ましげな表情のドーラの隣に立っていたエリスも頷く。つぶらな瞳で此方を見てるジラジラと子犬のCMばりの状況になっている、が。 「まあ、敵ですから」 さらっと気糸が図体のでかいクジラ(しかも美脚)を捕えてしまう。 「――!? ――ッ!!!」 「こいつ何奴だ。成敗して遣ろうって言ってる」 訳をする綺沙羅の表情が消えていく。はいぱー馬です号と名付けたなんと乗れてしまう――否、当たり前に乗れる馬にまたがったイーリスは興味深そうに巨獣の骨を持ったバイデンを見つめている。 「めんような! クジラに足! 古風! いくですよ!」 巨獣の骨で出来た鈍器を持ったバイデン、ガキ大将の様な風貌をしたジンジャーへとイーリスは勢いをつけて迫っていく。 「ガキ大将! いざ勝負! 必殺のいーりすまっしゃー!」 ――と名付けられたデッドオアアライブは見事にジンジャーへとブチ当たる。これには痛い痛いとジンジャーも涙目になっていた。 其処に夏栖斗の鋭い蹴りから繰り出されたカマイタチが追い打ちをかける。ジンジャー君はこれにはそろそろ涙が溢れても仕方がない頃愛だ。 不服そうであり不安そうなアラザンに振り向いて大丈夫だよと手を振る夏栖斗。仲間に頼る事が大事だと気づいてはくれまいか、そうは思うが推さない考えを持つこのフュリエはただ首をかしげるだけであった。 『あいつらなんだよ!』 『なあ、ジンジャー怖いよあいつ! お前とか生姜焼きにされちゃうよ!』 『うるせーな、黙ってろよ!』 「何か喧嘩してるんだが」 「馬鹿ってああいうのを言うんだね……」 目の前で何を言ってるか分からないが口げんかを始めたバイデンボーイズに零児も綾兎も苦笑してしまう。 だが、笑って、嗚呼可愛いねで終るわけがなく―ー周囲にあった石を此方に向けて投げてくるシュチとチャブキの攻撃を軽やかに避けImitation judgementを振った綾兎は笑う。 「弱い者苛めってかっこ悪いんじゃない?」 背後にいるアラザンにこれ以上怖い思いをさせる事などしたくはない。短い片刃のナイフは目の前のチャブキだけではなくシュチをも傷つける。 「鬼さんこちら」 手のなる方へ。まるで楽器を鳴らす様にキーボードをタッチする綺沙羅の放った閃光により背後に居るジラジラが動きを止めてしまう。 「そうだ、小雪さん、ジラジラってどんな乗り心地なのでしょうか?」 Oerlikon cannonを構えジンジャーに良い武器である事と自身の武器も同じ位に格好いいという事をアピールしていたドーラは笑う。 「さあ? 聞いてみればいいんじゃない?」 「お答願えますかね?」 聞いている場合でもないかもしれませんけれど、と大型の武器を構えていた彼女はジラジラへと蜂の巣の様な連弾を放つ。よく分からない鳴き声を上げているジラジラの背中は乗るにしてはツルツルしている様にも見受けられた。 「乗り心地は悪そうです……」 「乗って、みたいの……?」 マジックアローでジラジラへと応戦していたエリスは首をかしげる。乗ってみたいのかと聞かれ、ドーラは微かに首をかしげた。 珍しい生物ではあるから、確かに興味はあるけれど。 「美脚ですから」 余りにシュールな生物となると、乗る気も失せてしまう。興味は何処まで行っても興味のままが一番だ。 「なんと! はいぱー馬です号の方が乗り心地はよいのです!」 「馬だもんね」 はい!と元気よく返事をしたイーリスと共に夏栖斗はジンジャーへと攻撃を与えている。 ちらり、と勇者は背後で守られているアラザンを見つめる。無理やり勇者になりたい少女を護っているこの状況。 きっと不快だと思う。勇者であるイーリスからすると其れは嫌で仕方がないからだ。 隣を見る、蹴りを放つ手前、視線に気づいた夏栖斗は意図を把握し笑いかけた。 「上位世界の存在、はいぱー強いのです!」 「そうだな! はいぱー強そうだ!」 2人は笑いあう。一人なら無謀な事だけれど、仲間が居れば大丈夫だとアラザンに伝えるかのように。 放たれた蹴りとイーリスマッシャーを避ける事ができずジンジャーは尻もちをつく。が、それで黙っていてはガキ大将の名前がすたる。 巨獣の骨から出来た武器を振り回し、イーリスを殴りつける。其の体が背後に吹き飛ぶが、其れをも楽しげに自信を持って笑う。 「悪い子にはお灸を添えなければいけませんね」 悪い事をしたならばお仕置きですよと銀の羽衣を揺らして嶺は微笑む。笑っている割にその攻撃はちくちくと抉ってくる。中々に痛い。 先ほどからずっと足止めを喰らっているジラジラへと氷の雨が降り注いだ。無表情にただ、その音色を奏でる綺沙羅。その氷の雨は荒れ果てた荒野を潤す。 天使の息で回復の支援をしていたエリスは超直観を使用して周囲を見回していた。 周囲の警戒を怠らない彼らの周囲に巨獣の気配はない。零児は狙いたい敵――ジンジャーへとその自慢の武器を振りおろした。 綾兎は未だ二体のバイデンを相手にしている。もはや、これは上位世界の住民との戦いというよりも子供との喧嘩だとか武器自慢に発展して言っている様にも見えた。 「自慢の武器をなくしたら、流石に逃げるだろう!」 彼の自慢の武器がジンジャー君お気に入りの巨獣の骨へとぶつかる。ジンジャーの武器は其の侭ジラジラの足元へと飛んで行き、其の隙をついてイーリスが馬に跨り走り込んできた。 「去るなら追わぬ! されど立ち塞がるならみんな斬る! です」 格好が言い言葉を宣言しているはずなのに楽しげな雰囲気の彼女の表情を見ていると、何処かお遊戯会を思い出す。 勿論座り込んだジンジャーへの攻撃を怠らない勇者ははいぱー馬です号の上で中々の決めポーズを決めていたのであった。 「れーちゃん、アラザン頼んでいい?」 「ええ、お任せを」 有難う、と笑った夏栖斗は目の前の面妖なクジラへと焔腕を使用する。燃え滾る炎に驚いたクジラが慌ててもだもだするのを確認しながら彼はクジラを殴りつけた。 「――!!」 「~~ッ! ――!」 何やらまくし立てる様に言う2人のバイデンと辛うじて動く事の出来るジラジラ。 半分泣いた状態で大将であったジンジャーをジラジラの背に乗せて慌てて去っていくバイデン。 去る者追わず――今回はアラザンの確保を第一にしていたリベリスタ達はその背中が遠ざかっていくのを見守っている。 『ばーか! ばーか!』 『覚えてろよ! この勇者ども!』 なんて、褒めてるんだか貶してるんだか分からない言葉を残して逃げて言ったことはタワー・オブ・バベルを所有する綺沙羅しか知りえない事なのであった。 「……馬鹿って何処まで行っても馬鹿なんだね」 キサ、呆れちゃう。 ● 逃げ去っていく背中を追いかける事もなく夏栖斗は小さくため息をつく。 事前に調査しておいたため、安全な方向も分かっているために帰りに危険はないだろう。 出来れば捕縛をしたかった、と静まりかえる荒野にて思う。 「アラザンさん、怪我してるね」 座り込んでいた勇者の左腕に綾兎はハンカチを巻き血止めを施す。俯いたままの彼女の頭をぽんぽんと叩き、少しばかり呆れた表情を浮かべた彼は立ちあがる。 「全く、勇気と無謀は違うんだから……」 大切で大好きな『おねえさま』だけじゃなくて、自分も大事にね、と彼は笑う 「――!―――ッ」 「でも、お姉さまを護りたい、って……あんたの今日の行動は仲間の為じゃ無いでしょ」 呆れかえった様な綺沙羅の言葉に、ぐっと詰まったアラザンに綺沙羅はため息をつく。 「キサ達に自分のお株を奪われるのが怖かったんでしょ」 考えれば分かるでしょ、と彼女は言う。力のない、まだ幼さの残る貴女が一人で飛び出して、追いかけてきた人が傷つくかもしれない、巻き込むかもしれない。 ――それはとてもとても、怖い事だ。 「勇者って、今恐怖に駆られるも感じないも違う。恐怖と戦える人のことだよ」 ぽす、とアラザンの頭に触れた綺沙羅は笑う。ホントに勇者になりたいなら自分の弱さと向きあえば、と。 「――~~……」 何と言ったのか綺沙羅は訳さない。その様子を背後で見ていたドーラはおずおずと脚を進める。如何か伝えたい言葉があるのだ、と微笑む。 「勇気というのは勇敢な者という意味ですよ。だから、アラザンさんは勇者です」 とっても素敵な勇敢な小さな勇者。ドーラは彼女に手を伸ばす。願うなら、この先の彼女の思いを紡いでいく事。 「そんな勇敢な貴女とお友達になりたいです」 だって、護りたい何かがあって、護りたい誰かがいるだなんてとっても素敵。 「……っ」 「いいよ、ってさ」 その手を握りしめたアラザンにドーラは嬉しそうにほほ笑む。厳しい顔をしていた零児は如何に戦闘が一人だと危ないのか、と注意する。 その様子に泣き出しそうなアラザンは友人の――ドーラの後ろに隠れて何やら口をもごもごとさせていた。 「――」 ごめん、そう言ったのだろうか。雰囲気から読みとれた其れに零児は心からほっとしたように息を漏らしアラザンに笑う。 「よかった」 よかった、と思う。無事で、よかったと。心を鬼にして注意した。彼女が此れからも危険に晒される等耐えがたいからだ。 周囲を見回していたエリスが野生の生物の接近を注意深く確認している。 合わせて周りを見回していた嶺は翼を揺らしてアラザンへと微笑みかける。 長い夜はまだ明けない。何処か生ぬるい空気が髪を揺らす。帰ろうか、と夏栖斗は笑う。 「帰ろう、アラザン。お姉さまのもとに」 「そうですね! 帰るです!」 はいぱー馬です号の蹄を鳴らし輝く笑顔でアラザンを見た勇者は手を差し出す。何処かぽかんとしたアラザンに満面の笑みを浮かべたイーリスは呼ぶように手招きした。 「馬にのるです! つかまるです!」 傷を負った勇者はそんなもの気にも止めずに手を伸ばす。その背にアラザンがおずおずと手をそえたのを確認し、リベリスタ達は歩きだす。 「でも危険はまだまだあるよ」 キサも確認するけど、皆も対応お願いね、と綺沙羅は周囲を見回す。 「ここは危険なのです! ずらかれ、ぴゅー!」 「――♪」 背後でフュリエの少女のイーリスのまねをして笑った。 未だ上った三つ月の下。勇者は得た仲間と共に歩いていく。 一人で歩む事はない。 それが、勇者になりたい君に捧ぐ言葉。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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