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【ソレッレ】イニーツィオ・ロッソ

●襲撃作戦
「前回、我々は賢者の石の入手に失敗しました」
 老女はそう言って、その場に集まった者たちを見回した。
「とはいえアークのリベリスタたちとの接触、交戦は行うことが出来ました」
「……報告書の通りだとすると、随分甘ちゃんばっかじゃない? 一部例外もいるけど」
「愚者が、それが甘いというのじゃ」
 少女の言葉をもう一人の老婆が厳しく批判した。
「自分で制限を付けるが故に、更に力を発揮する。それがアークのリベリスタという事じゃろ」
 その言葉に幾人かが頷く。
「自分に合ったやり方が、一番力を発揮できる。彼らは、彼女らは、それで伝説の一角を切り崩した」
 他にも様々な要因はあるにしても、公表されない、公然の秘密的な要素が絡み合った結果だとしても。
 アークのリベリスタ達だからこそ、やりとげられたのも……また、事実。
「バチカンの奴等とは異なる強敵、という訳か」
「とはいえ動かなければいけません。クライアントの意向もあります」
 そう言って、別の女性が幾つかのプリントをテーブルに置き、ディスプレイに地図を表示させた。
「エリューション撃退に出たアークの1チームの情報です」
 このチームが任務を達成した後、帰還する前に襲撃を行います。
 その言葉に、皆がそれぞれの態度で意識を切り換える。
「……情報の精度は?」
「クライアントからの情報ですよ。偶々、運良くですので、有効に活用してほしいとの事です」
「相手に洩れている可能性は?」
「有るでしょうし、噂のカレイドシステムの事を考えれば最悪を想定しておいた方が良いでしょう」
「どちらにしても間違いがあれば、私たちのせいではないという事ですね?」
 頷いて、老女は同輩に視線を向けた。
「襲撃班はドロッスス、お願いします。サポート、撤退支援は私が。敵の通信傍受や バックアップ分析はタナトスを責任者に、パルラーレとメモワール、ヴィヴリオスィキの4人で」
「ふん、分かった」
「それとドロッススには話しておきましたが、リベリスタたちを殺害する事のないように」
「……こちらも甘いですね?」
「ボクは別にそれで良いですけど」
「……理由は?」
「アークは甘い組織です。ですが、だからこそ仲間が死ぬ事を簡単には容認しません」
 死に物狂いで戦い、もし仲間が死ねば……全体はともかく、一部は効率も損得も考えずに復讐戦を挑んでくる可能性がある。
「加えて前回、こちらに交渉を持ちかけてきています。個人の案なのでしょうが、その芽を完全に潰す事もないでしょう」
「……ケントニス、少しは小娘どもに考えさせな。丁寧に答え過ぎる」
「まあまあ、ドロッスス。貴女が厳しくしてくれるお陰で私はいい人ぶれるんですよ」
 ドロッススと呼ばれた老婆は鼻を鳴らすと、自分以外の襲撃班の7人を見渡した。
「さあ、さっさと準備しな。舐めたら死ぬと思うんだ。アークが許しても私が許さないよ?」

●襲撃阻止
「アークのリベリスタへの襲撃計画が確認されました」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は固い表情でそう説明した。
「エリューションの撃破に向かったリベリスタチームの目的達成後、消耗したリベリスタたちをフィクサードたちが襲撃する未来が確認されたんです」
 襲撃を行うのは、ソレッレ(姉妹)と名乗る女性だけのフィクサードの集団だ。
 老婆から幼女まで。全員が女性で、メタルフレームのスターサジタリー。
 規模は小さいながら、それぞれが役割を分担することで様々な任務に幅広く対応しているらしい。
 以前はイタリアの方で活動していたらしいが、先日ある任務でアークのリベリスタたちと接触、戦闘を行っている。
「何らかの手段でこちらの情報を入手したのかも知れません」
 襲撃を受けるリベリスタチームは既に任務の為に出発してしまっている。
 エリューションによる被害が発生しそうなのは事実なので、任務を中止したり遅らせる事もできない。
「ですので皆さんには急いでそのチームの後を追ってもらいたいんです」
 急げばチームが任務を達成した直後くらいには合流できる。
「途中からは向こうも戦闘に入るので連絡は難しいですが、それまでは多少の打ち合わせはできると思います」
 ただ、向こうのチームがあからさまに何かを警戒したりすると、相手に何かを察知される可能性もある。
 それで襲撃が中止されるなら良いが、変更されるような事になれば、対処は難しくなる。
 エリューションと交戦中に襲撃が行われたりすれば……
 連絡を傍受される可能性もないとはいえないのだ。
「判断は皆さんにお任せします。必要な場合は本部の方で傍受の妨害等も行いますので」
 アークが行っている任務はそれだけではないし、それ以外にも通信は常に無数に飛び交っている。
 別の情報を隠匿しているように見せかける事も可能だし、暗号化したり、重要度の低い情報をわざと隠匿したりのカモフラージュ等も、情報を扱う者たちが随時行っているのだ。
 とはいえそれらとて絶対ではない。
 知らせなければ相手にも確実にばれないが……判断の難しい所だ。
「……今回も敵の情報についてはあまり多くありません」
 名前、通称らしきものが確認できただけですと、マルガレーテは申し訳なさそうに説明した。
 襲撃を行ってくるフィクサードは8人。
「8人の名前は……ドロッスス、ブリスコラ、エスカ、アッサルト、パンツァー、シルト、メディチーナ、ランス」
 全員が女性で、メタルフレームのスターサジタリーなのは以前と同じ。
「エスカとシルトは、以前賢者の石の捜索で遭遇したのと同一人物みたいです」
 それ以外の情報は、不明。
「不確定要素は多いですが、何とか撃退して下さい」
 フォーチュナの言葉に頷くと、リベリスタたちは直ぐに対応に入った。

●襲撃前
ブリスコラ「婆さま、今回のあたしは?」
ドロッスス「出来るだけ援護。アッサルトとランスの尻を叩いてやんな」
ブリスコラ「あいよ、任しといとくれ」
ドロッスス「パンツァー、シルト、あんた達の役目は分かってるね?」
パンツァー「はい、必ず」
シルト「随時護衛対象は指示通りに」
メディチーナ「お願いします。その分は、必ず……」
エスカ「まあまあ、そんな緊張せずに~」
アッサルト「お前は少しは緊張するべきだろ」
ブリスコラ「ま、この子が緊張するなんて縁起でもないけどねぇ?」
ランス「あ、確かに。先輩が緊張するレベルとかだと、ボクなんかそれだけで死んじゃうかも」
ドロッスス「お前は2、3回死んだ方がいい……と言いたいとこだけどね?」

 そう言ってから、老婆は不快そうに鼻を鳴らした。
「いいかい、あんた達の全ては、ソレッレのもんだ」
 射抜くような視線で、全員を睨む。
「すべてを姉妹の為に使い切る。無駄使いするんじゃないよ? 私はここで、誰一人殺す気はない」
『すべては、ソレッレの為に』

 その言葉に、全員が頷いた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年07月26日(木)22:52
●オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は任務を終えて帰還しようとするアークのリベリスタたちを襲撃しようとするフィクサードの撃退が任務となります。

襲撃が行われる場所は市街地から離れた空地。
背の低い草が生える草原のような場所で戦いに影響を及ぼす障害物等はありません。
付近に森林等は存在します。
エリューションの撃破を終えたアークのリベリスタたちが撤退しようとする時を狙って、8人のフィクサードが攻撃を仕掛けてきます。
全員がメタルフレームのスターサジタリー。
それ以外にも近くで戦況を確認しているフィクサードが数人いるようです。

味方のリベリスタたちは5人。
デュランダル2人、クロスイージス、マクメイガス、ホーリーメイガスという構成です。
本来の任務でかなり消耗しています。
ただし戦闘不能者や重傷者は今の所いないようです。


フィクサードたちを撃破、撃退できれば任務成功となります。
それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
宵咲 瑠琵(BNE000129)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
ホーリーメイガス
カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)
クロスイージス
ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
ダークナイト
カルラ・シュトロゼック(BNE003655)
レイザータクト
伊呂波 壱和(BNE003773)


●合流地点へ
「それにしても、ソレッレの真の目的は何じゃろうなぁ」
 皆と共に急ぎながら、『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)は考えを巡らせた。
(食い扶持に困って活動拠点を移したようには見えぬ)
 稼ぎが目当てにしては、少々消極的な印象が強い。
「今回も態々アークのリベリスタを襲撃してるようじゃし、連中の尖兵と言う可能性も警戒した方が良いのかのぅ?」
 どちらにしろ現段階では情報が少な過ぎて推論の域を出ない。
「任務の帰りを狙っての襲撃か、油断を狙って奇襲を行うのはセオリーだ」
 卑怯だとは言うまい。
『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)は……だが、と呟いた。
 それをアークは察したのだ。
「我々は、ただ全力でその目論見を潰すだけだ」
 四輪駆動を走らせながら壮年は淡々と口にする。
「今回の相手は射手のみで構成された組織か」
 四条・理央(BNE000319)はフィクサードチームについて想いを巡らせた。
(アークの誇る射手が揃い踏みなら盛大な銃撃戦が見れるかな?)
 見る機会が欲しいような欲しくないような……
「急ぎましょう……同胞の命を無為に散らすわけには参りません」
『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)はアークの仲間たち、エリューションと戦っているであろうリベリスタたちへ想いを馳せる。
 既に別チームには『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)が、アークの傍受対策を利用してアクセスファンタズムによる連絡を行っていた。
 伝えた内容は、任務終了後の敵の襲撃に注意するようにという呼びかけと、合流ポイントの指定である。
(リベリスタチームの撤退およびそれへの支援の時間稼ぎの為に、私が担う役割は敵の注意を最大限引き付ける事)
「アークの情報収集を優先させているフシを感じるしね」
『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)もソレッレの事を思い出し、感想を口にした。
(前回の交戦で、俺の情報は相手にいっているだろう)
「ま、俺には別にバレて困る情報はない」
 探りあいの現状だ、敵味方ともに被害を出さずに終わらせるのが妥当。
「ソレッレの誰かを捕縛できれば、なお良いのかもしれないけどね」
 そう簡単にはいかないだろうなとは思う。
 それでも……自分は、自分の道を往くのだ。

●喧騒
「俺は、フィクサード共を殺す為だけにリベリスタになった」
 誰にも聞こえぬように、吐き捨てるように。
『逆襲者』カルラ・シュトロゼック(BNE003655)は呟いた。
(趣味で殺しなんぞするかよ。殺す為に殺すんだ)
「殺して、力をつけて、より酷ぇ下衆共を殺す。死ぬまで、それを繰り返すんだ」
 好き勝手に他人を食い物にしてのさばってる連中を潰して何が悪い?
(奴らと同じになる? 望むところだ。同じ苦しみを与えてやるには、都合がいいだろうぜ)
 バイクは4WDを追って、舗装の悪い道路に入る。
(ソレッレの人たちはお久しぶりですね)
 運転の邪魔をしないようにしつつ『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)も、かつて遭遇したフィクサードたちの事を考えていた。
(何が目的なのか分かりませんが、仲間を狙うのならボクも怒りますよ)
「来るなら、正々堂々真正面から掛かって来るべきです!」
 ポイントから離れた場所から、戦闘音らしきものが響いてくる。
 戦いが始まっているのかも知れない。
「確かソレッレでしたっけ」
(その仰々しいコードネームを聞けば思い出せます)
 モニカも思い返しながら、淡々と呟いた。
「呼称がそのまま役割を表すならコードネームの意味がありませんよね」
 暗号名とか秘匿名って意味なんですから。
 呼び名などから仲間たちが推測した情報を頭の中で反芻しながら、彼女は表情を変えず淡々と断言した。
「折角役割を教えて頂けて何ですが個々の役割を考える必要ありませんよ」
 全員撃ち倒せばいいだけですから。
 戦いの音が、近付いてくる。
 ウラジミールはアクセルを踏み、強引に速度を上げさせながら呟いた。
「任務を開始する」

●介入
 戦いはリベリスタチームが任務を遂行していた場所で起こっているようだった。
 途中で乗物からは降り、8人は戦場へと駆け付ける。
 音等に対する隠密性は考えない。
 相手に気付かれるだろうが、現状では此方を意識してくれた方が都合が良かった。
 こちらに注意が向けば、それだけ味方への攻撃が軽減される。
 到着した戦場では、10mほどの距離を開けての戦闘が展開されていた。
 リベリスタチームは一塊になって守りに徹しているようで、そこにフィクサードたちが攻撃を仕掛けている。
 デュランダルの少年とクロスイージスの少女がマグメイガスとホーリーメイガスの後衛2人を庇い、もう一人、年長らしき壮年が庇っている2人の様子を見ながら両者をフォローしているという状況だった。
 完全に守りに徹しているのは、近く援護が来てくれると考えての事だろう。
 それに攻撃を行うフィクサードの数は7人。
 3人が前……と言っても適度に距離を取っているので前衛無しで中衛とでも言うべきか。
 後方側に4人という隊列で戦闘を行っている。
 1人が大型の火器を使用しているが、他の者たちはライフルやサブマシンガン、オートマチック等のようだ。
 警戒しながらリベリスタたちは接近した。
 ウラジミールはイーグルアイで警戒しつつリベリスタたちの元へ。
 瑠琵は、感情探査と熱感知を駆使して索敵を行った。
 カルラは猟犬で鼻を効かし、モニカは暗視と熱感知を活用する。
 最後の一人は、森への存在が確認できた。
 これで敵8人全ての所在が明らかになったと言える。
 カルナはそのまま別チームのリベリスタたちを範囲に含められるように移動し、癒しの力を具現化させた。
 聖神の息吹が負傷していた5人のリベリスタたちを回復させる。
 壱和は其方へ攻撃が行かないよう、相手と味方の配置に気をつけ前衛へと位置を取った。
 理央とウラジミールが抑えきれなかった敵前衛のブロックをメインに。
「お久しぶりです。ソレッレの皆さん」
 声をかけ注意を自分の方へ向けさせつつ、壱和は敵を確認した。
 シルトとエスカは、前回顔を会わせている。後衛で守りを固めている知らない人がパンツァーである可能性は高い。
「この襲撃を予知した予報士がいてな。諸君らはまずは傷を癒すのだ」
 ウラジミールも防御のオーラで守りを固めながら、リベリスタたちへ駆け寄り声を掛ける
 怪我をしているリベリスタを励ましながら守りを固め、カルナも態勢が立て直せ次第の離脱を促した。
 5人はそれに頷く。
 瑠琵も合流しチームの立て直しを計るため、符術で式神『影人』を創り出した。
 傷の深い者やカルナを庇わせようという心算である。
(戦況を確認してる連中は後詰め部隊かのぅ)
 先ずは、目の前の相手に。
 瑠琵は天元・七星公主を構えると、フィクサードたちに向かって言い放った。
「バチカンとやり合ってたお手並み拝見させて貰うのじゃ」

●睨み合いから総力戦へ
「やあやあ、シルトたん。元気してた? こんなところで出会うとは奇遇だね! 隠れてるのはエスカたんかな?」
 別チームのリベリスタたちを庇うように移動しながら、竜一は話しかけた。
「わ、凄っ!? 噂が膨らんだだけかと思ってたら、ホントにこんな感じなんだ? あ、エスカ先輩。気付かれちゃってますよ~」
 二丁の少女が呼びかけると、ああ、やっぱりとエスカが姿を現す。
「稼げてないなら前に言った話とか歓迎するよ! かわいい子は大歓迎さ!」
 銃弾さえ飛び交っていなければ、和やかな会話と言えただろう。
 理央も射線を遮るように移動すると、別チームの5人へと詠唱によって癒しの福音を響かせた。
 一方、カルラは救出対応を皆に任せ、フィクサードたちへと距離を詰めた。
 全身から生みだした闇を無形の武具として纏い、戦闘態勢を整える。
 モニカも前後衛は考えず敵を1体でも多く巻き込める位置を取ると、九七式自動砲・改式「虎殺し」の銃口をフィクサードたちに向けた。
「私はそういった事に口出しする立場ではありません。興味も特に無いですしね」
 ただ誤解しないで頂きたいのは、相模の蝮にしろ千堂遼一にしろ手を組むに相応しい力量を持つ相手だったという話です。
 ちらと視線を向けてから、トリガーを引き絞る。
 後衛、庇われている少女を確実に射程内に補足して。
 蜂の襲撃のような、嵐のような攻撃が、フィクサードたちに襲いかかった。
「仕方ない。シルト、お前も回れ」
 老婆の言葉に頷き、シルトが少女、恐らくメディチーナである人物を庇うように位置を取る。
 彼女を守っていた女性、壱和がパンツァーだろうと推測した人物との計2人に護衛態勢。
 ここまでする以上、庇われている少女が回復役と考えて間違いないだろう。
 後衛たちがそうこうする間に、前の3人も動いた。
「そのアクセスファンタズムってヤツ、ホント反則だよな」
 ライフルとアームガトリングを構えた2人がモニカと同じように嵐のような銃弾をリベリスタたちに向かって発射する。
 もう一人、サブマシンガンとオートを二丁した少女は、モニカの方へ銃口を向けた。
 呪いの弾丸が彼女を貫き、意志の力を減じようとする。
 そして後方で庇われていた少女が、銃と本を手に癒しの福音を響かせた。
 カルナは高位存在の意思を読み取り、詠唱によってモニカの受けた呪詛を、仲間たちの受けた負傷を癒していく。
 壱和は、防御の効率的動作を共有するネットワークを構築した。
 その後は、認識能力を拡大させ視野を戦場全体に広げていく予定である。
 ウラジミールは防御態勢を取りながら敵前衛たちの様子を確認した。
 行動や戦法が確認できれば、それらを妨害することで出鼻を挫くことが可能となるのだ。
「簡単にはやらせんよ」
 変わらず淡々と口にしながら、壮年はフィクサードたちを観察し続ける。
「気を付けてください。彼は恐らく『T-34』です」
 後衛からパンツァーと推測される女性が声を発した。
 彼女の言葉によって、敵前衛は彼への攻撃を牽制に留めた為、前線は一時的な膠着状態に陥った。

●探り合い
 符術によって自身を援護する小鬼を作りだすと、瑠琵も攻撃を開始する。
 撃破優先順位は皆の間で確認されていた。
 先ず、回復役。そして囮と切り札的存在の2人、そして防御担当らしき者。
 まずは纏めて複数を狙うように、彼女は呪力によって魔の雨を戦場へと降り注がせた。
 続く竜一は膠着を破るように敵前衛へと一気に距離を詰めると、偽雷切を高速で振るい烈風で周囲を薙ぎ払う。
「退けばよし。退かねば……抜き差しならぬ状況を望むのならば、覚悟して貰うぞ」
ハッタリである。
(……が、範囲攻撃を身につけた俺! 捨て置けまい!)
 彼に敵が集中すれば、その分味方の動きが自由になる。
 実際に理央が抑えでなく、遊撃として行動することが可能となった。
 彼女は回復は不足していないと判断し、敵の分析を開始する。
 望んだ情報を入手できた訳ではないが、実力の上下はある程度解析に成功した。
 後衛の老婆、そして前衛のライフルを持った中年女性が8人の中では特に戦闘能力に優れる。
 次いでエスカ。次に前衛でガトリングを構えた成人女性と、パンツァーと思われる後衛護衛役。
 そして、シルトと前衛最後の一人が同じくらい。
 癒してのメディチーナに関してはそれより劣る。
 防御に関してはパンツァーが最も優れ、次いでシルト。
 ただ回避能力についてはエスカが優れているようだ。
 理央は分析を続けつつ、それを即座に味方に連絡する。
 状況を確認したカルラは目標への接近が不可能と判断し、己の生命力を暗黒の瘴気へと変換させ狙える限りの対象を攻撃した。
 加減する気も非殺で収める気もない。
 反動による消耗、自身の負傷すら、彼は気にしていなかった。
 回復が届かなければ、それでも別に構わないと割り切っていた。
 彼の心に在るのは、唯、フィクサード共を倒すというそれだけである。
「そう簡単にアークが誰彼構わず交渉に席に着くと思ったら大間違いですよ」
 反動で暴れようとする銃身を機械化した右腕で押さえつけながら、モニカは彼女たちへと言い放った。
「少なくともこの弾幕を受け切れる程度じゃなきゃ、話になりません」

●限界へ
 味方の離脱を確認すると、モニカは集中によって動体視力を極限まで強化した。
「要はこの程度で死ぬ雑魚にはアークも用無しって事ですよ」
 頑張って耐えて下さいねと淡々と口にして、再び銃撃を開始する。
 待機していたソレッレの者たちもそれに対処するように動いた。
 二丁の少女は魔力を籠めた弾丸でモニカを撃ち、彼女の集中を阻害する。
 ライフルの女性も魔力を取り込んだカルナを同じ攻撃で狙い撃ったが、こちらは瑠琵の召喚していた影人によって妨害された。
 もっとも、影人は攻撃に耐え切れずに銃撃を受けて姿を消す。
 モニカの受けた攻撃の方は、直撃したものの威力は然程でもなかった。
 先刻の呪いの弾丸を考えると、神秘系の強化を銃に施してあるのだろう。
「『デストロイド・メイド』は誇張でも何でもない、ってことだよね?」
 軽口のようではあってもそれは警戒から出た言葉である。
 それ以外の者たちは広範囲攻撃を徹底してきた。
 特に一人集団から離れたエスカが放つ業火を帯びた銃弾が厄介だった。
 カルナは付与を解除される可能性を考え、天使の歌の頻度を上げる事で消耗を抑えようと試みていたもの……複数の味方が炎を打ち消せないとなると聖神の息吹を使わざるを得なかった。
 回復に関しては、彼女と理央のふたり掛かりで何とか持ち堪えられるという状況になりつつあったのである。
 しかも、理央は分析能力の点からも、敵に狙いを付けられていた。
 高い防御力と耐久力で彼女は何とか攻撃を凌ぎ続けたが……ついに耐え切れず、銃撃によって力尽きる。
「後ろに引っ込んでるだけが能なのでしょうか? 来ないなら、こっちから行きますよっ」
 壱和は敵後衛、シルトとメディチーナに向かって挑発行為を行ってみたものの、効果は芳しくなかった。
(怖いですけど、守るために立ち向かいますっ)
 気持ちを切り替えると、壱和は敵の前衛へと対峙し、動きを読み意表を突く攻撃で牽制を開始する。
「皆油断はするな。相手は自分たちよりいつも強いと心得て戦え!」
 同じく前衛のウラジミールは、カルナの消耗を抑える意味もあり、ブレイクフィアーの能力を幾度となく使用する形になっていた。
「お主等、欧州から来たのなら情報売ってくれぬか?」
 瑠琵は氷雨と式鴉で攻撃を行いつつ、頭の悪そうな……は難しそうだったので、もっとも若輩そうな少女に戦いながら声をかけた。
 バロックナイツの1人、ケイオスに関する事でと告げれば、そういうのは専門じゃないんでと脳筋的な答えが返る。
 これは駄目じゃと肩を竦め、彼女は攻撃を再開する。
「いかにアークを計ろうとしても、俺たちの成長は、その上をいくぞ!」
 初手以降は渾身の力を籠めた破滅の一撃のみで、竜一は敵前衛を攻撃していた。
 癒し手を狙えはしないものの、注意を引くという点ではある程度成功しているという状態である。
 全力で戦いつつ、同時に彼は周囲に気を配っていた。
 必要であれば、庇おう。敵味方に死者が出ぬように。
 それが彼の生き方なのだ。
 一方、カルラは攻撃手として只管、ナイトランスを振るい、暗黒瘴気を放ち続けていた。
 何か言葉等をかけられても取り合わない。
(んな事する必要も暇もない)
「遊びじゃねぇんだ」
 暗黒を武器に宿し、力を啜る一撃を放つ。
(綺麗事並べられる力が上の連中と、自分が同列だなんて間違っても思うな)
 消耗を厭わず、生命力を瘴気に変える。
「俺みてぇな下っ端の雑魚に、相手を気遣うような傲慢なんぞ、芥子粒ほども用はねぇ」
 獣のように。限界を迎えた身体を、無理矢理動かして。
 自身を省みない攻撃によって終に彼も崩れ落ちる。

 だが、同時に……フィクサードたちは大きく後退した。
 倒れた者はいないが、彼女たちの負傷も決して軽くはないのである。
 持ち直せたものの、倒れかけた者もいたのだ。
「これ以上の戦闘に意味があるとは思えません、矛の引き所なのでは……?」
 消耗で息を切らしつつ、カルナが提案する。
「できれば、このまま退き下がって貰えないでしょうか」
 壱和も続くように切り出した。
「……成程、情けまで掛けられるとはね」
 鼻を鳴らしそう呟いた後、老婆は呆気ないくらい簡単に、撤退を呼びかけた。
 それが、戦いの幕切れとなった。
 リベリスタたちを警戒しつつ、彼女たちは去る……残ったリベリスタたちの側も、決して油断しなかった。
 ウラジミールが構えを解いたのは、アークより連絡を受け撤収が確認されてからである。
 離脱したリベリスタたちも保護されたとの連絡に、幾人かが安堵の表情を浮かべた。

 それでも、注意を怠ることなくリベリスタたちは戦場を後にする。
 四輪駆動車へと辿り着くと、戦場を振り返りながら。
 ウラジミールは変わらぬ態度で口にした。
「任務完了だ」


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■

依頼の方、お疲れさまでした。
文字数の許す限りになりますが、皆様の戦い、全力で描写させて頂きました。
今回は戦闘以外の部分にも注意しつつ判定執筆させて頂きました。
彼女たちは今後も、幾つかの依頼で現れる事があるかも知れません。
また御縁ありましたら、宜しく御願致します。

それでは。
御参加、ありがとうございました。