●合鴨農法 合鴨を利用した稲作の方法。 合鴨の雛を水田に放鳥し雑草や虫などを餌とすることで駆除させる。 また、フンが肥料となったり、合鴨が泳ぐ際に泥をかき回したりすることも稲の生育に良い結果をもたらす。 雑草や虫だけでは餌は足りない為に他の餌が必要になるし、鴨が雛である為に蛇や他の鳥に襲われる心配もある。 また、成鳥となった合鴨は稲を食べてしまう為に稲と合鴨の成育の調整等も難しい。 通常の農薬を使用した稲作よりも手間は掛かるが、化学肥料や農薬による稲の弱体化の防止や、農機の使用が難しい地域での雑草駆除の労力等を減少できる農法として、発展途上国から注目されている。 尚、農期を終えたアイガモは食肉用とされる。 ●合鴨 野生の鴨(マガモ)と家鴨(アヒル)の交配種。 合鴨農法などに使用される。 人によって作られた種の為に放鳥は禁止されており、農法後は食用とされる。 肉は野生のものに比べると脂身が多く、肉は柔らかいが味がやや薄いとされている。 ●合鴨防衛戦線 「という訳で秋の稲刈りの為に有志を募って頑張っていたのですが」 アイガモの雛を抱えたマルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は何か意気込んだ様子で説明した。 ちなみに雛の名前は鴨南蛮だそうである。 食用になると知ってから可哀想だから農法を変えるというのはちょっとずるい気がして、きちんと最後まで育てると決意しての命名……というのが本人の弁だ。 命名に関しては漫画の影響とか受けたのかも知れないが。 閑話休題。 水田に出現したエリューション撃破の為に一帯の水田を借りきったのは、アークのごくごく一部の者たちが知っている事実だった。 別に隠している訳ではない。 単純に、興味が無いという人がほとんどなだけである。 告知しなかったのも事実だが。 ともかく実際に何事も無ければ、秋になって食堂等で出るお米がちょっと美味しいと話題になっていたかも……程度の話だっただろう。 「ですが、そういう訳にもいかなくなりまして」 マルガレーテは説明してから、ディスプレイに画像を表示させた。 現れたのは……カラスっぽい生き物だった。 翼とか胴とか、足とか……つまりは頭以外の部分を大きく逞しくしたら、こんな感じになるかもしれない。 つまりまあ、そのまんまっぽい頭と……すごくバランスが取れてない感じ。 「全長が1mほどになってます、エリューション化によって」 その言葉に幾人かが、なるほどと……気の毒そうな、憐みの籠った視線を画像に向けながら頷く。 「幸い……っていう言い方も何ですが、エリューション化したカラスたちはアイガモの雛を狙って水田近くに集まってきます」 なので、何とかすべて倒してほしいんですとマルガレーテは説明した。 エリューション・カラスは、とにかく耐久力が上がっている。 銃で撃たれても、トラックに轢かれても、簡単には死なない。 反面、他の面はあまり変わらない。 「攻撃方法はすばやく近付いて嘴で突く、のみです」 普通のカラスよりは強いのかも知れないが、あまり変わらないようにも思えるくらい。 一般人が攻撃されても、ちょっと怪我するくらいで済みそうだ。 まあ、生きていく分には攻撃力とか関係ないし、カラスたちにとっては都合のいい変化だったかもしれない。 とはいえ、エリューションとなれば放ってはおけない。 フェーズが進めば危険になる可能性は充分にあるのだ。 「当然なんですけど、カラスたちは雛を狙うことを優先してきます」 普段は手の届かないの高さを飛んでいて、雛を狙えそうな時は低空へと降りてきて攻撃する。 あるいはさらって空へ戻り、食べてしまう。 「既に連絡を受けたアークの有志の方たちが避難を始めてくれてるらしいんですが……」 それでもカラスたちが来襲するまでに全羽を避難させることは難しい。 「可能な限り雛に被害を出さずに……あと、できたら水田を荒さないようにして、すべてのE・カラスを退治して欲しいんです」 いろいろと面倒かもしれませんが、どうかよろしくお願いします。 フォーチュナの少女はそう言って、リベリスタたちに頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月30日(土)00:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●自然というもの 「生きるって、命を頂くことよねっ!」 『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)は断言した。 「とらは何だかんだでごはんを食べるのが、今一番生きてる事を実感出来るの」 カラスも必死なのだろうけれど、自分も必死なのだ。 「雛達にも、短い生を謳歌してもらわなきゃね♪」 「可愛いわよね、雛」 『薄明』東雲 未明(BNE000340)が後を引き継いだ。 「ふわふわのもこもこでよちよち歩くの」 それが美味しいお米を作る手伝いをした挙句、秋には美味しいおかずになってくれる。 (愛でてよし、食べてよし) 「完璧だわ」 それに頷きながら『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)も続けた。 「アイガモの雛さん達を食べさせるわけにはいきません」 (やーん、雛さん達、とてもかわいいです。ずっと見ていたいかも~) ちなみに言葉はしっかりしているものの、態度の節々には内心がいろいろ滲んでいる。 あと、前二者と何か微妙にズレみたいなものも…… 「TVでしか見た事ないですが、アイガモの雛達が一生懸命田んぼの中をパトロールしている姿はとても可愛いのです」 そう言ってから、『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)はさらに続けた。 「カラスはカラスで可愛いと思いますけれどエリューション化してしまった以上放置できないのです」 ちなみにこのカラス達は現在、彼女の目線からは……可愛いというには程遠い姿になってしまっている。 (カラスが鴨の雛を狙う……ねぇ。本来なら、自然な行動なんだけどな) 「ただ、エリューションになってしまったことで、討伐しなくてはいけないのがなぁ……」 残念には思いつつも、『伝説の灰色狼』アーネスト・エヴァンス・シートン(BNE000935)は自分の中で結論を出した。 まぁ、そういうわけで、斬る。 (どのみち、鴨、食われる運命だし) それは口には出さず、内心で呟くだけにする。 「鴉さんもエリューション化さえしなければ別の対処方法もあったのでしょうが……」 せめて苦しめず天へお返ししたい。 『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)は、少しさびしげに呟いた。 ●水田にて 「アークって稲作もしてたんですね。知りませんでした」 佐々木・加奈(BNE003907)の、雛たちと秋の新米を守るために頑張りましょうとの言葉に、源 カイ(BNE000446)も頷いてみせた。 (合鴨農法ですか、無農薬のお米を育てるのは確かに大変ですね) 「その努力が無駄にならないよう、合鴨の雛達を守らなければなりません」 (秋になったら、美味しいご飯を頂きたいものです) 「……あと鴨鍋も」 小さく、聞こえないくらいボソッと付け足して。 リベリスタたちは急ぎ、水田へと到着した。 雛を守るスタッフの皆さんにお疲れ様ですとアーネストが挨拶し、イスタルテは迎撃態勢を整える為に仲間や有志たちにいつでも翼の加護を与えられるように準備を整える。 加奈は挨拶後に話を聞きカラスたちが来るまでと雛の避難を手伝い始め、未明は手分けして避難する雛を囲えるように展開した。 「上にも下にも気を配りませんとね」 カイは稲を荒さぬように、高く飛び過ぎにようにと高度を調整し、念の為にと水上歩行の能力を準備する。 「キャーッチ☆ ひゃっふぅ、とらはこんな一口サイズじゃ食べた気にならないよー」 一方で、とらは真っ先に雛たちの保護へと向かった。 「まだよ、もっと太らせなきゃ!」 そんな言葉に首を傾げつつ、イスタルテも少し翼を羽ばたかせ上から雛たちの位置を確認すると、リベリスタたちのいなそうな所へと保護に向かう。 逃がさないように、怪我をさせぬように、気を付けて、なるべく優しく。 「もう大丈夫……」 シエルも水田の間を飛行しながら、そっと雛を抱えあげた。 「ヤミィさん、雛の保護は任せたですよ」 「はい、そあらさんもお気を付けて!」 なにかあったら雷音ちゃんが泣いちゃいますと力説してから、皆と一緒にヤミィは雛たちの避難を続けていく。 未明もすぐ傍で、別方向に行こうとしてる雛を見かけると、シロみたく妨害していた。 「うーん、やっぱ可愛いわね鳥の雛って……ハッ、敵が」 五人が警戒し三人が避難を手伝い始めて間もなく……一部がカラスっぽい形をしたエリューションたちが、彼方より姿を現した。 ●カラス迎撃戦線 「キラキラしたものを見せつけてカラスをあおってみるです」 そあらはアミュレットハンズの魔石や万年筆等を使って、カラスたちを自分の方へと誘き寄せられないかと試してみる。 (でもさおりんにもらった『Night Baron's Escort』はダメなのです) 「これを狙ったカラスは絶対ゆるさないのです」 そのオーラに怯えたのか、それとも先ずは餌という主義なのか? 未明もカラスの気を惹きやすい様、キラキラしたアクセサリやヘアピンを見せつけてみたものの、効果は大きくはなさそうだった。 とはいえ二人の方へと数羽が視線を向け飛んできたのだから、まったく効果が無いという訳でもないのかもしれない。 ちなみに未明はアクセサリを用意しつつ、服装は汚れてもいいようにと中学の時のジャージ姿だった。 「我ながらミスマッチな格好ね」 そんなことを言いつつ、彼女はカラスたちへと注意を向ける。 なるべく田んぼを荒さないように。 「まぁ……場合によるが、不可抗力だしな……」 アーネストは墜落した場合の事も考慮し、田の畔、あぜ道の上を低く飛びながら距離を詰めた。 カラスたちに近付きながら、自身のギアを入れ替える。 「本来であれば、カラスを追い払う事はないのですけどね」 普通のカラスが餌として他の鳥の雛を襲うのであれば、それは自然の摂理といえるかもしれなかった。 だが、今回はそうではないのである。 カイはカラスたちが射程に入ったのを確認するとアームガンの照準を一羽に定めた。 精密な射撃でエリューションを撃ち抜くと、武器に陽の光を反射させるようにして誘導を試みてみる。 攻撃を受けたカラスは普通のカラスよりは凄みのある鳴き声を発すると、カイに向かって接近してきた。 「恐れを知らぬというなら掛かって来なさい」 カイは黒いオーラで近付いてきたカラスを叩き落す。 カラスは直撃を受けたにもかかわらず、そのまま起き上がって反撃するようにカイをつっついた。 「雛達をご飯にするのでしたらまずあたしを倒してからなのです」 かなりタフそうと判断して、そあらはポップでキュートないちごばくだんを、数羽が集まっているところに放り込む。 魅了されたカラスたちは、そのままお互いを威嚇して突っつき始めた。 「なんとか、ここで倒しておかないと、まずいですからね……」 アーネストは幻惑するような動きから鋭い斬撃を放って一体のカラスを攻撃する。 こちらもカラスはまだまだ元気で、アーネストの方を向いて威嚇するようにカァーっと鳴いた。 (まず雛から此方へ、注意の向く先を変えなくちゃね) 未明は低空を飛びながら、残像が生まれるほどの高速の動きで数羽を巻き込むようにして残影剣を放つ。 「シロもあんま遠くにいったら駄目よ? 囲まれて突かれちゃうわ」 加奈はハイディフェンサーでしっかり守りを固めてから、少しだけ浮いた状態で羽ばたき、雛や協力者たちを守るように前進した。 「食べ物の恨みは命と同じくらい重いと昔から決まっているのです!」 ブロードソードに神聖な力を籠めて、カラスに向かって思いきりたたきつける。 シロは呼びかけやアドバイスにワンと頷き田の畔の一角に陣取ると、ワンワン砲(マジックアロー)で攻撃した。 それらの攻撃を受けてもE・カラスたちは全然ひるまない。 もちろんダメージを受けてへばったものもいたが、そもそも数が多いのだ。 もっとも、迎撃班たちの攻撃によってカラスたちは当初の目的を忘れ、反撃に夢中になりつつあった。 ●みなの力で 「泥が怖くて、コメが食えるかっ! そぉれ、撤収ー☆」 服の内側のお腹のところに雛たちをホイホイと投げ込んで、とらは出来るだけいっぺんに雛たちを小屋まで運ぶ。 そして、近付こうとするカラスの進路を阻むようにイスタルテが飛び塞がる。 「大丈夫ですか? ……疾くお怪我を癒しますね」 シエルは雛を守りつつ、怪我をした雛や有志の一般人たちを息吹によって癒した。 避難班と有志のがんばりによって、雛の避難は完了する。 そして避難班も加わり、たたかいはいろいろな意味で白熱していく。 稲を巻き込まないようにと注意しつつ、カイは低く飛びながら踊るように周囲のカラスへ次々と攻撃を仕掛けていた。 そあらも低めに飛びつつ稲を荒さないように注意して……いちごばくだんを投げ続ける。 E・カラスたちはめろめろから回復するのも遅いようで、半ダースほどが魅了されつつあった。 カラスだけでそあらファンクラブが形成されそうな勢いである。 とはいえカラス達はエリューションである以上、このファンクラブは誕生した瞬間から消滅を宿命付けられている存在なのだ。 ……いや、すべての存在は生れた瞬間から死を宿命付けられている。 ならばこのファンクラブも自然の摂理に従った存在と言えるのかもしれない。 ……や、ぶっちゃけ誰もそんなこと考えちゃいないんだろうけど。 「シロちゃーん、体の中心線を狙うのよ☆」 とらはワンワンしているシロにそう声を掛けてから、聖なる光を掌に集めた。 「白く染め抜いてやるぅ♪」 集められた光が周囲に向かって放たれる。 続くようにイスタルテも神気閃光(メガネビームじゃないです)でカラスたちを迎え撃った。 それらを確認しつつ、アーネストは堅実に一羽一羽のE・カラスたちと相対し、引き付けながら攻撃していく。 「聖なる光……この世の理外れし者達へ裁きを……でも、どうか御慈悲を」 シエルも祈るようにして、E・カラスたちに意志をこめた光を放つ。 気絶させられれば……気絶した後で命を絶てば、苦しめずに済むかもしれないから。 偽善なのかも知れないけれど、自己満足なのかも知れないけれど。 戦うのが意志なら、そうしたいと思うのも意志だから。 「……躊躇いません」 全員で攻撃するようになったことで、さすがのカラスたちも次々と撃墜され始めた。 カラスの数が減ってきたことを確認した未明は攻撃を個々への強襲に変更し、加奈 は万一の場合を考え逃がさないようにと包囲を意識して位置を取る。 「美味しい新米の為にも負けられないのです」 「米(しろ)を汚すものは許さんっ!」 こうして全員の総力をあげた攻撃によって。 エリューションとなったカラスたちは撃破された。 ●来る夏と、秋と 「なんとか、倒すことはできましたね。さて……雛は大丈夫でしょうか」 すべてのエリューションを倒したのを確認すると、アーネストは警戒を解いた。 「雛さん達が無事でよかったです」 早く大きくなって、元気に巣立つといいですね。 笑顔でそう言ってから、イスタルテはそう言えばと首を傾げた。 「鴨南蛮とか、太らせるとか聞いた気がするんですが、一体……?」 誰か教えるべきなのだろうか? 誰が教えるべきなのだろうか? 教えない方がという意見もあるが、こういうのは隠そうとすると……えてして最悪のタイミングでバレたりするものである。 かといって現状で教えるのも……それはそれで、かなりショックが大きそうで…… 「美味しいお米は大事なのです」 そあらは田んぼの荒れた箇所の修復を手伝ながら口にした。 「秋の新米の収穫が楽しみですね」 あと鴨南蛮も。 ボソッと、前半に比べると明らかに小さな声で。 加奈も手当などを行いながら口にした。 何かこの言い方……微妙に流行ってる感がある。 「ヤミィさんお疲れさまでした、雛の数が多くて大変だったでしょう」 「いえいえ、カイさんもお疲れさまでした~ ……けっこう皆さん、すごい勢いでつつかれてましたけど……大丈夫ですか?」 心配そうなヤミィに笑顔で大丈夫ですと告げ、他のアークの有志の皆にも声を掛けてから。 カイはシロの頭をなでなでした。 「シロも良く頑張りましたね……体を洗ったらモフモフしてあげますからね♪」 未明も倒れた苗をあるていど直してから、シロは水浴び好きかしらと声をかける。 その直後、とらは返事をしたシロを確保して一緒に…… 「飛び出せ青春☆」 洗濯しようとする未明とは別の水路に、水しぶきをあげながらダイビング。 「ふふ、秋が楽しみねぇ」 雛と戯れるのは帰りにしようと考えながら、未明は顔をほころばせた。 (……嗚呼、腕の中にふわふわが) 「いずれアークの食堂のメニューに鴨南蛮追加されてるかなぁ?」 (そうしたら、マルガレーテちゃんを誘って食べに行こうかなぁ♪) シロはわしゃわしゃと皆に汚れを落としてもらう間、大人しくじーっと待っていた。 きれいになると、皆から離れてから水を飛ばす。 シエルが丁寧に尋ねればしっぽが元気に振られて。 「頑張りましたね……すごく助かりました……ありがとう」 そっと撫でながら……彼女は、歌った。 唄は有名な、カラスの童謡。 それを歌い終えてから……シエルは、シロの瞳を見て……お願いしてみた。 自分は山へ行きたいと。 あの鴉達に雛が居たら……助けたい。 偽善……自己満足。でも、親子の情は皆同じ……私なりの贖罪。 「シロ様……嗅覚が鋭いから……」 もしよければ、手伝ってほしい。 そう言われて、シロは少し首を傾げた。 あたりに虫やカエルたちの鳴き声が元気に響いていた。 日は傾き、季節は春から夏へ……そして秋へと移っていく。 雛は大人へと代わり、稲は育ち穂を実らす。 花が咲いて、散って。 種を残すように。 少し間を、置いてから。 シロは夕陽の中で……ワウン、と。 首を上下にゆすぶってみせた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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