● 「例えばさ、弟の方がさ、お兄ちゃん。僕のこと、心配してくれてるの。とか言ったとするじゃない」 ハンドルを握る仲島が、別に面白くもないけどさーみたいな感じで、言った。 「はー」 とか何か、芝池は、窓の外を眺めながら、一応相槌を打つ。 「そしたらさ、ふん、誰が心配なんかすっかよ。とかさ、言っちゃうわけよね」 「あーべたですね」 「でも、気付いたら、思いっきり鼻、伸びてる、みたいなね」 「あー」 とか何か、やっぱり窓の外を眺めながら芝池は頷いて、「それは、だいぶべたですね」と、続ける。 「べたなのよね。もう若干痛々しいよね。嘘ばれちゃうんだからね」 「でもそれ、弟はそういう時どうしてるんですかね。そのリアクとか」 「いやなんか。普通の顔、してたんじゃないかなあ。あーまたこの人嘘ついちゃってるわーみたいな」 「あー実は弟の方もう若干大人なんですね、切ないですよね」 「んー。そうなのよね」 「で、その手と足が取れた弟を助けるのが仕事内容なんですかね」 「っていうか、まあそうね。取られた手と足を敵から取り戻して、弟に返してあげて、送還してあげる、までが仕事内容かな。あーあと、その敵の討伐だよね」 「っていうか、思ったんですけど」 「うん」 「手とか足とか取れて、痛くないんですかね」 「痛くないんじゃないの、人形なんだし」 「えそういうもんなんですか」 「そういうもんなんじゃないの、分かんないけど、人形なんだし」 「それあれですよね。人形なんだしつっとけば、全部片付くと思ってますよね、今」 「あ、でもさ。のっけに、ほら、D・ホールくぐっちゃって、こっちの世界来た瞬間にさ、いきなり、E・ビーストに襲われて、二人はだいぶ警戒してるからさー。手とか足とか返す時にはさ、こう、出来るだけ優しく接してあげて欲しいかな」 「えー、珍しいですね、そういうこと仲島さんが言うの」 「んー弟の方が若干芝池君に似てるんだよね」 「仲島さん」 「うん何だろう芝池君」 「そこは似てなくても、言わないと駄目だと思います」 「でももう、手とか足とか渡そうとしたらさー、もうお兄ちゃんの方とかがさー、警戒心丸出しでがんがん出しゃばってきそうだからね。そこはこう頑張っていって欲しいよね」 「そうですか」 「んー」 「あと、次コンビニ出て来たら寄って貰えますか」 「んー」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:しもだ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月22日(金)23:42 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 豊かな緑に囲まれた礼拝堂の庭には、薄っすらと、靄のような白い霧が漂っていた。 オレンジ色の灯りが、礼拝堂の内部から微かに漏れ出し、地面にぼんやりとした影を作っている。 その傍らに寄り添うようにして、「それ」は、立っていた。 金色に輝く髪と、美しく整った目鼻立ち。色のついたガラスのような瞳と、無機質な白い肌。人工的な硬さを想わせる、手足。 虚ろな瞳で、ぼんやりとこちらを見つめている。人形の国からやってきたというアザーバイド。 その光景は、まるで幻想のように、『祓魔の御使い』ロズベール・エルクロワ(BNE003500)には、見えた。 けれどそれは今、確かにそこに存在し、この手でその異質で神秘的な幻想に、触れることもできる距離にある。 これも、神のおみちびきなのですか。 ロズベールは、引き寄せられるようにゆっくりと、二人の元へ、歩み寄って行く。 とかいう頃、雪白 桐(BNE000185)は、ちょっとだけ離れた所から、アザーバイドの二人に向かい、手とか振って存在をアピールしたり、していた。 でも何か、二人とも全く微動だにしないっていうか、むしろちゃんと見えてんのか、くらいの勢いで微動だにしないので、何かもーとりあえず諦めて、そしたら何か、ロズベールがふわふわーってアザーバイドの二人へ接触しに向かってくれたようだったので、きっと何か考えがあるんだろーとか思って、とりあえずそこは一旦、様子を窺う事にした。 隣を何か、『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が、そそそ、と通り過ぎて行く。 彼女は、どんな人の警戒も解いてしまいそうなふんわりとした優しい笑みを浮かべ、「こんにちは」とか何か、礼儀正しく挨拶をしていた。 で、ロズベールの方はといえば、どうやら持参していたらしい金髪人形を手に、「どうしたの? もしかして何か困りごと?」とか何か、話しかけていて、人形の国から来たというアザーバイドの警戒を解く作戦のようだった。 弟は、じーっと、その金髪人形と、シエルを見比べ、やがて、口を開いた。 「エーィット、アナタ、タチハィ?」 って言った瞬間、ちょっとその場が、シーンとなった。 え、カタコト? カタコトなの。っていうかしかも、そんな美しい外見でそんなギャグみたいにびっくりするくらいカタコトなの、そうなの。 みたいな空気が、ちょっと、一瞬、その場に流れた。 「えっと……あの」 うん、まあ。それはそれとしまして。 みたいな感じで、持ち直したらしいシエルが、弟の問いに答えた。 「……私は、シエルと申します。突然で驚かれたかも知れませんが、実は私達はお二人がお困りのようだとお告げを聞きやって参ったのです。私達は敵ではありません……むしろお二人のお手伝いをさせて欲しいのです」 「うんそうだよ。私達は、てきじゃないよ、貴方達のみかたよ」 と、続けて持ち直したらしいロズベールが、加勢するように、言う。 とかいう間にも、桐は、そういえばさっきから兄は一言も喋ってない、と言う事に気づき、何かそっちの方をじーと、見た。 兄は、ぼーっとロズベールの事を見ていた。 顔が無機質なので、あんまり何を考えてるのかは分からないのだけれど、何やら薄っすらと、嫌な予感はした。 そしたら暫くしてその口が微かにカタカタと動き。 「……可愛い。好き」 って聞こえた気がした。 気がしたけど、桐は聞かなかった事にした。 特に、すぐ近くに居るシエルやロズベールや、弟アザーバイドには確実に聞こえてるはずだったけれど、反応しなかった、ということは、きっと皆も流したに違いない。 と、思ったら、ちょっと遅れてロズベールが、え、みたいに兄アザーバイドを見た。 兄は、すかさずそっ、と目を逸らした。 無表情なのが、とっても、臭い。 もしかしてあの人形アザーバイドって……。 とかちょっと不穏な事を考えそうになった矢先、ちょうど後ろから。 「あいつ、やべーな」 という声が聞こえた。 振り返るとそこには、『ゴロツキパペット』錦衛門 と ロブスター(BNE003801)の姿があり、思わず桐は「ですよね」と、まあ表情こそまったく無なのだけれど、言った。 誰に。 もちろん、真ん中で人形を操ってる小柄な少女に。 でも少女はぼーっとしている。 凄いぼーっとしている。 無反応ってこの事なんですね、っていうくらい、無反応だ。 なのでそこは方向を変えて、「ですよね」と、人形の方に言ってみた。 「おう」 と、ブタが答えた。 「悪い奴の匂いっていうのではないが……」 と、兎が更に、言った。 「だな。あれじゃねえか、あいつはこっちの世界で言うところのホ……」 ってブタが更に言いかけた所で、誰かがずずい、と前に出て来た。ブタが、ん? みたいに見た。兎も見た。少女は見てないけど、桐は見た。 「おい」とか何か、小柄な少女がアザーバイド兄弟に向かい言ってる、とか思ったら、『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)だった。 でも全然二人のリアクションが無だったので、多分、ちょっとムッとした。 「身の危険を冒して助けてやろうというのに、妾を無視するとは、気に食わない」 それをわりと、博士が研究対象を見るみたいな冷静な分析、みたいに言って、つかつか、と近づいていくと、「しかしそのおぬしの手足が、既に粉々に砕け散っている可能性は覚悟しておいた方がいいだろう」 とか何か、言った。 ちょっとその場が、シーンとした。 でも、全然気にしてませーんみたいにシェリーは、「時におぬし」と、兄を見やる。「一つ聞きたい。妾達が来なかったらおぬしは一人でも、弟の為に敵に向かっていったか」 ってその感じはまるで、咳は良く出るのか、熱はあるのか、と問診するみたいでもあった。 「それは、もちろん」 兄は、言う。鼻は伸びない。 「オニィーチャン……」 弟が、羨望の眼差しで兄を見る。 「よし、合格だ。妾達が絶対に取り戻してきてやろう。そこで見ていろ」 で、シェリーは行こうとして、「ああ、そういえばもう一つ質問があった」と、足を止めた。 「ちなみにおぬしは、ロズベールが気になっているか」 「き。な、き、な、何言って、き、気になってないでしょう、何言ってんですか、気になってな」 ズーーーーン。 「オ、オニィーチャン……」 って鼻の伸びた兄を、弟は、若干軽蔑したような眼差しで見つめる。 そしたらそこで、 「それにしても嘘をつくと鼻が伸びるなんて、まるでおとぎ話みたい。面白いわね。ふふ」 とか何か、リリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)が、全く緊張感のない感じで言って、でもこれはそんな可愛らしい話では、一切ない気がした。 だいたい、嘘をついている内容が、良く良く考えてみると、意外とヤバい。 って何か、わりと変な空気になってる所で、 「そういえば。サークルさんとケイさん……って、どこかで聞いた名前な気もするんですけど、思い出せません。気のせいなんでしょうか」 とか、隣にやって来た『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)が呟いたので、 「どうでしょう。もしかしたら他に、サンさんとか、クスさんとかも居るかもしれないですよねー」とか、若干視線をずらしながら、桐は呟いた。 「え」 「なんてね」 で、無表情に佳恋の顔を見た。 いや、そんなこっち見られても、みたいな表情で佳恋が見つめ返して来た。 何かその場がちょっと、シーンとした。 「おい!」 と、そこで、ずっと礼拝堂内部の様子を窺ってくれていたらしい『デンジャラスラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)が、仲間を呼んだ。 「おい見てみろよ! くっそー、人の手足で遊んでんぞ、あいつら! 同じ兎として恥ずかしいぞ、オレは!」 バタバタ、と慌ただしく手を振りながら、窓を指さす。 「じゃあ、ここで待ってて。私たちがかならず取り返してくるから」 って、ロズベール、というか、金髪人形が、アザーバイドに言った。 「私はお二人をお助けしたいです。だからきっと、ここで待っていて下さいまし」 相手へと言葉を染み込ませるかのようにゆっくりと、シエルが頷く。 「人形の手足を隠すなんて、とんだ悪戯兎ね。悪い子にはお仕置きをしなくちゃね?」 礼拝堂に向かい駆け出しながら、リリィが酷薄に微笑む。 「危険な相手、とまではいかないようですが、気を抜かずにいきましょう」 武器をダウンロードしながら、佳恋も走り出した。 ● バーン! と、礼拝堂のドアが開く。 「手足をもぎ取り隠すか。随分と性の悪い遊びをするではないか。人形を生業とする我らとしても気分の良いものではないな。この世やりっぱなしでは済まないという事を教えてやろう」 とか、わりと格好良い台詞だけれど、腹話術人形の兎が、喋っていた。 あと、人形が生業っていう言葉の意味が、最早あんまり分からなかった。でももーそんなん全然気にしてませーん、生業って言ったら生業なんですーって勢いで、隣のブタの人形さんが、「いたずら兎どもよー。あそぼうぜェェー!」ってすっかりやる気で、もー口から弾丸を吐き出し始めた。 回復手のシエルを庇うように前に立ち、とにかく近づくなよ、絶対近づくなよ! みたいに、ダダダダダダ! え、そんなん出来るんですか、って隣を通り抜けて行く桐は、一応ちょっとだけ何か見て、すぐに向き直り、向かって左側のバニへと走り込んで行く。 「ありがとうございます、錦衛門様、ロブスター様。確かに麻痺や混乱は大変……皆様困っちゃうから頑張らせて頂きます……」 自らの前に立つ少女にそっとお礼を告げ、シエルがマナコントロールを発動した。 「魔力統制……起動」 その間にもロズベールは、先程までバニちゃん達が取り出し遊んでいたという、人形達の手足が何処かに落ちてやしないかと礼拝堂内をざっと見渡し。 「また隠したんでしょうか。ないですね……」 とかいう間にも、リミットオフ状態で敵へと突き進む桐は、 「お客さんにおいたする子にはお仕置きですよ?」 ズウン! と、ダウンロードした「まんぼう君」を手にそのまま直進! するかと思いきや、すかさずバニが、つぶらな赤い瞳で見つめてくるので、「まんぼう君」を地面に突き刺し、それを軸にガッと方向転換。回り込むように走り込み、背後を取った。 きゅいッとか、振り向いて来たその顔に、わりと全身のエネルギーとか留めたグーパンチを、お見舞い。 「きゅいいいいい!」 「ま、顔が潰れちゃったら、目とか見なくて済みますしね」 と、その頃、佳恋もまた、隣の「右側のバニちゃん」に、全身に破壊的な闘気を漲らせ突進していた。 「ウサギは嫌いではありませんが、こんなエリューションは好きにはなれませんね……!」 メガクラッシュを発動し、全身のエネルギーの球を溜めた長剣「白鳥乃羽々」で、その腕をガッ! けたたましい雄叫びが礼拝堂内にこだまし、けれどすぐにキッ! と闘志を燃やしたバニが、体に巻き付けた「バミちゃん」を放つ。 佳恋は後退し、そこへ今度は、リリィがハイスピード状態で走り込んで来た。 「ふふっ、私についてこれるかしら。さあ……責め苦の四重奏、その身に受けなさいっ!」 黒いローブの裾をはためかせ、ツインテールの髪をなびかせながら、魔曲・四重奏をぶっ放す。 立て続けに飛び出る四色の魔光が、バミの体を撃ち抜き、撃ち抜き、やがては砕いて、残った一発が、後ろのバニの体へと激しく、激突! した瞬間、また、ぎゃああ! と礼拝堂に響く、バニの悲鳴。 「くそう。兎の悲鳴なんてよ。さすがにいい気分じゃねえな」 後方から、飛び出て来たヘキサが、表情を歪めながら、小さく呟く。 「同じウサギ同士で、何で争わなきゃならねーんだ……! 運命って残酷だぜちくしょう!」 って、悔しさの勢いで出しました! みたいに、斬風脚を発動し、桐のパンチに喘ぐバニちゃんから、え、俺どうすればいいの、みたいにそわそわゆたゆた離れ出たバミちゃんに、鋭いかまいたちをバシーッ! 立て続けに後方から、 「やれやれ、崩界を防ぐというのも難儀だな」 シェリーが、マナブースト状態で放ったチェインライトニングの雷が、激しく暴れ回る。 体の方々を雷に打たれ、息も絶え絶えのバミちゃんへと、まるで救済の手のように差し伸べられる、トドメの攻撃。 「聖なる光よ……人の理外れし者達に裁きを……」 シエルの放った神気閃光の聖なる光が、そのうねうねとした体躯を包みこみ、焼き払った。 一方こちらでは、佳恋の攻撃で腕を失くしたバニちゃんへ、十字架を模した長柄の鉄槌「conviction」を手に、ロズベールがトドメの一撃を放っている所だった。 「礼拝堂でぬすみなど言語道断。主のまえで悔い改めてください」 振り下ろされる一撃に宿った、暗黒の魔力が、バニの体をその精神ごと打ち砕き、消滅させる。 更に更にこちらでは、残った一体のバニへと、錦衛門とロブスターと、真ん中の少女、が、突進している。 っていうか、完全に桐と応戦中なので闇討なのだけれど、「いよっしゃああようやく暴れられるぜェェエ!」「煩いぞロブ」とか何かやり取りしながらも、バウンティショットでその体を背後から、ババババババ! っと。 すっかりハチの巣。 になっている頃には、桐はもちろんちゃんと移動していたのだけれど、 「気付かなかったら、わりと一緒にハチの巣でしたか、もしかして」 とか、相変わらずの無表情で、呟いていた。 ● 「でもさー。どういう状況で手足なんか盗まれんだよー」 と、ブタの人形、もとい、ロブスターが人形弟に向かい言っていた。 「ダッテワリトコレ、カンタン二ハズレチャウカラ」 「まあとにかく、手足はきちんと見つけますから、安心してお待ち下さいましね」 シエルがふわふわと微笑み言って、「其れと……」と、そこで一旦後ろを振り返った。 そして前へと向き直ると、そそそ、と何かを差し出した。 「甘い物を食べると幸せな気持ちになれる人も多いですし……良かったらこのかぼちゃのタルトを如何ですか?」 「カボーチャノゥ、tart?」 って弟が、別にいいのだけれど、何かやたら「タルト」だけ発音良く言ったりした感じが何かアレで、シエルはちょっと何か、照れた。 どうして自分が照れなければならないのか全く分からないのだけれど、無言でにこにことしながらも、内心で、密かに、照れた。 とかいう間にも、 「だからさー、この辺で遊んでたからー」 とか何か、礼拝堂内部へ突入する前に見た光景をヘキサが仲間達に伝え、 「途中するまでそんなに時間はなかったからな。このすぐ傍だろうな」 と、シェリーが分析。 「では、この机の下あたりなんかが怪しいですね」 と、佳恋が、装飾の美しい机の下を覗きこみ、 「あった! よかった、無事ですよ」と、アザーバイド達の方を振り返る。 「え」 と、呟いた。 「え、何であいつまで手ェ外れてんの」 ヘキサが、茫然と、呟く。 ●その少し前のくだり。 「なるほど。人形の国というのは、とても素晴らしそうですね」 と、兄の話を聞いたロズベールは、金髪人形で対応するのも忘れるくらい、すっかりその世界の雰囲気に魅了されていた。 「で、でしょ? でしょ?」 「はい。そんな事聞いたらロズも少しそこに行ってみたく……」 と、そこまで凄い無意識に呟き、そこで、はっとしたように、華奢な首を振った。 「……ううん、だめだ。ロズはかみのいをかる者。この世界で、審判の日まで主の敵をさばき続けなくちゃ」 「いやいや、でも本当全然、すっごい良い所だし。絶対君も気に入ると思うし。何だったらいろいろ、お、お世話とかしちゃうし」 「ほんとうですか?」 「も、もちろん! それはもう、手とり足とり……」 と、そこへ現れる、無表情な美少年、むしろ若干美少女、雪白桐。 「どうしました?」 ズーン、と兄を冷たい目で、見下ろす。 「はい、人形の国の話をきいてました」 こくん、と伏せ目がちにロズベールが説明をした。 「へーそうですかー」 って無ーな感じで頷いた桐は、徐に兄の鼻に触った。そしてロズベールに向き直り、一言。「危険です」 「え」 「このアザーバイドは、いろんな意味で貴方の事を狙ってい」 と。そこで。 「わー! 腕が取れたー!」とか、すっぽーんと腕を抜いた兄が、突然、叫んだ。 「いや、今自分で取りましたよね」 「わー! 腕が取れたんだー、何か勝手にー! たいへんだー」 「いやもう全然鼻伸びてますし」 「本当なんだよー。腕が取れたよー。だからロズベール君、もっと近くに、近くに来て、これを、これをはめてはくれな」 「いやもう絶対近づいたら駄目ですよ、エルクロワさん」 「は、はい……」 ● 「と、いうわけで。おぬしらが此処に居るといろいろ困るからな。今回の所は大人しく帰ってくれ」 手足の装着を完了させた二人を、D・ホールの前に誘導したシェリーは、言った。 「あと、手足はちゃんと固定して貰った方がいいぞ」 兎の錦がゆるゆる、と手を振りながらいい、 「今度は下手うつなヨー」 と、ブタのロブもゆるゆると手を振る。 「どうかお元気で」 やがて、穴の中に吸い込まれていく二人の背中に手を振りながら、シエルが言った。 「まあ良かったら今度は普通に遊びに来てね」 軽く手を振ったリリィが、二人が消えるのを待ち、ブレイクゲートを発動した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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