● 「ねー。聞いてるの」 とか何か、アーク所属の無駄に美形の変人フォーチュナ仲島が、言った。 一方芝池は、「はー」とか明らか聞いてませんねーみたいな、いい加減な返事を返して、実際、全然話を聞いてなかった。 それで何をしていたかといえば、壁にかけられた絵画の辺りを凄い、ガン見していた。 「でもまたそのアザーバイドっていうのがさー。ちょっとあれでさー」 「はー」 だいたい、ホテルの部屋に入った時から、その絵画の事は凄い気になっていて、女の人が描かれた絵なのだけれど、どうも微妙に薄気味の悪い部屋の感じと相まって、物凄く薄気味悪い絵に見えて、絶対ないだろうけど、目が動いたらやだなあ、とか、いやむしろ今、目が動いたんじゃないか、とか何か、無性に凄い、怖かった。 「だいたい、出現場所が殺人事件のあったペンションって所がもうちょっと嫌なんだけどさ。見た目がさー、フランケンシュタインの怪物なんだよね、どう見ても」 「はー」 しかも、勝手な妄想なら良いけれど、あの絵の裏にお札とか貼ってあったりしたらどうしようかと考えると、怖くて怖くて、でも、確かめる勇気もなくて、でももー凄い気になって、気になり過ぎて、負けた。 芝池は意を決して立ち上がる。 「でもね、中身は凄い、いー奴っぽいんだよね。むしろ自分の方が怖がりみたいなさ。でも現状で既に、一般人とかに一回発見されちゃってるからさ。ぎゃー! とか言われて、むしろこっちがぎゃー! みたいなさ。もう完全に怖がっちゃってさ。隠れてるんだよね、どっかに」 絵画の前で大きく深呼吸をする。 自分の中のありったけの勇気ー今こそ集結する時だー。くらいのテンションで、もう一度、意を決する。 「しかもE・フォースも出現するんだけど。この内の二匹がさー。やたらこのフランケン君の事を敵視しててだね。あれ犯人と間違っちゃってんじゃないかなあ。だからフランケン君としてもだいぶ委縮しちゃって。しかも、運の悪い事に、頭に刺さってたネジがさ、逃げ回ってる最中にどうも一個、抜けちゃったらしいんだよね。これないと頭の中からいろいろ出てきちゃうし、どーしよーみたいなさ。もうどうしていいか分かんない感じになってるんだよね、多分ね」 「はー」 ってとにかく全然聞いてないので、それはそれとして、絵画を手に取り、そーっと、めくった。 瞬間、裏側の壁に何かが貼ってあるのが、見えた。 わーやっぱりお札だー絶対お札だー、わー見なきゃ良かったどーしよー。と頭を抱え、蹲る。 いや、蹲ろうとした。 矢先に、気付く。 「何してんの、え、何これ」 とか、近づいて来た仲島がさっそくはがした。 その手にあったのは、お札はお札でも、大トロ、時価。とか書かれた、金色のお札だった。 「す。凄い金ぴかぴかですね」 とか。一瞬、どうしていいか分からなくなり、芝池はとりあえず、それを指摘した。 「そうね、ぴかぴかだね。全く意味分かんないけどね」 「お……大トロ、時価」 次に文面を指摘し、指摘したものの相変わらずこの先どうしたらいいか、方向性は全く見えてこないので、もうとりあえず巻きこんじゃえーみたいに、相手の機嫌を取るように笑いながら、「でもこのホテル思いっきり洋風なのに」とか言ってみたら、一切笑ってない無表情の仲島が、覇気のない顔でこっちをガン見していて、しかも暫く、何だこいつみたいに眺めた後で、「まあ、そうね」 って、その返事でその場の気まずさは、すっかり、倍増した。 静けさが、酷い。 「っていうか芝池君さ」 「はい」 「人の話も聞かないで、絵画の裏とかめくるからこういう事になるんだよね」 「はい……」 って、何で怒られてんのかもあんまり分からないけど、芝池はすっかり項垂れ、だいたい、怖がるつもりしかなかったので、この予想外の展開に、何かちょっと、泣きだしたくなった。 「はい何かすいませんでした」 「じゃあこれは俺が元に戻すから」 「はい」 「もう余計な事しないでね」 「……はいすいません」 でも、こんな札出てくると思ってなかったんです、本当に。 芝池は、また元の場所に貼り付けられた金ぴかぴかを見やりながら、心の中で小さく弁解をした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:しもだ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月24日(日)23:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●一階のBとO アホ毛が揺れている。 視界の先で、『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)のアホ毛が揺れている。 とかまー別に何でもいいのだけれど、でも何か、意外とちゃんとメトロノームばりに一定のリズムを保ちながら、ふわ、ふわ、と揺れているそれが、いつ、チーン! ってなるのか、いやチーンってならないのかも知れないけど、でもチーンってなったらどーしよー、とか、雪白 音羽(BNE000194)は、わりと気になっていた。 なのでそこはもう、はっきりさせよう! とか思って、「おい、ちょ日野宮」とか、呼んでみた。 そしたらななせが、「えっ」とか、何か出ました?! みたいな勢いで振り返り、でも何も居ないので、ほよん? と小首を傾げた。 「え、ネジ?」 「いやいやちょっと聞きたいんだけど」 「え、はい」 「お前さ、さっきからさ、アホ毛揺れてんだけど、知ってた」 って音羽が言った瞬間、ちょっとその場がシーンとした。 「え?」 「いやだから、アホ毛が、揺れてるって」 「あ、はい」 「え?」 え? はいって、え? みたいに、音羽はちょっと、その「揺れてますが、何か」くらいの感じに、面食らう。「え? はい?」 「はい、え。アホ毛ですよね。はい、揺れますよ。超直観中は揺れるんです」 「あそうなの」 「はい、そうなんです。ほんで、何か見つけたら、ピーン! ってなります日野宮ななせです、よろしくお願いします!」 「え?」 「いえ、まあ……とにかくアホ毛は揺れるんです。すいません」 「あ、そうなんだへー……なるほどね、やっぱりチーン……ふーん」 って自分で聞いといて、益々納得出来ませんでしたー、みたいな顔で、音羽は、ななせをじろじろじろじろ。 「いやすいません、何か、そんなに深い意味はないんで、あんまりじろじろ見ないで欲しい……かなあ?」 ●その頃同じく一階の、BとB 「おーい、どこだー。居るのかー。いるなら返事をしてくれーい」 とか何か、『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)が、ぶうおんぶおん懐中電灯を振り回しながら、アザーバイドに向け、呼びかけていた。 その後ろで、雪待 辜月(BNE003382)は、カーテンの裏をめくってみては、ピクッ、とか、一人ひっそりと怖がっていた。 そしたら突然、 「あ、でもさ、でもさ! ちょっと思ったんだけどあれ、フランケンじゃ可哀想だよな! 出たら絶対名前とか、聞いてみようぜ!」 とか、振り返った明奈が、いきなり、言った。 顔を、ぼー、とか見やった辜月は、 「そうですね。悪い方ではないみたいですし、フランケンさんが無事に帰れるようにしないとです」 って、答えた。 そしたら明奈が、 「あ! ワタシはー、遭遇したら真っ先に、初めまして! 故郷に帰る手伝いに来たぜ! って挨拶する事にするしな!」 とか、言った。 「はいでも、ホラーとかってちょっと苦手なんですよね……」 頷きながら、辜月は、言った。 そしたらまた、 「そういえばさー、思ったんだけどさー。これって若干夏らしいホラーな話だよなー! でも、最近あっついからなー、丁度いいかもな!」 とか、明奈が。 「はいぇと、その……急に何か出て来たらびくぅってするのが……ちょっと……でも、頑張りましょうね?」 とか、辜月が。 「おう! じゃあ、次の部屋、行くか!」 とか、明奈が。 「はい、そうですね」 とか、辜月が。 って、意外とちゃんと聞いてみると、その会話は微妙に噛み合っていなかったのだけれど、それでも二人の探索はまだまだ続く。 ●そんな中、二階のOとO 「いやあねえ。見た目の所為でってのは、何とも気の毒な話だよねえ」 手羽先をゆらゆらと、扇子のように動かしながら、『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)が、言っていた。 とか、完全に全然聞いてない感じで、アーベル・B・クラッセン(BNE003878)は、フフフフーン、とか鼻歌を歌いながら、いわく付き物件の散策を楽しんでいた。 「自分もねぇ。この手羽先があるから、いろいろと苦労したんだよねぇ」 でも、完全にアーベルが聞いてくれてるものと思って小烏は話を続け、「今回ばかしは見た目で苦労したお仲間同士、仲良くしたいもんだね」 ね? って後ろを振り返ったら、 「あ、ネジっぽいの見っけ」 とか、アーベルが床の隅に蹲り、拾い上げたそれを、コートのポケットに。 仕舞い込んで顔を上げたら、めっちゃ小烏がこっちを見ていた。 「あれ今、全然話聞いてなかったんだ?」 「え、むしろ話、してたの?」 って言ったりきり、二人はちょっと見つめ合い。 「うん、じゃあ行こうか」 「そうね、小烏さん。いや、小烏君。いや、こ……あれどっちだろ、え。どっち?」 「うんまあ、細かい事はいいじゃないか」 「そうね。それにしてもあれだよね、廃墟って、本当わくわくするよね」 「うん、こいつはちょいとした肝試しだ。こりゃ中々の雰囲気だね。一人だとちょいとキツそうだよ」 「うん、そうね。二人で良かったよね、うん」 ●そして二階のAとA 「おーい、でっかいのー。何処だぁー?」 とか、『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)が、アザーバイドを刺激しない程度の声、を心がけ、呼びかけていた。 多分、とっても本気で探しているのだろうと思う。アザーバイドを。 モルぐるみ姿で。 とか、背後から見ているユーキ・R・ブランド(BNE003416)としては、いいんですか、それでいいんですか、大丈夫ですか、と、何かを確認したい気持ちでいっぱいだったけれど、確認してしまっては彼の本気に水を差してしまうのではないか、という気がして言えない。 「さー! ネジなら一緒に探してやるから、出てこーい」 とかいう間にも、猛は、モルぐるみ姿で声を上げている。 いやこれやっぱり止めて上げた方が……ってユーキが真剣に葛藤し出したその時。 壁の影から、ぬっと出て来た。 何が。 アザーバイドが。 「あ」 「おっ、と」 モルぐるみ、もとい猛が、いや本当に出てきちゃったよ、みたいにちょっと、仰け反った。 ユーキは、でかいとか言われてるけど、自分よりちょっとだけ背が高いだけだったアザーバイドをじー、と見た。 「あーどうもこんにちは。ヴァンパイアのユーキです」 そして、ニイィ、と犬歯を見せつつ、丁寧に挨拶。というか、彼女なりに精いっぱいの笑顔で、挨拶。 ぎこちなかろうが、その顔が暗闇の中、びっくりするくらい怖かろうが、それが彼女なりの精いっぱいのおもてなし。 なのだけれど、それを見た瞬間、アザーバイドは、ヒイィ! と、自分こそ凄い恐ろしいビジュアルしといて、失礼極まりない反応をした。 何せ、彼は、怖かったのだ。 暗闇の中いきなり、得体の知れないもこもことした生物に遭遇し、しかもそのもこもこからは人の顔が出ていて、わー何だこれー! とか思ってたら、隣の大きな生物がいきなり、ニイィィとか、鋭い歯を見せ笑ってくるし、食われる! 絶対食われる! 襲われる! って、凄い怖かったのだ。 とか、そんなアザーバイドの気持ちは二人には分かるわけもなく、むしろ、良かれと思ってやっているので気付きようもなく……。 え、まさか。に、……逃げたりなんかは、しませんよね? とか、ただただ薄っすらと、危機感を感じ、手を伸ばそうとしたその矢先。 ぴゅー! と、逃げた。 誰が。 アザーバイドが! 「わー、アザーバイド発見!」 猛が慌てて、もふもふした手で扱い難そうにAFを操作し、仲間達に告げる。 「で、でも。逃げられました……」 続けてAFに向け、若干淋しげな笑みを浮かべながら、ユーキは自己申告した。 「何でなのかは私にも良く……」 そんな彼女の、自分より密かに高めにある肩を、猛はポン、と叩いた。 むしろ、ボフ、と叩いた。 「お、おい。まあ、何つーか。そう、気ィ落とすなよ」 「はい」 って振り返ってみたら、謎の生物の着ぐるみ「モルぐるみ」の、わりと間の抜けた表情の間から、こちらを真剣に見つめている猛の顔が……。 ユーキはそっと、目を逸らした。 「ありがとうございます、はい。お気持ちだけで……じゅ、十分」 「あれちょっと、笑ってない?」 「いえ、気のせいで……」 ●その少し前。 「そーいえばアザーバイドの名前しらねぇな……」 とか、今更ながら、音羽は気付いていた。 でもまーいーか。とすぐに持ち直し、 「おーい。隠れてるやつ~、いろいろ手伝ってやるからでてこーい、話し相手ぐらいにはなれるぞー」 って言った途端だった。 ぶおん。と、何をどう間違えたのか、E・フォース(推定、フェーズ1)がすぐ傍に出現した。 「話聞イテヨ」 「え」 とか思ったら「私ノモ聞イテヨ!」って、どんどんE・フォースが集まって来た。 「わー! E・フォースが出ちゃいましたよー!」 ピーン! って、アホ毛を尖らせながら、ななせが即座に巨大な鋼のハンマー「Feldwebel des Stahles」をダウンロードし、振り回し始める。 「何匹いるんですかー」 オーララッシュを発動しながら、ハンマーを振り回す遠心力でくるんと一回転。1、2、3、4、5、6。「6匹!」 「おー何かわかんねーが、まあ、いいや。何でも聞いてやるぜ、言ってみな!」 軽い調子で言いながら、音羽は両手を合わせ、自らの周りに複数の魔方陣を展開させる。そこから吹き出る力で、自らの魔力を高めておいて、チェインライトニングを発動した。 その手から放たれた雷が、激しく暴れ狂い、次々にフェーズ1を貫いていく。 その雷の当たらない位置で、びりびり、と感電しちゃった敵へとトドメをさすように、オーララッシュを決めていっていたななせの横に、また新たに遅れてやってきたE・フォースが、 「ワウッ!」 って、壁から浮き出るように、出て来た。 突然背後から囁かれたななせは「ひゃ!」って飛び上がり、飛び上がった自分に照れたけど、照れたなんて言わないよ、絶対! みたいに振り返り、無言でその横っ面をパッコーン! と。そこでAFから仲間の声が聞こえて来たのだった。 「わー、アザーバイド発見!」 「で、でも。逃げられました……」と。 ●その頃二階では アザーバイド発見の知らせに動こうとした矢先、E・フォースのフェーズ2に遭遇してしまった小烏が、手羽先でバシーッ! とその顔面っていうか、顔面しかないのだけれど、とにかくその物体をぶっ叩いて距離を取り、同じ階の仲間達へ連絡を取っている最中だった。 「こちら、小烏だ。フェーズ2が出た。集合してくれ」 「それが、こちらにもフェーズ2が出まして」 と、応答してきたのはユーキだ。 「二階に集中みたいだな! くそう。とりあえず中心辺りで落ち合おう!」 猛の声が言う。 「了解」 と、小烏は応答し、走り出す。 なのでアーベルもとりあえず続いて、だだだだだだーって走って、走って、走って、前方から走ってくる仲間の姿が、見えた。 のだけどそれはもう、仲間二人っていうか、仲間一人と、モルぐるみ一匹だった。 ぷ。 「おい、そこの奴! 今俺見て笑っただろ!」 とか、猛がすかさずこちらを睨んだけれど、あれはどう見ても、モルぐるみが必死になって敵を引っ掻いているようにしか、アーベルには見えない。 あの手から実はちゃんと装備したクローが出ているのだとか、分かっているけど、でも必死になって敵を引っ掻いているようにしかやっぱり見えない。 「いやまさか。そんな君を見て笑うなんて……はっはっは、いやもうごめん。自分で言ってってめちゃくちゃ面白くなってきちゃったっはっはっは……うわ!」 その眼前を、ビュオン、とE・フォースが通り過ぎて行く。 間にも、ユーキが、 「一階の方々、聞こえますか。二階にフェーズ2が二匹出現です。出来るだけ私達で対応しますが、早めの加勢をお願いします」 ピピッと通信。 「こちら一階の音羽、了解」 「同じくななせ、了解です」 「ってことで、こちらはお先に、守護結界だ!」 小烏が中衛の距離から、瞬時に防御結界を展開する。 そこへまた、AFの通信が。 「こちら、一階の明奈だ。駆けつけたいのは山々なんだが」 「はい、ぇと。こちら、同じく一階の辜月です。実は、アザーバイドを見つけてしまいまして。一緒に居るんです。出来るだけ駆けつけるようにしますが……わあ! フェーズ1が出ました!」 ●その少し前のくだり。 明奈と辜月は廊下を歩いていた。 所へ何か、何かが全速力で向かってくるのが見えた。 「え、なになに、何だ」 「え、何でしょう」 って、前方から走ってくるそれは、何と。 わー! フランケーン! って思わず、逃げ出したくなった所をぐっと、堪え、明奈はドーンと仁王立ち。 すると、キキーッ! と、アザーバイドが急ブレーキ。しようとしたのに、止まれなくて、近くの柱に思いっきりぶつかって、やがて、止まった。 「アウー」 わー何か凄い今の衝撃で頭からちょっと何かべちょって出たけどー……。 って思わずそれを見て引き攣りそうになった顔に、頑張って持ち前の全力スマイル! を浮かべた明奈は軽快に、言う。 「初めまして。故郷に帰る手伝いに来たぜ!」 とかいう後ろから、ひょこ、と恐る恐る辜月が顔を出した。 「ぇ、ぇと、こ、こんばんは。そんなわけで、一緒に行きましょう」 そして両手をホールドしながらゆっくり近づいていき、近づいていき、近づいていき。 ぽふ。 と、アザーバイドを抱きしめ、 「……大丈夫ですから……もう一人で動きまわらないで下さい。危ないですから。ね?」 そして、ふわ、と小首を傾げながら、少し困ったように、はにかむ。 顔が、やたら可愛い。 がーん。 って、何か分かんないけど、フランケン君、硬直。むしろ、じんわり頬を赤らめ、硬直。 とか全然気づいてない辜月は、その鼻の辺りをそっと撫で撫で。 「じゃあ、ついて来てくれますよね?」 「アウアウっ!」 「お、ほんじゃあとりあえず皆のとこ、行こうぜ!」 と、そんなわけで、フランケン君は二人に連れられ移動する事となった。 緊張のため、右の足と右の手を思いっきり同時に出しながら。 ●その頃二階では 「さあ、派手に行くぜ……壱式ィ、迅雷!」 バチバチッと、自らの体に電撃を纏わせた猛は、上下、左右、と自在に動き回る敵に、鮮やかな動きで対応していく。 モルぐるみ姿で。 とか、笑いたいけど笑ってる場合でもないので、ユーキは、漆黒解放を発動した。 神経を戦闘へと集中させる。全身から、溢れだす、漆黒のオーラが、その身を守るようにざわめきだす。 「同情が無いと言えば嘘になりますが、だからといって人を襲って良い道理はありません。もそっと深い闇に墜ちるといいでしょう」 そしてバスタードソードを前へと突き出すと、常闇を発動した。 漆黒のオーラが、夜の闇のように二匹の敵を抱き込み、空へと持ち上げ、そのままズシャアッと薙ぎ払う。 ふわんふわん、と散って行く敵目掛け、今度は、後方からダダダダダダ、と、アーベルの放った弾丸が飛び込んで来た。 「ごめんね今はちょっと忙しくてね。涼しくしてくれるのはありがたいんだけどさ」 「ま、そういうことだな」 更に後方から、小烏の符術で作り出された「式神の鴉」が、弾丸の隙間を縫うように、敵へと突き刺さる。 「おっと。どうやら終わったみたいだな」 そこへ駆けつけた音羽が、ふ、と表情を緩め、言った。 「ですね」 ななせも、ハンマーを下ろし、頷く。 そして同じ頃、一階のフェーズ1も明奈の攻撃によって今、トドメをさされようとしていた。 「さあ、下がってな! 怪我なんかさせないぜ! ワタシのドラマさを舐めるな! 幽霊以上にゾンビだぜ?」 辜月とアザーバイドを庇うように前へと躍り出た明奈が、再度きっちりとダブルシールドを構え、ダッと勢い良く飛び上がった。 魔落の鉄槌を発動し、ドーン! と、その体ごとぶつかっていく。 神聖な力を秘めた一撃に、フェーズ1は耐えきれず、やがてはぶにょ、と押し潰されるようにして、消えて行った。 「ふん。ワタシだって神秘に関わった身だ。今更ビビってたまるか! 笑い飛ばしてやるぜ!」 ● 「さて、これでよし。と。おい、もう落とすんじゃねえぞ?」 音羽は、アザーバイドの頭にネジをはめ込んであげ、言った。 そしたらまさに、そのネジを拾ってきたアーベルが、 「あ、そこのネジだったんだ」 とか言うので、え、とか思った。 「何だよ、お前、知らずに集めてたのかよ」 「ま、そんなわけでさ。気をつけて帰ってくれよな!」 隣の校舎のD・ホールまでアザーバイドをエスコートしてきた明奈が、言った。 「なぁ、驚いた奴の事だがよ、こんな場所だから余計に驚いちまっただけさ。あんまり気にすんなよ、な?」 そして小鳥が、ポン、っていうかパサっ、と肩を叩き、彼を穴へと誘導した。 「ではまた、ですねっ」 穴に吸い込まれて行くアザーバイドに向かい、ななせが笑顔で手を振った。ユーキはまた怖がらせてはいけないと思い、ひっそりと仲間の中に隠れながら、でも大きくて結局隠れきれないのだけれど、まあ、とにかく気持ちだけは隠れてるつもりで、手を振った。 後ろで辜月も、小さくはにかみながら手を振っている。 「まあ、もし次会う時があったら、その臆病な性格治しとくんだな」 モルぐるみ姿の猛が言った。その姿でブレイクゲートを発動した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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