●Cavalry Legion 乾いた荒野。 いのちなき大地。 かつて、青々とした草原が広がっていた場所。 草は枯れ果て、殆ど葉を失った潅木がまばらに生えたその地を、騎兵の一群が駆けていた。 騎兵。 それが、彼らを指し示すのに、最も近い単語であるように思われた。 騎乗する戦士達が、一様に赤銅の肌を露にし、牙を剥き出しにした巨漢でなく。 その乗騎が、乗り手に倍するほどの高さを誇る巨獣でなかったならば、ではあるが。 「――――――」 先頭を往くやや年嵩の男が、振り返って何事かを告げた。 「――――――」 彼に続く九騎の騎兵が、めいめいに短く応える。 合計十騎。うむ、と頷き、先頭の男が軽く巨獣の脇を蹴った。 鞍と手綱とをつけられた、犀に似た四足獣が、ブォォと一声鳴いて走り出す。 ボトムチャンネルの馬に、速度では及ぶべくもない。 だが、丸太のように太い脚は、割れよとばかりに大地を踏みしめる。 その行く手を阻むものはない。 背の低い潅木が、巨獣に踏みつけられ、消えた。 ●Patrols その様子を遠くから窺う視線。 「……あれが、バイデンか」 上位チャンネル、ラ・ル・カーナに開けられた『穴』の近く。 仲間と共にアーク駐屯地の周囲の哨戒に当たっていた『月下銀狼』夜月 霧也(nBNE000007)が、大岩の陰に身を隠しながら低く呟いた。 巨獣に跨ったバイデンの一隊が、探るように時折進路を曲げながらも、駐屯地の方角へと向かっている。 おそらく、彼らは駐屯地の正確な場所を知るまい。だが、アークのリベリスタは、自分達の存在を隠匿している訳ではない。おそらくは、哨戒中のリベリスタが目撃されたのだろう。 「斥候――というよりも威力偵察だろう。見慣れない奴らが姿を現したとなれば、ちょっかいもかけたくなるだろうさ」 とは言え、放っておくわけにはいかない。せめて、しっかりとした拠点を建築するまでは、キャンプの場所は伏せておきたいところだ。 「だが、あれと正面からやりあうのは、流石に無謀だな」 フュリエの少女・エウリスや族長シェルンからの情報によれば、バイデンの戦士としての実力は総じて高い。 そして、個体差があるとはいえ、ボトムチャンネルで彼らと交戦した際のデータは、その脅威を雄弁に語っている。 「バイデンだけならまだいい。だが、あの巨獣はただのおとなしい乗物ではないと聞いている」 その犀に似た獣を、ヘビーライナス、と呼ぶのだという。 バイデンが好んで乗騎にする巨獣の一種。走る速度は最速でも人間の全力疾走程度ながら、およそ高さ四メートル、体長は六メートルほどもある体躯は、それ単体でも手ごわい相手だ。 そして、一旦闘争本能に火がついたならば――例えば他の巨獣の姿に興奮したならば――その角と脚とが敵手を撃ち砕く。 決して扱いやすい獣ではないにも関わらず、バイデンが乗騎に用いるのは、その勇猛な性格を買ってのことらしい。 「こちらは十一人、あちらは十人と十匹。さて、どうするか――」 霧也の声に、楽観の成分は含まれていなかった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:弓月可染 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月06日(金)23:28 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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● ――彼女はかつて夢を見た。 母が自分の髪を梳かしながら花嫁姿を見たいと笑い、父が許さんと怒り出す。 そんな優しい思い出。 (ボクは少女だから、この灰色の空の下でも夢を見る) ――彼女は今も夢を見ている。 フェリエとバイデン。 彼らにも、このラ・ル・カーナで手を取り合い生きていく道が残されていると。 (だから、そのために少女が命を賭ける、そんな戦いがあってもいい) 憎しみが連鎖すれば、誰かの優しい思い出が失われる。 だが、彼らにも狂おしいまでに求める気持ち、愛と呼ばれるものがあるならば――そんな思いが、百獣の王を駆り立てて。 果たして彼女は、追わせる者か、追われる者か。 ● バイデンの領域に程近い警戒域の西端。橋頭堡の辺りならば、まばらにでも地を覆っていた草。それも、とうとう姿を消していた。 酷く乾いた風が吹く度、砂埃が渦を捲いて舞い上がる。 咄嗟に袖で目を覆うリベリスタ達。空が灰色にしか見えなくなってから、ものの数度のつむじ風で、その動きは彼らの必須動作と化していた。容赦なく眼球に突き刺さる砂を放置していては、単に充血するだけではすまないだろう。 「バイデンは……血気盛んだと……聞いている」 一様に顔をしかめる中、唯一表情を変えなかったエリス・トワイニング(BNE002382)。ぽつり、ぽつりと紡ぐ響きは、短い間に彼らが至った結論の、追認と整理。 「本気で……殲滅しに来るかも。少しでも……時間を、稼がないと……」 「バイデンって種族は、逡巡のひとつも許しちゃくれないみたいだな」 彼らが身を隠す大岩、その裏側に背を預け、『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は思案げな表情を見せる。 「とはいえ、断片的な情報で片方だけに肩入れしているのは事実だ」 断片的。 そう、あまりにもインプットが足りない。『異界人』の情報を知りたいのは、何もバイデンだけではない。まともに接触したことさえ、数えるほどしかないのだ。 「バランスが悪いとは思うよ、ホント」 「何処の千堂だよ」 紙巻を手に、ふん、と鼻を鳴らした『BlackBlackFist』付喪 モノマ(BNE001658)。ある意味でこの邂逅に心躍らせた青年は、しかし今はその滾る熱を抑え付けている。 「まあしかし、思えば遠くへ来たもんだ、ってな」 上位チャンネルから落ちてきたアザーバイドを相手にするのは、さほど珍しいことではない。だが、上位チャンネルに足を踏み入れるとなれば、話は別だ。 橋頭堡の設営を開始してから早二週間、フュリエの族長の依頼を除いてはさしたる事件も起きてはいなかったが、それが嵐の前の静けさである事は理解している。 「本音で言えば、思いっきり戦ってみたくはあるんだが」 今はそれよりも優先させることがあろう、とモノマは唇を歪め、ふぅ、と紫煙を吐いた。 「……バイデンさんとは仲良くなれないのかな」 ぽつり、と漏らした声。声の主は有翼の少女、白銀の髪を横で一つに纏めた『いつか出会う、大切な人の為に』アリステア・ショーゼット(BNE000313)は、どこか遠くを見るようにして。 「フュリエさんをどうして酷い目に合わせるのかな。どうして争うのかな」 言い募る。 例えば悠月なら、フェリエのバイデンに対する憎悪もまた、『酷い目に合わせ』られただけでは説明がつかないほどに深いことに、何かの思考を見出すのかもしれない。 だが、アリステアの思いは、そんな小難しいこととは何らの関係なく純粋で、だからこそ、否定的な言葉を返すのは躊躇われた。 「そうですね……。もし彼らが、戦いしか知らない存在なのだとしたら、それはきっと、哀しいことだと思います」 そう返したのは、『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)。判り合いたい、とまでは口にしなかった。それは、彼女自身がバイデンについてよく知らないせいもあったが――。 「それはまぁ、私たちの世界も一緒だよね」 「……ええ」 アリステアの導く少し背伸びした結論に、力なく応じるカルナ。それを聞きとがめたのは、傍らに在った『月下銀狼』夜月 霧也(nBNE000007)だった。 「迷っているのか」 「――いえ」 その声はやはり力無く、だからこそ雄弁だ。しばらくの沈黙。そして、決して傲慢とは思わないが、とだけ彼は呟いた。 「騎兵隊の進路は変わらないようですね」 遥か遠くを見通す、『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)の視線は、遮蔽物の裏側からでもバイデンの一行を捉えていた。 彼らの周囲には巨獣の群れがいくつかあったが、それを避けるようにしながら、騎兵隊は着実に橋頭堡へと近づいていく。 「巨大トドの群生地は、上手くかわしたようです。あちらには四足獣の群れもいますが、期待薄でしょう。……今後の為にも、彼らとは一戦を交える必要があると思うのですが」 威力偵察に出たらしい、という認識に至り、悠月はバイデンへの評価を高めていた。 ボトムチャンネルで接触した報告では、腕力だけのアザーバイド、という印象でしかなかった。だが少なくとも、戦略も戦術も何も無い力任せ、という評価は誤りであると悟ったのだ。 更なる情報を。そのためには、自ら戦うべきだと胆を括っている。いっそモノマよりも血の気が多いようにも感じられる様は、女帝の二つ名を奉られる所以か。 「この地に拠点を構えれば、いずれはこうなることは判りきっていたわ」 荒野にはおよそ似つかわしくない、ボトムチャンネルの夜空の色をしたドレス。『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)、見かけに依らず長く歳経た『少女』は、むしろ彼らの遅さを意外とすら思っていた。 「考えてもみなさい。最初の接触から、既に一ヶ月以上が経っているのだから」 今まで『穴』の調査にすら来なかった事の方が僥倖、という分析は、恐らくその通りなのだろう。 だが、いずれにせよ、リベリスタ達は『出くわしてしまった』。ならば、彼女らにとっては今が全て、百パーセントの事象。 「ぞっとしないけれど、ね」 「……そろそろ……接触する……」 肩を竦める氷璃の言葉を、エリスの警告が遮る。 空を見上げる一行。バイデン達が居るだろう方角に、二人のフライエンジェの影が宙を舞っていた。 「……雷音が心配でござぁ……」 その尾をぺたりと垂れさせて、『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)が不安げに目を眇める。族長シェルンと面会し、その言葉を聞いた事がある彼は、それ故にバイデンの脅威をも知悉していたのだから。 「――判っているでござるよ。雷音もリベリスタでござる」 だが、物問いたげなアリステアの視線には、そう見得を切ってみせる。『娘』を信じるのも、また自分の務めだと――そこまではっきりと考えていたかは、定かではないけれど。 行ってくるのだ、と言い残して飛び立ったのは、少し前のこと。 「頃合なのだ……うわあっ!」 風上から近づく『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)をバイデンの瞳が捉えたのは、流れてくるかすかな香りにふと振り向いたからか、それとも単なる偶然か。『見つかった』ことをアピールするため、殊更に大きな声を上げて見せる。 「逃げるぞ」 「手の鳴る方へ、っと」 肉付きのいい身体に灰色の翼をはためかせ、もう一人の囮、『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)も逃げる素振り。 (やって来ました、ラ・ル・カーナ。完全世界だなんてカッコ良いですねー) カレーみたいに混ぜちゃいたいです、と小さく笑ってみせる。美しく整ったものをぶち壊す――その性癖は、どうやら遥か異界の空でも変わらないらしい。 もっとも、何をもって完全と呼ぶべきか。 フュリエの統べる緑の大地がこの世界を覆い尽くしていたならば、それはまさしく『完全世界』なのだろう。だが、いまや憤怒と渇きの荒野はラ・ル・カーナの半分を占めている。ならば、不完全な世界に墜ちたというのか。 (本当に、カレーみたいですよー) いや、二つの種族――怒りを知らぬ者と怒りしか知らぬ者――の在り様こそが、あるいは均衡であるのかもしれない。世界を二分する、今にも崩れそうな均衡。 もしそうならば――やはり、彼女はぐちゃぐちゃと混ぜ混ぜしたいのだ。そこまで思考を進めて、まるで今思い出したかのように振り返る。 『――――!』 「うーん、とりあえず、他の事を考えている場合じゃなさそうですね」 背後に迫る地響きと怒声。判っていても、その響きは恐怖の象徴だ。しかも、地上から高くを飛ぶ雷音と違い、彼女は高空でうまく身のこなしを保てない事を嫌って地上すれすれを飛んでいた。そのプレッシャーは雷音の比ではないだろう。 「『俺に任せろ、逃げるな、待て』……やる気なのだ」 上手くいったのだ、と雷音。だが、彼女らを追ってきたバイデンの巨獣乗りは、僅かに二人。更に、ユウを追っていたバイデンは程無く乗騎の脚を止める。釣りきれなかったかなー、と残念そうなユウ。 「一人だけ連れて帰っても、しょうがないのだ」 後ろに追跡者を引き連れたまま、大きくカーブを描いてバイデンの本隊に近づく雷音。彼女の耳は、その辺でやめておけ、という異界の言葉を拾っていた。 掌には符を編んで生み出した鴉。す、と宙に滑り出したそれは、勢いを増して先頭のヘビーライナスへと嘴を突き立て、ふつふつと途切れ得ぬ苛立ちを流し込む。 「もう一度、カオスな鬼ごっこと行きましょうか!」 ユウもまた、ぎりぎりのラインから気の糸を投じ、ヘビーライナスの一頭に興奮の火をつけて。 ――ブォオォォォォォッ! 巨獣は吼え猛り、頭上と足下を飛ぶ小うるさい存在を追い始める。驚いた顔の騎手を確認し、それからはまっしぐらに仲間の待つ方角――橋頭堡とは逆方向に逃げる二人。 気を抜けば追いつかれる。必死で逃げた。だから気づかなかった。 鳴き声に掻き消されながら、後方のバイデン達が、何事かを叫んでいた事に。 ● 「……どうか、どうかご無事で……」 ドドド、と身体を揺さぶる振動は、岩陰に隠れる彼らにすらプリミティブな恐怖を感じさせる。追われる二人は尚更でしょう、と二人を案じずには居られないカルナ。 「……そろそろ……来るんじゃないかな……」 岩陰から様子を伺う一行。ぴょこん、と跳ねた毛を飛び出させて様子を伺うエリスに、岩越しに確認していた悠月も頷く。 「はい、途中で追うのを止めた時には、失敗したかと思いましたけれど……。でも今は、全員で二人を追っているようですね」 何処となく流れる安堵の雰囲気。だが、快はどこかひっかかる感覚を捨てきれない。何だ。何故、引っかかる――。 「……どうして、奴らは一度追うのをやめた? なのに何故、今度は全員で追っている?」 「最初の問いに答えるのは簡単――追いつけないと思ったからよ」 同じ有翼の民なれば、氷璃には二人の辿った思考は良く判る。 地上すれすれの低さで飛び、必死ながらも誘導する『囮』の役割を演じ続けたユウと、『敵』の直接攻撃に曝されない空中で、ひたすらまっすぐに逃げた雷音。より危険を重ね、敵を引き付けたユウが心底死にたくないと考えていたことは、皮肉もいいところだろう。 そしてそれが、雷音を追った一騎が踵を返した理由だった。 「じゃあ、どうして今度は全員で追ってくるの?」 訳がわからない、けれど何かまずい事が起ころうとしている――それは肌で感じられたから、天真爛漫なアリステアも、その表情を曇らせて。 「……くっそ、そういうことかよ」 そして、ついにモノマが気づく。 バイデンの騎兵隊が全力で追い始めたのは、二人が攻撃を仕掛けたからだ、と。 二人が『囮』であることに気づいたからだ、と。 ――罠が仕掛けられていることに気づいたからだ、と――。 「やべぇな、見破られてるぞ!」 「駄目です、雷音さん!」 思わず叫んだモノマの声を、すぐ近くまで迫ったバイデンを監視する悠月の絶叫が掻き消した。 逃げる二人。雷音が背後に神経を注いでいたのは、単に迫るプレッシャーに反応していた、それだけではない。 『そちらに乗るぞ!』 その声は、不思議とクリアに、彼女の耳に届いた。 振り向けば、符によって激発させられた巨獣から併走する別の巨獣へと、リーダーらしき男が飛び移っている。 『ボクらに畏れをなすというのか、腰抜け』 『ほう、俺達の言葉を話せるのか』 舌に乗せたのは、バイデンの言葉。 本能で走り続ける巨獣を見捨て、引き上げようとしているのだと思った。だから、またカーブを描いて距離を詰め、雷音は懐の符を探る。 「無茶しちゃ駄目ですよ!」 ユウの制止を聞き流し、彼女は印を結び符を放った。現れたのは黒き影。忠実な鴉は、確かに新たな獣を怒りに染めたのだけれど。 『……かかったな!』 にい、とリーダーが笑んだ。はっと気がつけば、両翼を走るバイデンが、腰から取り出した何かを振りかぶっていた。 「……しまった!」 弓を持つ者が居ないことは、最初の段階で確認していた。だから、それは彼女の油断。彼らが手に握るのは、骨を削り出して作った投擲用手斧――ハチェット。 『鳥を狩るのと同じだ、やれ!』 次の瞬間。 四本のハチェットが投げつけられ、少女の身体に直撃する。高度を維持しながらでは、回避も防御も万全に出来るものではない。 それでも耐えた。運命の加護を脱ぎ捨て、かろうじて浮かび上がる。だが。 『残念だったな』 五本目の凶器が、雷音の背をざっくりと切り裂いて。 「……虎鐵……皆……、無事で……」 どさりと荒野に叩きつけられ、そのまま彼女は意識を手放した。 「らいおおおぉぉぉぉぉんんん!」 馬鹿出るな、と叫んだのは、追われるユウと隠れる快。明らかに、バイデン達は『そこに自分達を誘い込む罠がある』と気づいている。 だがそんなことには頓着せず、見も世もない声を上げ、虎鐵は走り出した。 「雷音、雷音、雷音……!」 数十秒の全力疾走。それでも、彼は戦士としての最低限の振る舞いを忘れはしなかった。腰に差した赤拵えの鞘から、すらり、長大なる愛刀を引き抜いて。 「らいおぉぉぉぉん!」 少女を取り囲み、止めを刺さんと乗騎から飛び降りたバイデンに向け、唸りをあげて振り下ろす。ガッ、と鈍い音を立て、骨の大剣がその刃を受け止めた。 『――――』 「何言ってるのか判らんでござるよ!」 鍔迫り合い。通じぬ言葉と娘を助けたい焦りに思わず悪態をつく虎鐵。その頬を掠めるように――もう少しで頬の隈取が三本になる勢いで――荒れ狂う稲妻が空間を埋めた。 「一人で突っ走って、それで朱鷺島さんを助けられるのですか」 月の光はただ優しく柔らかいだけとは限らない。時には精緻で怜悧な面を見せるのもまた、夜空に輝く銀輪の在りようなのだ。悠月が頭からぶっかけた冷や水は、我を忘れていた虎鐵に、その経験に相応しい視野を取り戻させる。 「……すまんでござぁ」 「落ち着いていきましょう、私達は負けられないのですから」 戦塵を巻き上げる荒野の風は、深く沈むような黒のローブの裾をはためかせ、厚い布地を通してでも彼女のほっそりとした肢体を浮かび上がらせて。 口の中だけで愛しい男の名を呼んで、それから彼女は、指に輝く蒼の光へとそっと手を触れる。 『――――!』 ぐわらり、と相好を崩すのは、丸太のように太い首を牙のネックレスで飾った、バイデンのリーダー。 振り上げたのは巨獣の肋骨。グリップに布を巻いただけのそれは、原始的にもほどがあり――だからこそ、その破壊力は馬鹿にできるものではないとモノマは直感する。 「――ちぃっ」 馴染んだ黒鉄の手甲で受け流そうと右腕が動く。それはまさしく『いつも通り』の動き、数え切れぬ実戦と絶え間なき修練が彼に与えた無意識の動作。 だが、彼の脳裏に警告が走る。 バックステップ。一瞬前までモノマが居た場所を、およそ防御など無意味なほどの強烈な膂力と重量が薙ぎ払っていった。 「楽しいぜ、こうでなくちゃな――っ!」 にぃ、と彼を笑わせる鉄火場の空気。余裕を見せようとした彼は、しかし次の瞬間、下からの返す刀で、まともに顎を割られることとなる。 「が……あっ、てめぇ……!」 モノマの目の色が変わる。厳しい戦いであることは判っていた。だがこれまでは、どこか戦いを楽しむ余裕があった。 「やられっぱなしじゃいられねぇぜ!」 突き出した黒き篭手。ぐん、と加速した凶器が、雷撃を纏って赤銅色の巨漢へと叩き込まれる。タフで知られた彼らだが、ぐぅ、という呻きは抑えようもなく。 ――効いている! 確かな手応えが、彼を更なる戦いへと駆り立てる。 ● 「仲良くしたいけど、だからって黙って負けてはあげないよっ」 清浄なる気を孕んだ眩い光が、魁偉なる異界人の肌を灼く。 漆黒のドレスに純白の翼。アリステアが齎した魔力の翼を背負うリベリスタ達の中で、彼女自身の翼は生来のものだった。故に、異界であろうとも空は彼女のフィールド。戦いが始まる直前まで、アリステアは空高くに陣取るつもりでいた。 その考えを改めたのは、投げ斧に全身を刻まれた雷音を見たから。そして意外にも、バイデン達が巨獣から降りて戦いを始めたために、踏みつけられる危険が減ったからだ。 闘争を楽しむのには邪魔だということか、ユウを追っていた個体も今は後方に留め置かれている。 「……って、やだちょっとこっちこないでってば!」 だが、そんなアリステアの表情が強張る。得物を振りかざし迫るバイデン。全員が前衛として突貫してくる彼らに対し、リベリスタの前衛は十分ではなく、その全てを防ぐのは無理があったのだ。 「きゃあっ!」 「させるかよ――!」 後方でちょこまかとする『敵』へと駆け寄るバイデン。思わずアリステアは目を閉じて――けれど、衝撃は訪れない。 薄目を開ける。彼女の視界には、殺到する何人もの蛮族。そして、よく見知った広い背中。 「快おにぃちゃん!」 「橋頭堡は異世界への第一歩だ。その道程で、いきなり躓くわけにはいかないんでね」 そう見得を切る快に向けられる、底知れぬ敵意。 レイザータクトの流儀に従って、彼がやってみせたのは唯一つ。武器を持たず、手をぶらぶらと振って見せただけ。 ――お前達ごとき相手に、武器など要らない、と。 そう態度で示した快は、言葉が通じずともバイデン達を激怒することに成功していた。たちまちのうち、棍棒が、骨剣が、次々と彼に降りかかる。 「くっ……!」 運命の恩寵など望むべくもなく、頼るものは自分だけ。だが、彼は自分独りで耐えなければならない訳ではない。 「ん……大丈夫。ラ・ル・カーナでも……電波の……感度良好」 黒いお仕着せにエプロンドレス、カチューシャもしっかりセットした、この荒野には場違いなほど可憐で華奢な少女。どこか茫漠とした眼を向けて、エリスは独特の詠唱を続ける。 「接続……交信……オールグリーン。……ダウンロード、開始」 「電波属性かと思ったら、メイドロボ属性までゲットかい。バランスが良いね」 快の減らず口には取り合わず、訥々とした口調ながらも口上を終えるエリス。ぴん、と跳ねた毛が揺れると同時に、柔らかな波動が周囲を包み込む。 「主よ。天にまします大いなる主よ。どうか子羊に慈愛の導きを」 次いで戦場に凜と響いたのは、信仰に身を捧げるシスターの祈り。カルナの典雅なる詠唱は、早くも血生臭い戦場に涼やかなる風を巻き起こし、攻撃に耐え続ける快に気力と体力を齎した。 「穏やかな……響き。……嫌いじゃ……ない」 涼やかな声が呼び起こす優しき韻律は、気を練り更なる癒しを呼び起こさんとするエリスの耳をも、心地良くくすぐった。にこり、共に肩を並べて仲間を癒す少女へと礼の微笑を送ったカルナは、しかしすぐにその表情を引き締める。 「来ましたね……」 快は全てのバイデンを引き受けたわけではない。怒り狂う仲間に苦笑する者も居れば、思考を満たした怒りが消えてしまったものも居る。その一人が、先と同じように後衛へと突っ込んできたのだ。身を堅くするカルナへと振り下ろされる、砥いだ骨の大剣。 「ここは通行止めだ!」 その時、誰かが二人の間に割って入った。得物がぶつかり合う硬質の音。 「霧也さん……!」 「――アイツに見下されるのも癪だからな」 明らかに力では負けていた。だが、呻き声一つ上げず、銀色の狼は鬼にも似た『敵』を冷えた目で睨みつける。 「ところで、道程で躓いていなくても、童貞で躓いてるわよね」 「……氷璃が全て持っていってしまったでござるよ」 あまりの言い草に快が哀れに思われて、心中涙を流す虎鐵。言った方の氷璃は気にする風もなく、陶磁器のような肌に爪を滑らせて血を滲ませる。 「本気で行くわ――招かれざる客人にはお引取り願いましょう」 赤が鮮やかに映える左手の甲から、奔流のように溢れ出す黒鎖。ありとあらゆる災厄を内包したそれは、容赦のない冷徹さでバイデン達を飲み込んで。 『くっ、小癪な真似をする!』 雷音の肩に這わせた式神の羽虫は、激しい空中戦に耐えられなかった。しかし、この距離であれば、自らの耳が十分にその役割を果たす。 彼らが喚くのは、力押しで勝る自分達の力の誇示と、リベリスタの後衛から齎される諸々の妨害への舌打ち。 『ただ腕力だけが自慢だなんて、可哀想なことね』 情報は秘匿するからこそ意味がある。雷音が相手の言葉を話してみせたことは想像に難くないから、例えボトムチャンネルで接触した戦士が言語の件を共有していなくとも、もはや伏せておく意味がなかった。 だからこそ、あえて言語を合わせての冷笑。黒い日傘を回してみれば、銀の逆十字がしゃらりと鳴った。 「おー、怖い怖い。さすが毒舌氷璃さん」 「あら、貴方も言葉が判るのね」 僅か上方に浮かぶグレーの翼。おさまりの悪い髪に手櫛を入れながら、ユウは判るわけないじゃないですかぁ、と身をくねらせる。 「でも、大体表情見てれば見当がつきますよねー」 無駄口を叩きながらも、向かい合わせた両の掌の間に魔力を練り上げる。露出の高い衣装といい間延びした喋りといい、過小評価したくなる要素は多いが――その実力は、他の精鋭に劣らない。 「って、この辺にしておかないと味方に殺されそうですね」 ユウさんは死亡の危険なんて真っ平御免ですよー、と手を掲げれば、解き放たれた魔力が火弾の雨となって降り注いだ。 快が多くのバイデンを引き付けた結果、リベリスタ達はかろうじて前線を維持できていた。だがそれも、カルナにエリス、そしてアリステアまでが補助に張り付いているからこそできること。 そして、如何に守備に定評のある快であろうとも、運が悪ければ治癒の暇すらなく地に伏せることになる。既に膝を突くこと二回、一回は運命の加護さえ脱ぎ捨てた。バイデンの戦士は、少なくともこの騎兵隊のバイデンは、それほどまでに強力な存在だったのだ。 後衛が自由に仕事を出来る環境は、彼我の構成比を考えれば奇跡的。だが、それも長く続くものではない。 「まずいな。このままじゃ……」 モノマが至った結論は、既に他の何人かも考えに入れている。即ち撤退。だが、それはできない。奴らの向こうには、雷音が斃れたままなのだ。 「――ちっ」 仲間を見捨てるか、いずれ訪れる全滅か。これ以上の被害を出す前に、決断をしなければ。 そして、彼は仮初の翼を羽ばたかせて舞い上がり――戦場から離脱する。 「モノマおにぃちゃんっ!?」 驚愕をあらわにして叫ぶアリステア。だが、返って来た返事は想像の埒外のものだった。 「説明は後でだ! 俺が逃げたと騒いでいてくれ、頼んだぜ!」 一秒を惜しむように飛び去るモノマ。それは、バイデンが言葉を解しないからこそ残した、精一杯の情報。理解出来ないながらも、詳しく教えてください、と悠月はテレパスで呼びかける。 『……臆病者め』 ぼそりと呟いてみせる氷璃も、未だ彼の行動の理由を理解していない。だが、信用するとかしないとか、そんな次元はとうに過ぎていた。 彼が仕掛ける『何か』まで、この場を持たせられるか――それが問題だった。 ● 戦いは続く。 殆ど無尽蔵に魔力を生み出すエリスと、魔力の循環効率は及ばぬまでも、莫大な魔力容量を誇るカルナ、そしてアリステア。三人が極限まで力を振り絞り、そのバックアップに縋って快は耐え続けていた。 「娘の前では……倒れていられないのでござるよ……!」 挑発の網から零れたバイデンさえ無視できるものではない。抑え込もうとした虎鐵が、力任せに振り回された槌をまともに『埋め込まれ』、しかしフェイトの導きで再び立ち上がる。 「雷音を助けて! かっこいい父親を目に焼き付けさせるでござる!」 『――――!』 咆哮する異界の戦士。歴戦の虎鐵でさえ、恐ろしくないといえば嘘になる。だがそれが何だ。『俺』は、このでかいのを倒し、雷音への道を開く――! 「はあっ!」 手にした得物は、自らと同じ銘の名刀にさえ引けを取らぬだろう見事なる刃。一息に振り抜けば、赤銅の肌より赤い血飛沫が舞う。 「一発で終わると思ったら大間違いでござる!」 返す刀でもう一閃。決してやられっぱなしにはしない、という気迫。 「みんなで無事に帰るんだもん。無茶しちゃだめだよ!」 バイデンさんとは、本当に仲良く出来ないのかな。 アリステアの内なる問い。その疑問に答えられる者はいない。この場で時間を掛けたとて、自分にも答えられるわけがない。 ――だから今は今の私にできる事を頑張ろう。 「誰かが欠けちゃったら、仲良くなんて出来なくなっちゃうんだから!」 カルナには主神。エリスには電波。けれどアリステアは、自分に力を与えてくれる存在をなんと呼べばいいのか、まだ知らない。 「お願い、わたし達を助けて!」 ざわ、と風が吹き、土埃に汚れた傷口を撫でた。その傷が温かく熱を帯びたかと思うと、リベリスタ達を苦しめる痛みと消耗が和らいでいく。 「助かるわ……けど」 術士ながら、氷璃も無傷ではない。一度ならず回復役の三人を守りさえしたのだ。まさに総力戦に相応しい状況に、彼女は焦りを覚える。 自己回復能力と生来の頑強さが齎す、バイデンの恐るべきタフさ。そして膂力。彼女らはそれを甘く見てはいなかったか。 所詮は偵察部隊、二・三人も倒せば退いていくだろう――その目算があったとしても、巨獣を後方に控えさせ、戦いに酔うバイデンの『二・三人を倒す』ことすら守勢に回ったリベリスタには遠い。火力の集中がすっぽりと頭から抜けているなら尚更だ。 もっとも、『尻尾を巻いて逃げる』などということは、バイデンのメンタリティには耐え難いことではあるのだが――。 「でも、舐めないことね。戦いたい貴方達に、最高の屈辱をあげる」 かの『氷原狼』が好んだ力。氷の矢を手の内に生み出し、魔力の風に乗せて敵のリーダーへと射込む。 左腕に突き立った矢は、周囲に凍結を広げていった。ああ、確かに彼は、これで思うようには動けまい。それは戦士にとって、最大の屈辱だったろう。 「意地の悪いことですね、いい意味で」 「……いい意味ってどういう意味かしら」 そう言い返す氷璃にはにこりと笑みを一つくれ、悠月は手にした書を開く。 実のところ、この地の天文は地球のそれとは違うから、彼女の流儀では力の引き出し方にコツがいる。書の知識も、澱みなく唱える詠唱も、意図した通りに働くとは言い難い。 だが。 「折角三つの月が昇るのですから、引き出す力もそれなりには多いのですよ」 ボトムチャンネルでの戦いより、むしろ調子が良いのではないかと思うほどの雷撃。なるほど、悠月のような月の魔術師にとっては、異界での戦いはピンチであり、チャンスなのだろう。 「付喪さん、どうか、早く……」 まだか、と焦れた思いで、彼女は周囲を見渡す。いまや彼の意図は全員の共有するところであり、彼に寄せる信頼は何ら揺らがない。だとしても、破綻が近い今、のんびり待つ余裕はないのだから。 「いい加減しつこいですねー。そりゃ、このパーティーは綺麗な女の子が一杯ですけれど?」 相変わらずの軽口を叩くユウだが、その顔には疲労が色濃い。天より業火を降らす大技は、彼女の身体と精神に深刻な負担を強いたのだ。 「はい、まぜまぜしちゃいましょー」 だがそれを態度には表さず、彼女はまたバイデンを炎の海に突き落とす。それでも倒れないこの赤鬼に、次はこれでしょーか、と肩から提げた小銃を構えた。 「……大丈夫……まだ行ける。まだ……支えてみせる」 相変わらず熱のこもらない声で、エリスが『電波を受信』すれば、周囲の仲間が無数に負った傷が、溶けるように消えていく。 「エリスは……ただの……回復役。それが……エリスの……使命」 一言、一言。区切るようにその覚悟の重さ。 手にした魔道書は神秘の至宝。無限の可能性を秘めたカバラの秘奥を全て癒しの御業に注ぎ、メイド服の少女はその細い肩で戦場を支え続けて。 そして、ついに崩壊が訪れる。 「やら……せるか……よ……!」 攻撃を棄て、ひたすら守りに徹した快。守護神の号を体現するその戦いぶりは、同時に格上の戦士の集団から袋叩きに遭うということを示していた。 『――――!』 『――――!』 そして、強力なバックアップがあったとて、一度に耐え切れないほどのダメージを受けてしまっては、如何に鉄壁といえども倒れるより他にない。 「……、諦めるかよ……僅かな可能性でも、掴んでみせる……!」 二度、踏み留まる。だが、続く無情なる大槌は彼の胴を強かに抉った。それが止めとなり、パーティを護り続けた堅牢なる盾は、異界の荒野に崩れ落ちる。 「……何故……! 何故、無意味な戦いを続けるのですか……!」 カルナの絞り出すような叫び。氷璃はそれを訳さなかった。カルナも、それでいいと思った。今、この戦士達には何を言っても無駄だろう。 ――力なき優しい祈りに、意味などない。 「それでも……! 判りあうことが出来ると、私達が信じなければ、どうやって……!」 癒しの手を休めることなく、けれど悲嘆に暮れる彼女の願いは、切々と戦場に届いた。だがもちろん、それで戦いは終わらない。終わらせられない。 「……もう待てませんねー。逃げますよ。雷音さんは、残念ですけど」 ユウの非情なる託宣。 見捨てる。それは彼女が臆病だからではない。これ以上戦っては引き際を見失う。そうなれば、帰れない人数が増えるだけなのだから。 誰もが判っていた。単に、言い出せなかっただけだ。 「――っ」 黙りこくる虎鐵。雷音を置いていくなど、絶対に考えられなかった。だが、彼の中の冷えた部分は、これ以上の意地は、仲間を巻き込むだけだと――そう、理解してしまっていた。誰もが、そんな彼に掛ける言葉を持たなかった。 「……ごめんなさい。どうか、無事で」 「いいから行けっ!」 快に肩を貸した悠月が、必死にバイデンを押し留める霧也や虎鐵、覚悟を決めたらしく前線に飛び込んだ氷璃に詫びる。 ここは陥落寸前のアラモ砦。後衛を逃がすには、前衛を残さざるを得なかった。魔力の翼があるとは言え、彼らが後から脱出できるかは運否天賦だろう。 その時。 「すまねぇ、待たせたぜ!」 勝敗が決したと思われた戦場に、待ち望んだ『騎兵隊』が現れる。 両軍の意識がお互いに向いていたのをいい事に、迎撃を受けずにバイデンの只中に舞い降りたモノマ。そのまま迷うことなく、無骨な手甲を通し、唯破壊だけを目的とした闘気を叩き込んだ。 突然の奇襲に面食らったか、まともにその拳を受け、闘気に曝されるバイデンのリーダー。 「来るぜ!」 モノマの声に、悠月経由で彼の狙いを、『耐えるべき理由』を知らされていたリベリスタ達は、一斉に身構える。 次の瞬間。 ブォオォォォォォォォ! 敵後方でおとなしくしていたはずの巨獣が、けたたましく吼え声を上げる。なんだ、と思わず振り返ったバイデンが目にしたのは、自分達に向かって突進してくる戦犀。そして。 『巨狼だとっ!?』 それは、モノマを狙って側面から戦場に突っ込んだ巨大な狼の群れだった。その数六匹、ヘビーライナスよりは小振りだが、その俊敏性は比類ない。 そう。モノマは逃げる振りをして、一番近くにいた巨獣の集団を引き連れてきたのだ。偶然にも、巨狼が足音を殺して駆ける生粋の狩猟者であり、為にバイデンが気づくのが遅れたことは、彼にとって大きな幸運だったろう。 そして彼の予想通り、巨狼の出現に猛るヘビーライナスが、バイデンの制止を振り切って戦場に踊り入る。バイデンもまた、一気に荒れ狂った戦場の暴風の中で、体勢を立て直すことに精一杯になっていた。 「雷音は確保した、脱出するぞ!」 だから、一斉に飛び立ったリベリスタ達を追撃することは、できなかったのだ。 かくして、彼らは辛くも死地から脱出する。 尾行される事を恐れる彼らが大回りに飛行して橋頭堡に辿り着いたのは、それから数時間ほど後のこと。 疲れ果てた彼らを出迎えたのは、橋頭堡の直近でバイデンの集団が目撃された、というニュースだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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