●街角に現れる魔法少女 「がっ……!?」 薄汚れた路地裏に転がり込む男。 「おじさん、女子供からお金を巻き上げるなんて立派な仕事してるくせに弱いんですね……」 その男の頭を強く踏みつけるのは、一人の少女だ。 「でも駄目ですよ?そんなことばかりやってたら世の中が回りません。まぁ、おじさんがお金を持ってても世の中が回る気もしませんが」 ぐりぐり。ぐりぐり。 執拗に執拗に男の頭を踏みにじる少女。 「だから、これは没収しちゃいますね♪」 最後にがん、と強く踏み込み、男が握り締めていた物――ブランド物の財布をさらりと奪う。 「ぐっ……てめぇ……!」 「……あぁ、もう。足を離した途端、お前は蠅虫かっての。もう用は済んだからとっとと死んでくれません?」 少女はもう興味ない、と言わんばかりに手を振り―― 「――っ!?」 目にも留まらぬ速さで打ち込まれた拳が、男の頭部をぐちゃりと破砕する。 「あはっ……魔法少女、フィジカル七菜、今日も華麗に世の中のお掃除ですっ☆」 血塗られて拳を振りかざし、きらりん、と最後に決めポーズをとって今日のお仕事は終了。 路地裏から立ち去ろうとした時、ふと背後から声を掛けられる。 「あの……そのお財布、ボクの……」 それはひどく弱々しい声。 そんな声に、少女――七菜はひどく億劫気に振り向く。 「は?助けてもらったくせに、さらにお金まで返せとか何様のつもりですか?」 「いえ、あの……ボク、それがないと今日家に帰れな――」 「くだらない言い訳はいらないです。あとあんな下衆野郎に言い返す勇気もやり返す勇気もないお子ちゃまに用はないので、さっさと消えてくださいねっ☆」 ――それとも。 「このおじさんと同じ目に合いたいですか?」 未だ脳を失った体がびくんびくんと痙攣を起こしている元男の姿に目を見遣り、少年の良く見えるように右手を翳す。 赤黒く、そして得体の知れない「何か」がこびり付いた手をまざまざと見せ付ける。 「ひっ……!?」 「ふふ……いい子は好きですよ。それじゃあ、もう二度と会うことはないでしょうが……もし会ったら、その時もよろしくね?」 そう言って、七菜は歩き出す。 「……おい、七菜。あまり無関係の奴等を巻き込むのは……」 その背後には、いつの間にか複数の人影。 「上の本意じゃない。わかってますよ?だからあの坊やは見逃してあげたんです。おじさんについては……ふふ、あれくらいはやらないと見つけてもらえないじゃないですか……」 「やれやれ……まぁ、いいけどな」 「あぁ、そういえばこれ。どうせはした金でしょうし、いつものように皆で分けてくださいな」 ぽん、と無造作に財布を投げる七菜。 「ふふふ……そろそろ見つけてくれるでしょうか」 七菜は楽しげに微笑む。 ゆらゆらと揺れながら、恍惚と。 「まずはそのお手並み、拝見ですよ……♪」 ●魔法少女☆退散! 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 やや自信なさ気に『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)が切り出す。 「今、巷で5人のフィクサード集団が魔法少女カツアゲ事件を起こしているの」 いえ、カツアゲというのは正確じゃないわね。 「正確にはカツアゲしている人間を狙って襲い、そいつらが巻き上げたお金をそのまま頂戴しちゃうっていう……ちょっと困った集団」 イヴはちょっとだけ眉を顰めながら地図を広げ、ある一角を大きく丸で囲む。 「今回は、ちょっと大規模に動いてるみたい。 10人くらいのカツアゲグループが倉庫に4人の少女を監禁。 取り囲んでお金を巻き上げた挙句、目隠しをして手足を縛って色んな事をしようとした直後に、このフィクサード集団は現場に現れるみたい。 そしていつものようにカツアゲグループを殺害して、逃走。 少女達はカツアゲグループの盾にされた挙句、問答無用でフィクサード達に殺されるわ。 今回はその悲劇を……せめて、少女達だけでも助けてあげて」 彼女達に、罪はないのだから。 「カツアゲグループの生死は問わない。……彼らもまだ更生の余地はあるのかもしれないけれど、そこまで助けている余裕はないかも」 相手はそれほどまでに練達した集団。 「今から向かえば、二つのグループが激突した直後くらいに辿りつけるはず。 相手は強大だけど、命を掛けてまでカツアゲグループを殺したいとは思ってないみたい。 ……狙うとしたら、そこ」 倒せないまでも追い払うくらいはできるだろう、と。言外に語るイヴの表情は硬い。 「私にできるのはここまで。後は、あなた達にかかってる。……だけど無茶はしないで。最悪でも、皆でここに戻ってくること」 それじゃあ、行ってらっしゃい。 イヴの言葉を聞いて、リベリスタ達は駆け出す。 一秒でも早く、現場へ辿りつく為に。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:葉月 司 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●前口上はいらない 「しかし見れば見るほど上玉だぜ……!」 下卑た笑みを倉庫内に響かせながら、その男――カツアゲグループのリーダーが少女らを至近で見つめる。 男の吐息すら肌で感じ取れる距離。 視界を奪われ、自由を剥奪された少女達にとって、それは圧倒的な嫌悪と恐怖を催すに足る行為。 体は竦み、もはや声さえも出せぬ少女達の姿に、笑い声は更に大きくなる。 ――ぎゃは。ぎゃははは! 「うふ……本当、屑の考える事ってどいつもこいつも一緒ですね」 その笑いの中に、一つ。決して大きくはない、けれど耳に残る不思議な余韻を持つ声が混じる。 「あぁ? 誰だ!?」 その声にリーダーが反応し、振り返る。 するとそこにいつからいたのか一人の少女と、四人のスーツ姿の男。 「魔法少女、フィジカル七菜。今日も華麗に登場ですっ♪」 きらっとポーズを構え、ぱちりとウィンクする七菜。 その姿はこの場に似つかわしくないほど無邪気で――それ故に、妙にその場に馴染むという矛盾を孕む。 「それじゃあ今日も華麗にお掃除と行きましょうか……♪」 その一言とともに、七菜が歩き出す。 「な、何だてめぇら……! こいつらを助けに来た輩か……!?」 リーダーが気圧されまいと、一歩前に出て七菜を睨み付ける。 「いいえ、違いますよ?」 七菜は否定する。その歩みは止まらない。リーダーの目前で止まり、その顔を笑顔のまま覗き込み。 そして私達はただ……と、 「貴方達を殺しにきただけですよ……♪」 左手を軽く振り払い、リーダーの横面を強打する。 「ぐぁっ!?」 突然の事態に反応できず、横に吹っ飛ぶリーダー。 そして生まれる静寂。 「……掛かってこないんですか?」 その余韻をたっぷりと数瞬味わってから、七菜がにこりと微笑む。 蟻を潰して楽しむ無邪気な子供のように、無垢な笑顔で。 「て、めぇら……やっちまえ!!」 七菜の言葉を合図に、未だ立ち上がれないリーダーの怒声でカツアゲグループが動き出す。 同時に七菜達も動き出す。死のカウントダウンを始めながら―― 「ま、待っただよ!」 そこへ新たな闖入者の声が入る。 それはシャッターをこじ開け、現れたリベリスタ達のものだった。 ●予定調和の飛び入り参加 『リトルダディ』蘇芳・菊之助(BNE001941)がこじ開けたシャッターからリベリスタ達が突撃する。 「フィクサード共を挟んで少女らはその奥、か」 黒いスーツにサングラス。その特徴を限りなく従者に似せた『七教授の弟子』ツヴァイフロント・V・シュリーフェン(BNE000883)が呟きつつ「ならば……」と同じスーツ姿をした従者の背後から切りつける。 「あら、仲間割れの演出です?最近の演出は凝ってますねぇ」 仲間の呻き声にも動じることなく、七菜がゆっくりと振り返る。 「バカ、ようやくの本命だ。もっと真面目にやれ」 そんな七菜の態度に、唯一カツアゲグループへの制裁に参加していなかった男が軽く叱咤する。 「はいはい。……もう、相変わらず一夜は堅いですねぇ」 「ば、名前を晒すなバカ野郎!」 「えー。いいじゃないですか。それにどうせ……」 七菜が視線を向けた先には、一人の男の姿。 「いよっす。七菜……つーのか? 何か珍しい技を使うらしいじゃねーか。ちょいとオレに教えてくれねーか?」 ラキ・レヴィナス(BNE000216)が七菜を値踏みするように、鋭く見据えていた。 「ほら、私の名前はばれてる。なら一夜も道連れです……♪」 「何というか、またえらい魔法少女が居ったもんやな」 偽善にすらなっとらん態度はまた味方に対しても同じなんやね。 やや呆れを交えながら、『イエローシグナル』依代・椿(BNE000728)が印を組み七菜の周囲に呪縛の印を展開させる。 「あら、お褒めに与り光栄ですわ♪」 右手で口元を隠しながら左手をぱたぱたと振りその呪印を壊していく七菜。 「むぅ、やっぱ一筋縄ではいかんね……」 ぼやきながら七菜の注意を引き付けつつ、椿はそっと視線を横へ滑らせる。 そこには七菜の死角をつくように少女達に近づく『おじさま好きな幼女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)と『高嶺の鋼鉄令嬢』大御堂・彩花(BNE000609)の姿があった。 二人は顔を見合わせ、一気に少女達の元へ駆け寄ろうとして―― 「あー……悪いな。そう簡単にはここを通せないんだ」 やや困惑気味の表情を浮かべながら、一夜と呼ばれた男が立ち塞がる。 「そらっ!」 独特のステップを踏み、舞うように煌めいたナイフがアリステアと彩花に襲いかかる。 「させません!」 それを防いだのはもう一人の救助班、『贖罪の修道女』クライア・エクルース(BNE002407)の制御するマジックディフェンサーだった。 クライアは右手で胸元のロザリオを握りしめたまま、一夜の前へ割り込んだ勢いをそのままに左手の剣を振るう。 「ちっ」舌打ちとともにバックステップで躱す一夜。 ――ガガガガ! その姿を追うように、重火器の奏でる重低音のリズムが響く。 『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)の右腕に据え付けられたアームキャノンによる掃射が始まったのだ。 蜂の巣を冠する攻撃は文字通りフィクサードの体や服に無数の傷を付ける。 「あは、一夜ったら情けないですねぇ」 「うるさい! というか七菜は早くそいつ等に指示を出してやれ……!」 「んー、各自自己判断でもいいんですが……」 それじゃあ、と七菜が指示を出し、一人だけがカツアゲグループの前に残り、他の二人はリベリスタと対峙するように展開する。 「で、私は……と」 七菜の瞳が一瞬鋭く細まり、目標を捕捉した。 「さっきから構って欲しそうにしている、怖そうな貴方の相手でもしてあげましょうか……♪」 「上等、ヤレるもんならやってみな!」 戦線はいよいよ熱を帯びていく。 ●加速する物語 「そういえばさっき、教えてくれ……と言ってましたよね?」 目前へ迫ったラキへ向けて、やや好奇の目を向ける七菜。 「別に、教えが必要なほど難しいことでもないのですが……そこまで言うのなら見せてあげましょう」 我が無頼の拳。 「見切れるものなら見切ってみなさい――!」 七菜の攻撃は、ただ殴る。それだけだった。 それは単純明快な暴力にして、誰の目からもはっきりとわかる強さの象徴。 「ぐっ!」 その衝撃はラキの防御をたやすく突き抜けて内蔵へとダメージを与える。 「へぇ、これくらいは耐えますか。それでこそ、ですよね……♪」 「ふん……君、蠅虫七菜だったかな?可哀想に。沸いてるのは脳だけじゃなく口もみたいだな?」 七菜の指示を受けこちら側へとやってきた従者を切りつけながら、ツヴァイフロントが七菜を挑発する。 「ひどい言われようです。一夜はともかく、私はまだぴちぴちの蛆虫ですよ? 一緒にしないでください」 「蠅の喰い残し集る蛆虫か。それは確かに蠅虫以下だな。失礼、謹んで訂正させてもらおう」 「うふふ……今回のところはその素直なお口に免じて許してあげましょう♪」 「……さすがの私もコレと同一視されるのは遺憾です」 モニカが僅かに顰め面しつつ、弾の装填と同時に自らの主人である彩花の方を見やる。 未だ一夜の猛攻を突破できない救助班。その様子だけでもフィクサードの実力の高さが見て取れて、モニカの渋面具合が更に深くなる。 「慈善事業かなにか知らないけど……流石においたが過ぎるよ!」 そこへハイスピード化した菊之助も増援に現れ、一夜を切りつける。 「おいおい、こいつはちょっと多勢に無勢過ぎないか……!?」 一夜はやや焦りの声があげつつも、荒れ狂う暴風雨のようなステップを踏み続ける。 「あ、こら! うちの顧問に何してくれとるんやぁっ!!」 一夜に追いすがり、その斬撃の殆どを一身に引き受けた菊之助の姿に、椿の怒声が響き呪印封縛が放たれる。 「ちょ、七菜、こっちにも一人よこしてくれ! いくらなんでも保たん……!」 「はぁ……本当、情けない」 「随分と楽しそうだがこっちがお留守だぜ!」 七菜が従者に指示を出すその僅かな隙をついてラキがバスタードソードで反撃に出る。 「きゃっ、もう……せっかちな殿方は嫌われますよ?」 怖い怖い、とおどける七菜。 「まったくですわ、ねっ!」 その同意に刺々しい敵意を込め、自らの影に乗って一夜の側へときた従者を彩花の斬風脚とクライアのオーラスラッシュが襲う。 「装填完了。掃射開始……!」 そこに幾度目かのモニカのハニーコムガトリングが火を噴きフィクサード達の連携を阻害する。 「今……!」 「うぉっ!?」 止めとばかりに放たれたアリステアのマジックアローが一夜の体勢を崩し、ついに少女達の元へと辿り着く為の活路を開く。 「彩花ちゃん!」 「えぇ、クライアさん、菊之助さん、少しの間ここをお願いしますわ……!」 アリステアと彩花が駆ける。 どうやらまだカツアゲグループの盾にはされていなかったようで、胸を撫で下ろす。 「とはいえ、あまりのんびりしてる時間もありませんわね」 ちらりと視線を移せば、従者の一人がカツアゲグループを一人また一人と追いつめているところだった。 「これは目隠しを外さない方がいい、よね?」 「ですわね……」 これ以上少女達の精神を追いつめないように。 「助けに来たよ!手足のロープを切るからじっとしててね」 アリステアに声を掛けられびくりと震えた少女達は、しかし助けに来たという言葉と同性の声に「あっ」と声を漏らす。 「もう大丈夫だからねっ。倉庫の外に皆を誘導するから、目隠しは取らないでね」 二人で震える少女達の肩を抱き、避難を開始する。 「ちっ、待て!」 「おっと、この場はお願いされたからね。絶対に行かせないよ!」 椿の傷癒術で癒された体で、菊之助がいくつもの残像を生み出し突きを繰り広げる。 「貴方も、ここから逃がしませんよ」 クライアが影に騎乗する従者を睨み、その身を弾く強打を与える。 「あらあら、彼女達は救出されちゃいましたか」 「蛆虫の仲間も所詮屑だってことさ。……なかなかいい手応えがあるんだが倒れんな」 「ふふ、その蛆虫達に群がられる気分はいかがですか?うちの子達は頑丈さだけが取り柄ですからね」 「……俺、なんでこんなところに挟まれてるんだ?」 二人の舌戦に挟まれる位置にいるラキと従者がやや肩身が狭そうにしながら、それでも七菜の行動の隙を狙い、あるいは気糸を絡めて動きを阻害しようと試みる。 「でも、相手の隙を突こうとして自分が隙だらけになっちゃあ危険ですよ?」 こんな風にね――! と放たれる一撃。防ぐことすらままならなかったラキは、しかしその口元から血を溢れさせながらも不敵に笑う。 「そいつはご丁寧にどうも……と!」 瞬息の間も置かず、ラキが振り切った体勢で硬直する七菜の体を切りつける。 「っ……!」 「あー、くそ。骨を切らせて肉を絶ってる感じしかしねぇぜ」 数合と剣と拳を交えて思い知らされる実力差。 だがまだここで引くわけにはいかない。 せめて少女達の身の確保が終了するまでは。 「きっついなぁ……回復が追っつかへん……!」 現在、前衛でフィクサードの足を止めているのはラキ、ツヴァイフロント、菊之助、クライアの四人。 その四人ともが軽傷とは言えない傷を負いながらもぎりぎりの所で凌いでいる状況。 「皆、もう少しの辛抱や……!」 現在、最も深手のクライアに傷癒術を施しながら椿が激を飛ばす。 そこへ―― 「皆、お待たせだよ!女の子達は無事に車の中に保護したよ!」 今頃は彩花さんが車の前にバリケードを作ってると思う、と息を切らせながらアリステアが戻ってくる。 「少女の救出が終わりましたか……なら!」 クライアがぼろぼろの体に喝を入れ、目の前の従者の死角を付いて駆け抜ける。 「貴方達も、私達が引き受けている間に早くおいきなさい!」 カツアゲグループを追い立てていた従者を切りつけつつ、返す刀でカツアゲグループをシャッター側へと誘導する。 「ふむふむ……3人、か。まぁ、向こうの手もある程度見えましたし、こんなところでしょうか」 七菜が呟き、戦闘中ずっと肉薄していたラキから一歩距離を取る。 「そういえば、まだきちんと自己紹介をしていませんでしたね?」 七菜がくすりと嘯き、優雅に一礼してから堂々と胸を張る。 「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ!……なんてね。私の名前は魔法少女フィジカル七菜。以後お見知り置きくださいねっ☆」 決して大きくはない声。だけどその芯の通った名乗りは自然と倉庫内に響く。 「というわけで、名残惜しくはあるのですが私達はそろそろお暇させていただきます♪」 唇に人差し指を当て殺し合いをした直後だというのに可愛らしくウィンクをする七菜。 「まぁ、これだけで帰るのも味気ないですし、一つだけ置き土産をあげましょう」 そして七菜は再びラキを見やる。 「先ほども言いましたが……」 にこりと。 「見切れるものなら、どうぞ見切ってくださいませ――♪」 いつの間にかラキの背後に回っていた七菜が、その首筋に強烈な手刀を浴びせていた。 「がっ――!?」 その一撃に意識を奪われるラキを見て、七菜は満足そうに頷く。 「一夜!」 「はいはいっと……こっちは準備完了だよ」 「そう……では、やっちゃいなさい♪」 七菜が宣言した直後、フィクサード達の背後――先ほどまでカツアゲグループがいた壁周辺で爆発が起きる。 「けほっ、けほっ……!」 爆発はシャッター口付近にいたアリステアまでせき込むほどの煙を立て、やがれそれが収まる頃には―― 「逃げられました、か……」 モニカが呟き、爆発のあった先を見つめる。 そこには壁に大きな穴がぽかんと口を広げていた。 「……この戦いの犠牲になった方に、祈りを」 その爆発に巻き込まれるように黒ずみになった「人であった」物が三体転がっており、クライアは胸のロザリオを握り締める。 「クライアさん……」 倒れたラキの手当てをしながら、アリステアがその様子を見つめる。 「カツアゲグループは車に見向きもせず一目散に逃げていきましたわ」 やれやれ、といった様子で彩花が倉庫の中へと戻ってくる。 「それじゃあ……色々とやるせないことはあるけど、僕達は僕達にできる最後の仕事をしようか」 「せやね……彼女らを、きちんと送り届けてやらへんと」 そして、各々の胸中にしこりのようなものを残しながら、舞台は幕を閉じる。 「やはり、あれと同一視されるのは心底遺憾です」 ご理解頂けましたか? と視線で訴えかけるモニカに彩花ははいはいと適当に返事を返し。 「勇気ある限り恐怖はないものだよ。……一番の臆病者は誰だったかな?」 最後に呟いたツヴァイフロントの言葉がリベリスタ達の耳朶を打ち、消えていった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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