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ぬるりモルモドキ

●ヌルヌルもるー
 伊亭 出見矢(いてい でみや)は、ライターだった。物書きである。
 今まで一心不乱に、寝食を忘れてタイピングしていたパソコンの画面を消すと、大きく伸びをした。
 時計を見る。時間は午前1時5分。
 とっくに日は暮れている。暮れたどころか終電もない。
 集中から開放されて、フロアを見渡すと、ガランとしていた。一人黙々とタイピングを続けていた有様に、今しがた気がついた所だった。
 椅子から立ち上がると、静寂にギシリと椅子の軋み音が虚しく鳴る。窓の外を見ると、向かいのコンピュータ会社の明かりが眩しい。スモークガラスで良くは見えないが、私服の男女が慌ただしく動いているようだった。
 どこの業界も忙しい時はこんなものだ、と考える。溜息とも深呼吸ともつかない深い呼吸が自然に出てくる。
 心地良い疲労とも、重圧な疲労ともつかない疲れが、どっと押し寄せくるのを感じた。
 仕事のヤマを越えて、とにかく疲れている。だが達成感に満ちている。
 ライターという仕事は、易い時期であれば暇を持て余す。
 忙しい時期になると修羅場になる。
 合間の暇は結構だが、人間は生きていく為に、先立つものが必要となる。
 編集プロダクションというライター達の集まりがあるが、そういう所でさえ、副業だのバイトが不可欠という業界である。フリーライター。傭兵稼業。
 忙しい時期に入る前に、副業やバイトの方を必死で調整をして、徹夜上等で本業を仕上げるのである。
 再び伸びをする。深呼吸をする。
 
「アッー、終わった! こういう時は、野球を見るに限る!」
 スキップする程に心が躍る。実際にスキップで部屋を出て、社内仮眠室へと向かった。
 今日のナイターは録画していたはずだった。野球は大好物なのだ。ゆっくり見よう。
「邪悪ロリと共に!」
<<おつかれさま☆ ……なーんていうとおもったか☆>>
 嗚呼、ブレインラヴァーも絶好調だ。とりあえず脳内でグーパンを食らわす。
<<ぐはー☆>>
 薄暗く、非常口の緑色の光が廊下を照らす。
 するとここに、西瓜大の何かが落ちていた。
 
『ぬるぬるモルー』
 
「なん……だと」

 ブレインラヴァーに割り込むように、間抜けな声が頭に響く。得体のしれない存在に、首の裏が冷たくぞわりとする。
 確信こそ持てないが、その声は目の前の物体が発したように感じられた。
 出見矢は急いで電気をつけた。蛍光灯の光が廊下を照らす。謎の生き物が目の当たりになる。
 粘液を全身から垂れ流していて、ナメクジが這って来たかのように、光沢を帯びた道筋ができている。
『しゃわー浴びたいもるー』
 不細工な青白いスライム状の生き物がいた。どこかハムスターのような形をしていた。見れば3匹。床に、壁に、天井に平べったくしている。
 出見矢は、ブレインラヴァーに割り込まれた事に強い怒りを覚えた。不愉快の極みに達した。
「ブレインラヴァーを何処へやったッッッッッッッッ!!」
『知らないモルー』
「ならば塵滅ぶべし、粛々とッッ! 嗚呼、至極冷静な狂気が満ちて、理性がイクリプス! 勇者の屍と葬送(フューネラルセレモニー)の他には何もない。一切合切!」
『ぬるモルーーー!?』


●想像した人物とは何も関係ありません
「モルストラップとか、モルぐるみってもってる? もってないなら良いよ。大した話じゃないから」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達に、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は端的に話をした。
「ぬるぬるしてる不細工ハムスターみたいなアザーバイド。多分触るとひんやりしてる。ちょっとぶさいくかも。ぬるぬるの下はぷにぷに。Dホールは近くにある。ぶさいく。全部で三匹」
 大事なことなので、ぶさいくを連呼したのか、他に何か特徴は無いのか判断はできない。
 しかし、大して重要な事ではないと感じた。
「ここからが大事。ある出版社のビルの4階の廊下。時間は深夜。ビルの入り口には守衛がいて、セキュリティもしっかりしてるから警備会社の人が来ると思う」
 一つ目の障害だ。
「それから、夜遅くまで残業していた一般人が居て、ばったりアザーバイドとあっちゃう予定。何だか知らないけどアザーバイドに凄く怒ってる。みんなが到着するのは、丁度ここ。なだめるか、多少強硬に排除していいとおもう。多分早々死なない。一般人にしてはしぶとい」
 二つ目の障害だった。
 が、既に秘匿できていない状況なら、多少手荒な真似も問題ではないという話なので、これも検討次第ではどうにかなると考えた。
「弱そうに見えるアザーバイドだけど、アザーバイドはアザーバイド。一般人が不味いことになるとおもう」
 イヴががんばって作った資料を出す。そこにはべとべとしてそうな水色のモルが描かれていた。
 そしてイヴは最後に付け加える。いつもの表情に乏しい顔で――

「愛でて良し、食べて良し」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:Celloskii  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年06月28日(木)00:01
Celloskiiです。
得体のしれない恐怖のアザーバイドと、恐怖の一般人戦をお送りいたします。
想像した人物とは何も関係ありません。
繰り返しますが、想像した人物とは何も関係ありません。

■成功条件
・アザーバイドの撃破or送還
・一般人の保護

■エネミーデータ
伊亭 出見矢
 疲れてます。
 邪悪ロリが好きです。野球が好きです。
 ネタ補正で多少は頑丈ですが、スキルとか使ったり
 アザーバイドの攻撃一発で逝きます。到着時点ではアザーバイドの近くにいます。
 無理矢理避難させても、怒り心頭でアザーバイドを殴りに行こうとします。


ぬるりモルモドキ×3
 弱そうに見えますが、難易度相応の強さです。
 コミュニケーションは一応とれます。テレパス系有利。
 以下、スキル。

 渚のぬるヒロイン:神複 ショック ダメージ小
 歌を聞きたいぬるモルか?:神全 ショック ダメージ中
 EX:変な餌を与えないで下さい:ショック 単 !名声が多い人程大ダメージ!


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
マリル・フロート(BNE001309)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ホーリーメイガス
月杜・とら(BNE002285)
ソードミラージュ
ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)
ナイトクリーク
七院 凍(BNE003030)
クリミナルスタア
★MVP
ガッツリ・モウケール(BNE003224)
マグメイガス
蓮見 渚(BNE003890)
ソードミラージュ
鋼・輪(BNE003899)

●もるっておいしいのよ
 深夜0時を過ぎた夜の町。
 ある出版社の門前に8人は到着していた。
 近くには守衛室があり、窓から漏れている光で、人工の日溜まりができている。
「早速、行ってくるお♪」
「お手伝いしてきます」
 『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)と『おっ♪おっ♪お~♪』ガッツリ・モウケール(BNE003224)は、壁際に隠れた仲間たちに告げてひょこひょこと守衛室に向かった。
 ガッツリの使命は、守衛やセキュリティを倒す事。
 ドアを静かに開け、一呼吸ついて守衛室に忍び込む。
 むわりと蒸し暑い。扇風機が軋んだ音を立てて換気をしていた。
 こそこそとしていると、椅子に座った守衛がこちらを向いて、ギョっと驚いた様な顔をした。
 見つかった。
「働く男の人って素敵☆ でもそんなに頑張らなくてもいいよぉ♪」
 すかさず、とらはキュピルン☆とマイナスイオンを振りまく。
 ガッツリがカッと魔眼を施す。
「今日の仕事はもう終わりだお♪ バイトに任せて帰るお♪」
 守衛すこしだけふらふらすると、背を正してキビキビと帰り支度を始めた。
 次に電子の妖精でもって監視カメラを切っていく。
 ふと、守衛の勤怠が書かれたホワイトボードが目に留まった。幸い今夜は一人らしい。
 守衛は完了。セキュリティの一部もこれで無効。
 とらとガッツリはハイタッチをした。

 梅雨だというのに、唇が乾く。
 『最弱者』七院 凍(BNE003030)唇を舐めながら様子を伺っていた。
 そういえば、ボク以外女子という構成だ、と考える。
 三次元の女はメイドさん以外興味は無いと振り払う。
 注視していると、とらとガッツリが守衛室から出てきた。
「守衛さんもセキュリティも天国状態だお♪」
 凍の脳裏に、守衛と擬人化パソコンが、視線を右斜め上に運んで涎を垂らしている図が浮かんだ。
 思わずニヤけると、ロリ式神のシノが怪訝そうな顔をした。
「ふわー、色々なスキルが使えるんですね」
 『純情可憐フルメタルエンジェル』鋼・輪(BNE003899)が感嘆した。
 この場は、輪にとって初めての仕事だった。どきどきする反面、絶大な安心感が胸裏を占める。
 後は――
「うへへ♪ ぶさかわちゃん、楽しみだなぁ~」
 愛でて良し食べて良し。比重は前者。
「行こ」
 『シュレディンガーの羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)の声に全員が振り向いた。
 ルカルカは門を乗り越える途中だった。
 守衛やセキュリティの一部が無くなったが、急ぐ必要がある。一同はルカルカに続いた。
 詩的な言葉を紡ぎながら、ルカルカもイヴの言葉を考えていた。愛でてよし、食べてよし。

 ――もるっておいしいのよ。

 侵入して、階段を行く。
 ガッツリはセキュリティを抑える為に別行動をとった。
 エレベーターより階段の方が速い。またエレベーターは遠隔地からの監視がある。
「正義は必ずかぁつ!!」
 『三高平高等部の爆弾娘』蓮見 渚(BNE003890)は階段を行きながら気合を入れた。
 渚もまた、今回が初めての仕事だった。猫じゃらし持った右手で強く拳を握る。猫じゃらしが光って唸る。
 猫じゃらしは、モルモドキと戦うために調達した秘密兵器だった。
 愛でて良し食べて良し。比重は圧倒的に前者に。
「そ、そうだな、戦いはこれからだぜ。そして可愛いは正義!」
 渚の声に『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)が応答する。
 今回のアザーバイドは「モル」の字を冠している。俺様が出向かない訳にはいかない。と強く考える。
 走りながらものすごくそわそわする。考える程に強くなるそわそわ――静まれ、静まれ。

 『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)も目は決意で燃えていた。
 みかんの皮を握る手が轟き叫ぶ。
 一瞥した一同の頭に「?」マークが浮かんで消える。
 階段を駆けている為、ピッピッとみかんの汁が散る。凍の目に汁が入る。痛い。

「ならば塵滅ぶべし、粛々とッッ! 嗚呼、至極冷静な狂気が満ちて、理性がイクリプス!」

 ここに、バリトンが響き渡った。


●食べちゃらめぇ
 おそらく伊亭 出見矢の声だろう。と、足を速める。
 階段を登り切って、蛍光灯の光が射す側へ走ると、くたびれた様子の人物が目の当たりになった。
「勇者の屍と葬送(フューネラルセレモニー)の他には何もない。一切合切!」
 バンザイのように両腕を広げながら吠えている。
 目はギョロリと見開かれ、虹彩は小さく、頬肉を限界まで釣り上げた笑顔が張り付いている。
 近くには『ぬるりモルモドキ』。何ともぶっさいくだった。
 出見矢がモルモドキに襲いかかった。ルカルカが割って入る。
「なんで怒ってるのか理解できないけど――」
「へヴしっ!?」
 背中にズシリと出見矢の体重を感じた。
「何奴ッッ!?」
 横目で出見矢を見る。鼻をおさえている。
 ぬるりモルモドキの攻撃から、出見矢を庇ったつもりだったが、ぶつかった形になった。
「デミグラスソース痛そう」
「……くッ! 私は伊亭 出見矢だぞ!」
 だからなんだというのか。
 出見矢は距離をとった。乱入者達に狼狽している様子だった。
「モルをいじめるなですぅ!」
 マリルが飛び出した。全力で庇う。ルカルカと向かい合う形になる。
『あたしがねずみ代表として君たちにすっごい戦いを見せてやるですぅ』
『すっごいぬるモルか?』
 モルモドキの方も狼狽している様子だった。
 立ち塞がるマリルを見て、ルカルカはふと思う。
「もるもどきとまりるはなんだかそっくりね。残念なところとかそういうの」
「残念じゃないですぅ!」
「もる、おいしそうなのよ」
「食べちゃらめぇ」

 対立――であった。
 食べたい者と愛でたい者の仁義なき。
『ちょっといっぱいきたぬるモルー』
『どうするぬるモルか?』
『ボクは逃げるぬるモル』
 壁にいたモルモドキは、すささささと驚きの速さで離れ始める。マリルとルカルカが「あ!?」と言う。立ち塞がるような形で、他のリベリスタと鉢合わせる。木蓮にダイブする。
 ぽふん。
『ぬるモル?』
「モ、モルがぬるぬるしてるなら……別段不快感はない」
 震える声で木蓮は言った。モルモドキを、嗚呼、ガバッと抱きしめる。
「抱いてだって眠れるぞ!」
 渾身の断言だった。心の底から。ビルに響き渡っただろうモルへの愛。尋常無き愛。
 足をぱたぱたよじよじする姿もまた愛らしいと、木蓮の口から自然にあったかい溜息が出た。

 一匹は木蓮の魔の手に堕ちた。
 渚と輪は、マリルとルカルカの横を通り、出見矢対応に取り掛かる。
 モルモドキから出見矢をひっぺがす。
「次から次へと……、おのれ、塵――」
 言葉を言い切る前に、渚が出見矢を羽交い絞めにした。
「おお、なんと静粛なロリ胸!」
「静粛なロリむね……って、それって胸ぺったんこって言いたい訳!?」
 出見矢は頷く。
「気にしてる事言うなー!!」
 愛に続いてビルに響き渡っただろう嘆き。
「邪悪ロリなら、なお完璧だったよ。嗚呼、残念ッ! 至極!」
 渚は弱点を突かれた。出見矢は羽交い絞めを抜けて見せる。なんという一般人。
「何をそんなに怒ってるんですかぁ~?」
 ここに輪が、いたいけな瞳で出見矢を見つめる。
 両手をぎゅっと胸の前で組んで、見上げる。
「惜しい! 残酷YA☆MIYyyyyyチョップッッ!」
 ぺちん
「痛っ、な、何を!?」
 出見矢チョップが飛んだ。頭頂部。でも一般人だからあまり痛くない。
「邪悪ロリが一番だが、嗚呼、ロリもイヂめたくなるよね?」
 輪はおどろいた。「イヂめたくなるよね?」と言われても。
 "せくしー"も"ロリロリ"も効かない、これは手強い。

 出見矢はロリではなく邪悪ロリを好む。苛めて楽しむというサディストだった。チョップが飛ぶということは、脈ありと輪はあきらめない。

「あら、こんな小動物に構っている暇があるのかしら? 時間は有限なのよ?」
 とらが出見矢対策に出た。邪悪ロリになるっ☆という決意で一歩出る。
「自分がすべきことの優先順位を間違えるものではないわ。貴方は今すぐ休息を取って、一時も早く作業を再開すべきよ」
 出見矢の動きが止まる。
 成功か?

「――ったな」

 凍は地を這うようなクククという声を聞いた。
 二次元を愛する凍にとって、脳内嫁は紳士の愉しみだという気持ちはよく分かる。
 だがこれは――

「やったなぁぁぁぁあああああ!!!!」

 色々おかしいから。ボクがツッコミ役になる事も、と凍は考える。
 脳内嫁が嗚呼、欲しいとつくづく思う。シノの溜息が聞こえた。
「いじめたくなるなぁ、邪悪ロリ! 後は獣達から返してもらうだけだ。粛々と!」
 出見矢はくくりと頬肉を釣り上げると――
「一秒で死ねッッ!」
 ――獣のように躍りかかった。


●闇は云った「光あれ」
「邪ッッ!」
 出見矢の蹴りが振り下ろされた。
 袈裟切りのように、上から下へと運ぶ蹴りは、残影を伴って風を切る。闇を裂く。壁を割る。
「こんな一般人がいるのか!?」
 8人のリベリスタも、残りは2人となっていた。死屍累々。倒れている者、壁にもたれかかって座る者。
「嗚呼、共にあれかし、ここにあれかし脳内嫁よ。ブレインラヴァー!」
 発声と同時に、空間が揺れて、出見矢の横に薄い影が立つ。
<<いっくよー☆>>
 三白眼、四白眼とも言える鋭い目つき。甲高い声。ちっちゃい身長。邪悪ロリが姿を現した。
「帰ってきてる!?」
 闇の中から現れた邪悪ロリが疾風のように駆ける。手刀が腹部を貫く。
「嗚呼、邪悪ロリに、光あれ!」
 周囲は光に包まれた。

 ――という夢を観ているのさ。

「もう大丈夫だお」
 颯爽と現れたガッツリは、出見矢の目前に掌をひらひらさせた。
 凍は一般人の執念を見た。ような気がした。
 一層、いつもより深く深く邪悪ロリと戯れる催眠。出見矢の視線は虚ろで、むにゃむにゃニヤニヤしている。
 この魔眼は、野球中継の合間のCMで使う予定だったが、合流する時には大分キていたので使うことにした。
 試しに出見矢のほっぺを左右からむにっと引っ張る。
「光あれッッ!」
「うわ!? びっくりしたお!?」
「わ、わ!?」
 戦いは終わった。恐ろしい一般人だった。
 後は――

 木蓮は相変わらずモルモドキの一匹をぷにぷにしていた。
「アイツもきっと初めて見る生き物でびっくりしたんだ、驚かせてごめんな?」
『びっくりさせちゃってごめんなさいぬるモルー』
 モルモドキ達に出見矢の攻撃が入る前に駆けつける事ができて良かった。
 後は――

 マリルの戦いは続く。ルカルカの戦いは続く。
『だいじょぶぬるモルか?』
『だいじょぶですぅ』
「さきっぽだけさきっぽだけでええんやぁ」
 対立――であった。
 マリルは全力で攻撃をさけ、全力でにげまわり、ハイテレパスでモルモドキに味方だと告げる。そして超必殺技のタイミングを伺う。
 ルカルカのフェイントに次ぐフェイント。通さないとするマリル。しかしルカルカは恐ろしく素早い。
 マリルが一回動く度にルカルカは二回動く。疾い。マリルは盛大にすっ転ぶ。痛い。
「いつまでもねずみがしょくもつれんさの最下位になっててはいけないのですぅ!」
「ルカちょー平和主義者だし」
「『破滅のオランジュミスト(みかんの皮)』なのですぅ!」
 ルカルカの目に入る。痛い。どやぁといった表情のマリル。
 しかしルカルカは、滑るように脇を抜けてモルモドキの一匹を抱きしめる。
 ――ガシッ!
「あ!?」
「ジュレっぽくておいしい。ぺろぺろ」
『ぬるモルー』
 かき氷のブルーハワイのような味がした。
 アイスに添えたらなんとも美味しいかも。と思う。
「っていうか、終わったみたいだぜ?」
 木蓮の声。

 とらとガッツリが出見矢を引きずっていた。仮眠室に向かうらしい。
 輪と渚が残りのモルモドキに駆け寄った。天井にいるので、こわくないよこわくないよと呼びかけながら引き剥がす。
『もう大丈夫ぬるモルか?』
「大丈夫だよ♪」
「待ってました、愛でタイム!」
 モルモドキは下に降ろされると、うろうろし始めた。
『びっくりしたぬるモルー』
 他の仲間を確認して、モルモドキは安心したようだった。

「にゅふふふ、また勝ってしまったのですぅ」


●ぬるりモルモドキ
 愛でタイム。
 ――の前に給湯室でモドキ達を洗い、オフィスへ連れて行った。
 輪のお願いで一匹だけ、少しぬるぬるは残している。
「なあ、なんでそんなに見事なぬるボディになったんだ?」
『説明するぬるモルー』
 木蓮がお弁当を広げながら尋ねると、快く教えてくれた。
 身体から分泌されていて、定期的に処理しないと身動きがとれなくなるとか。
「毛刈りみたいなものか」
 サンドイッチ、クッキー、おにぎりを展開する。
「食べると良いですぅ」
『おいしいぬるモルー』
 マリルがモルモドキにクッキーを差し出す。受け取って器用に食べる。
 この様子に木蓮の口は自然と綻んだ。

 渚は猫じゃらしを振った。
 モルモドキが飛びつく。がんばる。飛びつく。
 抱きしめて、ぺろぺろして愛でる。甘くて美味しい。
「正義と人生は素晴らしい」
『素晴らしいぬるモルか?』
「正義と人生は素晴らしいぬるモルよ」
 交代で、次に輪が愛でる。
「ぬるぬる、ぷにぷに、いやん♪」
 輪はこういうぬるぬるが大好物だった。ご飯を食べさせる。食べる姿がぶさかわいい。思わず抱きしめる。
「連れて帰っちゃだめー?」
 凍が首を横に振る。
 上目遣いで凍を見る。
 凍が黙って首を振る。これぞ三次元耐性の境地。
「……ぬるモルストラップ、って需要あるかな?」
 木蓮は新商品を閃いた。

 凍はモルモドキ達に、日本で暮らす事がどれだけ過酷な事なのかを説明した。
「よしんば見つけても研究機関に連れてかれてモルモットにされる事は容易に想像できるね」
『こわいぬるモルー』
「自分の世界に帰る事をおススメするよ」
 こうして穏便に、元の世界へ帰るという運びになると、凍は仮眠室へ向かった。
 テレビには野球。とらがせっせと出見矢の世話をしている。
「細けぇこたぁ、いいんだよっ☆ はい、カップラーメン☆」
「ああ、有難う」
 とらがカップ麺を差し出すと、出見矢はまんざらではない顔で受け取った。
 とらは、疲れている人に精一杯の真心を、と細けぇこたぁ、いいんだ。と接する。
 そしてガッツリがCMの合間に魔眼を施している。神秘の秘匿。
「肩揉むおっお♪」
「私も揉むよ☆」
「頼む」
<<明日も仕事☆>>
「闇ッッ!」
<<ぐはー☆>>
「脳内嫁の使い方……か」
 居る時はいぢめの矛先は嫁へと向かうのか。
「……脳内嫁、ボクも欲しいな」
 シノの視線を感じた。

 マリルはちょこんと座りながらモルモドキをぺたぺた撫でていた。
「敵に向かってぴゅ! ってしてやるといいですぅ」
 モルモドキ達に力説しながら、猫が嫌がる必殺のみかんの皮を配る。
 同じ色で親近感が湧いているのか。
「あれぇ? 1匹足りないですぅ?」
「一匹は先にかえったのよ」
 何処に潜んでいたのか、ルカルカが現れた。
「え? 先に帰ったですぅ?」
「あ、うんそうそう。ルカみてたもの。先にかえるっていってたわ」
「そこまでいうなら信じてやるですぅ」

 ひとしきり遊んだ後、モルモドキ達はみかんの皮をお土産に帰っていった。ブレイクゲートが施される。
「また会えたら会おうね~」
 輪の顔は満足そうだった。木蓮の顔はほくほくだった。
「しゃわー浴びたいもるー!!」
 と言いつつも渚の顔もまた、満足そうだった。


「げぷー」
「!?」

 ルカルカが不穏な一言を放った。
 閑話休題。真実は胃とヤミの中に。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
Celloskiiです。
お待たせ致しました。ぬるりモルモドキです。
お楽しみ頂けましたら幸いです。

お疲れ様でした。