●『Ripper's Edge』 無頼者には無頼者なりの仁義というものがある、らしい。 「ハッ、バカらしいですね」 いつの時代のヤクザ映画ですか、と『上』の厳命を笑い飛ばす。蝮だかハブだか知らないが、どうにも五月蝿くてかなわない。 「パーッと騒げばいいんですよ。斬って殴って撃ち殺して、血がどばーっと流れて。それで人がどっさり死んだら」 もう最高じゃないですか。 結局のところ、彼にとって命令なんてものは何の意味もないのだ。頭を占めているのは、これからどんな殺人芸術を披露することができるのか、その一点のみ。 ――まあ、子供狙いなのは私の趣味ですけどねぇ。 ジャックナイフを弄びながら、くつくつと男は笑う。 ●『万華鏡』 集ったリベリスタ達に構わず、『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)はしばらくの間、床の一点を見つめていた。どれほどの間そうしていただろうか、ふ、と彼女は顔を上げ、痛いほど張り詰めた沈黙を破る。 「フィクサードが現れるの。人を痛めつけて殺すのが大好きな、命乞いをさせてそれを裏切るのが大好きな、そういうフィクサード」 イヴの語った事件の概要は、実に簡潔なものだった。常軌を逸した八人の快楽殺人者が、白昼堂々、幼稚園を急襲する。放っておけば後には幼児の拷問死体が残る、そういう筋書きだ。 「全部で八人。リーダーは、シンヤって男。ちょっとしたアーティファクトを持ってる。――けど、他の仲間と絶対的な力の差があるわけじゃない」 そして、またイヴは言葉を紡ぐのを止める。リベリスタ達は待った。倒してきて、というこの天才フォーチュナの託宣を。しかし、彼女が発した台詞は、彼らの予想を根底から覆すものだった。 「今回頼みたいのは、五分間だけ、シンヤ達を足止めすること」 彼らはつかのま絶句する。そして、倒してこいじゃないのか、と当然すぎる質問を投げかけた。だが、いっそ残酷なほどに冷静なイヴの声が、リベリスタ達を打ちのめす。 「それは無理。彼らは、一番力量が低くても、多分皆の中で一番強い人と同じくらいか、それ以上だから」 しん、と沈黙。ざわめきがぴたりと鎮まる。その沈黙を切り裂いて、幼稚園の子供たちが避難する時間を稼いで欲しいの、とこのフォーチュナは続ける。 「襲撃のタイミングも、場所もわかってる。けれど、相手は馬鹿ではないわ。だから事前に避難させたりしたら、予定を変更して他の幼稚園を襲うだけ」 だから、この幼稚園を囮にして、足止めを――できれば、しばらくはおとなしくするような痛手を負わせて欲しい。そう言って、イヴは筒のようなものを差し出す。 「彼らが来たら、誰かが非常口横で発煙筒を焚いて、非常ベルを押せばいい。小さな幼稚園だから、避難の時間はそれほど長くはかからない」 子供たちが避難するまでおおよそ五分。流石にネジの抜け落ちた殺人狂でも、周囲から丸見えのオープンな場所でことに及ぶのは躊躇うらしい。目的地に煙が上がり、どうやら獲物に逃げられた上にリベリスタ達に阻まれたとあれば、シンヤたちは無理せず撤退を選ぶだろう。 「……でも、気になる。シンヤが何を考えて、こんな派手なことをするのかわからないけれど」 そこまで説明して、ふとイヴは、立て続けに起こったフィクサードの事件に思いを馳せた。――一つ一つは偶然でも、多く積み重なれば、それは必然になる。 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 とりあえず、頑張ってきて。リベリスタ達を送りだしたイヴは、巻き起こる嵐の予兆を確かに感じ取っていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:弓月可染 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:54 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●0:00 握る拳から突き出した異形の刃が、赤黒いジャックナイフを受け止めて金属音を響かせた。 「いいですねぇ、実に素晴らしい」 赤いスーツの男、シンヤが喉の奥を鳴らした。蝮の言いなりというのも癪ですが、と言う彼の顔は、だが喜悦に歪んでいる。 「子供を殺すのもいいですが、ちゃんと遊べるというのはもっといい!」 「ええ、オレも楽しみっすよ」 対するは『新米倉庫管理人』ジェスター・ラスール(BNE000355)。隙あらば虎の左手で引き裂いてみせる心算だったが、男はそんな思惑を許してはくれない。それでも、と彼もまた笑みを浮かべる。 「戦うなら強い相手の方が楽しいっすから」 じっとりと汗を吸う頭のタオル。速さを極めた自分よりなお速い敵――いや、だからこそ血が騒ぐのだ。 「先にあたし達と遊んでもらうわよ!」 高いヒールに似合わぬ無骨なコート。にも関わらず『薄明』東雲 未明(BNE000340)の姿が猫を思わせたのは、跳ねた髪もさることながら、その紫の瞳に宿る力の賜物だろうか。 「何が起こっているかはわからない、けど」 紫の鞘から大剣を引き抜き、高く飛び上がる。指揮官であろう男を狙う未明の一閃。だが、彼はわずかに身を捩り、剣筋を外す。手応えは浅い。そして。 「必ず、守りきって……きゃあっ!」 「こ、子供、おでが、貰うんだな」 身の丈八尺、丸々と太った巨体が力任せに振るった棍棒が、芯で彼女を捉えた。 「子供扱いするんじゃないわよ……っ」 苦しげに身を起こす未明。――敵は、強い。 突如としてフィクサード達は現れた。何の策もない、正面からの攻撃。『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)が、質量を伴った黒いオーラに身を打たれつつも、甲爪の青年の行く手を遮る。 (あちらも中々、人材豊富なご様子で) 同じ陽動作戦でも、微笑ましいものからえげつないものまで様々ですな、と『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)は鼻を鳴らした。陽動作戦。嬉々として自分達に襲い掛かってきたことからも、敵の目的が幼児殺しそのものでないことはわかる。 「まあ、真正面からつきあう必要はないですからな」 くい、と彼が左手で眼鏡を直すと同時に、後方に控える黒衣の聖職者風の男を気の糸が絡め取った。 「短い間ですが、お見知りおき願います」 ジリリリ、と背後でベルが鳴る。 「らしくない、とは思うが」 アシュレイ・セルマ・オールストレーム(BNE002429)はほろ苦く笑う。リベリスタの役目とはいえ、こんな鉄火場に飛び込む自分が信じられない。だが、まんざら悪い気はしなかった。 「上手く逃げろよ、子兎ちゃん達」 白煙が立ち込める中、非常ベルのボタンを押す。けたたましく騒ぎ立てる警報音を背に、彼女は走り出した。 「あいつがクロスイージスだ」 冷静な声。敵を走査する『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)が指差したのは、敵の最後方に立つワンピースの少女だ。 「そうか。では――始めよう」 片眼鏡に隠された金の瞳が輝く。進み出た『深闇に舞う白翼』天城・櫻霞(BNE000469)が紋様の入った手を翻せば、糸を張り巡らした罠がその姿を現し、少女を雁字搦めに拘束する。 (楽しいから、面白いから……そんな理由で、弱者を殺すのか) 可憐な少女であることなど頓着もせず、いっそ冷酷に締め上げる櫻霞。その心中は、静かにしかし激しく燃え滾る。 「ふーん、けど、こんな糸で防ごうなんて甘いんじゃない?」 だが、少女は小馬鹿にした笑みを浮かべ、易々と糸を引きちぎる。手には不釣合いな拳銃。無造作に放たれた弾丸が、彼の右脚を貫いた。 「こんにゃろう!」 報復とばかりに踊りかかる『まごころ暴走便』安西 郷(BNE002360)。逆立てた金髪にツナギとピアス、古き良き時代の暴走族を思わせる彼の武器は、装甲で重さを増したその脚だ。 「子供達を狙う卑劣な奴らめ! くらえ! ソニックキィィィィック!」 狙うは防御の要たるワンピースの少女。だがこれを予想してか、少女を守るべく野球帽の少年が立ちはだかる。 「足止めだなんて生温いことは言わねぇ! どけっ!」 高速の蹴りが何度も何度も浴びせかけられる。流石に全ては避けられず、郷の脚が少年の腹にめり込んだ。だが、少年は怯まない。 「おじさん、わかりやすい動きだねー」 そして、一瞬の隙を見逃さない。突き出した厚刃のナイフに『吸い込むように』、繰り出された右脚をざくり切り裂く。 「こんな暴挙を……許してはいけません!」 いつになく力強く叫ぶ『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)。常は慈母の笑みを絶やさず仲間を支え続ける彼女が、今日ばかりは怒りに身を任せていた。 「主よ、我ら全て善なる者、御力もて救いを与えん」 ありったけの魔力を汲み上げるこの天使は、それでも穏やかなる賛美歌を響かせ、癒しの力を行使する。 (私がここに居る理由――) それは彼女にとっても容易い事ではなかったが、弱音など吐くはずもない。 「大儀である、カルナ」 貴様に我の背中を任せよう。そう言い残し、『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)がナイフの少年へと迫る。少年の詰め将棋のような先読みは、彼が狙うプロアデプトのそれだった。 「貴様らが何を企んでおるかは知らぬ」 いっそ堂々と歩み寄る彼の手には、破壊だけを使命とした蛮刀。膨れ上がる闘気が、得物に収束していく。 「だが幼子を狙うとは、畜生にも劣るわ!」 むしろ鈍器のような音を立てて、少年の肩を砕く一閃。だが次の瞬間、束縛を逃れた聖職者の十字架から吹く風が、傷口を癒していった。 ●1:30 事態を動かしたのは、『十人目』のリベリスタだった。 (……スプリーキラーどもめ) さぞや楽しいのだろうな、と吐き捨てるアシュレイは、門を迂回し、建物の陰に身を隠していた。それが、決して手練とは言い難い自分を最も高く売りつける方法。彼女は自分を愛してはいたが、自分自身を過信してはいない。 「許せない、私の前でそんな所業――絶対に」 その口調は怒りに塗れ、しかし口の端はにやりと曲げて。一直線に放たれた気糸が、ナイフの少年に突き刺さる。 「横から失礼。あまりにも隙だらけだったものでね」 少年の注意が、側面から現れた新手に向く。それは一瞬のことではあったが、その一瞬を見逃さない者が居た。 「絡め取れ、不可視の糸よ」 一時前衛に出るも再び距離をとった櫻霞が、見えざる罠を張り巡らせる。それはすばしっこく動く少年の一瞬の隙。ぎち、と音がした。彼の動きが不自然に止まる。 「へぇ、やるじゃない」 「狂ったお前達の思い通りに事を運ばせるつもりは、毛頭ないのでな」 少年を盾にして難を逃れた、扇情的なドレスの美女が嫣然と笑う。冷たく返す櫻霞。より一層美女の笑みは深くなり――次の瞬間、雷の奔流が音を立てて放たれた。 (どういうことなの……?) 目の前の老人は、どうやら暗殺者の名に相応しい腕前の持ち主らしい。影が伸び上がり、何度も未明を斬りつける。 彼女にはわからない。何故、敵は襲撃を放棄し、総出で格下のリベリスタ達を倒しに来るのか。単に戦うのが好きというわけでもあるまい――ならば、何故? 「騒ぎたいんでしょ? なら、ここで暴れてて頂戴!」 いずれにせよ、迷ったら負ける。疑問を頭の隅に追いやって、未明は背丈程の大剣を叩きつけた。 「義理は果たさないといけませんからねぇ」 悪くはないのですが、と含み笑い。禍々しいナイフを振るい、シンヤは強引に突き進む。 「これより先は行かせないっすよ!」 その行く手を阻むジェスター。速さと注意力を備えるこの男だからこそ、真っ先にシンヤに反応できたのだ。速さでは、負けない! 「いいですねぇ、いい動きだ」 握りこんだ刃を、拳を振る要領で突いていく。見慣れない剣筋が、幻を生むほどの速度を伴ってシンヤに吸い込まれる。 「でも、年をくった男より、女の子の方がいいですねぇ」 ジェスターを受け流し『睨んだ』先は、ひたすらに癒しの歌を響かせるカルナ。凶悪なる魔力の視線は、身体から活力を根こそぎに奪ったが――それ以上に影響が大きいのは、彼女を棒立ちにさせた、精神への衝撃。 「あ……う……」 「すみませんね、遅れましてございます」 その前にす、と立つ正道。続いて少女の放った銃弾をまともにその身で受け、苦痛に顔を歪ませる。 「ろくでなし相手に倒れては、何をされるかわかりませんからな」 「いいえっ……!」 だがカルナは知っている。この親子ほども年の離れた男が、自らの身を削って魔力を注いでくれていることを。 「大丈夫です、必ず、護り抜いてみせます」 未来を紡いで行く光──その全てを。正道のくたびれた背中に、彼女は強く頷いた。 「外道どもめ、殺しを遊びか芸術と考えておる」 尊大な態度を崩さない刃紅郎。だが、対するナイフの少年に加えて、艶かしい美女の雷撃までもが彼を襲う。下がる後方など既にない。カルナや瞳の支援を受けてなお、その身は限界を迎えていた。 「度し難い愚者め、王の戦いを見るが良い!」 「もう、だめよ坊や」 だが、非情なる美姫は杖を掲げた。艶やかな四色の輝きは、マグメイガスだけが自在に操る破壊の光。 「それじゃ、おやすみなさい」 四本の魔光に貫かれ、ついに膝をつく刃紅郎。だが、その目の光はまだ消えてはいない。そして、諦めぬ戦意にこそ運命は微笑む。 「我は王! 王は退かぬ!」 「それでこそアークの一員だぜ!」 その姿は、老人の抑えに回った郷の胸にも火をつけた。すまねぇ、だがもう少しだぜ、と呟いて、彼は脚甲の重みを感じさせない小刻みなステップを踏み始める。 「いくぜ! 幻影シュゥゥゥゥト!」 刻む速度とフェイントの妙。老人の意識の外から放つ鋭い蹴りが、重い衝撃を与える。 「時間稼ぎっていうけどさ――蹴り殺したって構わねぇんだろ?」 ●3:40 「み、みんな、おでの歌を聴け~」 棍棒を振るい続けていた巨人が、突如手を止めてだみ声を響かせた。それは癒しには程遠い騒音だったが、それでも塞がっていくフィクサード達の傷。よりによってこいつかよ、という呻きは誰のものか。 「遅いわよまったく。手をつけた者勝ちの個人戦だからって!」 拳銃の少女が毒づきながら放つ、こちらは文句なく清浄なる光。絡みついた気の糸が、あっけなく消えていく。もちろんクロスイージスを先に倒さないといけないことはわかっていた。ただ、最後衛の彼女の元までは辿り着けなかったのだ。 (個人戦……?) そして、未明が聞きとがめたのは少女の言葉。個人戦。そう、彼らはほとんど連携らしい連携をとっていない。効率を追って攻撃を集めれば、自分達は三分すら耐えられなかったはず。 (義理は果たす? ばらばらに戦うことが? それって……?) 何かが、かちりと音を立てた。 「ここで始末しておきたいところですが……」 「おいおい、余裕だな旦那ァ」 青年の爪が正道を襲う。アーマーごと引き裂かれるワイシャツ。防具と篭手さえなければ、どこにでもいる窓際サラリーマンにしか見えない。だが、その眼光はどこまでも鋭かった。 「楽はさせてもらえませんな」 地味ながらも戦線を支え続ける正道。いままた、刃紅郎のサポートに回った快の代わりに青年を抑える。敵味方乱れ飛ぶ不可視の糸の中、狙い済ました拳の一撃がフィクサードの腹にめり込んだ。 「流石に強いっすね」 苦しげに、あるいは楽しげに呻く。元より全身が傷だらけのジェスターだが、今日増えた傷は数え切れないほどだ。流れる血よりも赤黒い刃。シンヤの握る血錆のナイフが、嬲るように彼を刻む。一度は力尽き、けれど心まで折れなかったのは、奇跡といってもいいだろう。 「でもまだ、負けないっすよ。だって、こんなに楽しいんすから!」 意識を脚に集中し――くん、と姿を消す。疲れた身体に鞭打って生み出す、残像を残すほどのスピード。握りこんだ異形のダガーが、抉るようにシンヤや棍棒の巨人を刺していく。 「貰うぞ?」 気をとられる大男の背を、櫻霞の牙が襲う。生来のものではない白い髪が、大男の肉に埋もれる。彼の美意識が許容するのかは、表情からは判らないが――。 「出来る限りの事をやらせて貰おう」 強敵であることは彼も判っていた。なりふりは構っていられないのだ。左耳の蒼い光と、これも後天性の両の目の光、三色の輝きが冷たく敵を射る。 戦いは乱戦と呼ぶに相応しく、回復役を接近戦から守るのが精一杯の状況になっていた。仲間の血によって購う安全。その事実に、カルナは強く唇を噛む。 「私も……っ!」 自制のたがが外れ、一歩踏み出したカルナ。だが、その瞬間に降り注ぐ、視界を白く灼く稲光。 「っ!?」 「……この我が盾になるとはな」 黒い影。雷光を、瞳の支援で持ち直した刃紅郎が身体で遮っていた。 「思い上がるな十四位。我は、背中を任せると言ったのだ」 振り向かない背中が、貴様の出来ることをやれ、と語っている。有翼の少女はつかの間動きを止め――頷いて、再び清らかな歌を紡いだ。 ――一秒でも、一瞬でも長くこの場を支えてみせましょう。 「大丈夫よ、今のうちに立て直して!」 隙ありと迫る老人に、未明の大剣が強かな斬撃を見舞った。細い体からは想像できない力で弾き飛ばし、戦場のエアポケットを生む。その間隙を、逆立つ髪の郷が切り裂いた。 「大した願いも持たないで、許さねぇ!」 狙うはナイフの少年。眼鏡が飛ぶのも気に留めず、郷はインラインスケートで疾走する。その後ろから狙いをつけるアシュレイ。 「宅急便お届けだぜ!」 止まらない連続攻撃。二度、三度と続く蹴りが少年を打ちのめす。 (……ふん、そうだ) 人殺しとは楽しいものでなくてはならないのだ。まったくもって羨ましく、憎らしい。高揚する精神。 劣る実力を自覚していたアシュレイが選んだのは、徹底した連携。そして、またとないチャンスがここにある。 「だから、止めるんだ」 ホットパンツから伸びる脚ほどには彼女の目に生気はない。その空ろな視線が射るのは、限界を超えたであろう少年。冷徹なる糸が伸びる。胸を貫かれた少年が、ばたりと倒れた。 「はい、そこまでです」 突如、シンヤの声が響く。集まる視線。十分判ったでしょう、と一人ごちた彼は、肩をすくめて笑ってみせる。 「流石にやられるとは思いませんでした。思ったよりも厄介です――今日のところは帰りますよ。子供は逃げちゃいましたし、何より目的は果たしましたしねぇ」 「なんだと、ふざけ――」 激高する郷。だが、彼は金縛りにあったように声を止めた。シンヤの雰囲気が、違う。 「――でなければ、今度は『死ぬまで』やりますよ」 フィクサード達が視界から消えた途端、リベリスタ達は道端に倒れこんだ。身体を包むのは、疲労と、子供達を守りきったという大きな達成感。 そして、隠し切れない『敵』への危機感だった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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