●誤解があるようだ、話しあおうじゃないか 『秘密兵器請負人』如月・ノーム・チェロスキーは畳に平伏しながら弁解した。 和装の男の視線が痛々しく刺さるのを感じる。 この男は油断ならない。 『ヒトニアラズ』の二つ名を持つ鬼、悪魔の類だ。 ここは、穏便に。穏便に。粛々と済まそう。粛々とだ。 「まあま、愚生の所の元締めも、酔狂者だからね。先日の件をしってるかい?」 男から大きな溜息混じりの問いが来る。 チェロスキーは顔を上げた。 「黄泉の元締めさんが、大暴れしたと。へへへ」 「へへへじゃありませんよ、君」 「すんません」 「困ったものだよ。裏野部の支援者――集金されるだけの餓鬼だけど。あれで死んじまってね。末端のクソ餓鬼が落とし前がどうとか」 「困りますな」 「困るとも、面倒で」 男は脇の風呂敷包みを出して、チェロスキーの頭の上に置いた。 「これからね、那古井の温泉に行こうと思っているのですよ」 「温泉?」 「休暇です。無理言って貰いましてね。この包みで足りるでしょう」 「へへぇ!」 「この辺りでお暇させて頂きますよ」 男は立ち上がって退室した。 チェロスキーは後頭部に手を伸ばして風呂敷包みを掴む。 思わず、頬の肉が釣り上がる。 「お前らは黙って、私にじゃんじゃん出してれば、良いんだっぴょーん!」 「聞こえましたよ」 「すんません」 ●こんなもの2号 3人のフィクサードが、風を切って歩いていた。 裏野部系列の末端。 数にも数えられていないフィクサード『ナックルさん三人組』だった。 「どけどけぇ。ナックルさまがお通りだぁ」 「生きるのもめんどくせぇッス」 「ヒャッハー!」 3人は金銭を徴収していた一般人を失って、ムシャクシャしていた。 落とし前をつけさせようとした所で、上から諦めろと言われた。しつこいと殺されるぞと脅された。 憂さ晴らしに『うらのべラジヲ』でチームの名前を上げようと計画したが、寝過ごして駆けつける事ができず、イライラが絶頂に達していた。 「ナックルさん、裏野部のあいつらよぉ、アーティファクトがつえーだけじゃねぇッスカネ?」 『マキシム』鈴木・幻の銀次(すずき まぼろしのぎんじ)の問いに『ナックル』山田・嗣音破(やまだ つぉねぱ)は返す。 「思ったわぁ。ジョーはどうおもう?」 「ヒャッハー!」 『ジョー』杉村・怒羅魔(すぎむら どらま)も同意する。 「だよなぁ? つえーアーティファクトがあれば、ビッグになれるんだがなぁ」 「ナックルさん、根性ぱねぇっスから」 三人の得物は、特に珍しいものではなかった。 裏野部の構成員には、強い年下がいる。気に食わない。 年下の小娘が集金にも来る。気に食わない。 徴収していた奴は死んだ。気に食わない事で満ちていた。 俺達にも強い武器があれば、あれば。 ここに黒塗りのワゴンが停まった。窓が開く。 小汚いジジイが、でろりと顔を出した。 「アーティファクトが欲しいかね、諸君? ならば話しあおうじゃないか」 : : : : 火の海に包まれた。 「こいつぁすげぇ! ぐひゃふほふひははははッ!」 「アハッ、フン、ホフッ、フんハ!」 「ヒャッハー! ゴミは燻蒸消毒だぁ」 口角に溜まる泡。鼻水、涎がダラダラ垂れるが、興奮で意識の外にあった。白目を剥いたかと思えば、左右の目は左右に離れ、上に下にカメレオンの様に動く。 「おぼぼぼおほほ、人間がいるぞぉ?」 「ぶふッ! ぶふふん! ぶフんハ!」 「ヒャッハー! 人間狩りだぁ人間狩りだぁ」 三人は逃げ惑う人々に目をつけた。 跳ねるように動きだす。 それは人間がぴょんぴょんジャンプする形ではなく、人間の形をしたスーパーボールのようだった。 身体全体で、地面に、塀に、まさしく跳ねる様に動き回る。追いかける。猿のように。 「ん~、間違えたかなぁ?」 大勢の人の絶叫が響く。 ジュっと人を焼く音がする。臭いがする。悲鳴がする。 「まあデータはとれた。『試作フェニックス放射器』はくれてやろう」 にちゃりと口を鳴らしてチェロスキーは立ち去った。 ●ビッグになるんだぁ 「フィクサードの撃破と、それぞれ持つがアーティファクトの破壊をお願いします」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は、目的を告げた。 裏野部系列らしいが、数にも数えられていない末端。 ただのチンピラ、木っ端フィクサードだった。 「先日あった事件――粋狂堂 デス子さんと同じ種の様で、使用者を狂気に駆り立てるのですが……」 和泉は、報告書を一枚出した。 前の事件は、狂気に駆り立てられた革醒者が、ホテルを粉砕させたというものだった。 現在は入院して、治療を受けているという。 「この三人、気持ち悪い位に変わってしまって」 狂喜して暴れまわるだけではないらしい。 場所は住宅街の路地。人や町を燃やし、手当たり次第に燻蒸消毒する。 急行しても、犠牲者が出るという。 「彼らをおかしくした首謀者の手掛かり既にあります。捕縛の必要はありません。よろしくお願い致します」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月02日(月)21:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●花火 -Fireworks- 家が燃える。化学建材が燃える。 毒の空気が立ち込めて、肉が焦げる臭いが鼻孔に刺さる。 むせる。 『弓引く者』桐月院・七海は、町辻に転がる人型の墨を一瞥し、粛々と剛弓に矢を番えた。 人を燃やすのも悲惨ですが―― 「この火事で家を、思い出を焼かれるのもまた辛い」 「速やかに、排除します」 『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネットが淡々と、流れる様に弓を引く。しなる。 放たれる二本の矢。 七海が放った矢は流星の様に拡散して、フィクサード達の背を穿った。 「いまのはおうぎではない。ただのしょほだ」 カメレオンのような焦点の合わない眼が、一斉にリベリスタ達を向いた。 痛みを感じているのかいないのか、呆然としていて、ゆっくりとして―― 「でめえらあああかァァァァ! ぶっっっっころおおおおおっっっっっっっす!」 ナックルが吠えた。 咆哮に同調するかのように、火が生き物の様に動いて七海とレイチェルに注がれる。 「っ! 火炎放射器ではなく、火の鳥放射器……」 レイチェルと七海は反撃の炎を振り払いながら、つくづく常識や理解を超えた代物だと考えた。 「何を考えてこんなものを作ったのでしょう」 逸した、極めて危険なアーティファクト。と改めて認識した。 速やかに排除すると意志で思考を塗り固める。続いてブレイクを行う。残り二人。 そして、ブレイクのシードを作った真白室長に感謝をした。 ここにマキシムとジョーが跳ねるように躍りかかった。 超重武器を携えていて、尚も疾い。 マキシムがフェニックス放射器の大砲を振り下ろす。 「鬱陶しいぞ、三下どもが」 『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼスが割って入る。携えたパイルバンカーと、フェニックス放射器がぶつかり、ソウルの目の前で火花が散る。 「いちいち飛び跳ねてんじゃねえ。男だったら、地に両足つけて踏ん張れや」 「ぶほ、ぶ、ふふ!」 至近距離でマキシムの口から涎が垂れる様子が目の当たりになる。笑う。目がぐりぐり動く。 武器を使い切れるのか? とソウルは疑問視していたが、やはりどうもダメらしいと悟る。 「武器は使うものであって、武器に使われるようじゃいけないのさ」 ソウルがマキシムを弾く。 弾かれたマキシムは中空で回転して、よつんばで着地する。 「どうにも、この武器の制作者は使い手の事を考えてないようだ」 「Hi! そこのアンタ、オレのギターとアンタの秘密兵器、どっちがCOOLか試してみないかい?」 『KAMINARIギタリスト』阪上 竜一がジョーにぶつかる。 「ヒャッハー!! HOTで天地消毒だぁ」 振り下ろしたフェニックス放射器、その大砲がコンクリートの地面を割る。割った側から火が吹き出す。 吹き出した火が竜一の衣装を焦がす。 「グレイト。だがしかしそれを使ってジェノサイドは許されない。オレの音楽で止めてやろうじゃないか」 竜一はアフロが燃えていない事を確認すると、斜に構えてジョーを指さす。 「さぁ、KAMINARIギタリストのデビュー戦DA!」 「ヒャッハー、コイツは活きのイイモヒカンだー! もひかん?」 『LowGear』フラウ・リードが、にらみ合いとなった双方の間を駆ける。 煙の様に駆けて抜けて、ナックルにソニックエッジを放つ。 「十分楽しんだっすか? なら、さっさとくたばってくれねーっすかね?」 「くくくたばるのはてめえらだぁ!」 ナックルがフェニックス放射器のバットとの様に振ると、衝撃波が雲散した。 ナックルの口角に吹き出た泡は、滝のような涎になって顎へ、首へと伝っている。 フラウは嫌悪に近い感覚を覚えた。同時に火がフラウへと飛びかかる。 「熱っ、ヒャッハーしてるヤツ見ると条件反射で消毒したくなるっすね」 ここを見計らうかのように、ナックルの胸部へ銃弾が突き刺さった。 「最後くらいは派手に散っちゃいなさい。それくらいしか貴方達には価値無いんだから――」 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイスがフィンガーバレットの硝煙をフッと吹きながら、反撃の炎を見据える。受ける。受けながらも口調に揺らぎは無い。 「――雑魚」 「ウるぜエエエえあああアアアアア!!!!!」 狙撃できるように距離は開いている。ささやく程度の言葉が聞こえるということは、感覚が恐ろしく鋭敏になっているのか。 カメレオンの様な目の動きが一層速くなる。エーデルワイスは明確に殺意を感じた。 「上等」 十字を切る。次の攻撃は自分に来るだろう。 視界は不安、しかし超直感で明瞭。 雪待 辜月と『スウィートデス』鳳 黎子は、強結界と超幻影を施していた。 加え、七海とレイチェルが素早く注意を逸らした事で、一般人にこれ以上被害を出さない事については成功といえた。 「後は戦うだけです」 「援護します」 辜月は思索する。ナックルを先に倒す事。ここまでは順調。 気になるとすれば、反撃の蓄積。特に、複数人を攻撃する場合には3人からの反撃がある事。 「皆さん、翼の加護です」 七海がスターライトシュートで、多く反射を受けた事から警戒の念を強める。 これからナックルへ接敵する黎子と、既にナックルに張り付いたフラウを交互に見る。 次に打つ手は、回復専念。 黎子が翼の加護を受けて即座に飛び出した。 「性能自体は悪くないようですが……」 一度、翻る様な姿勢になってから、そっと掌を前に出すと―― 「私の師の言葉ですが、武器は武の器……自分の武力に見合わない器を手にしても持て余すだけ」 ――ハイアンドロウ。 触れたところに仕込まれる死の爆弾。 ナックルの脇腹が、花火のように爆ぜた。 ●焚身 -Barn Body- リベリスタ達は整然を崩さない。 対して火の鳥が縦横無尽に暴れ狂う。 竜一を襲い、エーデルワイスを襲い、ソウルを襲う。 レイチェルは敵全員を巻き込める位置まで移動すると、神聖な光を放った。 「入りました、狙ってください!」 「ノズルを狙うわよ♪」 エーデルワイスがB-SSを放つ。ショックに続いて、的確に銃弾が突き刺さった。 多方向から反撃が複数くる。 反撃に続いて、ナックルの火の鳥がエーデルワイスに躍りかかった。 「っ!」 「エーデルワイスさん!」 辜月が福音を鳴らす。 鳴らしながら辜月が戦況を見る。 ソウルと竜一、エーデルワイスに対して、それぞれが熱心という状況。 戦闘指揮を飛ばす。 「全体攻撃を撃つ方が狙われた時が、一番――」 「ROCK……」 獄炎に焼かれた竜一が、力無く片膝を着いた。 ジョーは首を上下にカクカクさせながら、辜月に大砲を向ける。 次に、レイチェルの間を交互行ったり来たりと定まらない。或いはどちらを攻撃するかを吟味しているようだった。 七海が降りて来る。 「ヒャッハー! って言ってみろよ、ヒャッハーって!」 「ヒャッハー! 天地消毒の構えぇ!」 七海は回復と攻撃を兼任していた。回復過剰を気にしていたが、過剰を気にする必要は無さそうだと判断した。 ジョーの火の鳥が七海に放たれる。凄まじい獄炎が七海を包むと、逆に放った炎がジョーへと返った。 「ヒャ!?」 「今のは火の鳥ではない――」 炎に包まれながらも笑いを禁じ得なかった。 「――余のフェニックスだ」 七海は危うくなった自身に浄化の鎧を施した。反射対反射。天地消毒の構えが崩れ去る。 「HA! HA! HA! ジャストモーメン!」 ここへ竜一が、ギターを振り下ろした。 運命は見放さなかった。 ジョーの頭部が変形する程の滅多打ち、オーララッシュだった。 「HELLからREVIVALしてやったぜ、YOU! フェニックスって言うのはこういうことをいうのSA!」 竜一が倒れれば崩れる。手厚い回復が必要だと辜月は確信した。 「堪え所ってやつだな」 いざとなれば庇うつもりだったソウルが、視線を戻すと、目の前にマキシムの火の鳥が迫っていた。直撃する。 「ぐぼふぶ、きゅん!」 ダメになった葉巻をペッと吐き出して、新しい葉巻を取り出す。 また燃えてしまった。 「チッ、そっちが炎に派手にいくならよォ……」 パイルバンカーを構える。巨大な円筒にスパークが走る。 「……と、その前にだ」 ソウルが放ったブレイクフィアーが、エーデルワイスや七海、自身の炎を消していく。 「燃え燃えしてぇよぉ~?」 「だめだ」 ナックルは脇腹付近が無くなっていた。 「いてえ、いてえ、い、てええ」 肋骨がチラチラ見える。 「いてえ――くねえええいひゃひゃひゃひゃ!!」 それでも、何も感じていない様子だった。 ただの下っ端フィクサードなら、とうに諦めるか降参するような傷だった。戦いは終わらない。 「雑魚のくせに」 エーデルワイスは、体力の大半を削られて毒づいた。 炎は、ソウルのブレイクフィアーで消えて楽になった。 「続行。ノズルを狙うわ」 声にいち早く黎子が動く。 フェニックス放射器は、背負ったタンクから伸びるノズルと、ノズルに繋がった大砲という形状。 ノズルを破壊すれば、もう火は使えないと踏んでいた。 黎子がメルティーキスで狙う。ノズルにヒビが入る。 エーデルワイスがB-SSで狙う。 続く連撃。 ああ、こんな雑魚などに屈したら廃る。 続く連撃。 「あはっ、命を削って燃えるなんて素敵、綺麗」 「今日は素晴らしい炎日和、私もチャレンジ♪」 「魂を燃やせ!」 涼しい顔でエーデルワイスは立っていた。 満身創痍だが、役目を果たした。 ノズルは破壊完了。謎の液体がどぼどぼと流れ出す。 「私も回復に回りますね」 レイチェルが予め想定していた被害があっけなく訪れた。 全体攻撃をしたときの反射と、火の鳥が合わさると回復が足りなくなる。 辜月と戦線の維持に務める事が最良だと考えた。 「いつまでそんなガラクタ背負ってるつもりっすか? ぷーくすくす」 フラウが煽ると、ナックルはぐりんと首を捻ってフラウを見た。極限にまでにたりと笑った。 「冗談、冗談っすからコッチ狙ってくるんじゃねーっすよ」 ナックルが自ら背負ったタンクを拳で破壊した。 「いひゃっひゃひいひゃ! がぼぼぼががが」 謎の液体を全身に浴びる。飲む。 「おれらはビッグになるんだぁ」 着火。 途端、ナックルがうねるような炎に包まれた。 包まれて尚も笑う。笑いながらにじり寄る。よつんば。跳躍。 辜月が警戒を発する間も無かった。肉を焼き、骨を焼くフェニックス焚身。 自爆上等の抱擁は、近接する黎子に注がれた。 全身の骨をバラバラにされてしまいかねない程にイった力が黎子の体力を穿つ。 「もえろもえろもえろもえろしえええええええ!!!」 「諸事情で"火は効きません"。――が、痛いのは嫌いです」 ナックルの力が緩んでいく。黎子は、炎に包まれながら姿勢を整えた。 膝を着きかけたものの、耐え切ったと確信する。 「…えろ もえろ も えろしえええ ええ」 ほぼ炭化しきったナックルは、フラウの残影剣でバラバラに崩れさった。 ●鎮火 -Silent Fire- 「こっちも雷でド派手に返すぜ!」 ソウルがパイルバンカーを引き絞る。巨大な筒から電撃が迸る。 「燃え~燃えしてぇよぉキュッぼ!?」 ギガクラッシュ。電撃を纏ったパイルバンカーがマキシムの口中に叩き込まれる。 マキシムはニタりと笑う。 大砲を振り上げてからの魔落の鉄槌。頭部に強い衝撃を覚えた。 意志に反して膝がよろめく。 「ナックルこと山田つぉねぱが倒れたぞ~どうだ~悔しいか?」 七海がスターライトシュートを放つ。一人減った事で、反射も減る。 「ハッヒャー!! しじゅちゃらめらー!」 ジョーはナックルの事など意に介してない様子でデタラメに大砲を振り回した。 大砲から、火の鳥ではないモノがひとつ出る。続いてもうひとつ出る。 赤い月。バッドムーンフォークロアがふたつ。変態兵器の威力を携えて呪われた二つの月の呪いが降り注ぐ。 強烈な被害だった。 竜一に代わり、ジョーの攻撃を受けていた七海が沈む。 「……力なくとも」 竜一は運命を一度燃やしている、それでも絞り尽すように、まだ立ち上がった。 「仲間を守るハートだけはロストしないSA!」 竜一がジョーの足を掴みながら、ギターを杖代わりに再起する。 ここで、バッドムーンフォークロアにより浄化の鎧が発動する。 7人分の反射がジョーへと返っていく。七海が丹念に施していた浄化の鎧だった。 竜一が振りかぶる。渾身のギターが天から地へPASSIONする。 鈍い音。 目玉が飛び出さんばかりに、頭が変形したジョーもまた、それでも立つ。ゾンビのように。 「もうひと押しですね」 レイチェルが齎した回復で精気が蘇る。 「いい加減に!」 フラウが切りつけ、最後に飛んだのは―― 「マジックアロー!」 辜月が放った矢は、正確に眉間を貫いた。貫いて後ろのタンクを破壊した。 ソウルはショックから立ち直っていた。 「ははっ、俺の葉巻に火をつけるにゃ丁度いいライターだ」 マキシムの腕を掴む。頭部からの流血で視界が悪いが、逃がさない腹積もりだった。 回復が火力を上回った瞬間。 戦いの炎は次第に鎮火していった。 ソウルは余裕の表情で、葉巻に火をつけた。 : : : : マキシムの死体が転がった。 フェニックス放射器本体を失った炎は、ただの炎となった。 「あ、あの……み、水を……」 「逃げ遅れた人は……いないようですね」 辜月と七海の手引きで消火や秘匿が行われていた。じきにアークの職員がくるだろう。 「YOUたちの敗因はただ一つ。LOVEが足りなかったのさ」 竜一は自慢のアフロヘアがヒャッハーな状態になっていた。 だが問題ない。重傷が治れば、春の新芽のようにREVIVALすることだろう、と確信していた。 「――先程の師の言葉は、嘘です。と言っても、もう聞こえてませんよね」 黎子が灰となって崩れたナックルを一瞥すると、アーティファクトの残骸の方へ歩みを進めた。 大半の興味はやはり変態アーティファクトだった。 フラウは鼻歌交じりに残骸をナイフで刻んでいる。 「使えそうなのを持って帰りたいっすね。使えないのはゴミ箱にシューっ!」 ぽーんとノズル部分を打ち捨てる。秘匿の関係から慌てて回収する。 「壊れてても3つもあるなら……真白室長でしたっけ」 黎子は彼に渡せば継ぎ接ぎして一つくらいと、言葉を続けた、自分は別にいらないとした。 「ふふふ、あはっははははははっはHAHAっは! 堕ちたものね、如月・ノーム・チェロスキー! 貴方の天才ぶりはこの程度!?」 「そうだな。前の方が俺にはロマンを感じたもんだ」 万華鏡にチラチラ写っていた正体不明のフィクサードは、以前にも同じような事件を起こしていた。 名は知れている。現在、鋭意調査中といった所だった。 「革醒者を暴走させるアーティファクトに、その作成者の存在……」 レイチェルは考える。……まだ、終わらない。という予感が強くあった。 アークの購買で手に入る魔力剣等に比べては重過ぎる。 『W・P』の作品に比べては軽過ぎる。 「HEY You達!」 「何!? 何か見つかったの?」 竜一が、焼け付いた半分以上焼け崩れた木片を見つけた。 元々の形状は四角い箱だったのかもしれない。立体パズルのようにも見えた。 しかし、変態兵器の部品にしては場違いな物だった。 「アクセサリにもならないみたいだし、ゴミ決定」 「秘密兵器のシークレット。イマジネーションを沸き立てられたんだZE!」 やがて鎮かに、火は消えた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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