● 学校も終わり、女子高生が帰り道を歩いていると、野良猫が足元にすりりと擦り寄ってきた。 随分と人懐こい野良猫だ。思えば、この辺りに野良猫が増えた気がする。 女子高生はしゃがみ込むと、足に擦り寄る野良猫の喉を撫でてやる。 野良猫はごろごろと気持ち良さそうに喉を鳴らした。可愛いなあ。 その時、野良猫の喉を撫でる彼女の背中に、ぽふんと当たる柔らかい感触。 また野良猫だろうか、と。彼女が背後へ振り向けば。 「え、なにこれ。え、え?」 西部劇でコロコロしてるアレみたいな、毬藻みたいな大きな何かがあった。 そーっと手を伸ばして、指先で触れてみる。 ふわふわした感触。どうやら、猫の毛の塊のようだ。最近野良猫増えたもんなあ。 そんな、ものすごく呑気な感想を抱いた彼女が、もふもふとその塊を触っていたその時だった。 ずむっ。 彼女の手が、西部劇でコロコロしてるアレみたいな毬藻みたいな大きな毛の塊の中に刺さる。 「……………ぬ、抜けない……」 押しても引いても、抜ける気配は無い。 毛の塊を押さえ手を引っ張り出そうとするが、もう片方の手も刺さったまま抜けなくなってしまった。 さて、こうなるとどうにもならない。持ち上げてみようとしたが、思ったよりも重量がある。 どうにもならない現状をぐるぐると思考しているその時、大きな毛の塊がぐらりと、女子高生へと傾いた。 「えっ、ちょっ、まっ……… ……にゃああああああああああ?!」 彼女の叫びも虚しく、大きな毛の塊が、もふんと彼女を飲み込んだ。 ● 「そろそろだな。とびっきりに開放的で刺激的。アバンチュールな季節。そう、まさしく」 「いいから早く説明してくれ」 長くなりそうな『駆ける黒猫』将門 伸暁(nBNE000006)の言葉を、リベリスタたちは遮った。 伸暁はやれやれと頭を振ると、リベリスタたちへ資料を手渡す。 「Eビースト『ねこだま』、フェーズは2。ただの猫を従えた猫の毛の塊だ」 「猫の毛の塊……」 モニターに映し出されたソレは、確かに、猫の毛の塊だった。 季節の変わり目で抜けた猫たちの毛の塊が、Eビーストと化したようだ。 「このねこだまが、女子高生を飲み込んでしまう未来を視てね。止めてきてくれ」 リベリスタが駆け付けた時は、まだ小さな猫の毛の塊らしい。 だが、時間が経つにつれて、ねこだまは大きくなり、最終的には人をも飲み込む。 飲み込まれた人間はゆっくりとゆっくりと、ねこだまの中で溶かされていく運命を辿ることになるようだ。 Eビースト、ねこだま。見た目は西部劇でコロコロしてるアレみたいな毬藻みたいな大きな猫の毛の塊。 普段、動物に優しいアークのリベリスタと言えど、猫の毛の塊なら話は別だ。 こんなEビーストはさっさと倒して―― そんなリベリスタの心を読み取ったかのように、伸暁が口を開く。 「まだ話は終わっちゃいない。戦闘が開始するとねこだまに操られた、ただの猫たちが現れる」 その数およそ、四十匹。にゃあにゃあとリベリスタに纏わりついて、行動を阻害するらしい。 ただの猫だ、出来るだけ被害は出さないで欲しいと伸暁は付け加えて、ぷつんとモニターを切った。 「ちなみにねこだまの中は、お日様に干した布団のようにぽかぽかふわふわ、してるらしいぜ」 うるせえよ。なんだかねこだまの中に飛び込みたくなるような情報は、伏せといてくれよ。 リベリスタたちは、そう、と適当に返事を返すと、ブリーフィングルームから出て行ったのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あまのいろは | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月16日(月)23:55 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 現場に到着したリベリスタたちを出迎えたのは、猫。 その数、およそ四十匹。決して広いとは言えない通路に、わちゃわちゃーっと猫が集まっていた。 白猫、虎猫、三毛猫に、長い毛短い毛、ピンクの肉球。垂れ耳短足、ゆらゆら揺れるもふもふ尻尾。選り取り見取りなんでもござれ。猫好きにとっては、まさしく野良猫天国。 「ほあああああ、ねこだよ、にゃんこだよ、シエルさん!」 「猫様……良いですよね……。可愛いですし、ふわふわのもこもこでございます……」 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932) の言葉に、『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650) がほわりと笑む。 そんな野良猫天国に足を踏み入れて、はにゃーんとなっているリベリスタは二人だけでは無かった。 「地球上で一番可愛い動物とは何か。それは猫である」 頭に思い浮かべるだけでも鳥肌が立つほど好きな猫を、しかも大量に前にした椎名 真(BNE003832)が平常心で居られる筈も無い。 「それは猫である」 大事な事だから以下略。ねこだまが危険と分かっていても、仲間に任せ猫の相手をすると心に決めた真の瞳は、真っ直ぐだった。 (間違いなく、間違った方向に)真っ直ぐだった。 そして、もふもふわちゃわちゃ戯れる猫たちの中央、道の真ん中辺りに、それは居た。 ゴルフボールほどの大きさの、もふっとした何か。猫の毛の塊。それすなわち、ねこだまである。 「猫の抜け毛が集まって革醒とか、神秘って良くわからんことがたまに起こるよな」 『フェイトストラーダ』ユイト・ウィン・オルランド(BNE003784)が、指先でねこだまを突こうとすれば、ねこだまはころんと転がりユイトの指先から避けてみせた。 「む。話の通りすばしっこいな、この、このっ」 ユイトが何度もねこだまを突こうと試みるが、ねこだまはろんころんと器用に転がって逃げる。 その様子を見ていた、『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)がぽつりと呟く。 「罪も無い猫達を操り戦わせるとは、毛玉の分際で生意気な……」 そう言うレイラインの尻尾は、ころころ転がるねこだまに併せて揺れていた。 今すぐにでもただの猫に飛びつきたいリベリスタたち。 だがしかし、その前にやらなければならないことがある。 神秘の秘匿、神秘に触れぬ人々の保護。リベリスタが派遣されるということは、そういうことだ。 「ねこだまに普通の猫四十匹だと……、……何という罠……おそろしい……」 すっかり猫たちに魅了されていた『本屋』六・七(BNE003009)がはっと顔を上げた。七の手には、いつの間にかブラシが握られている。 誰もがこのまま猫たちとにゃんにゃんし続けたいと思っている。それはリベリスタたちの手に握られたブラシであったり、猫じゃらしであったりに、しっかりばっちり表れていた。 だが、一般人がこの道を通ることだけは避けたい。 「女子高生はこの通りに入れさせない!!」 ぐっと拳を握りしめた『三高平の悪戯姫』白雪 陽菜(BNE002652) 。 一般人を守るという心意気。これぞ、アークの正義のリベリスタの姿である。 「理由?そんなのアタシが猫を独り占めしたいからに決まってるじゃん!!」 これぞ、アークの正義のリベリスタの姿である。たぶん。 「そうだな、まず一般人が迷い込んでこぬようにしなければならぬ。 そのために赤いコーンを用意した。通行止めのロープを張り、偽装をすればよかろう」 『黒太子』カイン・ブラッドストーン(BNE003445)が、赤いコーンやロープを取り出す。 猫たちに魅了され続けていたリベリスタたちだったが、準備は思いの外順調であった。 何故か。早く準備を終え、にゃんにゃんしたいからだ。そんな思いは、誰も隠しきれていない。 そして、着々と準備が進んでいく様子をカインは満足そうに見つめていた。 「我は、それらを整合性の矛盾なく組み立てる指揮者であればよい。 うむ、働くがよい。我はしっかりと見守っておるぞ」 この時、足元にすりりと擦り寄る猫に、カインの表情が綻んでいたことは、秘密だ。 ● 準備を終えた頃には、ねこだまがゴルフボールから野球ボールほどの大きさに成長していた。 「さて、始めるとするかの」 レイラインが身体のギアを最高速まで上げながら、ちらりと横目で真と陽菜を見て問う。 「……所で陽菜に椎名、40+1匹とはどういう意味じゃ………?」 今、この場に居るのはジーニアスが四名、フライエンジェが二名、ビーストハーフが、二名。 陽菜と真は、何も言わずにレイラインを見た。笑顔で。すごくいい笑顔で。 なんとなく身の危険を察知したレイラインの耳と尻尾がびびーん。 「こっち見んにゃ!手をワキワキさせるでない!?ほれ、早く、早く行かんか!」 「はっ!そうだった!アタシの猫への愛情をじっくりたっぷり説いて撃退してやる!!」 陽菜の認識している敵がズレていることには、もう、誰も何も言わなかった。 「ふぅ、これで心置きなくもふもふと……じゃなくて、安全は確保されましたっ!」 戦闘が始まる前から、猫たちにはにゃーんとなっているリベリスタ多数。 舞姫は心の中で唱える。今日のわたしはシリアス枠。今日のわたしはシリアス枠。今日の…… にゃーん。 その一声で、キリッとシリアスを装っていた舞姫の表情が一瞬で崩れた。恐るべきふわもこの魔力。 「このままでは誰も攻撃出来ない……。よし、遠慮するなもふもふはまかせろ」 七が猫の前へと躍り出る。猫たちはにゃーんと可愛らしい猫撫で声で鳴くと七に纏わりついてきた。 「さあわたしが猫と遊んでいるうちに皆は攻撃するんだ!大丈夫、満足したらちゃんと順番は譲るからね」 猫を抱いて優しくブラッシングすると、猫が七の腕の中で心地よさそうに喉をころころ鳴らす。 恐るべきもふもふを七に託し、他のリベリスタたちはねこだまに攻撃仕掛ける。……と思いきや。 リベリスタたちの目的は、最初からねこだまよりただの猫を全力でもふり倒すことに傾いていたのだから、起こる事はただひとつ。 「いや、此処は我が!我はこれでも多くの猫依頼をこなしてきた自負がある!猫相手に臆するものか! 我は!あえて!あえてこの身を差し出すことによって、皆の負担を一身に受ける!それが貴族の義務!」 「ちょっと待って!1人で40じゃなくても、分けよう!?分けて!?分けてください!!」 ただの猫の奪い合いである。 カインが、真が、七の周りを取り囲む猫の群れへと一直線。 全員で平等に分け合っても一人五匹はもふれるのだから、それでいいじゃないか。 だが、既に平常心が迷子になっているリベリスタたち。 静かに順番待ちをする気が無ければ、猫を譲り合う気も無いことは、誰の目から見ても一目瞭然。 ねこだまに魅了なんて力は無い筈なのに、魅了されていく人がどんどん増えてゆくのは何故だろう。 本当に、何故なんだろう。 そんなことをぼんやりと考えるユイトの手にも、しっかりと猫じゃらしが握られている。 魅了能力の無い猫たちに、何故かはにゃーんとなっていないリベリスタなど、最初から誰もいなかった。 日も傾いた見慣れた通り。いつものように、帰路を急ぐ女子高生。 だが、見慣れた通りはいつもと少し違う。 いつもの通りには工事中の看板が立てられ、複数のコーンが道を塞いでいる。 普通の人なら工事中の看板があり、道も塞がれていると分かれば迂回するだろう。 女子高生が思わずその場に立ち止まってしまった理由は、別にあった。 「猫可愛いよ猫~♪」 看板の前に立っていた少女が、話しかけてきたのだ。 勿論、その少女の正体は猫をもふるのに邪魔になるだろう、女子高生を敵と見なした陽菜である。 「頭ナデナデ耳モフモフ尻尾ペロペロしながらそのつぶらな瞳をいつまででも見ていたいよ~。ねっ?」 「えっ」 女子高生は、困った顔して辺りを見回す。その場には自分しかいない。となると、この少女が話しかけているのは、間違うことなく、自分である。 「舐められすぎて顔中ベタベタになっても可愛いから許せる! たとえ膝の上でおしっこされても可愛いから許せる! 嫌々するのを無理矢理お風呂に入れて爪を立てて引っかかれても笑って許せる!」 どうしよう変な人に捕まってしまった。女子高生の表情には、そんな感情がありありと表れていた。 女子高生自身、家で猫を飼っていた。だから、彼女は勿論猫が好きだ。 だが、これは関わり合いになったらいけないと咄嗟に判断したのだろう。いや、きっと、誰でもする。 友人どうしで語り合うことに問題は無いが、見知らぬ少女がいきなり猫愛を語りかけてくるのだ。 しかも、かなり一方的に。 普通、このような行動をしている人は不審者と決まっている。距離を取るのが一般的な反応であるだろう。 「……………すみません急いでますんで……」 女子高生は小さな声でそう言うと、陽菜の顔も見ずにそそくさとその場を去って行った。 ● ちょっと小ぶりのバランスボールほどの大きさに成長したねこだまが転がっている。 もふもふに魅了されずにリベリスタたちの回復しようと、人一倍気合いを入れていたシエルだったが、未だ誰も大きな傷は負っていない。今のうちにとシエルはマナコントロールを展開し、自らの力を高めた。 猫から受けた引っかき傷が目立つ人はちらほらいたが、寧ろとても幸せそうな表情をしている。 深刻だったのは、無い筈の魅了と混乱をリベリスタたちが受けていたことだが、その魅了と混乱がバッドステータスで無い以上、誰にも治せないことが悲しい現実である。 「ああ……、そのいたいけな眼差し……、反則です……」 思わず気の緩んだシエルの元にも、わちゃわちゃと猫が集まってきた。 「これでは、皆様のお怪我を癒すことが出来ません……。どうしたら……、………あ!こんな時は!」 シエルは懐からそっと写真集を取り出した。ぱらりとページを捲れば、そこに居るのははにゃーんな姿のピンクのあの子。 「このはにゃーんな御姿……。危うかった……、こんなこともあろうかと用意してきて正解でした……」 何故かリベリスタを蝕む魅了から回復するには、本人の強い意志でしかあり得ない。 シエルは写真の力を借りて、恐ろしい魅了から回復することに成功したが、周りを見回せば、未だ自力で回復できないリベリスタばかりであった。 「猫をもふってこその、ノブレスオブリージュである!よーしよしよしいいこたちだ」 「この季節って猫の毛ごっそり抜けるよね。 ブラッシングのしがいがある……。涼しくなって気持ち良いから大人しくしててねー」 「ネコ可愛いよおおネコおおおおお耳つまみ尻尾にぎりもふりもふり」 猫をもふり倒すカインに、猫にブラッシングをしている七、平常心が行方不明の真。 「……ああ、どうしたら良いのでしょう……」 シエルがぽつりと呟いた言葉が、誰かの耳に届くことは無い。 猫まみれのリベリスタから少し離れた場所で、ユイトはぽつんと立っていた。 順番に構えばいい、と思っていたユイトだったが、野良猫天国ではご覧の有様。 譲り合いの精神は素晴らしいが、譲り合っていれば順番など巡って来ない。 「こうなったら……!」 さっとユイトが猫じゃらしを構えた。 「猫じゃらし!」 揺れる猫じゃらしに猫が飛びつく。 「ピンポン玉!!」 ぽーんと跳ねるピンポン玉を猫が追いかけて行った。 「キャットフード!!!」 ピンポン玉を追いかけた猫が猫缶に戻ってくると同時に、女子高生撃退を終えた陽菜も戻ってきた。 「ねこだまだいぶ大きくなったけど、まだ放置でいっか!だってアタシもふもふしてないし!」 戻った陽菜はねこだまと戦闘をするでもなく、猫を追いかけに走る。 リベリスタたちも、ねこだまを完全に放置をしてはいない。 シリアス枠(仮)の舞姫と、猫代表レイラインがねこだまに攻撃をしていた。 「さあ、わらわがトリミングしてやるのじゃ!覚悟せい!」 ころころ身軽に回避していたねこだまだったが、だんだん攻撃が当たりやすくなってきた。 ソニックエッジがねこだまの毛を刈り取る。ねこだまを攻撃したレイラインをただの猫が引っ掻いた。 「いたたたた!こりゃ、爪を立てるでないわ!」 「その毛玉が、恐るべき魅了のふわもことなる前に、片を付けるッ!アル・シャンパーニュ!斬ッ!!」 猫たちが纏わりつき、舞姫の動きが止まる。 「あ、だめ、おねえさんいまがんばってるから、這い上がってこないで……。う、うごけにゃい」 舞姫が足止めを食らっているうちに、ねこだまは成長していく。 「ああ……だんだん、大きくふわもこになってゆく……。 わたしのかわいい子猫ちゃん……、抱きしめて欲しいのね、うふふ、いいわよ……」 「舞姫様、騙されては駄目……其れは京子様じゃないです!」 ねこだまに魅了されていく舞姫を、シエルの声が引き戻す。 「覚えていますか?京子様の耳と尻尾はPINKに色気漂う黒の斑点。……其れは偽物ですぅ!」 「……って、やばかった!?シエルさんの声が無ければ、暗黒面に墜ちるとこだったよ! ふっ、これでもうわたしは惑わされない最強のふわもこ猫は、うちにいるんですもの!!」 猫であろうとチーターであろうと、ピンクのあの子は舞姫を魅了から引き戻す。 舞姫は無事、シリアス枠に返り咲いた。 「京子さんかわいいよ、京子さん」 舞姫はやっぱり、シリアス枠(仮)からは抜け出せなかった。 ● 猫相手八割、ねこだま相手二割程度の割合で、戦闘は続いている。 「君は何て言う名前なのかなあ?肉球ぷにぷにだねー。 あっ、いつの間にかねこだまが大きくなっている……。これが干したての……お布団!」 だが、流石にねこだまが成長し過ぎた今、ねこだまをを相手にするリベリスタも増えてきた。 成長しきったねこだまに、攻撃を当てることは、難しいことではない。 「あ、レインラインさん、後ろ」 「え?………にゃぎゃー!?……あれ?気持ちいい……って、違ーう!!!」 成長しきったねこだまが、レイラインを取り込もうとしていた。 すぐに猫玉から脱出しようとするレインラインに陽菜が突撃。何故。 答えは、猫であれば何であろうと愛するのが、陽菜の信条だからである。 ずもっとレイラインがねこだまに完全に取り込まれ、見えなくなった。 脱出しようとしたレイラインに飛びついた陽菜も、ねこだまの中に取り込まれていく。 「レイライン殿!?陽菜殿ー!!?」 レイラインと陽菜を取り込んだねこだまが、ころんとカインの前に転がってきた。 ねこだまの中から、にゃぎゃーと小さく悲鳴が聞こえてくる。 カインはレイラインと陽菜を引っ張り出すでもなく、ただ、じっとねこだまを見つめていた。 「え!?カイン殿、助けないのか!?」 「幸せそうだから、危なそうになるまで放っておく。気遣いのできる我は、えらい」 カインは手を差し伸べず、当たり前というように言い切った。 「二人とも、もふもふを堪能して、ずるい!」 「こ、この辺りを切り裂けばいい……かな?痛かったら言ってくださいね?」 二人を助けようと舞姫が片手で黒曜を振るう。にゃぎゃーっと悲鳴が聞こえた。 「ど、どうしようシエルさん!?わたしレイラインさん斬っちゃったかな!?」 「落ち着いてください舞姫様!レイライン様のお怪我は私が必ず癒します……!!」 慌てる二人とは対照的に、冷静にねこだまに近づく真。そして、ねこだまの中に手を突っ込んだ。 レイラインの尻尾を掴んで、引っ張る。ずるりと、ねこだまの中からレイラインが出てきた。 レイラインの尻尾に頬ずりしていた陽菜も、一緒に引っ張り出される。 わあ、大漁。 「あー猫可愛い。猫可愛いっていうかレイライン可愛い」 ねこだまに取り込まれフェイトを燃やし、叫ぶ気力も無いレイライン。 同じくフェイトを燃やしたにも関わらず、やけにてかてかつやつやしている陽菜。 ねこだまの中でレイラインの尻尾に頬ずりしたことがよほど気持ちが良かったのだろう。 ちなみに、二人がフェイトを燃やしたのはねこだまに取り込まれたからであり、舞姫の攻撃を受けたからでは断じて無い。 Eビースト・ねこだまにより、なんと二人も犠牲が出てしまった。 こんな恐ろしいエリューションを、これ以上放置しておくわけにはいかない。 リベリスタたちはほんの一瞬、ただの猫のことを忘れ、ねこだまに総攻撃を仕掛ける。 リベリスタたちの一斉攻撃を受け、ねこだまの毛がふわりと、空へ舞い上がって、消えて行った。 「或る意味強敵でございました……」 ピンクのあの子に羊のあの子の写真がなければ、シエルも危なかったかもしれない。 写真集をそっと懐に仕舞うと、傷ついたリベリスタたちに回復を施す。 操られていた、所詮は野良猫。戦闘が終わればただの猫たちはバラバラに散っていく。 「ふぅ……わたし猫アレルギーじゃなくて良かった……。 もふもふさせてくれて有り難う、元気で暮らすんだよ……」 去っていく猫たちを見送る七だったが、まだまだもふり足りないリベリスタたちも、もちろん居る。 「え、まだ続けるでござるか!?」 迷うことなく野良猫を追いかける陽菜や真の背に向かって、ユイトが叫んだ。 続きません。終わります。きみたちの勇姿を忘れない。きっと。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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