●塵塚怪王 ぶつかりあう巨獣と巨獣。。 鈍い銀に光る恐竜の鋭い爪先を、鈍重そうな漆黒の獣は見た目より遥かにしなやかな動きを見せ、その一撃を黒い頑丈な表皮でいなす。 一撃を放ったのは、鋼の恐竜。様々な家電製品を組み合わせたティラノサウルス。異様な威風を放つ家電の暴君。 迎え撃ったのは、漆黒の鎧に包まれた獣。タイヤを重ね編み合わせたアルマジロのような鎧獣。 鋼の恐竜はその口腔を開く。ちろちろと覗かせる小さな炎とか突如としてゴウと吹き荒れる業火の炎。 荒れ狂う炎をものともせず、タイヤの鎧獣は、そのまま体を丸めて回転、体当たり! 衝撃が地を揺らす。 再びぶつかり組み合う2体の巨獣。 舞台はゴミ山闘技場、山の中の不法投棄場。 塵の山の頂上決戦。 ●黒猫はかく語れり 「ゴミを分別なんてのは軟弱者がするものだと思っていたが……」 この男、『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は何時もの様に唐突に話を切り出す。 「こっぴどく叱られた。この社会はロックに生きる者には優しくないな」 悪びれた様子も無く肩を竦める伸暁。美学に生きるのもまたロックなのだ。 「さて、無駄話はこの程度にして、今回の依頼はエリューション退治だ」 デスクの上に無造作に放り出された資料の写真には、二匹の巨獣が格闘し組み合っている姿が映されていた。 「一匹は棄てられた家電の、太古の恐竜リスペクトだな」 そういいながら拡大写真を見せる。 なるほど、家電が組み合って直立した姿は若干デフォルメされたティラノサウルスに似ている。 「太古のロマンと、現代科学のドリームコラボレーションってやつだ。良いセンスだよな」 独特の感性を持つこのフォーチュナーは若干誇らしげに言う。 「もう一匹は、黒くて硬い素敵な奴さ」 黒いゴム質の鎧に包まれたアルマジロもどき。その姿は見た目以上に硬く強靭そうだ。 「こいつはこいつで、転がり回る運命のような生き様にもへこたれることのないロックな漢だ」 転がって攻撃してくると言いたいらしい。 「なかなか骨のある相手だぜ。ハードなミッションになりそうだ」 頑張れ、と無駄にさわやかに言い放つ。 「こいつ等は、とある県山中のゴミ処理施設場…という名の不法投棄場に発生したゴミから生まれたエリューションだ。管理してた企業は違法操業している事を知られたくないために、施設を放棄してとんずらを決め込んだらしい。つまりそこは今、無人というわけさ」 逃げた所で無駄な努力だよな。と、肩をすくめる。 アークの目からは逃げ切れない。 「生まれた頃はフェーズ1だったこいつ等も、お互い縄張りがかぶって気に入らなかったんだろうな、仲良く喧嘩した挙句にお互い切磋琢磨。この度めでたくフェーズ2まで進んだようだ」 それを聞いたリベリスタ達はゲンナリする。まったくちっともめでたくない。 「若干足場は悪いかもしれないが地ならし役がいた為に戦場の広さは問題ない。昼間だろうが夜中だろうがほぼ人通りは無いと見ていい。だが、2匹とも驚異的な早さで成長しているため日数的には余裕がない」 このままバグホールでも開いたら事だからな、と伸暁は続ける。 「とにかくDust to Dust,Ashes to Ashes.塵は塵へ、灰は灰へってな。ゴミはくずかごにってことで、最高にエコでクリーンな戦いっぷりを期待してるぜ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:築島子子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月29日(日)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●塵塚に到る 耳に入るは衝撃音。鉄が軋み、うねり、擦り合わされることで発せられる不協和音。 地を転げ、均し、重いものがぶつかり合う衝突音。 深い深い山の奥深くに人のエゴによって築き上げられたゴミの山は、人外の物達の幾度と無い衝突の末、さながらローマのコロッセウムの様に荒いながらも臼状となっている。 ぶつかり合う巨獣と巨獣。ゴミより生まれしエリューション。塵塚怪王・電と円。それに挑むは八人のリベリスタ。 そう、そこは闘技場。ゴミの山にて二頭の巨獣が作りし塵塚闘技場。 かくしてリベリスタ達は闘技場に辿り着く。もちろん戦うために…… 「……派手にやっているようだ。今のうちに配置に着いたほうが良いな」 先行し様子を確認した『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(BNE000288)の言葉にリベリスタたちはゴミ山を登る歩みを速める。 ああ、でもしかし、目に見えるのはゴミの山、掻き分け歩むもゴミの山。 「……やっぱりゴミの中で戦うのは正直嫌だな」 そうはいってらんねーけど、と呟く『Fatal Arts』奥瀬・樹(BNE002376)の言葉を積極的に否定するものはこの場にいない。 五月晴れと言ってもいささか暑すぎるこの陽気、不燃物が大半といえども漂う異臭に辟易としないはずもない。 「けどさ! ゴミが怪獣にまで育つなんて凄いなぁ。時代が生みだした怪物、ってか」 よーし、頑張って倒すぞー! と、気合を入れる『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915)の横で『天翔る幼き蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)は、心の中で何度も作戦の手順を反芻する。 大丈夫、あれだけ考えたんだ、倒せるはずだよね。大怪獣にだって負けはしない。 見えてきたぞと声が掛かり、駆け寄りてみれば、まさに大乱闘。 電が吠えれば、円が打ち。円が打てば、電が噛む。 塵塚闘技場の中央で、二匹のゴミのエリューションは今日も戦っていた。 勝負をつける気が有るか無しか定かではなくも、日課の如く戦う二匹に年月の長さなど意味はない。 リベリスタが現れるまでは…… うわ……と、誰かが呟いた。本当に怪獣だよ。 「塵も積もれば山になるとは言え、これは大きくなりすぎだよ」 「そうね、ゴミがこういう風になるなんて、エリューション化ってある意味究極のリサイクルって奴かしら?でも、こんな形で再利用されても困るわね」 金色の鎧を輝かせ唸る『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)の言葉に来栖・小夜香(BNE000038)は眩しそうに言葉を返す。その鎧、いくらなんでも目立ちすぎでしょう。 「あぁぁ……」 喉の奥から搾り出すように唸り声を上げるのは、『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)。オレンジの瞳を丸くして二匹の怪獣を見つめていたと思ったら唸り声。 「こ、子供の頃はこういう怪獣達のバトルに憧れたものだけれど……なんか……なんか……とてもエコを心がけたくなるよぅ!憧れる心どこいったぁ!」 若干大袈裟なくらいに落胆する相方の姿に、鷲祐はやれやれと肩をすくめ、大丈夫か? と肩を叩く。大丈夫だよぅとアナスタシア。 「……怪獣退治も仕事のうちか。塵塚怪王、案外、古来の妖怪なんてものも、偉大な先達が潰してきていたのかもな」 事実妖怪と関わったというリベリスタの報告もいくつか上がっている。 ならばこれも…… 「……俺達の仕事だ」 闘技場に踏み出す。今ならば気付かれずに接近も図れるだろう。 「このゴミ山の落とし前は、アークに任せるとして、ゴミはゴミに。塵は塵に。怪談話は闇の中」 鷲祐に続くように足を踏み出す『アリアドネの魔弾』不動峰 杏樹(BNE000062)。シスター服を颯爽と翻し、神打つ拳を心の内に握りしめる。 「さあ、大掃除前の大解体と行こうか」 この怪談話の成り損ないに終止符を打とう。 ●怪王、二匹 電は混乱していた。数々の情報が錯綜し、無機質な思考にノイズが走る。 止めの一撃を最後として終わるはずであった日課の乱闘の結末に。 身の丈の半分のも及ばぬ者達の猛攻を、その背に受ける終生のライバル――円の姿を目の前にして。 奇襲を受けた瞬間に、襲いかかった者たちを背に置いて、己を押しやった円の姿に。 電は激怒した。この者たちが何者であろうと、己達がどのような存在であろうと、このような水入りをした者たちを許すわけにはいかぬ。 我が友を無用に傷つけるなど以ての外だ。 電は、己と友のために激怒したのだ。 二匹のエリューションを乱闘させて、疲弊した所を強襲するというリベリスタ達の作戦は見事に成功した。 突然の強襲に二匹は対応する事が出来ている様子はなく、ただただ攻撃を撃たれるのみ。 円はその体を起こし背に向けて、ゴムとタイヤの鎧を盾に、リベリスタたちの攻撃に身を晒している。 電は完全に状況を把握しきれていないようで、眼窩の赤い光を瞬かせながら、呆然と立ち尽くす。 待機している間に十分準備を施したリベリスタたちの攻撃が円を打つ。 幻影を纏った一撃が、闘気を込めた一撃が、炎を巻き起こす拳が、鎧の隙間も撃ち抜く一矢が、魔力を練り上げた矢が、紅蓮の爆炎が、円の姿を覆うように撃ち込まれる。 「このまま押し込むよ!」 玲は言葉と共に蹴りを放つ。空気をも巻き上げる蹴撃は鋭い斬撃となり、円の背に更に傷を穿つ。 作戦は成功だ。このままこちらのペースをキープしたまま……! 轟ッッッ!!!! 瞬間、電が吼えた。 計り知れないほどの憤怒と慟哭と失意を湛えた咆哮であった。 渦巻かんばかりの殺意を押し込めた雄叫びであった。 その双眸を紅く燃やし、怒りを滾らせたその姿。まさに威風。君臨する王者の如し。 電の姿に後押しされるように、猛攻のダメージも乱闘の疲れも感じさせない動きで円ものそりと向き直る。 「なるほど、これは強敵だな!」 静がハルバードを構え、強気に笑う。 まだ大丈夫。笑えているうちは、大丈夫だ! 電は口を大きく開き、そして―― ●円、転撃 ――そして炎が巻き上がる。 「あれだけやって無傷ってことはないだろっ」 炎の届かない位置で、小夜香、付喪、杏樹を庇うように立つ樹が蹴りを放つ。 電の発する炎の渦を切り裂くように放たれた蹴撃は円の腹部を打ち付ける。 若干揺らぐその姿にやっぱりな!と会心の笑顔を浮かべる。 「よーし!」 玲がそれに続けと更に蹴りを放つ。狙うは樹の付けた傷! 爆ぜる衝撃にぐぅるると唸る声は、怒りによるものか苦痛によるものか…… 「もう一発おまけだよぅ!」 円の懐に潜り込んだアナスタシア。 褐色のしなやかな体を、腕を、脚を、全身のバネを最大限に駆使した一撃。 巻き起こる衝撃と一瞬遅れて響く轟音。 まさに渾身。 バズンッ 重く、硬いものが爆ぜ割れる音が響いたのちに溢れ出る廃液とも血液ともつかない液体が地を斑に染めた。 腹部から夥しい体液を吐き出しながら巨獣の、円の苦悶に満ちた咆哮が響く。 巨躯を揺らしアナスタシアを弾き飛ばした円は怒りを持って周囲を睥睨する。 その片眼が杏樹の巨大ボウガンにより吐き出された矢に貫かれ、鷲祐の繰り出すナイフで傷の無い箇所は無いくらいだ。 「響け、癒しの福音――」 純白の翼を広げ朗々と奇跡を歌う小夜香が仲間の傷を、痛みを癒していく。 リベリスタは猛攻を続け、円はその身に傷を増やしていく。 電はそれを許さずと炎を打ち出すが、円もそれに巻き込まれる姿を見ると、苛立たしげに喉を唸らした。 円は身に降りかかる全てに煩わしいと体を揺らすと、ゴロリ。体を転がす。 ゴロリ。ゴロリ。 二回転、三回転、その場で数度、球形となった円が回る。 それを見たリベリスタの反応も早かった。 「わぁっ……とっ」 静を始めとする、至近距離にいるものは、戦闘で散乱したゴミの影に身を潜め。 小夜香など、遠距離にいるものは、更に距離を取り。 次に何をするか、わかっていれば恐ることはない。畏れることはない。 それは、囁かな驕り、敵を知りすぎた事、それが若干彼らの視野を狭めた。 次の『動き』に反応できたものは僅かであった。 巨体を揺らし接近してきた電の姿に、その丸い姿で後方を見据え転がることによって前進を始めた円の姿に。 「しまった!」 焦った玲が思わず飛び出す。 だがその流れを変えることが出来ず、行く手を阻む電より放たれた氷雪が視界を白く染める。 周囲に存在する全てを凍てつかせる冷気がリベリスタの体力を奪う。 思いも寄らぬ円の接近。 杏樹が、付喪が、小夜香が、樹が、弾幕を貼り応戦するが、その速度が緩むことはなく、更に勢いを強め四人に殺到した。 重々しい激突音が四つ、響いた。 ●逆転への布石 歌が聴こえる。 癒しの奇跡を乗せた、小夜香の福音の歌だ。 気を練り傷を癒したアナスタシアはゴミの山より体を起こす。 鷲祐も、玲も、静も、同じ様に各々の武器を手に、目の前に立つ電を見る。 背後には後衛に回った円の姿、その球形の体を転がし、仲間を追い立てている。 「さっきまでとは逆の立場か……行くぞ」 トップギアで電に取り付き、ナイフを突き立てる鷲祐。 それに続くように玲もアナスタシアも電に蹴りを、拳を突き立てる。 俺も、と続こうとした静に静止の声。 「行け、静。あいつらを援護してきてくれ」 寸での所で電の攻撃を掻い潜る鷲祐は常にそうあるように、冷静な声をかける。 「行って!静さん!」 「こっちは、私たちにお任せだよぉ!」 玲とアナスタシアの声が、静の、若き戦士の背中をそっと後押しする。 「行ってくる!」 決断すれば即実行。 迷いのない大胆な踏み込みで電の脇を摺り抜け、静は走った。 「鎧が汚れたらどうするんだい。全く」 円に打ち据えられ、満身創痍の付喪が忌々しそうに呟く。 小夜香の癒しの歌で何とか立ててはいるものの、樹の蹴撃も杏樹の瞬速の矢も付喪の魔弾でも円の勢いは止まらない。 覚悟を決めたほうが良いかもしれないね…… 黄金の鎧の内で円の衝突の衝撃に備えた付喪の目に信じられない光景が浮かぶ。 ゴミの山を押しつぶしながら転がり迫る円の前に、静が立ち塞がる。 帽子を整え、ハルバードを構え、意思を込めた眼差しを真っ直ぐ円に向ける。 「チャンスが来たら、一気に押し込もう」 身長以上もある巨大なクロスボウを構えて杏樹が言う。 「あの体格差はちょっと無茶がある気がするのだけれどね……」 「大丈夫だ。やってくれる」 自信満々に述べる杏樹にそうかい?と苦笑し、付喪は魔力を練り始めた。 転がり迫る円を前にして、静の気持ちは逆に落ち着いていた。 ハルバードを強く握り締め、大きく力を込めて振りかぶる。 チャンスは一瞬。この刹那―― 「行けッ!!」 静の真正面から裂帛の気合を込めて打ち込んだ一撃は、転がる円の回転を止める。 食い込む刃、ジリ……ジリ……と加えられる圧力に、腕が、武器が、悲鳴を上げる。 「だぁッ……!」 振り切る腕に円の姿は中空に飛ぶ。 弾かれた円は、地を数度バウンドした後、土埃をあげ、電の足元に転がった。 「なるほど、まとまったね。汚物は消毒だーってね」 待ち構えていたように、付喪の放つ爆炎が、杏樹の放つ矢の雨が、円を、電を、焼き貫く。 転がり、焼かれ、貫かれた円は、その球形を解いたその瞬間、タイヤとゴムの束となりボロボロと崩れ落ちた。 断末魔も何もない最後であった。 ●塵塚怪王・電 激昂の声を上げる電の咆哮がゴミ処理場に響きわたる。 鋼の体を数度となく斬られ、打たれ、撃たれども、その爪と牙で、リベリスタを切り裂き、炎を吐き、氷雪を放てども。 電は膝をつかず、リベリスタも誰一人欠く事無く戦い続ける。。 「……っ、巡れ、魔力の円環」 小夜香は肩で息をし、数度目となる魔力循環術式を編み込む。 「響け、癒しの福音っ」 息を切らせながら歌声を響かせる。 戦線を維持する、癒やし手の戦い。 戦いはリベリスタを優勢とし、終幕を迎えようとしていた。 だが満身創痍である電には最終最後の切り札を残している。 紅く灯した瞳に怒りを漲らせ、電は『力』を開放する。 肩口から溢れ出た電光は徐々に電の体全体を包み、その巨体を一つの砲身として体内に収縮する。 「隠れて!」 叫んだのは誰だったのか、反応できた者は隠れ―― 眩い雷光が視界を埋めた。 雷光が地を薙ぎ、空を裂く。 暴虐の一閃はゴミ山を半ばまで焼き払い、電は勝利を確信し咆哮する。 蒼い閃光……火傷を負いながらも鷲祐は疾風のように瓦礫を駆けた。 早く! まだ速く! 風のように! 風よりも疾く! 二本の短剣を構え、尾に足を掛け駆け上がってく鷲祐を振い落そうとした電の首へ…… バスンッ! 杭のような矢が一本。 バシュンッ! また一本。 崩れ落ちた瓦礫に傷ついた身をもたれかけた杏樹は、口元の血を拭いもせず、機械的な動作でクロスボウを放つ。 「earth to earth, ashes to ashes, dust to dust(土は土に、灰は灰に、塵は塵に)」 祈祷書の一節を読み上げる。 省みられなかったゴミ達に埋葬の儀礼も皮肉なものか。 苦笑をしようとし、痛みに顔をしかめる。 「塵塚怪王の怪。これにて終幕……と」 頭部から首へ、立て続けに矢を受けた塵塚怪王・電が揺らぎ、その首に鷲祐の最高速の一撃が叩き込まれた。 電の首が、スライドするようにずるりとずれる。 頭部を失った電はゆっくりと倒れ、その姿を塵芥へと還したのであった。 ●戦い終わって 戦場であったところで歌声が響く。 先程より活力が溢れる歌に、傷も疲れも吹き飛ぶようだ。 「エリューションになりそうな物がある様子はないな。これで一件落着だ」 周囲を見て回っていた杏樹の言葉に一同ホッとした様子を見せる。 「俺、早く帰ってシャワー浴びたい。変な臭いついてないかな?」 クンクンと体の臭いを確認する樹に付喪が全くだと頷く。 「鎧は汚れちまったし、とんだ災難だよ」 「さあ撤収ね」 癒しの歌を歌っていた小夜香の言葉に頷く。 帰路を歩く中で鷲祐は自らの手を見て立ち尽くしていた。 「鷲祐、帰るよぅ?」 考え事?と覗き込む恋人、アナスタシアに頷く。 「……まだ俺は弱い。戦い方を習得しなければ」 きょとんとして聞いていたアナスタシアが花のように笑う。 「あたしもだよぅ。一緒に頑張ろうねぃ!」 帰り道、玲と一緒に歩く静は振り返る。 この山には、あとどれ位のゴミが眠っているのだろう? アークが捕捉した企業が戻った所でこの山が綺麗になる保障もない。 「この山の、ホントの意味でエコでクリーンな落とし前が付けられるのは、何年先になるんだろうな……」 その問いに答えられるものは、居ない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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