●超巨大なマグロに脚が生えた生き物を想像して下さい 大地の揺れる音がする。 それが訪れた時、小動物たちは慌てて穴蔵へ潜り込み、民は怯え逃げ惑うとされる。 巨大過ぎるが故にそばで見上げきることすら叶わず。 銀色の鱗は固く。 洞のような目は恐ろしく。 子供は泣き、大人は平謝りし、女は全力で逃げる。 その名を巨獣――陸マグロと呼んだ。 ●陸マグロですってよ奥さん 「陸マグロ……」 「はい、陸マグロです」 フュリエの族長シェルン(詳しい紹介は省く)はどこまでも穏やかに頷いた。 何故だろう。 ラルカーナにマグロがいるのかどうかではなく、色々な表現や俗称などが混ざり合い、更にこっちの世界の言葉に翻訳した時偶然そう言う風な名前になる、ようだ。 偶然と言うのは恐ろしい。 あとマグロも。 「この巨獣が最近活発に暴れ出していて、民が脅かされています」 どうか皆さんの手で倒して貰えないだろうか。 それが、今回リベリスタに託された依頼であった。 しつこいようだが陸マグロ。 全長30mで全身を爬虫類の如く固い銀鱗で覆っており、草食恐竜のような四本足が生えている巨獣である。 凄まじい固さと重さを武器に、目の前にあるものをとりあえず攻撃し、食えそうだったら食っちまうという大変アバウトな生き物でもある。 だがなんといってもその巨大さがネックとなり、退治したり追い払ったりということがとんとできない。 そこで、リベリスタ達が呼ばれたのだ。 倒した後は別に食っちゃっても構わんそうなので、存分に戦って(味わって)頂きたい。 「それでは皆さん。どうかよろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月04日(水)22:14 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●ラルカナ? マグロが脚生やして闊歩してる世界ですよ! 「ここが、ラ・ル・カーナか……」 ペロキャンを口に咥え、どこかけだるげに息を吐く『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)。 これが煙草であれば紫煙が昇ったであろう空を、福松は帽子の淵から覗く。 「ここも『こっち』の世界と変わらねえものがある。青い空、深い緑、巨大な世界樹、巨大なマグロ」 「冷静になれ福松! 俺らの世界に数十メートルのマグロはいねえ! せいぜい陸に上がるだけだ! そうだろ!?」 「そんなわけがあるか! お前が冷静になれ創太ァ!」 襟首を揺すられ、ハッと瞠目する『トランシェ』十凪・創太(BNE000002)。 「悪ぃ、つい……ファンタジックな世界で巨獣と戦おうと思ったら相手がマグロで、つい気が動転しちまったんだ」 「まあ、気持ちは分からないでも……ないけど」 創太の襟首から手を離し、『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)は遠くを見つめた。 なんだかもう此方に気づいているのか何なのか、凄い土煙をあげて突っ込んでくる巨獣の姿があった。 より正確に述べるなら、四足のついた全長数十メートルのマグロである。 「可愛くない……よし、キャサリンとよんであげよう」 「やめろ卵とか吐いたらどうするつもりだ!」 若干の混乱を見せる青年たち。 彼等を背に、『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)はゆるく腕を組んだ。 「前に陸マンボウを相手にしたことがありましたけど……比べ物になりませんね」 「ね、ねえ、アレって僕の所為じゃないよね? また出るかもって言ったけどあの時点でこんなフラグ引いてたなんてことないよね!?」 柄にもなくぷるぷる震える『悠々閑々』乃々木・白露(BNE003656)。 もう双眼鏡も要らない距離まで来たのか、『無軌道の戦鬼(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)は肉眼で陸マグロを仰ぎ見た。 「戦いがい、あるね。食べがいも、ありそう」 「マグロカレー……」 ぼーっと戦闘とは関係の無い事を考え始める『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)。 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)がこめかみをぐにぐにと揉んだ。 「時価いくらってレベルじゃねえな……と言うか気を引き締めとけよ、今食べ物のことだけ考えてたら酷い目に」 「おみやげ……」 「こっちもか!?」 孤児院のみんな今日はごちそうだよと呟く『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)。 そんなこんなで、巨獣・陸マグロとリベリスタの戦いが幕を開けようとしていた。 ●VS陸マグロ! ラ・ル・カーナ上空。二つの影が円環を描いて旋回した。 その陰は大きく陸地を覆ったが、その数十倍もの大きさを誇る陸マグロ(キャサリン)を前にしてはもはや点にしかならない。 「こういうデカい敵ってのは上空からの攻撃に弱いのがセオリーだよな!」 「……多分」 陸マグロの直上まで来た所で急制動。 天乃は光の翼を畳むと、直滑降の姿勢で陸マグロへと急降下した。 銀色の鱗に覆われた体表をスライディングするようにブレーキ。途中で面接着をかけ、両足と片手をぴたりと張り付けると、空いた手から気糸をぶわりと発生させた。 「爆ぜろ」 ぼむん、と陸マグロの胴体斜め上が爆発。流石の陸マグロも何が起こったのかと皿のような目をぎょろりと上に向けた。 自分の背丈と同じくらいの眼球がこっちを見ていると言うのは凄まじく怖い光景だが、天乃はクレバーに爆破を続行。陸マグロの背中をどんどん爆発させていく。 追い払おうにも腕が無い陸マグロは、嫌がるように身体をうねらせながら爆走した。 激しい振動に振り落とされそうになる天乃だが、あんまり粘っていると転がって潰されそうな気がしたので一時離脱。 入れ違いに翼を広げた創太が突っ込んできた。 剣に紫電を纏わせつつ、陸マグロの側面をなぞるように燕返し。 「ほらよ、電気調理してやんぜ!」 天乃一人の攻撃なら我慢できた陸マグロだが、流石にこうも畳み掛けられてはたまらない。じたばたと横回転するように暴れた。 尻尾で弾かれそうになって緊急離脱する創太。 「っとあぶねえ! 電撃も殆どとおしゃしねえしな……まあいい、殴ってりゃ死ぬだろ!」 「……でも、ちょっと狙いづらい、かな」 鳥を追う犬がそうするように、その場をグルグルと回転し続ける陸マグロ。 巨大なマグロが凄まじい地響きを立てながら足元を周回し続けるのも充分壮絶だったが、あの状態の陸マグロに近づくのはどう考えても自殺行為だった。触れた瞬間ぶっ飛ばされそうな気がする。 「さてどうしたもんか……ん?」 これは詰むかなと思った所で、創太たちは『彼女』の存在に気づいた。 ぴたりと動きを止める陸マグロ。 「さあ来なさい。私が相手になってあげます」 そう、彼女とは、剣を抜いて正眼に構えた佳恋であった。 大地に両足をつけ、いつでもどうぞとでもいうように胸を張って立っている。 陸マグロは『ぼおおおおう』と言う蒸気船のような声を上げ、佳恋へと突撃し始めた。 肉食なんだろうか。今更だが。 「……く」 マグロが真正面から猛スピードで突っ込んでくると言う経験がある人は少ないと思うが、可能なら想像してみて欲しい。ネットで画像検索とかして。 それをまんま30mくらいにデカくして、蜥蜴のような脚を接続したのが陸マグロである。 こんな光景を前にしてじっと立っていられる佳恋は大したものだった。 そして。 「マグロカレー……いいな……ダシ、出るよね……」 佳恋の後ろでぼへーっとカレーに想いを馳せていた小梢も大したもんである。 「って、なんでここにいるんですか! 思い切り進行方向上ですよ!」 「どちらかと言うと辛さ控えめの方が合うよね」 「何の話をして……って!」 一度小梢に振り返り、陸マグロに振り返り、もう一度小梢(ほぼ無反応)へ振り返り、もっかい陸マグロ(若干嬉しそう)に振り返る佳恋。 「勘弁して下さいこんな化物! 逃げますよ!」 「きゃー」 棒読みしつつも恰好だけは整えたいのか、両手をぶらぶら掲げつつ逃げだす小梢。 そんな彼女を引っ張りつつ佳恋はぐるっと側面に回り込むように走った。 狙ったわけではないだろうが、蜥蜴の移動方法は直線スピードが恐ろしく早い代わりに蛇行や急カーブに弱い。そのおかげもあってか二人はなんとか側面に回り込めた。 逃がすまいとじたばた方向展開をかける陸マグロ。 佳恋はチャンスと見て声を上げた。 「皆さん、今の内に!」 「助かる。ナイスフォローだ佳恋」 どこで身を隠していたのか颯爽と姿を現した福松が、陸マグロの後ろ足にB-SSを連射した。 「『こっち』にはなかなかいないデカブツだな。いい戦闘経験になりそうだ!」 デカい動物は総じて脚の強さが発達している。(ラ・ル・カーナにそう言う常識があるのかどうかは別として)特に像や大蜥蜴の脚関節の固さは他の動物を大きく上回るもので、陸マグロに至っては相当の労力を要するものだったが。 「くっくっく、貴様はそのデカさで自らを滅ぼすのだ! 自重で潰れるがいい!」 光の翼で水平飛行をかけ、陸マグロの後ろ足にデッドオアアライブを叩き込む竜一。 陸マグロの態勢が若干ブレた。 そう。固いは固いが、一度壊れてしまうと取り返しのつかないことになるのが大動物の脚というものなのだ。 「うなれ私のそにっくえーっじ」 砂を舞い上げて現れた梨音が、傾きかけた陸マグロの足を滅多斬りにしはじめる。 そしてついに折れ曲がる陸マグロの脚。 『うぼおおおう』という声を上げてその場に膝をつく。 「やったぞ、このまま畳み掛ければ楽勝できる! 陸上動物ってのは脚さえ潰せば大抵……ん?」 「おい、何かを忘れてないか。俺たち」 突撃しようとする竜一の襟を、福松がちょいっと掴んだ。 その横を梨音がささーっと通り抜けて行く。 「大型モンスターは深追い厳禁って……誰かが言ってた」 「それもあるが。なあアレ、マグロなんだよな?」 びたん、という音がした。 だがその音量は30m級である。もはや地面が大爆発を起こしたかのような音をあげ、陸マグロのボディが地面に叩きつけられた。 転倒によるものではない。 なぜなら。 なぜならば……! 「上から来るぞ、気を付けろー!」 遥紀が『今言わなきゃいつ言うんだ』みたいな顔で声を張り上げた。 直後、全長30mと言う陸マグロによる地獄の『びったんびったん』が開始された。 福松達が嫌って言うくらい蹂躙されたのは言うまでもない。 で。 「僕達が回復しなかったら、今頃どうなってたか……こわいね」 「そうだね、怖かった……」 ぜーはー言いながら額の汗をぬぐう白露と遥紀。 彼らが聖神の息吹や天使の歌を限界ギリギリまで連発していなかったら今頃全員マグロの叩きならぬ『マグロ叩かれ』になっていた所である。 「マグロ……カレー……」 そんな彼等を身を挺して庇っていた小梢は、白い目をしてカレーの世界に飛んでいた。平たく言うとくたばっていた。 感謝の気持ちを込めて手を合わせる遥紀と白露。 「油断したぜ。脚が無い方が強いってどういうことだよ。詐欺だろ」 などと言いつつ銃をリロードする福松。 一方の陸マグロはぜーはー言いながら地面に横たわっていた。暴れすぎて疲れたらしい。 「散々暴れてくれやがって、反復横跳びもできねえだろうし……思うさまぶち込ませてもらう!」 ちょっぴり怒りの形相で銃を乱射する福松。 「簡単には狩れない……でも、悪くない、ね」 えらの辺りに着地してハイアンドロウを連発する天乃。 同じく目の辺りに着地した梨音がしゃきーんと包丁を翳した。 「今日もちゃんと、ワザビ入り……えい」 眼球をワザビ包丁で滅多刺しにする幼女がここにいた。 想像するだに目が痛い。 創太はちょっと目を覆いながらも突撃。 佳恋たちと一緒に陸マグロにトドメをさしにかかる。 「これ以上跳ねられたらマジでヤバい、疲れてる今の内にケリを付けるぞ!」 「わ、わかりました! 行きますよ小梢さん!」 「マグロェ……」 「小梢さんはもうだめです。置いていきましょう!」 「お前さりげに酷いな!」 陸マグロにばしばし叩き込まれるギガクラッシュやらメガクラッシュやら。 「まあでも、的が大きいからそれなりに当てやすいよね」 「俺たちには、好都合だね」 後ろの方から福松と並んでマジックアローを撃ちこむ白露と遥紀。 最後に竜一が大きく飛翔。 急降下と共に陸マグロの額(?)に剣を突き立てた。 「さらばだ陸マグ、お前は俺たちの中で、血肉となって生き続ける!」 『うぼおおおおおう』という蒸気船のような声が鳴り響き、陸マグロは大きく痙攣。 そしてついに、ぱったりと動きを止めたのだった。 ●ラルカナクッキング ラ・ル・カーナ巨獣とエリューションビーストたちとの大きな違いは、場合によっては食えちゃうところである。 「と言うわけで、食うぞ!」 欲求に関することには秘めたパワーを発揮するアーク・リベリスタの皆は、持てる力をフルに活用して全長30mの陸マグロを解体しまくった。 (持っときゃいいのに)トラックの一台も用意しない男気溢れる原始スタイルで持ち帰ることになるのだが、そんなことはもう頭にない。 あるのは時価不明の超巨大マグロである。 「マグロカレー……マグロー!」 「運動してたから良い締まりだふっふー!」 特に、いつもは絶対に働かない小梢が目を光らせて暴れ回ったり、遥紀が返り血を大量に浴びながら包丁連打を繰り出していたのは、非常にレアな光景だったと思って頂きたい。 ……かくして、ある程度に切り刻まれた陸マグロ。 「マグロと言えば、刺身だ!」 福松は小皿に醤油をなみなみと注ぎ、小さく切り取った陸マグロの肉をそっと口に運んだ。 舌の上に乗せて、まぐりと噛む。 「……………………おお」 陸マグロが肉食だからか。それとも巨大生物だからか、舌の上でとろんと溶けるようなきめの細かい脂身があり、しかし身はしっかりと引きしまっていた。噛めば歯茎を弾くくらい、効果音にすれば『むちんっ』となるくらいの歯応えがあった。 そんじょそこらのマグロじゃ味わえない食感である。当たり前だが。 「こりゃあ、フュリエの皆も食ったことないだろうな」 「たぶん……」 同じように刺身にして頂いてた天乃は、未曽有の感覚にちょっと胸をときめかせていた。無表情なので全く分からないが、一応ときめいている。 「後で持って行ってやるか。絶対俺たちだけじゃ食いきれないしな」 「普通にマグロ一匹あっても無理だろ」 竜一がブレードを器用に使って骨周りの肉を削ぎ落していく。いわゆる中オチである。 「スナズリ、カマ、脳天にヒレ下……うまいとされる部分は俺が貰ったぁ!」 「貰うのはいいが……おいどう考えても食いきれないだろ! 財宝を目の当たりにした盗賊みたいなことになってるぞ!」 「言い得て妙だな! たしかに宝の山だ、骨もほら、いいダシ取れるぞ!」 「ダシどころか家が作れるわ!」 「……そういえばバイデンって巨獣の骨で家作ってんだっけか」 「噂じゃな」 などと言いながら普通に刺身を作っていく天乃たち。 30m級の生き物を此処まで小さくしていくと遠近感とかおかしくなってくるのか、妙にジャンボサイズのお刺身だったが、もはやだれも突っ込みを入れて来ない。 「マグロ尽くしの寿司を振る舞ってやる! 勿論フュリエの皆にもな! オレの高感度、上がるぜ……?」 キラーンと包丁を光らせる竜一だった。 その一方。 「よし、料理だ!」 服を着替えてエプロンつけた創太がキラリンと目を光らせた。 切り落とした陸マグロの肉をあーしてこーして、事前に用意した野菜らしきものをドレッシングを丁寧に混ぜて最終的に出来上がったのが……。 「マグロのカルパッチョ、あがり」 今日一番なんじゃいないかってくらいキリッとしたイケメンフェイスで呟く創太。 この場にフュリエのぴちぴちギャル(死語)たちがいれば黄色い声で『キャーソータサマステキー』と言ったかもしれない。というか、そんな想像をちょっとばかりしてみた。 『きゃー創太さま素敵!』 『結婚してください!』 『子供は何人欲しいですか!』 『保険金はいくらまで出ますか!』 『財産分与は』 『遺書は私宛に』 『いい弁護士を』 「こことここにサインを……」 「……ハッ」 気が付けば、背後から遥紀に何事か囁かれていた。 「何すんだ……夜寝る前に誰でもするような妄想を邪魔するってお前……」 「いいじゃない。長すぎる独身生活で料理スキルがモコミチみたくなってるんだろう?」 「やかましいわ! 黙ってカルパッチョくってろ!」 「黙らないよー。羽もぎゅもぎゅ」 振り払おうとする創太にしがみついて羽に顔を埋める遥紀。 創太はそれを無理やり引きはがすと、口の中に四分の一くらいの生玉ねぎを突っ込んだ。 もしゃもしゃ噛み砕く遥紀。 「うん新鮮……」 「涼しい顔して食いやがって、胃に来るぞ」 「大丈夫、リベリスタだか……うっ」 かーっと熱くなる喉を抑え、遥紀は目を白黒とさせるのだった。 そのまた一方で。 「最初に見たときは食べられるのかどうかすら怪しいところでしたが、意外と食べられるものなんですね」 涼しい顔をして、佳恋はナプキンで口を吹いていた。 そして手元の皿を見下ろす。 三十センチ大のマグロブロックがどべーんと置かれている。 そこに、真上からしょうゆをかけたものが、本日の佳恋ちゃんクッキングである。 仮称、『陸マグロブロック』。 それを見た白露は悲しい顔で呟いた。 「り、料理じゃない……」 「いいんです! 料理ができなくても、ええと、戦えればいいんです! そういう白露さんだって何も作ってないじゃないですか!」 「僕は味音痴だから、料理しないで見てる方がみんなのためなんだ」 「くっ、変なところで常識的な……!」 こういうシチュエーションだと料理下手に無自覚な人がヘンテコな料理をつくって誰かの口に突っ込むというのがパターンだが、人間ができてるのか常識が前に出てるのか、白露はフリーハンドのノータッチだった。 「まあ、僕よりもっと潔い人がここにいるから」 「ごはんまだー」 お皿をかちんかちんとスプーンで叩きながら、小梢が目をキラキラっせていた。 「マグロカレーがいいー」 「カレーの材料なんて用意してませんよ」 「ぇっ……」 目からハイライトが消える小梢。 その横で、梨音が巨大な風呂敷を担ぎ上げた。 梨音と風呂敷で1:3といった対比だったが、梨音の表情はどこかキラキラしている。 「待っててね、孤児院のみんな。今度こそ、ごちそうだよ……」 「…………」 「…………」 そんな梨音に『トラックに積んでいったらいいのに』と言おうとして、だれもそんなの持ってきてなかったおとに気づいて愕然とするのは、言うまでもなかった。 「AFに入るんかな……これ……」 「入らなかったら腹をくくるぞ。依頼一本分の困難が待っているかもしれんが……」 「くうっ……!」 皆は目じりをちょっぴり光らせ、空を見上げたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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