●仄暗洞窟のディープマン 村の者たちはその洞窟を『仄暗洞窟』と呼んだ。 おとな三人分もの高さと、荷馬車が通れるほどの幅を持つ巨大洞窟である。 しかし日の昇る時も、沈む時も、いつも暗いまま、来るものを手招くように闇が覆っているがため、そう呼ばれている。 かつては村の子供ですら近づくことはなく遠ざけられてきたが、今はまた別の理由でこの洞窟は恐れられていた。 いまはこの洞窟に。 ディープマンが、住んでいるのだという。 ●怪物討伐依頼 フェリエの族長シェルンはそこまでの説明をおおまかに終えた。 『仄暗洞窟』と呼ばれる大洞窟。 そこにはいつからかディープマンと呼ばれる怪物が住みつくようになった。 人型のシルエットはしているが、全身を魚の鱗で覆っており、その様はこちらでいう『半魚人』に近かった。 彼らに知性は無いが、それが故時折洞窟を出ては周辺の作物や動物を食い散らかしていた。 これ以上放置すれば、増えすぎたディープマンによってフェリエの生活圏まで侵されかねない。 そこで、リベリスタ達に依頼が廻って来たのだった。 依頼内容は、ディープマンの全滅である。 ディープマンは不死身であるとされている。 どんなに傷付けてもひとりでに再生し、殺してもしばらくすれば生き返っているとも聞く。 知性が無い代わりに恐ろしくタフで、そして数をどこまでも増やしていく。 それがディープマンの恐ろしさであり、強さであった。 しかしそんな彼等にも弱点はある。 洞窟の奥底に眠るとされる多面水晶を破壊されたが最後、彼らは生命力を失い、たちどころに全滅してしまうのだ。 つまり、こういうことになる。 不死身のディープマンの群れをかき分け。 巨大洞窟を突き進み。 奥底に眠る多面水晶を破壊する。 これが、あなたに課せられた役目である。 「大変危険な行程ではありますが、どうか……よろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月05日(木)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●不死の箱庭 これまでを手短に語る。 ラ・ル・カーナ中間衝突地帯の端にある仄暗洞窟より大量の『ディープマン』が発生しているとの報告を受け、リベリスタたちは討伐に訪れた。 ディープマンたちは侵入者を迎撃するために強い凶暴性をもって襲い掛かって来たが、個体ごとのディープマンなどアーク・リベリスタの敵ではない。 彼等は順調な滑り出しで洞窟探検を進めていった。 「さあみんな行くですよ、ちゃんと勇者についてくるのですよ! ガンガン行こうぜなのですよー!」 洞窟なら任せろとばかりにピカピカ光りつつ、『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)がディープマンの群に突撃していく。 コレがレトロRPGなら松明片手に剣を振り上げてといった所だったが、自力で引かれる光には必要ない。 ……でもちゃんと持っていた。勇者的様式美を愛する光である。 「MP無しでレミーラできるんじゃ、たいまつが要らない子になってるですよ」 「そんなことは……」 ない、とも言いきれずに口をつぐむ『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)。 洞窟から彼女達を追い出そうと襲ってくるディープマンを盾で押しのけ、ずんずんと突き進んでいく。 「群がる敵の中を進む必要がある以上、持久力を要する筈です。それでも、やり切る必要はありますね」 ディープマンの一匹を踏み潰す真琴。その両サイドから、洞窟の壁を蹴ったディープマンが飛び掛って来た。 油断なく両手の盾を翳して攻撃を受け止める。 「こうも多いとブロックが通用しませんね」 「後ろからも来ますからね。これからずっと敵に囲まれ続けるようなものなのですよ。打撃でじゃんじゃん押していくしかないのです! どかどかーんなのです!」 うりゃーと言って剣を振り回す光。真琴たちの打撃にひるんだディープマンたちがざざっと後じさりした。 「路を開くなら任せて。アシストして見せる!」 光の上を掠めるように飛行する『ワールウィンド』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)。 ディープマンの胸に刀を突き刺すと、両足を相手の腹と肩に乗せて引っこ抜き、ムーンサルトで回転しながら飛び退く。 胸を刺されたディープマンは青紫の血を噴出して暴れた。 滅茶苦茶に腕を振り回して混乱する。その隙に間を駆け抜けていく光たち。 今回は敵を倒すより、敵を動けなくしてしまうのが効率が良い。 走りながら銃をリロードする『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)。 モシンナガンの球形金属ボルトを指先で上げ、勢いよくリロード。 照準無視。ピックを突き出したまま突撃し、当たった傍から発砲して散らしていた。 「飛行もいいが、走る時は銃身を低めにとれ! いいか、おさない・かけない・もどさな……うっぷ、生臭っ!」 「ベルカさん標語間違えてま……本当だ生臭いっ!」 生まれの所為か人よりちょっぴり嗅覚が敏感なベルカである。 見た目には頼りがいがある分、今日は酷くパワーダウンしていそうで心配だった。 そうこうしていると早速曲がり角に遭遇。 洞窟を住処にしているからか、どちらからも大体同数程度のディープマンが襲ってくる。 真琴が応戦しながら振り返った。 「どちらに曲がりますか? 間違えると行きどまりを引き返すことになりますから、慎重に選ばなければ」 「なに慌てるな。こういう時は左手の法則と決まっている。左手をこうグッチッパのような形に間が手中指が電柱、人差し指が磁場、そして親指が推力。下から順に電・磁・力と覚えればらくだぞって私の馬鹿ー!」 「ベルカさん落ち着いて! その手の形のまま銃剣を振り回さないで!」 今日はどこまでもスペックの低いベルカである。 関係ないが、この手の形のままビールジョッキを持って『酒を・お前と飲むと・テンションが上がる』と表現した男がいた。本当に関係ないが。 「ええと、こういう時は勘で行くのです。超直観あるので……ええと、こっちで!」 「根拠は」 「こっちから殺気が!」 「私は今全方位から感じてますよ!?」 などと言いながら右へ突撃する一同だった。 光たちがこうも勢いよくガンガン進めているにはワケがある。 「こいつらも『忌み子』ってやつなのかしら」 「まあ、巨獣や何かの一種だろうな。巨獣がE・ビーストだとしてE・エレメント的な立場って所か」 来栖・小夜香(BNE000038)が継続的に回復弾幕を張り続け、彼女を狙ってくるディープマンの攻撃を『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)が身を挺して庇うと言う態勢が、突入時点からここまで維持されている。 これによって、ディープマンたちが数の暴力で攻めてきても押し返される事無く突っ込んで行けるのだ。 「小夜香、お前は仲間を守れ。俺はお前を守る」 「ん、任せたからね。直接殴られたら、きっと数十秒も持たないんだから」 「誰に言ってる」 小夜香に掴みかかろうとするディープマンを逆に掴み上げ、振り払って進むゲルト。 ブロックによる保護ができず、常に前後左右を囲まれている以上、こうして庇ってやるのが唯一の保護になる。 逆に言えば、ゲルトが落とされたが最後、戦線を維持する要である小夜香ごと落とされることになると考えていい。 「Qaumi Tarana(祝福よ、あれ)」 小夜香は静かに囁き、何度目かになる聖神の息吹を展開した。 その一方。 小夜香からあまり離れない位置で、ハニーコムガトリングと葬操曲・黒が入り乱れて乱射されていた。 「ディープマンか……聞いたことのある名前だ」 拳銃のマガジンを交換する『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)。 ぴっと背筋を伸ばしたまま水平に拳銃を構え、薙ぎ払うように連射する。 彼らを取り囲もうとしていたディープマンたちが一斉に薙ぎ払われ、彼らを中心とした空白地帯が広がる。 その隙に魔方陣を展開する『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)。 日傘をゆるやかに回すと、連動しているかのように魔方陣が回転。周辺から血色の鎖が飛出した。 前方のディープマンたちを面白いように薙ぎ払って行く。 「ここに来る前にチャールズを締め上げたんだけど」 「……何だって?」 「『自分が掴んでいる中でコア消失事件があったのは大和の一件のみだ、が』って」 「含みがあるな……」 「そうね、続きがあるわ。『建造が中止されたのにコアが消費されている計画があった』って」 ちらり、と拓真の横顔を見やる氷璃。 「対大和用機竜建造計画。大和の無力化によって中止した……通称『モンタナ計画』。……ま、今回の事件とは無関係かもしれないけれど?」 などと言いつつ、氷璃は洞窟の奥へ奥へ、ふわふわと進んで行った。 ●多面水晶 リベリスタ達は洞窟をずんずん進んで行った。 洞窟を進む行為そのものにおいては、順調だった。 が、やはり超直観頼りだった所為か何回か行きどまりに当たってしまうこともあった。その時の対応を特に決めていなかったというのもあって、かなりアドリブ任せの行軍になった。 氷璃の瞬間記憶で道に迷うことが無かったのが救いである。 小夜香たちが継続的に回復を続け、徐々に消耗。 セラフィーナがインスタントチャージを確保してはいたが、セラフィーナ本人のEP消耗も激しかったためあまり頼り切ることもできず、最終的には全員かなりボロボロの状態で洞窟深部に到達することになったのだった。 なぜ深部と分かるのか、と言えば。 「一段と敵が多くなってきました。単純に考えれば、ですが。ゴールは近いでしょうね」 ぎゅうぎゅうに詰まったディープマンを盾で無理矢理蹴散らしつつ、真琴がぐいぐいと歩を進めていく。 溢れたディープマンが仲間を踏み台にして頭上から飛び掛ってくるが、捌き切れない分は無視することにした。いちいちかかずらっていては消耗が増すだけだ。そして、これ以上の消耗は(燃費の良い真琴は別として)仲間たちが潰されかねない。 あまりに群がり過ぎた分は氷璃が葬操曲・黒で一掃する。 高い命中精度と呪縛によってディープマンを片っ端から足止めしていく氷璃は本当に頼もしい。が、燃費の問題で放てるのもあと1~2発と言った所だ。途中からは通常攻撃を挟んでだましだまし使っていたくらいである。 本当にギリギリなのだ。 「そういえば、私が初めてアークで受けた依頼も洞窟探検だったわ。懐かしいわね……人魚型のアザーバイドを相手にして……魚類に呪われてるのかしら、私」 「ねちょねちょぬめぬめがっ、ギャー! イヤだー!」 半狂乱になってアーリースナイプを乱射するベルカ。 こっちはこっちで別の意味でギリギリである。 「なんか嫌、なんかイヤなのマジで! 好き? 嫌い? 好き? 嫌い? 理由はないけど生理的に無理!」 「落ち着いて下さいベルカさん、口調がおかしくなっていますよ!」 「ええい口調など構っていられるか! 私は部屋に帰らせてもらう!」 「変なフラグを立てないでっ」 モシンナガンのボルトを震えた手でがちゃがちゃとリロードするベルカ。 「ああもうなんでボルトアクションなんだ今は亡きご主人様の馬鹿!」 「ボルトアクションは暴発対応が楽でいいのよ?」 「そう言う問題じゃないでしょう」 ぎゃあぎゃあと騒ぎながらもそれなりの練度でディープマンを退けてくれるベルカを連れ、氷璃たちは敵の群を突き進む。 そんな中。 「見て、あの光」 荒い息を整えつつ、小夜香が洞窟の奥を指差した。 青白い光を放って浮遊する、石のような物体が見えた。 飛び掛って来たディープマンを払い落し、ゲルトが振り返る。 「間違いない。あれが多面水晶だ。ラストスパートをかけるぞ! 小夜香!」 「分かってる」 小夜香が今回ラストの聖神の息吹を展開。 ボロボロの仲間たちを一時的に回復する。が、これが最後だ。 「俺がキャノンで援護する。セラフィーナ、メモリーをかける余裕は作れそうか!?」 「時間なら俺が作る。来い」 周囲のディープマンを銃撃で薙ぎ払い、拓真が高く跳躍した。 上下反転して洞窟の天井に面接着地。背後に続くセラフィーナの風よけになるかのように、剣を前方に突き出して駆け出した。 多面水晶を護ろうとしているのか、ディープマンが飛び上がって彼等を攻撃しようと試みるが、ゲルトや氷璃たちが射撃で撃ち落とす。 直接多面水晶を射撃で落とせないかと思ったが、どうやらディープマンが庇っているようだ。直接行って薙ぎ払うしかないだろう。 「ちっ、敵が多い!」 「大丈夫なのです、一時的になら薙ぎ払えるのです。まかりでいーん!」 剣を頭上に掲げてチェインライトニングをぶっ放す光。 仲間の射撃と重なって半数ほどのディープマンを一斉に薙ぎ払った。が、やはりこれも最後の一発である。 なんとか空いた路を突っ切って多面水晶のそばで着地する拓真。多面水晶を間近で見て瞠目する。 「これは……!」 正十二面体、だったのだろう。 だがこの多面水晶は三分の一程度のサイズにまで砕けていた。 「退いて下さい、読めるだけ読みます!」 セラフィーナが飛びつくように手を添え、サイレントメモリーを起動。 起動した瞬間、セラフィーナの表情が一変した。 ショックを受けたかのように瞳孔を開き、背筋をびくんと反らす。しかし次の瞬間から、ふわぁと表情を和らげ、恍惚そうに身体を弛緩させた。 まずい、と思ってセラフィーナを多面水晶から引き離す拓真。 セラフィーナははっとして首を振った。 「何、いまの。すごく気持ちよくなって……使った人の、感覚?」 「破壊するなら早く、もう持ちません」 間に滑り込んで敵から彼らを護っていた真琴が悲鳴に近い声を上げた。 「下がっていろ!」 銃を直接つきつけ、残弾の限りフルオートでぶっ放す。 多面水晶にヒビが走り、そしてすぐに砕け散った。 一瞬遅れ、ディープマンたちが次々と散りにかえる。 ベルカがへなへなと崩れ落ち、その場に膝をついた。 「終わった……か」 ●水晶の欠片 拓真たちは砕け散った多面水晶の破片を丁寧に拾い集め、袋に詰め込んだ。 「俺たちには何も分からなくとも、他の誰かが調べて分かることがあるかもしれない」 「そうね……他には、気になるものも無いようだし」 こうして、彼らは其れまでの道を戻った。 もう仄暗洞窟に化物が現れることは、無いだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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