●Love for my mother 「――ああ、母さん? オレ、オレ。オレだよ」 「いや、詐欺じゃない! 詐欺じゃないよ!」 「あーもう、いいや。あと15分くらいで家に着くから、無視しないで開けてくれよ!」 耳にあてた機械から聞こえる懐かしい声に笑い声だけを返して、ぷちりと電源ボタンを押す。 声こそ震えなかったものの、握りしめていた古い型の携帯電話は熱く、少し湿っぽい。 通話を終えた青年は脱力したようにその場にしゃがみ込み、がしがしとセットされた髪を乱す。担いでいたリュックも肩からずり落ち、でこぼこした土の上にへたり込んだ。 空は月と星で明るいが不気味な神社前、辺鄙な裏道に人影はなく、伸び放題の草が風に揺れる音以外、車の駆動音から鳥の声までが遠い。 深く息を吸って、吐いて。 数年ぶりに母と声を交わした緊張をほぐして、今回の帰省の切欠である赤いカーネーションの花束を握り直す。 久々に帰るのが母の日というのは、どこか恥ずかしい。それだけの理由でひと月近く帰省を伸ばしたが、プレゼントは素直な物になったわけだが。 肝心のプレゼントは持ち手どころか、セロハンの下で花を包む真白の紙にも皺ができ、カーネーションそのものもどこか元気がないように見えて、苦虫を噛む。 (これじゃあ、なぁ) 仮にも感謝の印として渡しに来た代物に皺が寄っていては――軽んじているようで気乗りがしない。 かつて自分が飛び出した田舎の、文字通り満天の星空の下。しゃがみこんだまま、黙々と素人なりの手直しを始める。 かしゃかしゃと乾いた音に混じる、異質な存在に気がつくこともなく。 「……さて」 満足して立ち上がろうとして、ようやく気がつく。立てない。 何気なく振り向けば、ざっくりとリュックが裂かれていた。 それを斬り裂いた爪の主は、丸い顔と長い胴、短い手足。それだけ見れば『イタチ』だった。 しかし、ぼんやりと灯りが点いたような赤い毛並み、通常ではありえない大きさ、長さが揃って常識を否定する。 本能的な恐怖に混乱する頭でとにかくリュックを手放し、逃げ出そうと背を向ける。 「うっ!?」 斬り裂かれる感触と同時に両足に訪れた、唐突な熱に声も出ず土の上に転がる。 足は感覚が麻痺したように、何も感じない。急すぎる事態に脳が受容を拒否しているらしい。 ああ、全くわけは分からないが、死ぬのだろうか。 早々に諦めを抱きながら、どうにかのろのろと瞼を持ち上げれば、手から離れた花束が異形に咥えられ、過ぎ去る瞬間。 霞がかった意識の中、思考よりも先に伸ばした手は――届くはずもなく土を掴んだだけ。 走る獣の姿を追うはずであった視界は、いつから居たのか、青年よりも大きな異形の獣に遮られた。 滑らかな毛並みは炎を纏ったように赤く明るく、藍色の空に浮かんでいる月と星も霞む。 近付く巨体の異形を前に乾いた喉につばを押し流すことも出来ず。ただ向き合い見合うまま、肘を立て機能しない足を引きずって僅かに後退する。 その無様を嗤うようにちょろちょろと二匹がその周りを駆ける中、青年の体はとぐろを巻く異形の身に包まれた。 間を置かず、鈍い音が響く。 そうして、赤い何かが飛び散った。 ●任務 一際大きな異形が人だった肉塊を放し、出来たてのディナーに群がる二体の異形――そんな場面を映すモニターを背に『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が口を開く。 「任務は、エリューションビースト三体の討伐。被害を出す前に食い止めて欲しい」 伏し目がちにゆっくりと瞬き、頭の中に流れ込んだ映像を情報として整理していく。 そして集まったリベリスタ達を順に見やり、誰にともなくこくりと小さく頷く。 「さっき、見てもらった通り。……なんだか遊んでいるようにも見えたから、そこを突けば少しは……戦闘も楽かもしれない」 田園風景の広がるのどかな田舎で、赤い花束を持った男性がE.ビーストに嬲り殺されるその光景。 イヴは一見すればただ淡々と、言葉を零す。 「あの彼が通った道、地元の人たちは神社を気味悪がって寄り付かないみたい。でも到着日は彼が来る日だから……もちろん、用心に越したことは無いと思う」 リベリスタの幾人かがちらりと、モニターを視る。 再現映像のために詳細な風景こそ断言できないが、月に照らされる民家と思しき建物は遠い。 手元の資料を手に一人、また一人と言葉を交わしながら、戦場となる場へ向けて立ち上がる。 これから運命を変えていくリベリスタ達の背に、イヴが声をかけた。 「気をつけて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:彦葉 庵 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月07日(火)22:07 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●運命の序幕 陽が傾き始めた頃、リベリスタは舞台となる田舎町に降り立つ。 神社の下見を済ませてきたアゼル ランカード(BNE001806)が手製の地図を広げた。大鼬らの住処であるそこへ長居することは出来ずとも、必要とされた情報は簡略化されて紙面に描かれていた。 図面を確かめるように眺めていると、そこに影が落ちる。 アゼルの緑色の瞳が影の主――『Gentle&Hard』ジョージ・ハガー(BNE000963)を見上げれば、彼の指が紙の上に幾つか点在する赤いマル印の一つを指した。 「潜伏先はこの辺りってことだな?」 「そうですよー。あとは風向きを考えて隠れればいいかなとー」 「なるほど。よく調べてくれたな」 「それは、別にですねー」 照れ隠しに言葉を続けるアゼルの肩にジョージの手が置かれる。隠れる場所はある。先んじて戦場で待ち伏せ、囮が敵を引き付ける――作戦は可能だ。 「……玲殿、これを。役に立たないだろうか」 潜む場所が滞りなく決まる傍ら、『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・オブライエン(BNE000024)が、持参した弁当を差し出した先は『天翔る幼き蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)。 敵を引き付ける囮の役の一助にと差し出された弁当を両手に乗せ受け取った玲は一度丸めた青い瞳を細めて屈託なく笑う。 「ありがとう、アラストールさん」 戦闘を率先したために今は幻を纏わない彼の、尾が隠された上着がふわりと揺れた。他者から見れば気付かないほど些細なそれに気付いたアラストールは常の凛とした表情を微笑ましげに緩める。 帽子の下に隠れた蒼狼の耳がぴくりと震え、二人が少女達を見遣る。 「倒さなければいけない敵だって分かってはいても……心苦しいわね」 ふぅ、と吐息を零した『優しい屍食鬼』マリアム・アリー・ウルジュワーン(BNE000735)がレースに包まれた手を頬に添えて思うのは、親子のような鼬達の姿だった。 「しかしあの青年を犠牲にする訳にもいかぬ、絶対にの」 「ええ、親子だと思うと心苦しいけど……人死を見逃す事も出来ないしね」 マリアムに『有翼の暗殺者』アルカナ・ネーティア(BNE001393)が腰に片手を当てながら、意を汲んで頷く。そこへ赤いカーネーションの花束を持った『薄明』東雲 未明(BNE000340)が面々と合流し言葉を繋ぐ。 言葉の交わされる間、一人の少女が未明の持つ赤い花を静かに見ていた。 白い翼の少女が気合いを示すようにきゅっと拳を握り笑いかけ、傍観していた少女……『月刃』架凪 殊子(BNE002468)は口元に微笑みを浮かべる。彼女にとって母親ことUMAに関連するイベント、母の日などとは微塵も縁が無かったのだが、それは覆された。 「一ヶ月遅れのそれに頼らねば帰宅する勇気の持てない男とは面白い、助けてやろう」 ――自らの手で選ぶ運命は、その好奇心が赴くままに。 ●鼬の一幕 夜の帳を星月が彩り、『姉弟』の足元を照らす。 「さすが田舎、星がよく見えるわ」 「お、お姉ちゃん。この道暗いし、怖いよ」 囮として姉と弟を演じる二人、平然とした未明と対照的に心許なげな玲の声が響く。紺色の垂れ絹に散りばめられた金色は明るく視界は悪くなく、しかし都会の光よりは弱く暗い。リベリスタ達によって結界を張られ、さらに赤いコーンで封鎖された道を振り返る。夜の暗さを退けた姉弟の目にも人影は見えない。 「大丈夫よ、だって」 「!」 不意に道端の草影が揺れ、二頭の赤熱色が躍り出た。言葉が途切れる。 映像で見た小鼬は一頭が飛びかかり怯えた様子の玲の弁当に飛びかかり、反射的に片足を引き縺れた風を装い故意にもう一頭の爪を掠めさせる。 あっさりと鼬は釣れた。 リベリスタ達が打ち合わせた場へ向かおうと姉弟が踵を返した目鼻の先に、小鼬と時を同じくして現れたであろう大鼬が立ちはだかる。 未明の眼前に頭上から真っ赤な洞が、影が、迫る。 ぐっ、と――傷を負った玲がよろめき縋るようにして未明の手が引かれ、身構えた上体は逸れて牙は彼女の肩口を浅く抉るに留まる。 静かな住処に近付く気配の数に子を持つ母の警戒心を刺激したのだろうか。だがこれで三体の位置は顕かとなり、滅多に不意打ちは受ける心配はなくなった。 二人で視線を交わして前方へ、たたらを踏むように大鼬の脇を擦り抜け神社へと駆け込んだ。その姿を跳ねるように小鼬が追い、地面に落ちた弁当を名残惜しむ一頭を鼻で急かしながら、大鼬が後について走る。 付かず離れず、間もなく社の前広場の中央に差し掛かり。 重い銃声が鳴り響く。 「さて、ここからだ」 誘い込まれた鼬達に星のようにジョージの光弾が降りそそぐ。 襲撃に足踏む子を大鼬は腹の下へ取り込み警告の声を発し、息を潜めていたリベリスタ達は開戦の音と同時に一斉に飛び出す。 「未明殿」 毛を逆立て唸る大鼬と、腹の下の小鼬の分断に作戦は進む。 光弾に続き、アラストールの十字の光が大鼬の肩を貫く。閃光の衝撃は低く身構えていた大鼬の体が傾いた。未明が動く。 「過保護も大概にしないと、煙たがられるわよ!」 肩の傷の痛みに顔を歪めながら、幻想纏いからダウンロードしたばかりの剣の柄を強く握る。 エネルギーを溜めこんだ得物は弧の軌道を描いて大鼬の胴へ叩きこまれ、鈍い声を発した大鼬の体が大きくしなり弾き飛ばされる。 派手に転がり、小石が跳ね土煙が上がった。 それを迎えるのは闘気を纏うマリアム。 「かくれんぼは終わり! ここで抑えちゃうからっ」 悪戯っ子のような声あげて、反して瞳を陰らせた少女のバトルアックスが大地に突き立つ。 取り残された小鼬達が大鼬へと駆け、しかし到達するには至らない。 「そこのすばしっこい獣、私と遊べ」 「どの世界においても母親というのは情が深いものじゃのう」 蝙蝠の耳をぴくりと震わせ、不遜に笑んだ殊子が鼬に並ぶ。殊子はさらにギアを一段跳ね上げ、前に立ち塞がる。敵意に牙を剥く獣に対し、ステップを踏んで戯れ、寄せては引く動きに獣爪はひらりとした裾だけを裂く。苛立ちに一層牙を剥いた獣が、無防備な背から迫る未明の剣を、寸でのところで飛び退く。 「さすが、早いわね」 一方で、ふぅむ……とアルカナが唸る。指先に引掛けられたチャクラムが思案をなぞって緩やかに回る。アルカナの足元の真暗な影が蠢き、彼女の手元から放たれた黒が、素直に迂回を試みたもう一匹の小鼬の頭を穿ち阻んだ。外から見れば安直であれ、人ならざる者も知恵を絞るのだと、彼女は鼬を見遣る。 始まった戦いの喧騒に耳を傾けながら、首を振れば双方の姿が見える位置へと駆けたアゼルが足を止めた。小鼬達の前にはアルカナと殊子に未明が立ち、ジョージがやや後方から銃口の先を探っているし、大鼬はアラストール、マリアム、玲に囲われた。 そして、自身の内で循環する魔力を認めたアゼルの口ずさむ音に乗り、リベリスタ達に小さな翼が宿る。ふっと体の軽くなる感覚に殊子が跳ね、頬をほんのり紅潮させて目をキラキラと輝かせる。 「これが『翼の加護』か!」 「せーの、じゃ!」 アルカナが掛け声に翼を震わせれば影が鼬へと伸び、腕に組みつかれた殊子も幻影の月刃を浴びせかける。合間を縫って銃弾が連なり、傷は癒しの微風に包まれては消え、翼を借り高く跳躍した未明の剣が降る。素早くとも逃れることが叶わなければ、面々の消耗に比例し生命は削られていくのみ。 大鼬が食い止められた状態で小鼬が反攻に転じるには術が足りない。 社の反対――入り口側では大鼬が三人のリベリスタの包囲を振り解けずにいた。 破壊を誘う闘気にも見えていないかのようにマリアムに爪を振るい、斧ごと押し込めてしまうよりも前に、背を向けた側からアラストールの大振りの攻撃が迫る。大振りゆえに避け身を翻し牙を剥けば、続けざまに蒼狼の鋭い風が駆る。 硬い爪が金属とぶつかり、だらりと血涎を流し、裂かれた毛皮から鮮血を散らして猛然と襲いかかる。立ち往生する間にも小鼬が追いたてられる焦燥か、じわじわと蓄積する痛みのせいか、次第に息は浅くなり、精細を損ない始めていた。 犬のような短い悲鳴に大鼬が止まった。瞬きの間に裂けた口から赤々とした炎が覗く。 憎悪の籠った眼が、睨んでいるその先。 「火が来るよ!」 「避けて下さい!」 悪寒に玲が叫び、アラストールの剣が火炎の一つを薙いだ。アラストールが自身とマリアムに施した生命の寵愛に傷は相殺されるが、避けようの無い熱に眉を顰め、熱を吸いこんでなお肩越しに声を発する。 アゼルは腕にクロスを庇い、発された声にアルカナが数枚の白い羽を散らし舞い上がり、殊子と未明が身を逸らした。彼女の死角となったジョージには火炎は届かない。 好機と見た彼は前へ踏み込み、鼬達の体に光弾が爆ぜた。 地に伏せていた一頭が光に呑まれ、残る肉塊に大鼬が咆える。 即座に残りの一頭――狙いを察したリベリスタが動く。 アゼルの詠唱が戦場から邪気を退け、優しい光が満たす。焼かれた肌の痛みが引いていく。 光を背に、玲が真っ先に大鼬の前へ出て風を切り裂く刃が赤い身体には深く沈み込む。 口から血をボタリと落として、まだ突進は止まらない。衝動に振るわれる爪に咄嗟に後方へ跳び、マリアムへ視線を流す。 「まだ、抜かれるわけにはいかないの」 蒼い瞳を受け僅か首を下に向け、ぱちり、微かな音をたて電流を迸らせたマリアムがその身ごと赤い胴へ斧をぶつけた。 骨が軋む。 風が頬を撫でる。 時を同じくして、舞い上がったアルカナが残る小鼬に気糸を仕掛け。鼬がもがき数本の糸を千切ったが、絡め取られたままの身を殊子の月刃が断った。 「小さいのを殺したのは、こっちよ」 揺らぎのない声が大鼬の目を未明へと引き寄せた。最後の砦を喪失した獣が再び熱を纏う。 「丈司、さんっ」 「ああ……親を想う子と、子を想う親ってところかね」 軽い音で鼻先に玲が迫り、足が重い顎を跳ね上げれば口の端から火の粉が零れた。ちょっとした感想の言を織りこみ、肩を竦めたジョージの二丁銃を追い撃つ。 抗う力を失いコマ送りに喉を晒す大鼬。その下にアラストールが身を滑り込ませ、秘めた膂力を揮わせる。 「――世界を侵す一因子、此処に討たせてもらう」 ●一幕のその後で 一歩先を歩く騎士の一閃で大鼬にも幕が下ろされ、リベリスタ達は帰路についた。 神社から離れてすぐ、看板の代わりに張られたアゼルの地図を手にうろつく青年の姿が彼らの目に映る。 人工的な色に染められた髪に、リュックサック、極めつけは赤いカーネーション。 ジョージがちらりと腕時計型の幻想纏いを確かめれば、予知された時刻とほとんど差異がなかった。 「ミリアムおばあちゃん? どうしたの?」 「あのね、ちょっとやりたいことがあるの」 「やりたいこと」 かつての未来の被害者の青年の背にそわつくマリアムに気付き、顔をひょいと玲が覗きこんで尋ねれば少女は人差し指を口元に添えてくすくすと笑う。 かくりと小首を傾げた玲と、聞き付け復唱したアラストールに小さく手を振り、見送られて青年の元へ駆け寄った。 「……おっと」 それならば―― 「こんばんは」 「はっ!?」 大袈裟な程に肩を跳ねさせて振り返った青年は硬直する。 夜遅くに異国風の少女に声を掛けられ、奥には共通項が計り切れない面々。まさか地図に従って迂回しては不味かったのか。軽い混乱状態にある青年の内を知ってか知らずか、紫の瞳が彼の目を覗きこむ。 「貴方はお母さんに対して、素直に思っていることを話せるようになります」 それと、私達に会った事は忘れてね。 マリアムが戻ると、羽ばたき空へ息を潜めたマリアムが凹凸の地面に足を付けた。 続いてジョージの背からは殊子がひょいと顔を出し、興味をそそられた勇気の足りない男を一瞥する。 外面は取り立てた事もなし。性格はやや臆病で混乱しやすいということで、残念ながら特殊な面白さは発見できなかった。 「何をしてきたのじゃ?」 「今日くらい素直になってもらっちゃおうって思ったの」 「あたいは聞こえちゃってたんですけどねー」 率直なアルカナの問いに、もしもに備え集音をしていたアゼルがぽつりと零す。 何事かを呟いて聞こえる青年の後姿を振り返ると、釣られて視線が動く。 声をかけられる前よりはきっちりと歩いているような、足元が心許ないような。淡い違和感は殊子の胸の内の例の青年の資料ページにこっそりと加わる。 思い返せばちょっぴり目が虚ろにも見えなくは無かったかも知れないが、きっと。 「……魔眼にはかかってた、ってことよね」 「まぁ、少しなら大丈夫じゃろ」 「そう、ね」 未明、アルカナの声にマリアムは頷き、アラストール、玲も頷きを返す。 「どんな事、話しちゃうんだろうね?」 それぞれ幾らかの手傷はあるものの、無事に一仕事をやり終えた面々の姿をジョージが眺める。 話題に上った『親孝行者』の青年を肩越しに確かめると、ふと口角が上がった。 「頑張んな、兄さん」 赤いコーンを小脇に抱え、頭上に広がる夜空に目を移す。 ――親孝行、何かすっかねぇ。 ふっと口をついたその呟きにアゼルが振り向くまで―――あと、一秒。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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