● ザ、ザー…………。 『うらのべうらのべ! いっち! にっの! さーん! どんどんぱふぱふ。さー、今夜もやってまいりましたうらのべラジオ』 特殊な無線機から流れるのは、ある組織の構成員のみが聴けるラジオ番組もどきだ。 『DJはいつものわたし、『びっち☆きゃっと』の死葉ちゃんでおとどけします』 周波は特殊回線の123。悪ふざけのお遊びで、構成員にとってさほど重要ではないが知っておきたい情報を隠語で知らせるラジオ番組。 DJである裏野部四八……、死葉のトークの軽妙さも相俟ってこのお遊びには組織内でも意外と支持者が多い。 『あー、あー、そう言えばそろそろパーティしたいってこの前誰かがいってましたね! ちなみに○○市の××町ではところによって血の雨がふるでしょー。おでかけのさいはダンビラやチャカなどをお忘れないようお気をつけください』 おや、これは……、久しぶりの、本当に久しぶりのパーティのお誘いだ。 発案者は誰だろう? 名前を言わない所を見ると、売名をする必要が無い程度には売れてる奴が発起人のはずだけど……。 だがそんな事はどうでも良い。趣向も、内容も、未だ判らないが、この放送を聴いた血と暴力に飢えた、或いは鬱憤を溜め切った同胞達は○○市に集まってくる。 無論そんな無軌道がまかり通るのは、彼等が裏野部だからだ。 裏野部はその性質上、『壊れた』人間が多い。血だか暴力だか自分だかに酔っ払った彼等には定期的な『ガス抜き』が必要だ。それがどれ程無意味な殺戮だとしても。 どれ程の被害をばら撒いたとしても。組織を維持する為に必要な『コスト』の一環であると考えればこそ――否、理性を持つ暴力装置である一二三はきっと面白がって『縄張りの中で部下達がやらかす』事を認めているのだ。 嗚呼、偉大なるかな我等が首領、裏野部一二三。 他者に傅く等考える事も出来ない我等が其れでも御方に従うは、其の威、其の力、其の恐怖、そして何よりあの方こそが我等の最大の理解者であるが故。 そう、我々裏野部に殺戮に理由は要らない。切欠は何だって良い。 とても、とても、とてもとてもとてもとても、パーティが楽しみだ。 ●硝煙マジェスティ と、いうわけで、だ。 暴力の為に暴力をしようと思う。 ●非道で外道 「裏野部のフィクサードが一つの町に集結し、暴虐の限りを尽くしています」 開口一番、『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)の放った言葉――それを裏付ける映像、彼の背後モニター、ミュートの動画。ただ、ただ只管に殺戮されてゆく人々。泣き喚き逃げ惑い、されど塵屑の様に殺される。笑われながら。嗤いながら殺している。純粋に暴力の光景。 何故?理由なんて無い。 何の為に?何の糞も無い。 なぜならば裏野部、彼らが『裏野部』であるからだ。 「何故彼らが一気に集結したか、何の為にこんな事をするのか――理由の捜索よりも今は、目の前の『事実』の方が重要で御座いましょう。 止めねばなりません。救わねばなりません。斃さねばなりません。 さて、フィクサードの生死逃亡を問わず撃破して頂く事が皆々様に課せられたオーダーで御座います。 担当エリアは西区画、そこの大きな商店街が現場ですな。 御覧頂いた通り、皆々様が辿り着いた頃は丁度フィクサードが大暴れしている真っ最中でしょう。尤も、急げば急ぐほど被害は抑えられますぞ。 一般人の方々は大パニック状態です。傷付いている人も多くいるでしょう。彼らの対処は皆々様にお任せ致します」 一間開け、モニターを切り替える。 そこに映ったのは9人のフィクサードであった。全員が様々な銃器を手に、一般人達を次々に弾丸で撃ち殺している。 「彼等は全員スターサジタリー。ですが他職の技を使う方もいますので御油断なく。 特にこの内3名は実力者ですぞ。その腕前に加え、厄介なアーティファクトも用いてきます」 詳細なデータはそこの資料を参照して下さいと言い、一間。メルクリィは不安の溜息を噛み殺して。 「危険な任務です。しかし皆々様ならきっときっと大丈夫! 応援しとりますぞ。 どうか、お気をつけて。どうかご無事で」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月01日(日)00:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●Go to 射殺 「思い出すわね。ジャックが現れた時の事」 鳴りやまぬ喧騒。眉根を寄せる『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)の脳裏に蘇るはあの惨劇。血塗られた悲劇。あんな事やるのはジャックぐらいの物だと思ってたのに。握り締める拳。力を込め過ぎて肌が白む程に。吐き捨てた。ふざけるんじゃ、ないわよ。 「誰かを殺すのに理由はいらん。そういうやつもおる。あいつらにとっちゃただ殺すんが楽しいんやろうな。……わしは楽しいとは思わんけんど」 手に禍銃、『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)はパンツァーテュランを握り直し。楽しむ事は個人の自由かもしれない、だが誰かを悲しませるとなれば話は別だ。そんな楽しみは、止めちゃる。 一方で、「マジで気にくわねぇ」と口切ったのは『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)。 「裏野部ってやつはどいつもこいつも……調子くれてっと痛い目みるっつー事を教えてやるよ」 カタギに手を出す輩は許せない。拳を鳴らし、前を見据える。 一歩の度に剣呑な気配、悲鳴。その度にスペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)の肩がビクリと跳ねる。『暴力のための暴力は、暴力で止める』――それが同じ戦場に立つ者の、流儀なのだろう。だが。震える拳を握り締め。 「たとえ、どれほどの暴力に阻まれても。誰ひとり、私の前では死なせません」 前を向いた。 そこはまさに狂乱。 泣き叫び逃げ惑う人々。 哄笑、爆笑、暴力を行うフィクサード。 スペードは息を飲む。なんて、ひどい。だが、迷ってはいられない。幻想纏いより軽自動車――別の場所でも『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)が大御堂07式軽装甲機動車ブリガンダインを設置し、フィクサードの視界から一般人を隠す。人々の盾にする。 「あら、まぁ、うふふ」 「おっほ! リベリスタキタコレ!」 「うぅ~ん ドラマティック!」 その行動、それはリベリスタの登場をフィクサードに知らせるには十分。エドナ、白鏡面、ガンドルフと愉快で狂気な仲間達。銃声。頬を掠めた弾丸に『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)はヒュゥと口笛を一つ。 「よくもこんなマッドネス銃撃戦を!」 「銃撃戦好きかい?」 「うん、大好きさ! ……とまぁ、だからってこちらまで乗っかる法はありませんが」 まあ裏野球部って言う位ですからね、と。一先ず両手で一般人をむんずと掴み後ろへ投げる。 「頭だけ守って!」 アンナも声を張り上げ、一般人の避難に。負傷者を後ろに放り投げる。命を守るので手一杯。正直、これ以上をやる時間がない。 一般人の避難に当たれば、それだけこちらの手数が減る。逆にフィクサードは自由に動く事が出来る。銃弾が容赦なく降り注ぐ。エドナのリビングバレッタが複雑な軌道でリベリスタを穿つ。白鏡面の視界が精神力を奪う。ガンドルフのタイラントレイジが怒りによって撹乱を試みる。救助。それは『任務』の事のみを考えれば厳しい選択だったのかもしれない。だが、『人間』としてならば何一つ間違っていない選択であろう。 避難に当たる仲間を庇う様にモニカと仁太は銃を向ける。九七式自動砲・改式「虎殺し」とパンツァーテュランから放たれるのは、正に鉄の雨。弾幕展開。こちらに意識を向けさせるべく。特にモニカは前に出てきたフィクサードの前に立って足止めを。 ――戦争とは絶対的な悪である反面、人類の文明の火種となった確固たる事実もある。 医療、冶金、車両や船舶、インターネットにレトルト食品……戦争から生まれた技術は生活に多数定着しているものだ。 「しかし裏野部でしたか、彼らとの戦争は生まれる物が一切ありません。 何故なら彼らの頭には技術の革新も、強さへの欲求も、利益の追求さえもおそらくない。 ただ感情に任せて暴れ回るだけ、戦争という観点から見ても無益な存在だからです」 撃ち、続ける。 「『戦争とは非人道的な行為で、尚且つ有益であるべき』というのが私の持論です。 その点、無益な彼らと戦争する気にはなれませんが……まあ仕事なのでやりますよ」 しかしこれじゃあ戦争というか単なるゴミ掃除と変わりませんね。なんて。メイド服を爆煙に靡かせて。 「閉店のお時間ですよー」 救助は仲間に任せ、ゴツい銃とゴツいスパナを手に跳び出したのは『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)。小柄な体でちょろりと前へ。目標は誰も死なない事――残念ながら見ず知らずな一般人より、見知った仲間、そして自分の命の方が大事なのだ。どれもボス格ハードモード。早々にご退場願いまーす、等と茶化す様に笑いつつ。にひひっ。コンセントレーション。目の先にエドナ。 「ハイお姉さん! あしょんであしょんでー?」 「あらまぁ可愛いお嬢ちゃん……でも私より年長さんなんでしょ、『技獲り』ぐるぐちゃん?」 微笑み、先、フィクサードのスターライトシュートがぐるぐに着弾する。が、足は止めぬ。間合い。詰める。喰らえ。 「↓→↑↓→↑ABA! ノックダウン・コンボ!」 コマンドを叫ぶとコンボっぽい、なんて。常識遠慮は持つだけ損々、面白可笑しく全身全霊で遊びましょ。弱点を狙って振り回される鈍器。されどそれを防ぐは意志を持つ血の弾丸。盾となる。ぶつかり合う。エドナが跳び下がった――その瞬間。ぞっと背筋を舐めた殺気。反射的に振り返ったそこに、黒い睥睨。血に染まったTerrible Disaster――周りのフィクサードを荒れ狂う暴力で押し退けた瀬恋が。手を伸ばしてエドナの胸倉を掴み、頭突きせん勢いで引き寄せて。 「よぉ、てめぇもメンチ切りが使えるんだろ? いっちょメンチ合戦といこうや……!」 刹那、零距離からのテラーテロール。凶悪な魔力の眼光がエドナを貫く――同時、貪欲令嬢。瀬恋の血液と精神力を奪い去る。上等、上等、一歩も退くか。向けられる銃口。その奥の笑み。舌打ちと睨みが返事。 「年甲斐もなくがっつくなよオバハン。それとももうボケが始まってんのかい?」 「駄目よ、レディに相応しい言葉を使わないと――ねぇ、お嬢ちゃん?」 ディアボロブレス・ラウンド。ショットガンから放たれる爆炎が、瀬恋とぐるぐを吹き飛ばす。 がなる銃声。弾幕は止まず、敵も味方も混沌と。 「自由に生きてるなぁ。カタギや俺達に迷惑なけりゃ、お友達してもいいかもですが」 フリーダム過ぎて、もうね。論理決闘専用チェーンソーの駆動音を響かせて、『論理決闘者』阿野 弐升(BNE001158)は自分に降り注ぐ弾丸を薙ぎ払う様に戦鬼烈風陣。 「遊びのついでに任務を、じゃなくて任務にかこつけて遊びに来ました。どっちでもヒデェや……とりあえず遊びましょう?」 薙ぎ払い、進む。ガンドルフへ。放つピンポイント。迎え撃つ射撃で阻まれた。 「どーもマスクマン、過激に楽しく火遊びしましょうか」 「あぁ、遊ぼう。えぇね。ロマンや、ドラマやね」 交差するスターライトキャノン、烈風陣。踊る弾丸、呻る刃。迸る血潮。燃える運命。 「狂気の沙汰こそ面白い、とは言うけれども。面白いんですか、これ。地雷原でタップダンスするぐらいの狂気なら面白いですけど……ぶっちゃけ、これってロマンなんです?」 「世界はこんなにもロマーンティック!」 「個人の価値観があるので何とも言えんですが、この沙汰はロマンとは程遠いのでは 俺は強敵との鎬の削り合いのが好きです。死線の上で踊る、ってのは楽しいでしょう?」 「否定が趣味なんかい? おぉロマンティック! そんな君の名ァ聞こか!」 「一応、アノニマスと名乗っておきます。また、どこかで遊びましょう」 所詮、命を賭けるほどの場でないですし――弾丸を切り裂き、一振り。これが論理決闘だ。 弾丸の音は止まない。 されどそれが奏でる暴力を否定するのは、アンナの詠唱。癒しの祝詞。浮かび上がるマジェスティックコアから魔力が展開される。吹き抜ける清らかな息吹。ガンドルフからうんと離れているお陰で怒りに晒される事もない。視線は戦場、仲間を見据え注意警告。回復だけが能じゃない。腰を据えて、見る。視界に赤。転がっている死体には焦点を合わさぬように。と、何かが抜けた様な感覚。白鏡面の視界にいる者に訪れる徴収。搾取。強欲貴族。ハッとして見た。向けられた銃口が、火を吹く――! 「っ、」 されど、二度に渡って降り注いだ火の雨からその身を挺してアンナを護ったのはスペードだった。肌の焼ける容赦のない痛みに顔を顰める。盾を構えたまま、白い顔に問う。 「どうしてこんな、ひどい事を……?」 「あれ? お前一般人――あぁ、ステルスか。えっと、なんだっけ? あぁ、あれだ、瞬きしないと目が乾いて死ぬだろ? そんな感じ」 「そん、な……」 暴力を自然行為だと言ってのける。想像できる答えだとしても。ズカズカ。来る。ブロックされていないのを良い事に、真っ直ぐ歩いてくる。相変わらず滅多矢鱈に弾丸を撒き散らして、皆の心と運命を削って。 「っ! 今の声、アーティファクトの……?」 「あん? 何か言ったか? 大きな声で話してくれなきゃ聞こえないぜ」 恐ろしい、けれど、その気を引く為。 「ひっはは! いいねいいねその顔、ゾクゾクしちゃうね。剥いて苛めてやっちまいたいね。お名前は?」 「……スペード」 「スペたん? 可愛いお名前だね~」 「愚痴も、その胸の内にある蟠りも、全て私が受け止めます。ですからどうか。このようなことは、やめてください……」 「どうしよっかにゃー……おいガンドルフ! やれ!」 「ハッハー! そりゃ随分とロマーンティック!」 哄笑、瞬間、怒りの施条銃から1¢シュート。スペードに突き刺さる。怒りが。そこから怒りが湧き上がる。剣を握る手に力が籠る。されど、駄目。暴力に負けては駄目。ここで感情に身を任せ、作戦が破綻すれば、より多くの犠牲を産むだろう。それだけは、絶対に許されないから。だが、でも、スペードは剣を振り上げた。その切っ先は自身の足に。痛みで頭を冷やす為。 「ヒャハハ! 気に入ったァ!」 向けられる白鏡面の銃口。スペードの作戦勝ちとも知らず。これで彼が撒き散らす被害は、ぐっと減るだろう。 吐き捨てた血の唾は燃え落ちる運命と共に。 「故人曰く、『殺れるだけでもありがたや』『撃てて当たればみなおなじ』なんだそうですがー」 ここで倒れるのはちょと厳しい。全力火力。Missionary&Doggy。狙うユウの視界はコマ送り。インドラ、インドラ、これで何回目だっけ。 「あはー♪ もっと燃えるがいいやー……って、いけない。飲まれかけてるじゃないですか」 まぁいっか丁度弾切れだし。狙う先にガンドルフ。フィクサードの部下と共に二升をブロックさせている。 「おーい、そんなカモ撃ちがロマンティックなんですかー?」 「そしてドラスティックなんや!」 哄笑。 暴風の様に荒れ狂う散弾の中。ぐるぐのノックダウン・コンボに蹌踉めいたエドナの腹に瀬恋の拳が突き刺さった。殴り飛ばした。腹を抱えてエドナは笑った。お尻をパタパタ叩いて立ち上がった。 「ごめんねぇ、私一抜け――また遊んで頂戴な」 軽い動作、戦線離脱。追っている暇はない、次だ。随分手酷い傷を負ったがまだ戦える。アンナを除く誰も彼も、精神力が覚束無い。だが零でないのはスペードが白鏡面の興味を徹底的に惹いてくれているお陰か。 嗚呼、怖い。 そこら中で人倒れてるし。まだ呻いてる人もいるし。動かない人も。戦ってる間にも死んでいく人も、いる。 でも。アンナは震える歯の根を噛み締めて、高らかに祝詞を謳い上げるのだ。 「……アンタ達みたいなのを止める為に! 私はここに残ってるんだ!」 いくらでも壊せばいい、それ以上に治してやる。負けてたまるか! 脳を焼く怒りを頭を振って取っ払い、仁太はパンツァーテュランの引き金を引く。激しく、強く、猛射。いつだってこの攻撃が誰かを守る手段、最大の防御。鉄の雨の中、ぐるぐが駆ける。ガンドルフへ。いつかの鉄の翼を思い出しながら――偶然の一致だろうか?それを知った所でどうしようもないけれども。 「ガントヒルトさんとは?」 「従姉弟やね、なんやガンヒルト知っとんの? あららロマンティック!」 やはり親戚か、と仁太は思った。ただ、シンヤについていた『彼女』は剣林。出会う事があれば戦う事にもなる。戦いが目的?戦いが好きなあいつならありそやな。 「せやったら戦っちゃる、あいつの代わりに!」 パンツァーテュラン。火を吹く暴君。驚きの声。 「それ、ガンヒルトの――まさか君がガンヒルトを仕留めた、『坂東』か!」 これはロマンティック。笑う。仁太へ向いた、その瞬間。ぐるぐは見逃さなかった。こんな状態で撃ったらタダじゃ済まないかも。 「それでも撃っちゃうのがぐるぐさんなんだけどねー!」 大艦巨砲主義、ぶっこむ豪快絶頂拳! 考えるな、感じろ、常識外れの威力に吹き飛ぶ互い。紛れもなく致命傷。ぐるぐにとっても、ガンドルフにとっても。それでも 彼は立ち上がった。仁太へ銃口を向けた。 撃った。深夜の悪夢の様な黒い影が銃口から奔り出し、彼を包んで圧し潰す。 ミッドナイトマッドカノン。 あいつと同じ名前の技なんやな。 あいつを継いで戦うっちゅうんやったらやっぱそれがいるよな――黒の中、目を開ける。運命を燃やして、突き出す手にはパンツァーテュラン。 「未練がましいと思われても構わん。好きになったことに命すら賭けられるけん。届かせてみせるぜよ!」 例え運命を捻じ曲げようと。彼女が、そう、好きだったから。だからだ、この技の為だけに覚えたのだ、ラーニングを。後悔なんてするものか。 「一緒に、ぶちかましたろうや――喰らえ、『ミッドナイトマッドカノン』!!」 塗り潰す、黒。 「この前さぁ、黒鏡面ってやつとやりあったんだけど、あんたアイツの親戚かなんか?」 「あぁ、俺の双子の弟なんだけどテメェよくも俺の黒たんをー!」 「まぁ、なんだっていいよ。似てるからむかつく。むかつくからぶっ飛ばす」 零距離における暴力会話。瀬恋と白鏡面。互いに血みどろ。残るフィクサードは彼と3人の部下達。瀬恋はその白い顔を狙って断罪の魔弾を放った。強欲貴族を壊す為。弾切れは目前だが、上等。 「そのツラぶち割ってやるよ。アタシが倒れるのが先か、テメェがぶっ倒れるのが先か、根性比べといこうや!」 「ヒャッヒャッヒャ! 面白ぇ! でも時間切れだぜお姫様!」 ホントはもっと戦いたいが、限界だと悟ったのか。瀬恋の猛撃に蹌踉めきつ白鏡面が地を蹴って――向かう先に、スペード。 「っ!?」 「最後に、最後のデザーーーート!」 零距離、掴んで、引き寄せて、その身体に押し付ける銃口。腹部の愚痴吐きアウトロー。刹那、爆ぜる、火を吹く、執拗な処刑人。途方もない数の弾丸がスペードの身体を貫いた。 意識が銃火に焼かれて消える。 死ぬのだろうか。 いいや、 死んでたまるか。 倒れて堪るか! 「それでも、私は……」 眼差し、凛然。 「護り抜くと、決めたから――!」 その為なら運命だって歪めてみせる。盾で殴り付け、跳ね退けた。フィクサードが地面を転がった。飛び退いた。口惜しそうに、されど笑んだ。 「……けひゃひゃ。オーケィ、オーケィ。その心意気に免じて今回は退いてやろう。が、スペたん!」 下がりつ指差す、蒼の少女。 「その可愛い顔。いつか涙でぐしゃぐしゃにしてやっからなァ……? ヒャーーッハッハッハッハッハッ!!」 高笑い、部下と共に倒れた仲間を担いで去ってゆく。 勝った。終わった。へたり込んだ。 ありったけのハニーコムガトリングを打ち続けていたモニカも砲を下ろす。 ややあって鳴り響いたのは救急車のサイレン――スペードが呼んでいたもの。救えなかった命は確かにある。だが、それでもありったけの人を救う事ができただろう――傷を負った一般人が、それでもリベリスタにそっと近付いて。その手を取って。頭を下げた。泣きながら。礼を述べた ありがとう、ありがとう―― 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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