●来訪者とエリューション 三ツ池公園。 閉じない穴から少し離れた広場の一角に小さなD・ホールが開き、アザーバイドが来訪した。 ゴトンと音を立てて地面に落ちたマイクに似たそれを拾ったのがアークの者だったら、その先の出来事は変わっていただろう。 それに手を、手の様に操った枝を伸ばしたのは、一本の動く樹木だった。 マイクを器用に枝で掴み、取り込んだ灌木は……次の瞬間、凄まじい騒音をまき散らした。 騒音は衝撃波となって、周囲の木々を薙ぎ倒す。 けれど……その衝撃波は、騒音は…… どこか、すこし……悲しげな雰囲気を、抱いていた。 ●歌は誰かを傷つける為のものじゃない 「植物がエリューション化した場合もE・ビーストって言うんですよね?」 そんな質問を行いつつ。 今回の任務は三ツ池公園になりますと、マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は説明した。 幾人かは見慣れた公園の地図が、ブリーフィングルームのスクリーンに表示される。 「エリューションが出現したのは、この部分になります」 公園の一角、広場のような場所が拡大され、同時に背の低い幹のない根元近くから無数の枝が伸びているという感じの樹木が表示された。 「これが今回のE・ビーストです。低木というか灌木というか……とにかくエリューション化した事で根を全て地上に出して、その部分を使って移動するようになりました」 ちなみに枝の方も同じように動かせるが、そちらは攻撃に使用するらしい。 「たくさんの枝を利用して一度に複数の相手を攻撃できるみたいです」 それ以外に特別な能力というものは持っていないが、耐久力はそれなり、防御力はあって、動きの方も意外と早いらしい。 フェーズは1らしいが、全部で4体いるという事なので油断は禁物。 「あと、偶然近くに出現したアザーバイドが、そのうちの1体に捕獲されているらしいんです」 マルガレーテはそう言って、さらに端末を操作した。 追加で表示された画像に、幾人かが驚き、あるいは首を傾げる。 それは……見た目上は、マイクだった。 「以前この世界に現れたアザーバイドなんですが、今回はフェイトらしきものを得ているみたいです」 再来したところを運悪くエリューションに捕まってしまったらしい。 「このマイクを捕獲している1体だけは、叫び声のようなもので衝撃波を発生させて周囲を攻撃する能力を使用してきます」 どうやらアザーバイドの力を利用しての攻撃のようです。 少女はそう説明してから、ですが利用した力だけに打開策がありますと付け加えた。 マイクはその衝撃波による攻撃をしたくないらしく、懸命に意志の力で抵抗しているらしい。 そのままでは操られてしまっているが、その力を更に奮い立たすことができれば、マイクが抵抗に成功できれば、そのE・ビーストは衝撃波を使用する事ができなくなるらしいのだ。 「アザーバイドは、歌を、音楽を、大切に想っているんだと思います」 心を籠めて歌えば、音楽を想う心を歌詞に篭めて歌えば、アザーバイドの抵抗を応援する事ができるかもしれない。 もちろん捕縛しているエリューションを倒せれば、無事に救出する事ができる。 かなり頑丈なので多少攻撃等が当たっても問題ないだろう。 「……すごく私的な意見なんですが……」 以前、一緒に歌ったことがあるんです、と……フォーチュナの少女は呟いて、リベリスタたちを見回した。 「歌が大好きなんだなって……だからきっと、悲しい想いをしてると思うんです」 お願いします、助けてあげて下さい。 そう言って頭を下げた少女に、リベリスタたちは其々の形で、肯定を返した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月04日(水)00:13 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●歌、というもの 「歌は気持ちを、想いをこめて奏でるものです」 『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)は仲間たちと共に公園の一角にある広場へと急いでいた。 (聞く者も、歌う者の心をも傷つけるような歌を奏でさせられている……などという状況を看過できましょうか?) あの時の事は今でもハッキリと覚えている。 「彼の方を……私達の友人を必ず救ってみせましょう」 彼女の意見に、来栖・小夜香(BNE000038)も同意を示す。 「どうせ歌うなら傷つけるよりも癒しよね」 人を勇気づけ、支え、そして癒す。 (ただただ破壊を撒き散らす音なんて歌とは言えないわよね) 「早い所解放してあげたいものだわ」 「助けを求めているのなら、助けてみせる」 千里眼で広場の方を確認し皆に説明しつつ、『仮面サイガー』祭雅・疾風(BNE001656)も道を急く。 (へえ、こんなマイクみたいなアザーバイドが居たのね) 「是非欲しいわ……もとい、お近づきになりたいわ」 (心の篭った歌を歌えば仲良くなれるかしら?) 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)はそう考えてから……いや、と思考を別の方角に向けた。 他にも歌いたい人が居るようだし、以前そのアザーバイドに関わっている者もいるようだ。 なら、歌はその者たちに任せればよい。 「アタシは、アタシの相棒(ギター)で出来る限りのサポートをしてあげましょ」 (歌い手を、よりノらせて、より感情を込められるようにね) ちらと歌う者たちへと視線を向け、彼女も共に広場を目指す。 (歌を愛するアザーハイド、そんな子も居たのね) 「だったら、助けるしかないじゃない」 皆と共に急ぎながら、『紡唄』葛葉 祈(BNE003735)は呟いた。 歌は人を優しく包み、癒すもの。 心に語りかけ、震わせ、勇気を与えるもの。 愛を歌い、生命の誕生を願う優しき祈り。 「決して、誰かを悲しませ、傷つけるものではないのよ」 問題の広場が近づいてくる。 その中央付近で動き回る背の低い樹木たちの姿を、リベリスタたちは確認した。 「件のエリューションは……あれですか、確かに植物ですね……」 (歌う植物……ですか) 『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)は油断なく、エリューション化した植物たちを観察する。 (植物といっても、エリューション化しているのですから、その構造は随分と変わっているのでしょうが……) 勿論、危険度と言う意味では普通の物とは比べ物にならないことだろう。 「……と、好奇心は先ず置いてこちらの為すべき事をやらせて頂きましょうか」 紫月は自分に言い聞かせるように呟いた。 助けを求めている声を無碍には出来ません。 「歌を歌う事は、良い事だと我は思う」 故に……かのアザーバイトの悲哀はわかる。 『小さく大きな雷鳴』鳴神・冬織(BNE003709)は宣言するように口にした。 「必ず、救う!」 悲しい歌を終わらせる為に。 そして、幸せな歌を奏でられるように。 「あの時の約束、忘れちゃいねーぜ」 『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は……呼び掛けたのだ。 あの時、かつてアザーバイドが帰る時に、今度は……と。 だから、あの約束を果たすために。さっさとこの空気読めないヤツらをぶちのめして。 青年は、アザーバイドに語りかけた。 「君の歌を、聴かせてもらうぜ」 ●響く祈り 「そのアザーバイドを離せ! 変身!」 疾風は幻想纏いを起動させ、瞬時に装備を身に纏った。 リベリスタたちは3人が前衛として、枝で攻撃を行うE・プラントの3体へとそれぞれ対峙する。 残りの5人は全体を確認するように後衛に位置を取った。 エルヴィンは、守りのオーラで防御を固めながらE・プラントの1体へと距離を詰める。 後衛に位置したカルナは周囲に存在する魔力を吸収することで自身の魔力を強化した。 疾風は攻防自在の流水の如き構えを取り、同じくE・プラントの1体と相対する。 エリューションたちはそのまま、近付いてきたリベリスタにそれぞれ攻撃を仕掛けてきた。 灌木の枝が見た目とは裏腹に柔軟に動き、棍棒のように叩きつけられ、あるいは槍のように突き立てられる。 その攻撃を前衛たち、エルヴィン、疾風、紫月の3人はダメージを受けつつ耐え忍ぶ。 そして最後の一体、茂みのような枝の中にアザーバイドを捕獲した1体が、耳障りな騒音を発した。 瞬間、それは衝撃波となってリベリスタたちに襲いかかる。 衝撃波が与えるダメージは、一撃でリベリスタたちをどうこう出来るほどの威力はない。 だが、全員が直撃を受けた為に動きを鈍らされてしまう形となった。 直撃以上であれば、威力の方も本来の攻撃力よりも大きなってしまう。 もっとも、リベリスタたちの対応は冷静だった。 冬織は攻撃の精度を高めるように、エリューションたちの動きに集中する。 杏は自身を中心に複数の魔方陣を展開し、魔力を爆発的に増大させた。 「先ずは手堅くいきましょう」 E・プラントの1体と対峙した紫月は守護の結界を展開し、味方の防御力を強化する。 小夜香も癒しの力を高めるために、周囲から魔力を吸収していく。 仲間たちの様子を見て、まだ充分に余裕があると判断し……祈は、最初に歌を紡いだ。 「心を一つに重ね、紡ぎましょう」 心と心を繋げ、世界に静かに。されど、力強く。 小さな祈り、優しき想い。優しき願いよ、君に届け。 君の心が負けぬように、奮い立つように。 歌は響き、広がり……空気を、アザーバイドの心を、震わせていく。 祈は、心を、異界の存在へと送った。 彼の心が、負けぬようにと。 ●異界の友へ まずアザーバイドを助け、その上で皆で戦っていくというのがリベリスタたちの方針だった。 アザーバイドを捕えている個体以外を前衛たちでブロックし、その間に捕獲しているエリューションを倒す。 以降は1体ずつ倒していくという予定である。 エルヴィンは皆に声を掛けつつ待機して様子を窺った。 3体のエリューションたちはそのまま前衛となった3人を、枝を振るって攻撃し続ける。 一方で最後の1体は……シャウトを発そうとして、一時的に動きを止めた。 「祝福よ、あれ」 それを確認しつつ、小夜香は高位存在の意志の一部を詠唱によって具現化させ、癒しの息吹で味方を癒す。 歌い終えた祈は、後を皆に任せるように体内の魔力を循環させることで活性化させた。 そしてエルヴィンが、エリューションの攻撃を堪えつつ……マイクへと歌を贈る。 このとても広い世界で、君と僕が出会えた奇跡。 きっとそれは偶然じゃなくて、運命からの贈り物。 だから手を繋ごう、笑顔を浮かべて。 共に歌おう、感謝の歌を。 どこまでも暖かな、この世界で。 それは異世界の存在、アザーバイドへと送る、友情の歌。 『歌』というものに対して同じ想いを抱いているであろう同朋(ともがら)へと贈る、励ましの歌。 彼が漂わせ歌に籠めたものは……戦の場には不釣り合いな程に穏やかで、暖かなものだった。 想いを力と意志によって具現化させた彼の歌もまた、異界の存在へと力を与える。 続いて厳然たる意志を籠めた光を放ったカルナは、光が充分にエリューションたちを捉えていない事を確認すると、まずは相手の動きをしっかりと捉えられるようにとエリューションたちに意識を集中した。 疾風は可変式モーニングスター[響]へと雷撃を纏わせると、圧倒的な速度で舞うように連続で攻撃を仕掛ける。 「恐れ慄け、愚者達よ! この一撃、神の怒りに等しいと知れ!」 充分に狙いを定めながら冬織が創り出した雷が、拡散しながらエリューションたちへと襲いかかった。 杏も相棒を奏でながら魔陣を利用して強力な雷を発生させる。 (アタシのギターの歌声がマイクさんにも届けば良いわね) 仲間たちが歌に籠めたものと同じような気持ちで弦を弾きながら、伴奏するような気持ちで……荒れ狂う雷たちを解放する。 放たれた雷撃はのたうちまわるように拡散し、E・プラントたちを直撃した。 ●伝わる気持ち 「申し訳ありませんが、ただの騒音をまき散らすのは止めて頂きたく思います……御覚悟を」 印を結び呪力を放ちながら、紫月は冷たき雨を作り出した。 「凍てついてしまいなさい、陰陽・氷雨……!」 突如降り注いだ冷たき雨が、エリューションたちを凍結させる。 E・プラントたちはリベリスタたちの攻撃によってダメージを蓄積させていった。 もっとも、リベリスタたちも攻撃によってダメージを受けていく。 「そう易々と倒せるとは思わない事ですね」 そう口にはしながらも、紫月の心には一抹の不安が存在していた。 (私も純粋の前衛とは言えない) 「余り長く時間を掛けてもいられません……」 もっとも彼女を含め3人は、エリューションの攻撃を充分に耐えていた。 紫月自身、純粋に耐久力という点で考えるのであれば、同程度の実力の前衛たちに劣る面はあるかもしれない。 だが、今の彼女は敵の攻撃の威力を充分に削ぐ防御力を持っていた。 一回一回は大きな差ではなくとも、繰り返されればそれは大きな差となっていく。 エルヴィンも攻撃や動きを阻害する事も厭わず防御に特化した装備や防具の換装等によって、文字通り不沈艦の如き防御力を持っていた。 そしてこのチームは、負傷が重くなる前に、状態が悪化する前に、すばやく対処してくれる癒し手たちにも事欠かなかった。 何より……多くの者達が、アザーバイドを応援するように歌を響かせていたのである。 小夜香もマイクを励ますように、応援の歌を響かせた。 (一人で必死に抵抗すべく頑張るその姿は、賞賛すべきものだわ) 抵抗をほんの少しでも後押ししたい。 この場には敵だけじゃなく、共に戦い励ましてくれる味方もいる事を伝えたい。 そんな想いを籠めて、歌う。 能力を使用する時も……気持ちを込めた。 力を使いながらでは、どこまで効果があるのかはわからないけれど……少しでも助けになるのなら。 歌は、想いは、アザーバイドに確かに力を与え、エリューションの動きを阻害していた。 エルヴィンは正義の力を宿した十字の光でアザーバイドを捕えたE・プラントを狙い、カルナは癒しが必要な時は想いを籠めて歌を奏でた。 仲間を大切に思う気持ち、こんな状況に負けて欲しくないという想い。 天使の歌へと気持ちを籠めて、アザーバイドへとおくる。 戦いは続き……最初に倒れたのは、疾風を攻撃していたエリューションだった。 予定とはやや異なったものの、それを利用して彼は力強く歌声を響かせる。 何処からか声が聞こえる それは助けを求める声 泣き叫ぶ声 闇に 暴力に 怯えるその時 駆けつけるのさ 疾風が如く 正義の雷(いかづち)が 悪を貫く 在るべき 日常を守る事さえ 笑顔を守る事さえ 出来たなら 他に何もいらない 平和を守れ! 運命(さだめ)に抗え! 仮面サイガー! 歌うのは、【仮面サイガーのテーマ】 スーツアクターとして、ヒーローとして、子供たちを励まし守る歌。 そんな歌を、彼はアザーバイドへと贈る。 圧倒的に不利な状態で、それでも諦めることなく戦い続ける、勇敢で不屈のマイクへと。 他のプラントたちは攻撃を仕掛けてくるものの……やはり、後方にいる1体は動かなかった。 冬織はアザーバイトを捕獲しているエリューションが弱っているのを確認すると、魔力によって黒い大鎌を召喚した。 「貴様等は植物だろう? 伐採の時間だ、恐怖せよ!」 収穫の呪いの刻まれた大鎌は、鋭い斬撃によってエリューションを切り裂いた。 ●世界を跨ぐ交響曲 前衛たちがそれぞれのE・プラントを押さえている間に、カルナは急ぎアザーバイドを確保する。 「辛かったでしょう……ここからは、貴方が想うままに歌を奏でて下さい。私達も共に歌いましょう」 できたら皆にマイクを渡してゆきながら……全員共に歌えたら、と。 そんな想いを抱いた時……マイクから、応援するような音色が響き始めた。 ほんの少し……消耗した力が戻っていくような、傷が癒されるような。 「良い歌だな、元気付けられるぜ!」 アザーバイドに合わせるようにして、エルヴィンは鼻歌交じりに構えを取る。 (こうやって応援されながら戦うってのも、悪くないモンだな) 疾風はアザーバイドの安全を確保できるように、他のE・プラントが近付かないようにと、エリューションたちに接近した。 冬織は攻撃を魔力の大鎌による斬撃へと切り換え、杏と紫月は今まで通り、雷と氷雨でE・プラントたちを攻撃し続ける。 「誰かに応援されながら戦うのって、初めてかもしれないわね」 だからこそ、負けられない。 「格好悪い姿なんて、見せられないでしょ?」 祈は意識を集中し、充分に狙いを定め、詠唱によって創り出した魔力の矢を放つ。 「聖火よ、焼け」 厳然たる意志の籠められた聖光を小夜香はエリューションたちへと向けて解き放った。 受け取ったマイクの歌にしばし耳を傾けた後、杏へと手渡す。 杏はマイクの響かす音色に合わせるようにして、相棒を激しく、優しく奏でながら……拡散する雷撃の魔術式を組み上げた。 想いを抱くものに渡すのが良いとするならば、エルヴィンと対峙するエリューションを倒す必要があるだろう。 E・プラントたちへと狙いを定め……魔方陣によって力を高めた荒れ狂う雷を、解放する。 放たれた雷撃は再会をもたらす為に、祝福するように。 轟音と共に、エリューションたちを薙ぎ払った。 ●フィナーレは新たな前奏へ 「よ、災難だったな」 エルヴィンはアザーバイドに語りかけた。 (……お前の歌、しっかり伝わってきたぜ) 俺達の世界へようこそ、異界の歌い手さん。 「今度はもっと楽しんで歌いましょ」 小夜香はそう言ってマイクを撫でる。 紫月は、深淵を覗く力と、スキャンする能力を使用してマイクの事を調べてみた。 嫌がるようならば止めようと思っていたが、そういう感じはなさそうである。 ちなみに、すごく頑丈だという事とマイクの外見はしているものの異なる存在のようであるという事は何となく分かったものの……それ以外は分からない。 「歌が好きなのでしたら、この後に皆さんでカラオケでも行ってみてはどうでしょう? きっと、楽しいですよ」 紫月はお礼を言ってからそう提案し……神秘の秘匿という意味ではやっぱり厳しいのかしら、と首を傾げる。 そんな彼女にカルナは、以前の依頼の事を説明した。 「ふふ、またマルガレーテさんも誘って皆で遊びに行きたいですね」 ──勿論マイクさんもご一緒に、です。 アザーバイドに笑顔で語りかける。 一つ、皆で歌うのもよいかもしれぬな。 「どこか、人目につかない場所か……カラオケにでも行くか?」 冬織の提案に、幾人かが賛同を示す。 その前に、と。 祈はアザーバイドに話しかけた。 あの植物たちの為に、歌ってもらえないだろうか……と。 「確かに彼らは貴方に酷いことをしたかもしれない」 それでも、彼らの為に歌ってくれる? 彼らがこれ以上、道に迷わぬように。ただ静かに、眠りにつけるように。 「……駄目、かしら?」 すこし……間があった。 駄目なのだろうか……そう思った刹那、静かな、落ち着いた音色が。 広場に響く。 お休みなさい。お休みなさい。 どうか、どうか、次に逢う時は。 まるで、そう呼びかけでもするかのような……鎮魂歌のような、子守唄のような、音色が広場に木霊する。 ……暫しの時が流れ……ささやかな演奏会が終わると、エルヴィンは皆に呼びかけた。 「この後は時間あるのか? せっかくだし皆でカラオケ行こうぜ!」 もちろん、マルガレーテも誘って。 そんな提案に、賛同の声が次々と上がる。 皆で一緒に、楽しい一時を過ごせたら。 「よし、それじゃあ一番手行かせてもらうぜっ!」 青年の声に応えるように、戦いの終わった広場に……優しげな音色が、響き渡った。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|