● 結婚――それは誰もが夢を見るもの。 だが、其処に立ちはだかるのは一人の女であった。 あ、いえ、立たなくて結構です、あの、申し訳ないです。 「ああ、あてくしの愛しのダーリンは何処かしら!」 何処か、もう忘れてしまいたい記憶の中に居る、微女。 服装は白無垢。 因みに彼女、現在地がなんてことない壊れたラブホテルの一室。 彼女の名前は美智子さん、46歳。5月生まれ。 両手を広げた彼女のご趣味は―― 「嗚呼、愛しのダーリン漁りをしなくっちゃ!」 彼女は学習した、『どういうジャンルの男か決めなくちゃ』と。 「あてくしを美しく描いてくれる男性にしましょう!」 好みのタイプ:絵画の様に美しい自分を書いてくれる生物学上『男』 ● 「絵画の様に美しい自分を見てみたいそうです」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は真顔で一言。 その言葉にぽかんと口を開いたリベリスタ達、それもその筈、意味が分からない。 「とりあえずはフェーズ2のE・フォースです。根性だけ座ってる」 「そ、そうか」 「あと、ラブホで婚活してます」 どうしてそんな場所で婚活してしまった。もう一度言う、どうしてッ! ああ、人生って素晴らしいんだな。 追いつめられないって幸せなんだな。 「斎藤美智子さん。46歳。5月生まれの大和撫子です」 和泉さんは一度咳払い。 「前を向いたらムンクの叫び、後ろ姿はモナ・リザ的な感じです」 もう何が何だかわからないが、和泉さんがいうならそうなのだろう。 段々嫌になってきたリベリスタ達に和泉さんは詳細は、と資料をめくる。 「攻撃手段は、メロメロ(は・ぁ・と)ビームとかいうのを出します。目から」 「は・ぁ・とって何!?」 「あと、抱きしめてくれますよ。男性限定ですが。通称ダーリン(は・ぁ・と)アタック」 「そんな通称いらなかった!」 そして、ここで和泉さん、少しばかり蔑むような視線を資料に投げかけて、黙ってしまう。 嫌な沈黙が訪れる。 響く秒針の音に、リベリスタ達が生唾を飲み込んだ所で、彼女はやさし~く微笑んだ。 「そしてもう一つ、残念なお知らせです」 できれば聞きたくないな、と思うリベリスタ諸君によく響く声で彼女は言う。 「ラブホに入ったらE・フォースの影響か攻撃を受けると服が脱げます。ついでに美智子さんも脱ぎます」 割とどうしてそうなった!?と叫びたい勢いではあるが、致し方ない。 最初から脱いでてもいいんじゃよ、とでも言いたげな彼女の視線は何処か冷たかった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月23日(土)23:29 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「何でまた出たの! こないだ倒したはず!」 とかなんとか『ブレイブハート』高町 翔子(BNE003629)ちゃんは口をあんぐり開けた。 彼女は一度今から出会うことになっちゃう――出会いたくないは禁句――E・フォースと会った事がある。 彼女が魅惑の地、ラ・ブ・ホ・テ・ル(はぁと)から出る時に聞いた笑い声。 「……気の所為じゃなかった……?」 「……このラブホ、どこかで見た事が……」 翔子ちゃんをちら見、耳にした言葉に秋月・惠一(BNE003639)の耳が恐怖で垂れる。 そんな、馬鹿な、アイツは!死んだはずじゃ!? ……何処のホラーだ!と云わんばかりのその言葉。彼の云う『アイツ』は果たして……? 其れは兎も角どんどんぱふぱふ!魅惑の場所、ラ・ブ・ホ・テ・ル(はぁと) 来た事のない、訪れない人は絶対に訪れない場所に『紺碧』月野木・晴(BNE003873)も 「おぉー、これがラブホ・カッコはぁとカッコトジル」 とかなんとか。 無駄にときめきを覚えてるけどそれ、駄目!興味持っても中にいるの美智子さんだけだから! 「……にしても結婚活動って、大変なんだなぁ……」 「いや、これ、婚活じゃないよね。遊んでるだけだよね」 別にいいけど、そりゃ、『ココ』じゃ結婚できないでしょ、と呟いた『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)。 うん、其の通り、実に其の通りだ。 だが、負けてないぞ、アークのリベリスタ。 「服が駄目になると家計が圧迫されるな……、大体脱いでおこうかな」 と、脱いでいるのが『花縡の殉鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)。息子と娘、気になる子に見られたらどうなるのか……気になる所だが、残念ながら居ない! お父さん変態じゃないよ、此れも人助けだよ、とかなんとか言いながらパンツ一丁になるお父さん。 お父さん!娘さんが泣いてますよ! 「やれやら、アークって所は難儀だな」 はい、本当に。 「まっさか……頼まれた最初の依頼がこんな依頼とは……」 鳳珠郡 志雄(BNE003917)。男の中の男。多くは語らない。因みに聞きたい事は俺の背中に聞いてくれ☆系24歳。 視線の先で三角座りする遥紀の肩を叩いて、志雄は云う。 「さあ、行こうぜ。あまり女は待たせるモンじゃねぇ」 兄貴!かっこいいです! ● 結婚?何それ乙女の夢?――でも、良く分からない。 「自分より強い人なら良いかも、ってのはあるけど。それってレンアイカンジョーとかじゃないもんね」 難しいし、殴りましょう。 『кулак』仁義・宵子(BNE003094)さんはそう言いつつも目の前に立っていた白無垢の女を見て呆然。 殴り殴られで運命を感じる前に嫁入り準備整いすぎだろ、あの女! 「未来の、わしの姿の様な気が……」 安心して、安心して!『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)ちゃん!君の未来は明るい。 「え?あ、あれが美智子さ……正しくぷれでたぁぁぁぁぁぁ!!!」 脱いでる遥紀さん、戦慄。ブツブツと呟く言葉は呪いの様。 前回の報告書だとプレデターって言われてた、何者だよ、前回は脱げなかったのに何故脱げるようになったんだよ、もはや『狩り』だろ美智子さん。 落ち着いて、お父さん!脱いだら凄いお父さん、恐怖で帰りたい気がしますよね。 「資料に魑魅魍魎とかプレデターとか書いてあったけど実際そこまで酷いわけないよねー!」 そんな遥紀に笑いながら晴は近づく。 が、覗きこんだ先にいた白無垢の美智子さんを見て、其の目を逸らす。 「うん、ごめん」 さあ、戦闘の火蓋は今切って落とされたのだ! ――戦わず前方へと歩み寄る志雄兄貴。両手を広げ近寄っていく彼はまさか……!? 「よう、美智子ちゃん」 こんにちは、ラブコメ。美智子さんのお相手は兄貴の様です。 その間にもシャドウサーヴァンドを使用する晴はちら、ちらと美智子さんを見つめる。 「……服脱げるのかぁ……うーん、やだなぁ」 「ここ、婚活する場所じゃないよね」 うん、服を脱ぐ場所ですね。晴さんの方を見て翔子ちゃん、言ったは良いけど何する場所かは言えないと赤面。 そんな翔子ちゃんを見つつ、本日のレイチェルさんは翼の加護を施しながらフリルとレースの王国。 勿論脱げた時でも恥ずかしくない感じで!ピンクのキャミに白のミニスカ、下着はピンク。 「最初から脱いでもいいんじゃよ、みたいな視線があったけど」 男の子の前ではなあ、と考える彼女。でも、その近くにブリーフ一丁のお父さんがいますよ、レイチェルさん。 攻撃は避けるつもり!そしてみてしまったモノは記憶からデリートしたい。隣にパンツ一丁居ますけど。 ふと、白無垢の美智子さん、歩み寄る志雄兄貴にようやく気付いたのかその表情を綻ばす。 「あらぁん、あてくしと結、婚、活、動?」 「ひぃっ」 厚着をしてマスクをつけて、夏だとか暑さとかそう言う概念を放置して大切な何かの為に着こんだ惠一は美智子さんの甘ったるい(デス)ボイスに耳をぴん、と立たせる。 「まあ!」 「や、やぁ、また会ったね」 愛とは一期一会である ――美智子、心の句。 心の傷が酷く疼く、が、敵の心はウッハウハだ。もう愛の祭典が今、この場でフィーバーしている。 薙刀を構えた美智子さんが志雄兄貴へとビームを繰り出す……のを見ていた宵子、とても遠い目をしていた。 「いやー……あれはお邪魔するの、何か申し訳ない感じだね」 近寄りたくないし脱がされたくないし。背後からゴロンゴロンと転がり出たミラーボールだけ見ておこうと彼女は視線を逸らす。 コマ送りになった視界で捉えられる美智子さんの仕草。カメラで連写すると壊れちゃうぞ(はぁと) 入口ギリギリの位置に立っている与市は転がってきたミラーボールを流れうち。 「ど、どうせ、この矢は当たらないのじゃ」 なんて言いながらもばっちり当たってます。ミラーボールをディスコの様に流れ星で乱れうち。 「ココは露天ぶろか砂浜だよね!女子の服が脱げたら気にな……る」 そりゃあ晴さん、お年頃!気にならないフリをしたって気になるんじゃろ?気になるんじゃろ? 「怒られそーだから!」 目の前のオバサンならきっと見ても怒りませんよ! 一方フライエンジェのパンツ一丁、お父さん。マナサイクルを展開しつつ、このまま逃げたい衝動からも眼を逸らす。 そんな仲間たちの様子を見つつも美智子さん慣れしてきた気がする翔子ちゃん。ダガー片手に一気に美智子さんに踏み込む。 「と、とにかく! また倒させてもらうよ!」 魔落の鉄槌をまるでツッコミかの様に美智子さんに入れる翔子ちゃんに、女?と美智子さんいい笑顔。 他に女がいるならば、アピールが薄いと判る!美智子さん、そっと白無垢に手を掛け―― 「馬鹿野郎!! 慎み深い日本女子が! 人前で! 軽々しく脱ぐんじゃねぇ!」 志雄兄貴、美智子さんの腕をぐっと掴む所が殴りかかる。 男はいい、男は裸一貫でぶつかる性がある。だが、美智子さんは大和撫子なのだ。 「殴って悪かった。だが、それは心底惚れた男の為にとっておけよ」 きゅん。 恋に落ちる、音がした。 「……鳳珠郡、君のことは忘れないよ…」 惠一の呟きの後、美智子さん、微笑みながらも全力攻撃。やめて!志雄くんが愛で大変! 翔子ちゃん、やや呆然。 「美智子ちゃん、お前の好みのタイプは自分を美しく描いてくれる男だったか?」 「え、ええ」 俺は絵を描けない。志雄兄貴、そう言いながらも美智子さんをじっと見つめる。 「絵は描けねえ。お前の人生を彩ること位は……出来るぜ?」 ゴーーールイン!!!(運命が燃えた気がした) 彼はこの間、全力で防御しながら美智子さんとの愛を育んで――た、気がする。 だが、美智子さん一人じゃ満足できないの、の勢いで翔子ちゃんを殴りつけようとするものの、気付いたころにはショック付与! 「おばさんが脱げるのはどうでもいいと思うけど、こっちの戦意が低下しちゃう!」 だから脱がないで!未だ脱いで居ない美智子さんに安心しつつも、背後ではなんだかんだで皆脱げてますよ、翔子ちゃん。 唯一最初から変わりがないのが最初からパンツ一丁だったイケメンお父さんなのであった。 「美智子殿、あ、ある程度なら補佐はするのじゃよ!」 ある程度は婚活を手伝うと呼びかけた与市を凄まじい勢いでにらみつける美智子さん。あの、その、怖いです。 所で皆さん何故ミラーボールだけを狙ってるんですか。 「後ろ下がっても良いんだもん。だって後ろに敵がいるんだから!」 逃げている訳じゃない、これは戦略的後退だ!そう言いながら宵子は一生懸命にミラーボールを叩きつぶす。 言ってる間にミラーボールさん亡くなっちゃいますよ! 「てゆーか……ミラーボールってこういうところで何に使うの?」 えっ…… 「来た事ないから判んないけど、その、……」 「考えちゃだめだ!!(色んな意味で)助からなくなるぞ!!」 慌てて美智子さんにソニックエッジをしている惠一の声に宵子さん、なぜか頬を赤らめて攻撃開始。 「うおおおおおおおごーえんげき! ごーえんげき!」 何を、何を想像したのですか! その攻撃で見事『なんであるか分からない』ミラーボールは今ターン撃破完了。 遠目に美智子さんを眺めながら宵子は思う。 「レンアイって、戦いなんだねえ……」 先に惚れた方が負け、って言いますものね。いえ、そう言う訳でもなく、ガチの戦いの真っ最中でございます。 大体脱げ始めた翔子ちゃん、だけどもまだ大丈夫、着ている方です。 愛が重すぎて大変だった志雄兄貴を横目に見つつも彼女はヘビースマッシュ。 「全裸とか社会的に致命的だと思わないかい! 三面記事にぽぽぽぽーんするよ!」 泣き出しそうな顔で羽根を揺らした遥紀のマジックアローが美智子さんに突き刺さる。 何という事でしょう、美智子さん、パージ完了。 「脱いだ美智子を見たら眼鏡割れた!?」 「うわあああああああ狩りが始まったああああああ」 「人間『自重』ってのが大事なんだって偉い人が言ってた!!」 男性陣大慌て、そんな中でも兄貴、ふらりと立ち上がり、突進する美智子さんを受け止める! 「だから奥ゆかしさを学べと何回行ったら判るんだコラァ!!!」 女ががっつくな!と彼はそのまま土砕掌。女は三歩後ろを歩いて微笑んでいるものなのだ。 新しい風潮も良いかもしれない、だがヤマトナデシコならば、望む事が古臭くっても良いだろう! 「俺はな、美智子、お前を助けてないうちは倒れられないんだ!」 困難を目の前にする女を助けるのが男だ、そうだろう! 兄貴、かっこいいです!でももうほぼ着ておりません!兄貴! 「素敵!! でもあてくし、浮気もしたいお年頃!」 嗚呼、世は無常である。晴へと愛の口付けを求めに―― 「俺はおばちゃんのダーリンじゃねぇー!!人違いだよーーー!?」 思春期のいたいけな少年へおばさんがキスを施そうとして背後から翔子によるツッコミが落とされる。 「おおおおおお、おれ、だって、ほほほほ、ほら、しゅし……」 「噛んだ?」 頷いた晴は半分泣きそうになりながらギャロッププレイ。おばさんのキスとかまじ勘弁してくださいまじ。 ギッと睨みつけた美智子さん、八つ当たりにフリルとレースの王国へと眼からビーム。 「ちょっとおおお!?」 慌てて避けるが微妙に掠る。掠った時点で勝負下着がこんにちはしてしまう。 脱げてる男性陣をその眼で真っ直ぐ見てしまったレイチェルは記憶よ薄れよと何度も何度も念じる。 「見ないと支援できないし……っ!」 「でも見えてしまうのじゃ……っ」 与市も恥ずかしそうに顔を隠して美智子さんへとアーリースナイプ。戦闘後も視界には入れたくない男性の真っ裸……失礼、脱げた姿。 恋愛って何だろうと考えて眺めている宵子はひたすら飛び出してくるミラーボールを攻撃しては飛ばしを繰り返している。 「美智子おばさん、、早く倒れてよおおお!?」 ちなみに彼女のお母さんは36歳。美智子さんの10個下である。母より年上の女性が脱いでいる。実に脱いでいる。 女性と言うかプレデターというか不沈艦というか……とぐるぐると脳内に回る言葉に惠一は泣き出しそうになる。 「服が脱げた後の僕らを見る美智子の目がもはや獲物を見る目だよ、あれ」 「……俺、フライエンジェだし、羽ガードでき、アッ!?」 美智子さん、何という事でしょう、こそこそと話している男二人へ眼から毒々しいビームを吐き出す。 その色はピンク。どぎつい。何度見てもドギツイその色に翔子も惠一も辟易してしまう。 厚着していた惠一はまだいい。まだ、着ているからだ。きちんと普段通りの服装の翔子もいい、まだ着ているのだ。 だが、最初からパンツ一丁で挑んでいたフライエンジェのお父さんはどうなんだろうか―― 「うううう然し余りに涼しい、恥ずかしい!」 涙目になりながら羽根で自身を覆ってふるふるする遥紀。 気の毒そうに眺めていた晴と宵子の前で彼は一瞬へラリと笑い、泣いた。 「でも、少しは楽し……」 「え?」「……え?」 「違う! 目覚めてないからな!?」 宇賀神・遥紀 特徴に露出が入ってしまうのだろうか―― 「おばちゃん!!目からピンクの光線出すとかモテるわけないよ!」 「なぁんですってぇぇえ!?」 「ヒィッ!?」 晴の言葉に反応した美智子さんの鬼の様な形相に惠一が小さく震える。 「せせせ、折角大和撫子系?なんだからさ、もうちょっとおしとやかにならない?」 「ほほほ、ほら、モ、モナリザっぽいよ!」 嗚呼、そう言えば『前を向いたらムンクの叫び、後ろ姿はモナ・リザ的な感じ』と言っていたなあ、と志雄は逆に感心する。 交錯する愛情、大体脱げけ着てしまった女性陣をチラッチラッとみる思春期晴君の隣では、ひたすら美智子におびえる惠一。 彼は何処まで心に深い傷を得てしまったのだろうか。傷口に指でも突っ込む様な非常に愉快な気持ちに美智子もなってしまうのだろう。 「んふふ、かわいい」 語尾にハートでもつけてしまいそうな勢いの美智子さんは惠一に向かい再度愛の抱擁を施そうとする。 「ぎゃあああああ!?」 泣き出しそうな彼の目の前を庇う様に志雄は飛び出して土砕掌。 「生まれ変わったら俺の所に来い!!」 其れが愛の拳―― が、やはり毎度美智子さんはタイミングが悪いのだ。 「ぜ、絶対にあたらんのじゃ!」 そう言った与市の放った弓は彼女にぶち当たり。 「あ」 其の侭消え去ってしまった。 ● 「……これ、着る?」 「あ、ありがとう」 ほぼ脱げている中で、惠一が困った様にフリルとレエスの王国の勝負下着レイチェルへとコートを貸す。 コートを着てレイチェルは周囲を見回した。 美智子さんが居なくなると本当にがらんとしたホテルである。廃墟のラブホテル。一見肝試しの舞台だ。 「あ、て、手当とか、必要かえ?」 着物であった事、後衛に居た事も幸いし、ほぼ服を着たままの与市が恥ずかしそうに周囲の仲間たちに声をかける。 その和やかな雰囲気の中、影でいそいそと着替えてきた翔子は小さくため息を吐いた。 前衛位置で頑張っていた彼女は流石に男性陣に肌を見られたと思うとへこんで仕方がない。 天誅!と大声で仲間たちを成敗したい気持ちもありありだが、見られたものはしょうがなしい、彼女自身も見てしまったのでおあいこである。 「……あれ?宵子さんは?」 「さ、さあ……?」 耳をぴこぴこと動かして困った様に答えた惠一たちの視界には宵子の姿がない。 彼女の現在地はラブホテル内部。折角の廃墟だ。探検しない訳にもいかない。 遠くから「うおーー! お風呂ひろーーい!」などとのんきな声が聞こえ、晴は興味深々の様でそわそわと周囲を見回していた。 ただ、床に倒れている愛に生きた男、志雄兄貴野様子を見つめ、レイチェルと与市は顔を見合わせる。 「愛って怖いね」 「怖いのじゃ……」 三角座りしていた遥紀にそっとコートを掛けた惠一。 彼の服は何処にあるのだろう。出来ればきせて帰してやりたい所なのだが、家計が圧迫されるのでもしかすると―― 「ごめんよ、お父さん、変態じゃ、変態じゃないからね……」 ぐすぐすと泣きながら今回の心の傷を負ったのは彼だったか、と惠一は遠い目になる。 宇賀神・遥紀、彼は24歳にして何か大切なものを失ったのかもしれない―― 「も、もう帰ろう!」 居心地悪い、とそそくさと出て言った翔子の後に続くリベリスタたち。 帰り際、今度は出ないよね?と振り返った翔子の視界の端に何かがちらついた、そんな気がした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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