●集う者達 「ジーク、こちらの準備は終わりました」 蛍光灯が冷たく照らす部屋に若い男の声が響く。その手にはタッチパネル式の小型端末が握られ、淡い光を漏らしている。 「ご苦労……時間通りだな。良い仕事だ、リント」 ジークと呼ばれた精悍な顔つきの初老の男性はワイシャツの袖をずらし、人工の明かりに照らされて鈍い光を放つ上品な腕時計に目を向けた。時刻は正午を少し過ぎた頃。 だが、この部屋に太陽の光が入ることはない。彼らのいる部屋には厚さ10cmはある、いかにも頑丈そうな扉以外には窓一つないからだ。 「それにしても……」 暑いな。そう、独りごちたジークが襟元のネクタイを少し緩めたその時。 頑丈な扉が、ベニヤ板の扉を開けるかのように勢いよく開け放たれた。想定外の衝撃に扉の蝶番が大きく耳障りな音をたてる。 「アハハハハハハァ! どうしたんだよお二人サン……もしかして、ビビッたかァ!?」 設計上の想定角度を十二分に超えて開ききった扉の向こうにいたのは紺のセーラー服に身を包んだ、恐らくは少年。だがその中性的な顔立ちは少女のそれにも見える。 「君という人間は……ジークの邪魔をするつもりなのか!!」 「よさないかリント。ナハト君、君もあまり派手に動きすぎないでくれ。今回我々が集まった理由を、忘れたわけではあるまい?」 若い男――リントと性別不詳のセーラー服、ナハト。双方を戒めるジークの声に2人はそれぞれ謝罪と不快という形で応え、その場を収める。 「あのっ、ジークさん、言われたとおりお金になりそうなものはこれに詰め込みましたけど……ってナハト、貴方また何かしたの!?」 部屋の奥から2つのアタッシュケースを持って現れたブレザー姿の三つ編み少女が、ぺこぺことジークに頭を下げた。 問題ないよ小夜君、とジークは三つ編みの少女――小夜をなだめると、 「そちらも終わったか。警備員には手を出していないだろうな?」 そこに居ることがわかっていたかのように扉の方へと目を向ける。そこには瓜二つの姿をした、おそらくは双子であろう幼い男女が立っていた。 「うん。こっちはもう」「終わっているわ。抵抗されたから」「少し乱暴にしちゃったけどね。でも」「しかたないわ。ねぇダム?」「そうだね、ディ」 お揃いの純白のドレスに身を包んだ双子が交互に言葉を紡ぐ。 彼らの身体が幾ばくかの返り血で濡れていることにジークは眉をひそめたが、気を取り直すように息を一つ吐き、部屋に集った仲間達を見回した。 「了解した……それでは皆、ここを出ようか。客人を、出迎えなければならんからな」 ジークは芝居がかったようにそう言うと、緩めたネクタイをきつく締め直した。 ●向かう者達 「お仕事よ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)がいつものようにリベリスタ達の前に姿をみせた。 だが、彼女の表情には困惑と疲労の色が濃く現れている。 気遣うように声をかけたリベリスタに対してイヴは、大丈夫よ、と静かに一言だけ答えるとその色を振り払うように力強い光を瞳に宿し、事件について話し始めた。 「今回、貴方達には町の貸金庫で起きる強盗事件を阻止して欲しいの」 計画的な犯行。そんな芸当ができるのは。 「……フィクサードの仕業か」 リベリスタの呟きに頷き一つ。正解よ、と答えたイヴはさらに先を続ける。 貸金庫に押し入ったフィクサードは全部で6人。だが妙な事に、所々に連携が取れていないような行動が見えるという。 「多分、寄せ集めのチームなのだと思うわ。フィクサードが何を考えているかは分からないけど……」 つけいる隙があるとすれば、そこかもしれない。 また、フィクサード達は厳重なセキュリティを破ってすでに貸金庫から金品を運び出しており、それらを2つのアタッシュケースに分けて詰め込んでいるようだ。 「そのアタッシュケースを2つとも彼らの手から奪還できれば……いえ、貴方達ならできるわ」 イヴの言葉には一点の疑いもない。それはリベリスタ達の力を信じているからこそだ。 でも、とイヴの顔が再び困惑に曇る。 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。 今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 貴方達を信じてる、だけど……気をつけてね。 ――少女の言葉を背に受け、リベリスタ達は戦場へ向かう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:力水 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)22:24 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●前兆 昼下がりの町。人通りは少なく、太陽さえなければ深夜のそれと錯覚してしまうかもしれない程だ。 「能力も実力も不明なら、その目的も不明。厄介な連中だな」 時折すれ違う車を横目に呟いた『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)に、パンクファッションに身を包んだ少女、望月 嵐子(BNE002377)が応じる。 「何が目的なんだろなぁ。強盗事件とは聞かされてるけど、お金のためって感じには見えないしね」 「裏で何者かノ意図が働いていル気がしマスネぇ」 『幸福の鐘』ハッピー チャイム(BNE001429)が仮面で覆われていない口元を少し緩ませつつ言う横には、 「この銀行強盗も、何かの陽動と取れそうだが……」 「何かの前触れで無ければよいのじゃがのう」 今回、各地で一斉に起きたフィクサード絡みの事件について考えを巡らせている、『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)と『巻戻りし運命』レイライン・エレアニック(BNE002137)の姿がある。 「確かに思うところは色々とありますが……お仕事しましょう。アークのアークによるアークのためのお仕事を」 先頭を歩いていた『オールオアナッシング』風巻 霰(BNE002431)の足が止まる。件の現場に到着したようだ。場所自体は、どこにでもある普通のビル。しかし、そこからは現実をねじ曲げる程の『異質』を溢れさせている源があることが見て取れる。 もちろん、リベリスタ達はすでに理解している。それが、同じエリューションが施したものであることを。 霰が入口の前に敷かれた小綺麗なマットに足を踏み入れる。そして、こちらの想いに全く配慮することなく、いつも通り機械的に自動ドアが静かに開いた。 「ようこそ、アークのリベリスタ諸君。思っていたよりも早い到着だな」 芝居がかったような口調でリベリスタ達を迎えたのは、執事を思わせるような服装に身を包んだ初老の男性――恐らくは彼がこのフィクサード混成チームのリーダー、ジークだろう。 「出迎えご苦労、ついでに降伏してくれると楽でいいんだが……そういう心算は欠片もなさそうだな」 「もちろんだ。理解があって助かる」 『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)の言葉にも少しも動じることはなく、微笑を浮かべるジーク。しかしその眼は獲物を見定める獣のように鋭い光を湛えている。 「おいジジイ! 話がなげェんだよ! 先にテメェを潰してやろうかァ!?」 「やれやれ……失礼、では始めようか」 横合いから飛んできた仲間のヤジを流しつつ、ジークはゆっくりとリベリスタ達に歩を進める。身構えるリベリスタ達。場の空気が一気に重さを増す。 「――我ら寄せ集めとはいえども、劣るつもりは毛頭無い。覚悟してかかれよ、リベリスタ諸君――!」 声高らかに見得を切ったジークへと集束する運命の奔流。その流れを断ち切らんとばかりに、リベリスタ達は行動を開始した。 ●ワイルド・シックス 「おとなしく退け……我に子供を斬らせるな……!」 バスタードソードに光り輝くオーラを纏わせ、刃紅郎が小夜へと連続攻撃を仕掛ける。 「子供だと思っていたら、怪我しますよ……っ!」 だが小夜は手にした薙刀でその攻撃を適確にいなす。 「やはり、そう簡単には通らないか……」 後方からその動きを観察していた瞳が、思わず呟きを漏らす。得られたフィクサード達の情報を仲間達に伝えることで戦況を有利に進めようとしていた彼女だったが、データの収集に少々手間取っているように見える。 「少シ付き合っテいタダきマす。なニ、すグ済みマスヨ」 「こちらとしても、長居する気はないのでね」 ハッピーの連撃を防ぐジークのブレードナックルが火花を散らす。 「ちょっと! その人は狙っちゃダメだよ!」 ハッピーに対し唐突にそう叫び、小夜とナハトに光弾を放ったのは嵐子。一瞬戦場に妙な空気が流れ、光弾を受けつつもナハトがジークへと鋭い視線を向ける。 「気にするな。恐らくは我々を攪乱しようとしているのだろう。もし私が不審な行動をしたのならば、後ろから撃てばいい」 ジークの率直な言葉にナハトは舌打ちをして再び意識を戦闘へと戻す。どうやら上手く連携は取れずとも、ジークはフィクサード達それぞれの扱い方を心得ているようだ。 彼らの会話を拾っていたアゼル ランカード(BNE001806)はそう確信し、再び戦場へと視線を移す。だが彼にはまだ何か引っかかるもの――違和感とはまだ呼べないまでも何か薄気味の悪いものが心の片隅にあった。 「なんだろうー? この感じ……」 しかし彼が考えを巡らせる時間など待つ間もなく、状況は進んで行く。 「わらわに付いてこられるかのう♪」 ギアを上げたレイラインに追いつける者はすでにいない。ネコのビーストハーフに相応しい圧倒的な速さを持った彼女のバールが幻影を纏い、それに翻弄された小夜の弱点を狙い打つかのように鋭い一撃を放つ。 続いて霰と刃紅郎が小夜に攻撃を重ねるが、双方ともがすんでの所でかわされてしまった。 「リント、合わせられるな?」 「もちろんです、ジーク」 声を掛け合った二人の攻撃がハッピーに飛ぶ。リントの放った気糸が彼の足を撃ち抜いて動きを止めると同時に、ジークの魔力を帯びた眼光が過たずその体を撃ち貫く。 だが彼らの連携は所詮二人。リベリスタ達の連携と比べるまでもない。 傷を負ったハッピーにすかさず瞳が、収集した小夜の情報と共に癒しの微風を送り込み、彼の傷を癒していく。ハイテレパスを通してその情報が全員に行き渡るのも時間の問題だ。 全ては確実に、順調に進んでいるように見えた。 「ねえお姉ちゃん、わたしと遊ばない?」 「え……?」 無邪気な一撃が振り下ろされるまでは。 ●混戦 「……っ!?」 瞳は咄嗟に、手にしたグリモアールで攻撃を受け止めた。さらにそれに重ねるように遠方から飛来した銃弾が彼女を蝕む。全身を揺らすような衝撃はあったものの、なんとか直撃は免れたようだ。 顔を上げた瞳が見たものは、純白のドレスに身を包んだ少女の姿。その手に、不釣り合いな程巨大な大剣が握られていなければよかったのだが。さらにその奥には彼女を援護するようにこちらを狙う、重火器を構えた少年の姿も見える。 彼女――トゥイードゥルディ、通称ディが何故ここにいるのか、というのは至極簡単な理由からだった。 それは、誰にも狙われず、誰にも抑えられることがなかったから。攻撃優先順位で下位に位置していた彼女が悠々と動き回れたのも仕方ないことだった。 「ねえお姉ちゃんったら♪」 「瞳さんから離れて!」 瞳へとさらに剣を振ろうとするディへと、嵐子の光弾が小夜とナハトを巻き込みつつ穿たれる。 それは吸い込まれるようにディへ命中したが、 「……わたし、あなたとは遊びたくないの」 光弾が裂いた肌の下から無機質の輝きを露わにさせたものの、大きなダメージには繋がらない。 快がカバーに向かおうとするが向かう途中にはナハトと小夜が、それになによりも、 「おや、余所見はいかんな」 「くそっ……!」 目の前には今まで自分が抑えていたジークがいる。快は両手に装備したシールドを叩き付けることでジークを振り払おうとするが、咄嗟の行動は簡単に見切られ、空を切るだけだった。 また、同じように動こうとした刃紅郎に対しては、 「ハッ! なンだ? えらく慌ててんじゃねェか、なァ!」 「いかせるわけには……ごめんなさいっ!」 獲物を逃すまいと、手刀で切り裂くように放たれたナハトのダンシングリッパーと小夜の薙刀から繰り出される突きの連続攻撃がその行動を抑制する。 「小夜さんは面白い方とコンビを組まれているのですね。そんな毎日は幸せですか?」 二人の壁を切り崩そうとレイピアによる鋭い連続攻撃を行いつつ、挑発するように霰に小夜に語りかける。 「確かに大変だけど……でも」 コンビですから。と、微笑を浮かべる小夜。 「無理矢理従わされているわけではなさそうじゃの」 「だとしても、我らが成すべき事は変わらん!」 レイラインと刃紅郎の攻撃が確実に小夜の体力を奪っていく。だが打倒にはまだ遠い。 返すように再び放たれたナハトの踊り狂うような攻撃に抉られた傷から流れ落ちる血を拭いつつ、攻略が遅々として進まないことに焦りの色を浮かべた霰が、後方からの轟音を聞いたのは直後の事だった。 嵐子の光弾に身をさらしながらも突き進み、雷光を纏ったディの一撃が瞳を薙ぎ払う。強風に煽られた木の葉のように瞳の体が宙を舞い、地に落ちる。興味を無くしたようにディが動かなくなった彼女から視線を外すと、自身に返る反動をものともせず、続けざまにアゼルへと同じ一撃を叩き付ける。 「このっ……!」 ふらつく足を必死に留め、力強く正面を見据えるアゼル。 戦闘不能には至らなかったが、暴風のような一撃は彼の体力のほとんどを奪っていく。しかし、彼から戦う意志までも奪ったわけではない。力を振り絞り、神々しい光と福音によって仲間達を癒していく。 とはいうものの、満身創痍のその体は敵から見れば的でしかない。 「トゥイードゥルダム! 撃ち倒せ!」 アゼルと同じく自身の仲間を癒す福音を唱えつつ、ジークの指示に従ってダムがアゼルへとその銃口を向ける。 「やらせるかよ! ハッピーさん、頼みます!」 「わカリましタ!」 今度こそ、と動いたのは快。ジークの抑えをハッピーに任せると背を向け、アゼルへと縫うように戦場を突き進む。 さほどもない距離が、今はやけに長く感じる。半分ほどを過ぎた頃、斜め後ろから聞こえたのは破裂音。 「くそっ、間に合え……!」 快が視界の隅に仲間を穿たんとする力が写り込んだのを見たのと、アゼルの元へと飛び込んだのはほぼ同時。 伸ばした右腕に装着した盾の上で爆ぜる銃弾。衝撃が腕から肩へと伝わり半身を痺れさせるほどに響くのに耐えつつも、快はアゼルの前に立ち塞がる。 「ほう。これは……」 感嘆の声を上げたのはジーク。彼が補助に入ったことで状況は再び拮抗状態に戻った。このままでは一瞬の隙を狙うか、着実に事を進めるか……どちらにしても時間がかかることは間違いない。 ……頃合いだな。 誰にも気取られることなく、苦笑するようにジークはその口元を歪ませた。 ●真意の先は 事態が動き出したのは、直後。 「これでは埒が明かん! 一気にケリをつけるぞ!」 突然、戦場にジークの声が響いた。 「はい!」 「っ!? オイ、ジジイ!」 応えたのは小夜とナハト。しかし小夜はともかく、ナハトの様子がおかしい。ジークを睨み付けるその視線は、今にも彼に掴みかかりそうな雰囲気さえ感じられる。 「どういうことじゃ……?」 「わかりませんけど、ケースを奪う隙が生まれるかもしれませんね」 フィクサード達の不可解な行動に混乱しつつも、彼らの動向に備えて構えたレイラインと霰へ小夜が突撃を仕掛ける。 「なんだ? 今までと動きが違う……!」 小夜の動きはリベリスタ達の攻撃に合わせて反撃を繰り出すという防戦一方のものから、敵陣へ斬り込むかのように攻め込むスタイルへと一変していた。だが、それは付け入る隙が増えることも意味する。 小夜が大きく薙刀を振り下ろしたその瞬間、刃紅郎の連撃が空いた横胴へと吸い込まれる。大きくたたらを踏む彼女にナハトの声が飛ぶ。 「オイ、小夜! 無理すンじゃねぇ!」 「……ありがと。でも、大丈夫だから……!」 だがその言葉とは裏腹に、先程の攻撃で小夜は動けなくなっている。レイラインの攻撃はナハトが防いだが、霰のレイピアが降り付ける雨のように小夜に突き刺さり、彼女は崩れ落ちた。 「小夜……!!」 「今でス!」 そして、ナハトが倒れた小夜に気を取られた隙をハッピーは逃さない。ハイテレパスで全員に合図を送ると、事前に役割分担を決めていたレイラインと霰がケースの奪取に走り、他の仲間はその援護に動く。 「やらせるかッ!」 リベリスタ達の声なき行動に一瞬反応が遅れたナハトだったが、彼らの意図に気付き、ダムの後ろにあるアタッシュケースを奪いに走ったレイラインへと追いすがる。 だがこの戦場にいる全員の中で最も素早いレイラインに速さで敵うはずもない。さらに後方からの嵐子の精密射撃が威嚇するようにナハトの足元へ撃ち込まれたことで、ナハトは否応なしに行動を制限されることとなる。 「わらわの速さを、甘く見るでないぞっ!」 ケースの前に陣取るダムをも翻弄するように駆け抜けると、掠め取るようにレイラインは一つ目のケースを獲得することに成功した。 「チッ、あのガキ……!」 悪態を吐きつつ、もう一つのケースがある方向へとすぐさま目を向けるナハト。だがそちらにはすでに霰が走り出していた。 「少し飛ンで頂きマすヨ」 ハッピーのメガクラッシュが強かにジークへと打ちつけられ、低く、苦悶の声を上げつつジークは後退する。 「ジーク!」 「ケースは我らが頂く! 凱旋はならずだ、手ぶらで帰るがいい!」 リントがジークを助けようと動くが刃紅郎の威風を纏った巨体がそれを遮り、振り抜かれたバスタードソードの軌跡をかわしたリントは、霰の進路を空けるように後退することを余儀なくされる。 そうしてできた勝利への道を霰が駆け抜け、ケースはその二つ共がリベリスタ達の手へと渡ることになった。 「……あンマり慌てテイまセんネぇ」 「目的も素性も教えてもらえないってのは、ちょっと残念だな。あんたは仁義に厚そうな人に見える」 「いやいや、完敗だ。残念ながら我々は退くとしよう……また相まみえることを祈っているよ」 ハッピーの疑念に満ちた視線や、快の言葉を受け流すようにしてジークは仲間達に撤退命令を出す。戦闘不能となった小夜を回収させないように動いた者もいたが、ナハトの鬼気迫る抵抗がその全てをはね除けた。 寄せ集めのチームらしく、散り散りに撤退するフィクサード達の後ろ姿を見送るリベリスタ達。 早速、レイラインは一室に閉じこめられた警備員達を解放しに走った。 「賊はわらわ達が片付けたぞよ、安心するがよい♪」 意識はまだ戻っていないようだが、直に目を覚ますだろう。 刃紅郎が重傷を負った瞳の介抱を終えたところに、外部へ連絡を取っていたのだろうか、携帯電話を持ったアゼルが戻ってきた。 「あちらこちらでの騒ぎでリベリスタを引き寄せているうちにアークが襲われるとか警戒していましたけども無いみたいですね、何が目的だったんでしょうね?」 「さてな……それに奴らの不可解な行動も気になる」 刃紅郎は息を一つ吐き、瞑想するように目を伏せて静かに答えた。 「フィクサード達は何を企んでいたのか。今後の動向を見守る必要がありますね」 心に残った違和感を払拭する答えを得るためにも、リベリスタ達は霰の言葉に深く頷くのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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