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チェロスキー秘密兵器戦

●こんなもの
「……やれやれ」
 『ファシネイター』粋狂堂 デス子は、フェイトを得た無所属の革醒者だった。
 自身を陥れる仕事は選ばないが、一度引き受けた任務は遂行するプロ意識を携えている。善悪とは、向きで容易に立ち位置を変えるものであり、とかく善悪に左右されない気質をしていた。
 こんな仕事を続けていれば、フィクサードに会う。リベリスタにも会う。フェイトを持たざる覚醒者にも出会う。
 フェイト無き者は、崩壊を招くらしい。では殺す。フィクサードの依頼でリベリスタを倒すこともあれば、リベリスタの依頼でフィクサードを倒すこともある。怨みが殖える。怨みが殖えすぎれば、寝る間も心配になる。
 ただただ無機質で、寝不足な日々を粛々と生きていた。
 何故この仕事を選んだかは、忘れてしまった。
 生きる者は、命を磨り減らして常に戦っている。どんな差があるというのか。機械となった左腕でシノギを削る。機械の左目。胸の真ん中に空いた穴。心とは胸部にあるらしい。失せたのか。

「……やれやれ」
 デス子はクライアントの隠し砦へとやってきた。
 暗い階段を、携帯照明の光を頼りに地下へ降りていく。コンクリートの壁は砕けており、粉塵の臭いの他にはなにもない。奥へと至れば、鉄の扉が目の当たりとなる。
 重厚な扉は錆びていて、漏水して流れてきた水が、むき出しのコンクリートを濃い灰色に染めている。雨の日の道路のような臭いに満ちている。
 錆を人差し指でなぞると、血の臭いのような風味した。なぞった手をそのままドアノブへと運び、鉄の扉を解き放つと、むわりとした空気が躍り出る。
 換気もされていないような、腐臭ともつかないどろりとした悪臭が、かび臭いものと混ざって纏わりついた。
 中へ足を踏み入れると、闇ばかりである。
 床に照明の光を落とす。茶色く汚れたタイルに作図中の紙が散乱し、天井を見れば床と平行に備えられた天窓から光が射しこんでいる。
 本棚群れの茶色。ヤニ色の壁。赤い絨毯は汚れていて、とにかく茶色だった。
「如月・ノーム・チェロスキー」
 デス子は、弾ける様な声を上げた。
 うごめくダークブラウンと黒のグラデーションが、のそりと動く。
 目を凝らして、ようやくそれが人であることが判別できる。想像を絶する不精な生活をしていたであろう人物へと、第二声を放った。
「受理しよう。引き受けに来た」
 デス子が歩みを進めれば、ヒールと絨毯がぶつかる音が鳴る。合間に紙をクシャりと踏む。
「一服ヤるかね」
 ヤニ色の人影――『秘密兵器請負人』如月・ノーム・チェロスキーがいた。
 風貌は、全身から不快感を醸し出していた。不摂生の極みともいえる肥満体で、犬のような臭いがした。
 顔色は焼けた新聞紙のような色をして、眼球がギョロりと飛び出している。もごもごと口を動かして、何かを咀嚼しながらチャッチャと音を立てていた。
 チェロスキーは、デスクから灰皿をつかんで差し出した。灰皿を食器代わりに食事でもしたのか、ミートソースの肉片がこびりつき、異臭を放っている。
「禁煙中だ」
 デス子は思わず後ずさった。
「どうした、何故後ずさる? 誤解があるようだ、話し合おうじゃないか」
「時間が惜しい」
「どぅふ」
 チェロスキーは頬肉を吊り上げて、顎をクンと突き出して一角を示す。
 竹の子の如き円錐が整列している。螺旋状の細かい溝が入り、ガンベルト状に繋がっている。横に筒状の物も鎮座している。
「88mm大陸弾道ドリルバンカーだ」
「説明を頼む」
「ドリルが回転してパイルバンカーみたいにガシャンコだ! 凄く凄いぞ!」
「馬鹿馬鹿しい」
 デス子は目眩を覚えた。オイル臭い一本一本がドリルであるという。回転する。射出する。
「よくもこんなものを作ったものだ。こんなものを作って悦んでいるのか、変態が」
「ドリルを発射するのがダメだとでもいうつもりか? ならば誤解があるようだ、話し合おうじゃないか」
 チェロスキーを無視して"こんなもの"を携えると、不細工な電子音が鳴り、機械の左目にノイズが広がった。


●チェロスキー秘密兵器戦
「危険なアーティファクトの破壊をお願いします」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達には既に資料が配られていた。『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の話は、とても単純だった。
 正体不明のアーティファクトにより、正気を失った者をただ倒す。対象はフィクサードともリベリスタともつかない無所属のプロフェッショナルらしい。
「この件の引き金となったフィクサードは、既に逃亡を図っている模様です。今は、彼女を止めることに専念してください」
 暴走状態の彼女はやがて都市部に至り、壊滅せしめるだろう。
 戦闘となる地点は、寂れたホテル。到着時点では夜。既に跡地と言える程、崩壊しているという。足場は悪いが、人払いの心配は皆無だった。

 そして和泉は「生死を問いません」と締めくくる。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:Celloskii  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年06月17日(日)23:47
変態兵器を愛するCelloskiiです。
命の削り合いも、不沈の盾も好物です。
よろしくお願い致します。


■エネミーデータ
『ファシネイター』粋狂堂 デス子
メタルフレーム/デュランダル
アーティファクト『こんなもの』
正式名称:88mm大陸弾道ドリルバンカー

A:
リミットオフ
ハニーコムガトリング
デッドオアアライブ
EX:粛清砲 遠複ダメージ大

P:
精密機械
デュエリスト
無限機関
EX:オーバードウェポン
※ アーティファクト由来
出血、流血、失血、致命、弱体、虚弱、無力、隙、圧倒、崩壊、重圧、鈍化、虚脱
を除くBSの影響を受けません。
また能力増強があります。



参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
雪白 音羽(BNE000194)
クロスイージス
ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
クリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
ホーリーメイガス
宇賀神・遥紀(BNE003750)
レイザータクト
アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)

●狂奔 -Storm-
 青白い電光が、闇に走った。
 崩壊したホテルには粉塵が舞い、粒子が携帯照明の光にたゆたう。
 全員が、静寂の中に強烈な気魄を感じていた。ひりつく感覚。口中が粉塵でぱさぱさ乾く。
 フィクサードに雇われた者『ファシネイター』粋狂堂 デス子がいた。
 ニットにジーンズ。普通の若い女といった容姿だった。
 その得物、左腕、左の目以外は。

 雑踏の音に、デス子がリベリスタ達の方を向く。

 ――瞬間。
 デス子の機械の左目が真っ赤に染まる。リミットオフ。
 『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)は、ゆるりと構える。
「せいぜい楽しませてくれ、くくく……」
 戦気を爆砕させて応じる。突貫。衝突。
 デッドオアライブ――一つの太刀を振り下ろす。デス子はドリルの回転を使って流し、身体を捻った。"こんなもの"が胴の前で構えられる。ピタリと一瞬だけ静寂が戻る。金切り声のようなモーター音が響き、間近で青白いスパークが見える。
「ったく、物騒なもん持ち出してくれちゃってぇ」
 ――射出。
 爆音と衝撃。瓦礫が飛んで煙幕が立つ。
 狂ったように乱舞するドリル。御龍は剣の側面を使って受ける。剣越しに強烈な衝撃が胸部に迫る。口中に鉄の味が湧く。
 剣を傾けて流すと、ドリルは剣の側面を削りながらを空へと消え去った。
 肺臓から上ってきた鉄の味を、タバコと共にペッと吐きだした。
 吐くと同時に、粉塵の中から巨体が姿を現す。
「ハッ! 強烈だな。なかなか、いい趣味してるじゃねえか」
 『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)がパイルバンカーを構える。笑いが張り付いている。
 暴力が支配する空気。土臭さと粉塵の臭いに懐かしさを覚える。心地よさを感じる。
 仁王立ちをして、後衛への射線を遮った。
 正気を失ったデス子は、軽口に対して表情を崩さなかった。
 "こんなもの"にガンベルトの円錐が飲み込まれていく。
「早速来るか」
 連続した爆音。
 ソウルは急所を外して受ける。脇腹の一部が抉れる。滴る液体が伝う感覚。ドリルの大群。ハニーコムガトリングが注がれた。
 ソウルは、自分が壁役になる事が、実に正しい考えだったと確信した。クソ重い。
 『花縡の殉鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)は、ソウルによってドリルの群れを免れていた。
「狂気の産物は強靭な革醒者すら蝕むか……」
 巡らせたマナの供給を受け、翼の加護を施す。負担も軽くなる。
 深手を負った者がチラチラ見えたが、視線の先――『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)が治癒の力を収束させている様子を見て、翼の加護を選んだ。
「よろしく、ガーネット」
 応じる様に、エルヴィンは直ぐ様、行動する。
「皆、天使の歌だ!」
 福音が傷ついた者を癒していく。
 エルヴィンは粉塵の先に立つデス子を見据える。
 悪い魔法に捕らわれたお姫様に、ちょっぴり荒っぽい目覚めのキスを。
「護り抜いてやるさ、君も、皆も」
 最前列へと躍り出る。御龍に並ぶように構える。デス子の視線が向いた。次はエルヴィンへと攻撃が来るだろう。
 腹を括る。
 雪白 音羽(BNE000194)は、腹部を抉られていた。激痛と共にこみ上げてきたものを飲み下す。ゆったり立ち上がって刺さったドリルを引きぬくと、ここに福音が鳴って、傷は塞がった。
「丁度良かった。粉っぽくて喉が乾いていたんだ」
 口角から血が流れるのを感じた。袖で拭う。
 拭う時に手が震えている事に気がついた。しかしそれは恐怖からの震えではない。
 笑う。
「ああ、そう来るか。そう来なくちゃあ。逆境こそが俺の場だ!」
 魔陣は既に展開している。
「どうして人はドリルやパイルバンカーに惹かれるのか。それは、そこにロマンがあるからだ」
 詠唱は終わっている。
「だが、何でもかんでも混ぜりゃ良いってものじゃないぜ! 気持ちはわからんでもないが!」
 ――放ち続けるだけだ。魔曲・四重奏を。粛々と、盛大に。
 魔力の奔流が地を抉る。空気を震わせる。
 直撃したデス子の全身から、血が吹き出した。
 人形のようだった。動きは微塵も揺るがない。
 疾い。
「遅いな」
 発砲音が鳴る。
 続いて装填音に、続く発砲音。装填音。
「ドリルが回転してパイルバンカーみたいにガシャンコ……ホント、凄くいいよな、ソレ」
 『足らずの』晦 烏(BNE002858)のバウンティショット。狙いは腕。
「おじさんはね、こう、ロマン武器ってのは人生の潤いに必要不可欠だろと思うわけだ」
 愛用の散弾銃から、自動で空薬莢が排出される。りん――と乾いた音が鳴った。
 紫煙を吸う、吐く。
「アハト・アハトだとベースが対戦車砲なのかねぇ。高射砲ベースだとしたら渋いってもんだが――」
「十字を切って覚悟完了! 今行くわ、88mm大陸弾道ドリルバンカー!!」
 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)の嬌声。
 機械腕をつきだす。烏に続いて狙いを定める。決定的な所さえ壊してしまえば良い。
「そんなに素敵な武器持っちゃうなんて嫉妬しちゃうな。もげろ♪」
 腕にドリルが刺さっていたが、引きぬくのも面倒だった。バウンティショット。
 デス子の左腕に命中する。
「おじさんも欲しいよ。アレすごくいい」
 烏は、なんともライバルが多そうだと感じた。
 アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)は、この様子を冷静に観察していた。
 威力の凶悪さは窺い知れる物。使い手はデュランダル。武器の凶悪さを更に上に上げるもの。
 察していたものは正解だったと考えた。
 御龍が、直撃が免れても疲弊が見られる様に、突破力の凄まじさを垣間見た。
「挟撃による敵の攻撃可能対象減。そして早期撃破が望ましいでしょう」
 暴力と暴力のぶつかり合いを最大限に引き出すタクティクスを展開する。
 オフィサードクトリン、ディフェンサードクトリン。
「参りましょう。ここからです」


●暴力 -Violent-
 エルヴィンは腹部を貫かれた。引き抜かれると同時に天使の歌を放つ。
「……っ! まだまだ!」
「どこを見ている? 主の相手はこの我じゃ。楽しませろ!」
 いよいよもって御龍も発狂へと突入した。デス子と切り結ぶ。
「こっちにあっち、あと前も危ないぜ?」
 前衛の御龍とエルヴィンがデス子を翻弄する。

 アルフォンソの何度目かのフラッシュバンが、デス子のリミットオフを解除した。
 アルフォンソの集中は絶え間なかった。
 だがその度にリミットオフが展開される。伴った集中は解除に注がれていた。
 チェイスカッターを放つ機会は中々訪れない。
 しかし結果的に、攻撃の一回分を消費させる事に繋がっていた。
「作戦は、上手くいっているようですが――」
 ゆっくりと遂行される作戦。散開。今はデス子を中心に扇状。やがては左右で挟撃。
 最大限に暴力を高めるタクティクスでフォローをして、全体の動きを掌握。
 正面から御龍、ソウル、遥紀、アルフォンソ。
 脇にエルヴィン、エーデルワイス、烏、音羽。
 ここにレイザータクトとしての結論を導き出した。
 それでも尚――
「――押されている様です」
「踏ん張りどころって事だな」
 ソウルが遥紀を庇うように立つ。
「これだけ手厚くてもかい?」
 アルフォンソのタクティカルアイ、分析に、遥紀は驚いた。
 正確には、何となく察していた事が確信となった。
 火力と回復。差し引きは圧倒的に火力。
 ここにハニーコムガトリングが飛来する。
「すぐに癒すよ。其れが俺の戦いだ」
 手を止めたら負ける。
 遥紀はデス子を見た。
 目の前で誰かに死なれるのは沢山だ。だから助ける。助けたい。
 神気閃光を放ちたい考えもあったが、この状況では回復に務めるしかなかった。
 後は、願わくば、誰か左腕を――

「エネミースキャンー♪」
 エーデルワイスは、攻撃の手を休めて様子を観察した。
 外傷は重いように見られた。
「そろそろ左腕壊れてくれてもいいと思うんだ」
 烏はドリルに何箇所も貫かれながら呟く。バウンティショットをただ放つ。
 エーデルワイスは、観察の結果を出した。
「もう良いですよー♪ 全員、左腕ー♪」
 声を聞き、音羽は運命を消費して立ち上がると、詠唱を再開した。
「やっとか。決着をつけようぜ」
 命の削り合いの終点が、今見えた。
「皆! 左腕狙いだ!」
 音羽の声と魔曲が飛ぶ。
 左腕部位狙い。
 デス子は再び流血する。反撃。
 青白いスパーク、射出されるドリル。
 エルヴィンが割って入る。肩部を貫かれる。
「まだだ、意地でも護る!!」
 意地が辛うじて、撃沈を防ぎ、天使の歌。
「頃合いですね」
 アルフォンソがチェイスカッターを飛ばす。
 深々と突き刺さり、大きな亀裂を生む。
 亀裂を烏が穿つ。デス子の左腕が割れた。
 ソウルが前へ出る。
 胸部に腹に腕に、ドリルが突き刺さっていた。
「ある偉大な男が言ってたぜ、手持ちの武器のでかさが男の器のでかさを表すってな」
 引き絞るパイル――
「……まあ、俺の言葉だが」
 ――放つ暴力。
 その杭は、デス子の左腕の決定的な所を貫いた。


「……。なんだ、お前達は」


●流儀 -Professional-
「アーク……。成程な。確かに他の木っ端リベリスタ組織共とは違う」
 左腕のど真ん中を破壊。常軌を逸した機能が止まった。
 デス子の左腕は、パイルに貫かれて、輪のように広がっていた。
「良く分からない武器を愛用する人なんですね」
「……寄るな」
 しっとりとした調子で近づこうとしたアルフォンソを短く拒絶する。
 回復を施そうとした遥紀やエルヴィンも、同じ様に拒絶されていた。
 デス子は左腕を見るや、右手で無理矢理に形を直した。
「私は今"こんなもの"に恋してるのね、うふふ。正気に戻って良かった良かった♪ ま、そんな事凄くどうでも良い」
 次にエーデルワイスも近寄る。
「さ、さ、その素敵な"こんなもの"を――」
「寄るな」
 弾けるような声が飛んだ。
「私はフィクサードに雇われている。そしてお前達はリベリスタ」
 デス子は"こんなもの"を改めて握りしめて向ける。
「――戦いを止める理由など、あるまいよ」
 先程までの緊張が、喉元から踵を返して戻ってきた。

「まだやる気? 正気に戻っても? いいからその武器よこせ、もげろ」
「やれやれ、粋狂堂君。君はなんとも仕事人だ。おじさん驚いたよ」
 烏は煙草の煙を吐き出しながら、呆れたように言った。
 隣でソウルも葉巻を咥える。
「同感だ。こんな目にあっておいて依頼は依頼ってか。逆に感心しちまうってもんだ」
「ま、分からなくも無いねぃ」
 腰を上げた御龍が再び刀を握る。
「あたしもプロの運転手だからさぁ、死んでも荷物は届けるのさぁ」
 ソウルの軽口に、御龍も新しいタバコを咥える。
 エルヴィンは問う。
「フェイトを使ったのか?」
「ああ、使った」
「どうしてそこまで」
「こんな仕事だ。お互い、戦いで命を落とす事など覚悟の上だろう」
 ここに再開される戦闘。
 エルヴィンは構えながら言い放つ。
「意地でも護る!! 君も! そう決めた!」
「まだ倒れないのか。なんだその防御力は。変態め」
 矛が盾に激突する。
 既に左腕は破損している。発狂を促す物は機能していない。
 機能が無くなったデス子自身の力は、此処にいる面々と大差はなかった。
「そうだな。アレかな」
 エルヴィンの後ろで、烏は出切っていない手札を考える。
 戦闘で、何となくだが掴めたものに気を配る。
 "こんなもの"に円錐が全て飲み込まれる。
「ガーネット君、来るらしい」
「分かった!」
「……この布陣。何となくそんな気はしていた」
「ギルティドライブ執行♪」
 エーデルワイスは機械の腕に力を込める。
「ならば一人でも多く粛清してやる」
 デス子に一層大きな青白いスパークが走る。
 ドリルが発射される。発射と同時に、"こんなもの"の一部が破裂した。
 変態兵器を変態たらしめるナニカを、自爆させて放つ一撃だと、烏は悟った。
「もったいねぇよなぁ」
 放たれるエーデルワイスのギルティドライブ――断罪の魔弾。
 放たれるデス子の粛清砲――爆発する凄いドリル。
 咄嗟に殺気を受けたデス子が、射線をずらす。先は最も消耗していた――
 発射。
 轟音。爆風と粉塵。

「俺を貫くには、まだ足りねえなァ……。行け」
 御龍を庇ったソウルは言い放った。
 応じて、御龍はゆっくりと月龍丸を担ぐ。
 タバコに火をつけ忘れていた。
 だがフィルターが濡れてダメなる間も与える気はない。
 生きるか死ぬかを再度問いかける。
 デス子は空いた左掌で止める。――が、それごと左腕を砕き、胴を抉る。
 デス子の口から、ごぼりと血の塊が出る。
「私の負けだ」


●静謐 -Ark-
「滑腔砲とも違う、ライフリングも無い」
「バリバリすぱーくしてたから、電磁砲に近いんじゃない♪」

 デス子は目を開けた。
 依頼中だった事を思い出す。
「遥紀とエルヴィンに――そこの二人に感謝するんだな」
「ばっさり行ったのに、胸の金属で止まったのさ。運が良いねぃ」
 ソウルと御龍が、紫煙を昇らせながら言った。
 デス子は上半身を起こし頭を振った。
「動かないで、もう少しで終わるから」
 脇に座った二人――エルヴィンと遥紀の顔には疲弊が見られた。
「ちょっぴり荒っぽい目覚めのキスを……っと思っていたんだが、大分荒っぽすぎたな」
 エルヴィンが爽やかに笑う。続いて「俺はエルヴィンだ」と告げた。
 遥紀も「俺は遥紀」と短く言い、唱和を続ける。
 癒しの微風。二人の額にはじっとりと汗が浮かんでいた。
 ここに、破壊音が聞こえてきた。
 エーデルワイスが"こんなもの"でガレキにひたすら穴を開けている。烏がそれを眺めている。
「変態が」
「出来ることならこんな奇妙な武器は2度と目にしたくないものです」
 きゃっきゃしている二人を眺めていたアルフォンソが、デス子に同意した。
「アークにこいよ? 少なくともぐっすり寝れるようにはなるぜ?」
 音羽は壁に背を預けて、ドリルで抉られた所を抑えながら言った。
「……。専属契約はやっていない」
「そうじゃない」
 治療を終えた遥紀は、澄んだ声で語りかけた。
「……心はさ、1人きりの時間が長く続くと強張ってしまうそうだ」
「無縁だな」
「本当に空虚なら、戦場に立ち続ける事も難しい。膝が自ずと折れてしまう」
 真っ直ぐに目を見て。
「今は分かり辛いかも知れない。でも、俺も手伝うよ……考えてくれないか?」

 デス子は右手の時計を見た。

「丁度、依頼は終わりだ」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
Celloskiiです。
変態兵器戦の第一弾。
結果はこのようになりました。
見事なダメージコントロールでした。

お疲れ様でした。