● 「ごめんね、連れて行ってあげれないの」 ――ごめんね、と頭を撫でつける葉月ちゃんの掌が、とっても暖かかった。 雨が降っている、そういう時は葉月ちゃんがおうちの中に入れてくれる。 寒いでしょ、濡れちゃうでしょ、と頭を撫でてくれる葉月ちゃん。 きょうはあめがふっているよ。 きのうもあめだった。 はづきちゃん、はづきちゃん。 ねえ、はづきちゃん? ● 「置いて行かれた子犬が一匹」 その想いは味では言い表せられないほどに濃く、憂うもの――『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)は困った様に笑った。 「昔、その昔結構お金持ちの家族が住んでたんだけど、古い洋館があるのよね」 モニターに映し出された洋館の庭先、小さな犬小屋が建てられている。 だが犬は何処にも見当たらない。 「子犬は?いるんだよな?」 「ああ、子犬は名前はマーガ……ん?マーガリン?違うわ、まあ、まーちゃん」 資料を参照しろ!とずっこけたリベリスタに愛想笑いを浮かべながらも世恋は説明を続ける。 居る筈で居ない子犬――まーちゃんは今、其の体を何倍にも大きくし、配下に野生の動物を連れ添った状態で飼い主を待っている。 「飼い主は山吹葉月。親が事業を失敗しやむおえなく引っ越した一般人」 数年前に引っ越したという少女、葉月は飼い犬を連れていく余裕がなかった。 別れの日は雨。傘を傾けてまーちゃん、まーちゃんと笑いながら頭を撫でた彼女。 「『ごめんね、連れて行ってあげれないの』――なんて言われたって判らないわよね」 幼い子犬はただ、撫でられる事を喜び尻尾を振っていた。 雨の日になると庭先で人を待つまーちゃん。飼い主が好きなだけならよかった。 ――寂しいと鳴いているだけなら、まだ、よかった。 「誰かが手違いでその洋館に雨の日、近づいたらどうなるかしら」 E・ビーストと化した大きなまーちゃんと配下の動物と出会ったしまったら。 間違いなく終わりは見える。 「きっと寂しくて、悲しくて、こうなってしまったのね」 寂しげに俯いたフォーチュナはリベリスタ達に向き直り、頭を下げた。 「さあ、目を開けて、幸せの夢の続きを」 外では雨が降り続いている。 「そう言えば、雨って空が泣いているよう」 なんて――フォーチュナが笑った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月22日(金)00:07 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● しとしとと雨が降る。頬を撫でる湿気た空気を振り払う様に彼女は前を向く。 『骸』黄桜 魅零(BNE003845)はその目を伏せて祈る様に呟いた。 「これから嘘をつきます」 指先で辿るは運命。其れが指し示す先が破滅しかないと、そう判っていても。 残された安穏の為に、彼女は嘘をつく――嗚呼、どうか、愁いが晴れます様に、と。 「愁い……置いて行かれた、まあ、捨てられた子犬、か」 リオン・リーベン(BNE003779)は祈る魅零の様子をちらり、と伺い考える。 雨にぬれる姿は哀愁を誘う。救ってやりたくもある。ただ、それがエリューションでなければの話だ。 「現実はこれだ。仕方あるまい」 救ってやろう、そうは思うけれど、どうしようもない。哀しくもあるが、その気持ちは胸に封じる。 「捨てられた、ペットと別れるというのはよくあることですよね」 ふわ、と小さく欠伸を漏らした『働きたくない』日暮 小路(BNE003778)は跳ね上がった髪を撫でつけて、雨にぬれるジャージの袖を捲くる。 「ペットも二―トも世話をしてもらわないと生きられない」 「働けニート」 呆れた顔の神様――リオンの言葉をちら見して、小さく笑い小路は言う。 「ま、だから責任はしっかり果たせってことですよ」 例え生存していてもこのような悲劇が起きる。飼えないペットは保健所か里親へ。飼えない二―トはスポンサーへ。 「つまり、何が言いたいかっていうと誰かあたしを養え」「誰もお前を養わない」 彼女の言葉に被る様に言ったリオン。 その様子にくすりと笑ったものの何処か浮かない表情をした『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)は雨粒を落とす空を見上げる。 「犬相手、か。嫌だなあ」 元来、動物好きである彼の性分的に許せない相手なのであった。 人間相手に命の奪い合いしている方が彼にとってはよっぽど気が楽であるが、仕事として受け取った以上、遂行するしかない。 懐中電灯を点灯させ腰に結わえた彼は一度目を伏せる。 ――よし、行こう。 「犬、ずっと飼い主を待ち続けた子犬、ですか」 ふむ、と『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)は首を傾げる。 その声に『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)が困ったように笑った。 「本当に、理不尽だな。置いていった方も悪いんだろうけど」 待ち続ける、その行為を犬に強いる事にした神様は理不尽だ。ただ犬は寂しかったのだろう。 其れゆえに待ち続けていた。 彼女の胸の内に抱いた思い。ぎゅっと愛用の銃を握りしめて彼女はぬかるんだ土を踏みしめる。 「……『あの子』を思い出します」 ミリィの記憶の片隅、飼い主に会いに行くと走り出した『あの子』の事が頭によぎる。その途中、事故に遭ってエリューションと化した『あの子』。 飼い犬は一途にただ、飼い主を愛する。その想いは強い。想いの衝動が突き動かすその先は―― 頭に浮かんだ映像を振り払い彼女は前を見据える。 それは彼女の何時もの言葉、彼女の仕事の始まり。 「任務開始。さぁ、戦場を奏でましょう」 彼女の髪が靡く。金糸はふわりとその戦場を彩った。 ● 伊佐・睦(BNE003107)はサディストだ。勿論彼女にもその自覚はある。 「サディズムってね、非道じゃないんだよね」 まあ、最近は一人歩きしてるかも、と小さく笑うものの彼女のサディズムは優しさも勿論持ち合わせている。 「何が言いたいのかというと、ペットの管理は最期までしなきゃ」 イライラとする様に呟いた彼女の目の前に居るのは雨に打たれる巨大な犬。 最後まで面倒を見られないなら最期を与えて遣りなさいよ、と眼前の犬を見つめた。 ただ、その隣で黙って立っていた『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)の表情は暗い。 黙りこくったまま、仲間たちの様子をじっと見ていた。 「手筈通りに頼むぞ、トムソン、日暮」 背後からその戦闘力を共有し、攻撃力を大幅に向上させたリオンが声をかける。 振り返ったミリィは頷き微笑み、小路が仕方ないなあと頭を掻く。 「接続開始。始める、かかれ!」 じっと見つめていたアンジェリカの瞳に眩い光が映りこむ。ミリィが放った閃光弾だ。動物たちがきゅ、と鳴いて首を振っている。 タクティクスアイで視野を確保していた小路がリオンのいう手筈通りの動きをだす。 自身の周囲に生みだした不可視の刃は動物たちを切り裂いていく。 その動作が終わったのを見届けて魅零はぼんやりと一度空を見上げた後、ぎゅっと太刀を握りしめた。 「…っとに、嫌な雨だよねェ」 ハイバランサーで確保した足場、太刀をふるい暗闇で動物を包み込む。 ――ごめんなさい。 胸に浮かんだ言葉は喉元までこみ上げたが、封じ込んだ。 周囲を見回した義衛郎は鮪斬と柳刃を握りしめて犬、まーちゃんの目の前へと滑り込む。 待機行動をとっている抑えの二人の前に先んじて組みついたのだ。 「逃がしはせん」 にんまりと笑い、犬の前に立った彼だが、彼の腕に犬が牙を光らせて噛みつく。 「…っ!」 その手を其のまま引き抜いてしかめ面の侭刀を振るい残像を操る。 イライラとしたサディストは鞭を片手に目の前の動物を見つめる。 「あぁもうっ! 胸クソ悪い! 想像と共感はコミュニケーションの第一歩よ!」 睦は延々と飼い主であった少女――葉月への罵倒を繰り出しながら放つ糸で対象を締め付ける。 「悪いのは私たちで良い。まーちゃんは何も悪くない」 極限までの集中により、彼女の目の前の風景はまさにパラパラ漫画の様にコマ送りにされる。 回り込んで犬の目の前に立った彼女は魔銃バーニーを構えたまま犬を見据えた。 ブラックコードを振るい犬の動きを制したアンジェリカの表情は浮かない。動きを制された犬はやだやだと首を振っていた。 「作戦通り問題なく進めば窮地に陥る事はない、心して向かうぞ」 仲間たちを見回したリオンは仲間たちへと最大限の防御力を与える。 彼の目が見つめているのは義衛郎と睦だ。前に立っているという理由もあるが、狙われる可能性が高い彼らを注意深く観察している。 背後に下がった義衛郎は其の身に速度を纏う。リオンの視線に気付き、一度頷いた後刀を構え直した。 「……想いは、衝動です」 ぎゅっとスローイングダガーを握りしめたミリィが放つ刃が小さなリスへとぶちあたる。 回避行動に特化はしているが、そこまで強敵ではないのだろう。リベリスタ達の範囲攻撃で弱っていたそのリスはふらふら、と覚束ない足取りで彼女の方へと走り出す。 「近づけやしませんけどね」 交通標識を握りしめた小路の放ったチェイスカッターにより、リスがその場でぱたり、と倒れる。 その姿は可愛らしいものではあるが、見つめていた魅零の胸がつきんと痛んだ。 ごめんなさい、と口に出したくなる。殺しているのは自分たちだ。可哀想だ、ごめんね、と手を休める訳にもいかない。 世界は不出来だ。不平等だ。理不尽だ。不愉快な世界。 「私は、世界の為に目の前の異端を潰すの!!」 彼女の放った暗闇が深く動物たちを包み込む。 ぎ、と鞭が撓る。だが解けやしない其れに安堵しながらも、アンジェリカの表情は段々と歪んでいく。 「エリューションである以上、どんな理由があれ倒す」 そう覚悟したのに。辛い。 ――君はただ、大好きな人を待っていた、それだけだったのに。 唇から小さく漏れ出した言葉は、彼女の本心。 「ボクには、出来なかった事」 その声を耳にしながらも、杏樹は耳を澄ませ、動物たちを狙いうつ。 彼女の決意は固い。幼い子供達が目の前で動物と戦っている。そんな時位、自身が身を挺してでも庇ってやるべきだろう。 「止まらない、止まれない」 彼女の落とした星屑は魅零の暗闇へと飲み込まれ、まるで星空の様に小さく輝く。 暗闇から現れた兎は其の身を其のままぬかるんだ地面へと埋めた。 「まだ、大丈夫だな」 見回してたリオンが前に立っていた睦へとインスタントチャージを施す。有難うと小さく笑った彼女の鞭は弱っていたリスの動きを制する。 彼女の隣を擦り抜ける様に前に走り出した義衛郎の剣は栗鼠とその近くの動物諸共刻み込み、その身を動かぬものにしてしまう。 真っ直ぐに見据えた瞳。小路の放つ真空刃が動物を切り刻む。 ミリィの閃光弾で動きを止めた動物たちへと魅零の暗黒が無慈悲にも包み込んだ。 目の前の動物たちが居なくなった。其れを確認したからだろうか、ほどけた鞭を抜けだした犬は大きく遠吠えをリベリスタ達に与える。 あ、と思ったのもつかの間、ミリィの目の前から遠ざかりそうになる犬へと睦は大声を張り上げる。 「止まりなさい! マーガレット!!」 犬の足が、止まった。 ● ざあ、と雨が降り注ぐ。 「アナタの名前、マーガレットであってる?」 資料を見せてくれないから、と新米フォーチュナの顔を浮かべながらも睦は呟く。 動きを止めたまーちゃん――マーガレットを見つめ、一歩引いた彼女は魅零がやりたいと言っていた事を止める事はしない。 何時やるのか、その時の手筈はどうなのかを確認してはいない。だが、今、だろう。 「……誰も言及しないから、名前、あってるか分かんないけど」 マーガレット? もう一度聞けば犬は小さく鳴き声を上げた。 ふと、俯いていたアンジェリカは泣き出しそうな顔をしてマーガレットを見つめていた。 「……認めるよ、君の心の強さを。ボクの弱さを」 辛い、辛くて仕方ない。嫉妬だった。エリューションだから倒したい、そう思ったのではなかった。 周囲を囲んだリベリスタ達を警戒する様に唸り声を上げるマーガレットに魅零は走り寄る。 「まーちゃん、聞いて」 優しげな声で、魅零のままの声で彼女は犬を見つめる。 「まーちゃん、はづき……だよ? 山吹葉月、覚えてる?」 彼女の表情は泣き出しそうなほどに暗い。犬の動きが、ぴたり、と止まった。 雨の中、小路はぎゅっと標識を握りしめる。例え、まーちゃんを納得させたり、飼い主の思い出を思い出させたりしても、行きつく先は一緒。 「どうせ殺処分なんですよね」 その言葉にリオンはちらりと小路を見つめた。 「だったら早く終わらせたいだけのあたしが処分すりゃいーです」 「日暮」 リオンの呼びかけに、小路はやけに歪んだ笑顔で笑った。 「他の人が心を痛めるよりは、マシでしょ」 仲間たちの様子を見て、嫌に歪んだ笑顔を浮かべた彼女の後ろでミリィはただ、俯いた。 「……ごめんね」 つきん、と胸の奥が痛む。傷つけることしかできないその動作に対しての謝罪、本当の飼い主のもとへと連れて行けない事への謝罪。 彼女らの前で、一歩、踏み出した魅零の口元は優しげに微笑んでいる、だが、その眸は哀しげな色を灯していた。 ――最低の嘘だ。 「寒いでしょ、濡れちゃうでしょ」 ――こんな嘘、本当にいいのかな。 だが、彼女はまーちゃんのためだ、と呟く。言いたい事があった、聞かせたい事があった。 近づいて、手を伸ばす。大きくなった犬の頭を撫でる。 「聞いて、あの時、貴方を連れていく事ができなかった、ごめん、ごめんね」 葉月、飼い主の女の子の気持ちを胸に抱いて、魅零は言う。伝えたいだけだった。殺さないわけではない。 小さく鳴く犬を見つめて彼女は下がる。 この世界は不平等で理不尽で不利益しか降ってこない。残酷だけれど、伝えたかったのは置いていかれた時の真実であった。 殺さないといけない、殺さなければ。 魅零の後退を見守った仲間たちは一斉に武器を構える。 「家庭の事情、というものは仕方あるまい」 誰だって何らかの事情を抱えている。自由に飼う事が出来ればこの様な事にはならなかっただろうに。 リオンは背後から仲間たちを見つめている。 じっとしていた杏樹はミリィへとそっと小さな耳打ちをした。 ――家の中に入れてあげたい。 魅零の動きを見てから微動だにしなくなったマーガレットを見つめていた彼女の言葉に小さな少女は頷く。 「おいで」 だが、その声にマーガレットは一歩も動かない。もう知ってしまったからだ、『葉月』はいないのだと。 頷きあったリベリスタたちは一斉に犬の背へと攻撃を放つ。手早く、できるだけ長引かない様に、と。 「ごめんなんて言えないけれど、せめて安らかに」 全ての子羊と狩人に安らぎと安寧を。Amen―― 其れはシスターとしての彼女の言葉。 残像剣で犬へと攻撃をする義衛郎の表情もひどく歪む。ただ、飼い主を待っていただけのその犬。 ぎゅっと服の裾を握りしめた魅零がその頬に涙を浮かべた。 ああ、嘘をついて――暗闇が犬を包み込む。 「ごめんなさい」 「さようなら、こうなれたかもしれない、もう一人のボク」 待っていて、とそう言った大好きな人が頭に浮かぶ。会いたかった、会いたくて仕方なかった。 会いに行こうと教会を飛び出した。其れは自身の心の弱さ。 ――君を尊敬している。ひどく嫉妬している。だから、僕の手で。 さようなら、もう一度零した声と共に放たれた攻撃は犬の体へとブチ当たり、倒れた。 ● 雨がずっと降り続く。 犬の隣に座った義衛郎は俯きながらもその頭を撫でた。 「そっか、ずっと待ってたんだな。えらいな」 えらい、えらい。その顔を上げる事はない。見られない様に、酷い顔をしているから。 その表情は誰にも見せられない、と彼は俯いたまま立ち上がる。 「動物たちを埋めてから、帰らないか?」 「……ああ、そうしよう」 その言葉に杏樹は小さく頷く。 ごめんね、ともう一度呟いた魅零は顔を上げて、小さく笑った。 もし愁いが晴れたのであれば、それで良い。残酷な現実が彼女の心に深く深く突き刺さる。 一体何が救いなのだろうか。 「せめて、安らかに眠るが良い」 魅零の肩を叩き、埋葬の準備を共にと促したリオンの心も何処か、暗い。 捨て犬を見るのは大変忍びない。どのような事情であれど、捨てられるという事は怖い。 小さな欠伸を漏らした小路は帰りたい、と呟きを漏らし、未だに降り注ぐ雨を見つめる。 「あたしが殺してもよかったのに」 そうすれば、誰も心を痛めることなんて、ちらりと犬の方を見つめてから、彼女は視線を逸らす。 犬の前に座り、頬を撫でるのは同業者である年の近い少女であった。 「……ごめんね、おやすみなさい、まーちゃん」 雨で彼女の頬に髪が張り付く。頬に伝う涙に彼女は気付かない。嗚呼、目に雨が入ったのかしら。 お休み、お休みと呟いて、俯く彼女は埋葬のあとにやりたい事がある、と仲間たちに提案した。 「生きた証を……、この首輪を飼い主さんに届けてあげたいです」 どんな手を使ってでも、葉月さんを捜しますから、と彼女は仲間たちを見回す。 「あの子は今までずっと待っていた。だから、せめて想いだけでも」 ――想いだけでも葉月さんの元に。 その言葉に小さく仲間たちは頷いた。届けて遣ろうと思う。その想いを。 ただ、その雨の中、座り込んだままのアンジェリカはぎゅっとまーちゃんを抱きしめていた。 辛い、胸の内。自分が出来なかった事を行ったこの犬への激しい嫉妬。 エリューションだからではなく、自分と重ねたから、倒そうと思った。嫉妬したから、憎かった。 もう吼える事も、愛しい飼い主を待つ事もせず、息をとめたその遺骸を彼女は縋り付く。 次第に強まる雨脚と同じように、溢れだした涙は嗚咽交じりに、言葉を小さく紡いだ。 忘れない、君の事。 心の中にそう刻んで、彼女はただ、泣いた。 ただ、雨が降り続いていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|