●承前 埼玉県――某小学校。 夜の校舎の見回りは、宿直の先生の役割でもある。 そろそろ結婚を夢見る夏木青葉(なつき・あおば)が、今日の担当だった。 正直教師なんて辞める為に結婚相手を探したいのだが、周囲に気になるような異性もいない。 合コンをすればハズレばかり、なんだか最近ツイてない感じだ。 「あ~ぁ、どっかに素敵な王子様はいないかなぁ……」 不意にぼやく青葉の耳に、グチャグチャという聞きなれない音が飛び込んでくる。 振り返ると、その音は女子トイレの方向からしたのがわかった。 この時間は生徒たちは全員帰宅して、学校には自分一人しかいない。 おそるおそるドアを開けて中を確認すると、開け放たれているはずのトイレのドアの一つが閉まったまま。 「え……なんで……??」 そういえば聞いたことがある。 学校の校舎3階のトイレで扉を3回ノックし『花子さんいらっしゃいますか?』と尋ねる行為を一番手前の個室から奥まで3回ずつ行う。 すると3番目の個室からかすかな声で「はい」と返事が返ってくるのだ。 そしてその扉を開けると、赤いスカートのおかっぱ頭の女の子がいてトイレに引きずりこまれる。 所謂都市伝説。『花子さん』はかつて自身が子供の頃に流行していた噂だ。 丁度、閉まったトイレは三番目の扉。 「はは……まさか、ね」 何気に近づき、ノックを三回する。 するとコンコンコン、と無言で返事が返ってきた。 思わずビクッとなったものの、返事があったことで中に人がいると分かり、青葉は少しだけ安堵する。 「誰? こんな時間まで学校にいちゃダメでしょ?」 「……ごめんなさい……」 か細い声、どうやら女子生徒のようだ。 安心させるように青葉が声をかける。 「ほら、先生がお家まで送ってってあげるから。出てきなさい」 「………ホント?」 「本当よ、お家にも連絡してあげるから、ね?」 青葉の反応にトイレのドアの鍵がガチャッと開く。 ギーッとドアが開き、青葉は中にいた女子生徒を直視した。 小学校高学年ぐらいの幼女だが、その眼窩には眼球が存在せず、真っ黒い空洞だけが広がる。 顔は不自然なぐらい青白く、やつれていて骨ばっていた。 そして、牙だらけの口元から血のような泡を噴出しながら告げる。 「……は~い………」 直後、校舎内に青葉の絶叫が響き渡る。 怪物の足元には、小学生の千切た胴体が転がっていた。 ●依頼 三高平市――アーク本部、ブリフィングルーム。 カレイドシステムの映像を観せて、リベリスタを見回した『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が淡々と説明を始めた。 「彼女はアザーバイド『花子さん』。この場所に扉を使って出現し、そこに来た人々を捕食してる」 どうやらずっと前から、日本各地の学校に出没していた噂の元凶はどうやらコレらしい。 何故小学校の女子トイレ限定なのか? そこは永遠の謎なのだそうだ。 「今回の依頼はこの先生が捕食される前に学校に潜入して、『花子さん』を倒すこと。 単体だけどそれなりに強力な相手だから、十分気をつけてね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ADM | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月22日(金)00:05 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●魔眼 埼玉県――某小学校。 今夜の校舎の見回りは、宿直の夏木青葉(なつき・あおば)が担当だった。 正直教師を辞める為に結婚相手を探したいが、周囲に気になるような異性もいない。 「あ~ぁ、どっかに素敵な王子様はいないかなぁ……」 不意にぼやく青葉の耳に、グチャグチャという聞きなれない音が飛び込んでくる。 振り返って確認すると、その音は女子トイレの方向かららしい。 この時間生徒たちは全員帰宅していて、自分だけしかこの場にいないはずだからだ。 不気味な想像をしつつ、おそるおそる女子トイレへと向かった青葉の目の前に現れたのは『紡唄』葛葉祈(BNE003735)。 『何事も無かった、見回りを続けよ』 彼女の魔眼の暗示を受け、青葉は朦朧とした意識のまま「何も無かった、何も……」とブツブツ呟きその場を後にしていく。 青葉の去った直後に強結界で人の出入りを禁じた祈が、隠れている一行に合図を送る。 「トイレの、花子さん。ね……」 彼女の声に応じて影から現れたのは、『鏡文字』日逆・エクリ(BNE003769)を始めとしたリベリスタ達だった。 「君子危うきに近寄らずって言うのに……七不思議のことがあるから、つい確かめたくなってしまうのね」 苦笑する彼女の後ろにいたチャルシア・ヴィオレット(BNE003721)は、夜の学校はなんか不気味な雰囲気を感じてそっとエクリの袖を掴んでいた。 「暗い校舎の雰囲気って何か嫌なの……」 なるべく先頭と後ろは歩かないようにしている彼女に、それとなく同意した『昼ノ月』伊集院真実(BNE003731)。 「どうしてこう、学校や病院は夜になると気味が悪くなるんでしょうね」 やはり怪談の類はフィクションの中に留めて置くだけで十分だと再認識している様だ。 「……花子さんには悪いですが、サクっと終わらせて帰るとしましょう」 花子さんと聞いて、真っ先に反応した『リベリスタの卵』大石・よもぎ(BNE003730)。 「まさかあの有名なトイレの花子さんがアザーバイトだったなんて……」 もしかしたらそれはリベリスタとしてアークに来なければ、見えては来なかった真実の一端なのかもしれない。 「ちょっと驚いたけど、人間に有害な以上は倒さないといけませんね!」 『歩くような速さで』櫻木・珠姫(BNE003776)もよもぎの声に同意した。 「ただの怪談ならいいけど実際に被害を及ぼすなら放っておけない」 青葉が去ったのを確認した途端、周囲に怪談話を確認し始めていた『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)。 「……あ、でも似た様な怪談はあったな! トイレで呼びかけると赤い……良く分からんが赤い何かを着た革命的なヤツが現れて。 赤いの着せましょか、小豆とって食おか、とかなんとか……」 どうやら彼女は『赤いはんてん』とか『小豆洗い』等の話がすっかり混同してしまっている様だ。 「いやすまん、何だか夜の学校はな! 緊張してしまうな!」 誤魔化すようにじゅるりと唾液を啜る。どうやら完全には思い出せなかったらしい。 そんなベルカの話なぞ何処へやら、『合縁奇縁』結城竜一(BNE000210)はひとり妄想の大気圏へと突入している。 (小学生が犠牲に……小学生が……。女子トイレってわけだし、女子小学生だろう。 俺の事を、お兄ちゃんと慕ってくれる事もあったかもしれない小学生を!) 「ゆるせない!」 もし彼の心の中を覗く事ができていたなら、この一言までに至った心情の移ろい方に幾何かの恐怖心を抱いたかもしれない。 しかし竜一が発したのはこの一言だけだった為、傍から見れば単に救えない犠牲者が出た事への義憤に駆られている様に見受けられた。 そんな中二病的な妄想とはまったく別次元の話で、自身の考えに耽っていた『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)。 「ま、それほど期待はしてないけれど。どれだけの力を失ったのか知らなければならない」 初の『真っ当な』実戦として、どれほど身体が馴染めているかを試すには良い機会と捉えている様だ。 今直ぐにでも突入したいのは歯を食い縛って我慢していた『理想狂』宵咲刹姫(BNE003089)は、青葉の処理が一段落着いたのを確認して仲間達に振り返った。 「もう最初の犠牲者を救う事は出来ないっすけど、次の犠牲者を出す前に元凶を倒す事は出来るっす!」 刹姫に肯いたリベリスタ達。 それぞれ廊下にやってくるであろう『花子さん』に備え、各自集中を始めている。 ●奇襲 仲間が配置に着いた事を確認した竜一とエクリがトイレの中へと移動する。 ドアのギイイィッと錆び付くような音に思わずぽつりと反応するエクリ。 「夜の学校って……」 首を傾げた竜一に「ブキミとか怖いとか思ってない、思ってないよ」と慌てて否定しつつ、エクリは低空飛行で二つ目のトイレへと移動する。 合わせてトイレの三つ目の扉から、ほんの少しだけ奥側で構えに入った竜一。 エクリは両手を翳し、神秘の弾を作り出す。 「好き勝手してたようだけど、これ以上の犠牲は許さないよ」 そのまま三つ目のトイレの中へと投げ込んだ。 カッとトイレ内で閃光弾が炸裂し、トイレから慌てたように飛び出してくる醜悪な存在。 小学校低学年の女子の様な姿はしているものの、眼窩は凹んで眼球はなく、痩せこけた牙を持つ猟奇的な怪物。 竜一は閃光を予め片方の剣で遮り、その両腕に力を込める。 「思いっきりぶっ放す!」 全身のエネルギーを雷切に込め、球体と化した武器が『花子さん』へと振るわれた。 不意を討たれたアザーバイドは回避行動を取る間もなく、直撃を受けて大きくトイレ内から廊下へと吹き飛ばされていく。 そこではリベリスタ達が、各自の能力を最大限に高めて待ち構えていた。 散開して攻撃と防御行動を仲間達と共有していた珠姫が、後方から強化した真空波を作り出す。 「これ以上被害者が出る前に始末をつけよう」 鋭い斬撃が『花子さん』を斬り裂き、続いたベルカが後方から銃剣を構えた。 「ぬうん! 眼力全開!」 驚異的なまでの視野の広さを保ったまま、体勢を崩すべく援護射撃を放つ。 女子トイレの入口を開けて敵の右側で待ち構えていた真実は、魔狼と名付ける自身の拳銃を凄まじい速さで抜く。 「お初にお目にかかります。さようなら」 正確に急所を狙う初撃がベルガの援護射撃と重なり、更にアザーバイドへ手傷を負わせていった。 そのまま真実は後方へと下がって大きく距離を開ける。 大きく間合いを取りながら暗視ゴーグルを付けていたよもぎが、そこへ短弓を引き絞った。 「腕を封じればこちらが有利になるはずです」 落ちる1$硬貨ですら正確に射抜くその射撃によって、『花子さん』の右腕が貫かれる。 真実とは反対側に陣取っていたチャルシアは三メートル程も伸びた破滅的な黒いオーラを差し向けた。 「身動きができない間にできるだけ攻撃するの」 アザーバイドの頭部を襲ったその一撃が加わり、正面から迎え撃つ形で飛び込む刹姫。 「ここはあたいと相手してもらうっすよ」 敵の動きを読んだ上で集中して気糸を放ち、正確な一撃で敵の意識を此方に向けようと試みる。 しかしアザーバイドが怒り狂うまでには至らず、「シャァァ」という不気味な声をあげるのみ。 シェリーは仲間との距離を開け、できる限り範囲攻撃に巻き込まれないよう気を配っている。 「空間把握は基本だろう」と呟く彼女は、現れた敵の姿を鼻で嗤うかの様な仕草を見せた。 「随分とみすぼらしい四肢だな。その体でどれだけ耐えられるか見ものだ」 集中したシェリーから放たれた魔力の矢が、大きくアザーバイドの身体を貫く。 不意を討たれて大きな手傷を負った『花子さん』ではあったが、自身の右側に空きがあるのを確認すると囲まれるのを避ける様に移動する。 飛び退いたはずの真実へと掴みかかり、鋭い牙で大きく齧り付いたのだ。 その一撃によって彼の肩は食い契られ、鈍い痛みが襲う。 成りは都市伝説の存在に近く、どちらかと言えば小物地味た存在に見えても、そのアザーバイドの一撃は余りに強烈すぎた。 自身が創り出した流血の海に沈みながら、彼の意識は一気に掻き消されそうになる。 しかし彼は自身の運命の力を解き放つ事で、何とか自身が倒れることを防ごうと足掻いていた。 一番後方で待機していた祈が、詠唱で清らかなる存在へと呼びかけて癒しの微風を生み出す。 「案外このアザーハイドが都市伝説の原型なのかもしれないわね」 真実の傷を癒しながらも、その一撃の深さに驚きを感じている祈。 相手が『花子さん』と呼ばれているのは、伊達ではないのかもしれないと感じ始めていた。 廊下へと戻ったエクリはアザーバイドを視界に捉えて能力を読み取ろうとする。 確かに敵は奇襲によってかなりの手傷は受けたものの、その防御に特段弱くなっている部分は感じられない。 「このまま正攻法でいくしかないみたいね……」 溜息を吐く彼女は、トイレ内にいる犠牲者へ視線を向ける事を意識的に拒んでいた。 ただ敵を倒すことだけに意識を集中させなければ、きっと自身が揺らいでしまうから。 更に散開をして距離を取り直した珠姫。 「誰の命も奪わせないよ」 今できることを彼女は貫く、真空波を『花子さん』へと叩き付け確実にダメージを蓄積させていくのだ。 同じくベルカも援護射撃を重ねて確実に体力を削ろうとする。 「存分に撃つぞ!」 時折反射的に出そうになる唾液を防ぎながら、銃剣に弾丸を込めた彼女の連射は続く。 竜一は敵が廊下を移動した事に舌打ちをして駆け出す。 だがそれよりも早くアザーバイドが目の前の獲物へと更に襲いかかった。 更なる組み付きと牙によった身体を貪られる真実に、もはや抗う力は残されていない。 ●犠牲 「てめぇっ……!」 一気に前進した竜一が二刀の剣を持って背後から斬りかかり、連撃を繰り出すことでようやっと『花子さん』は真実を腕から離す。 どさりと落下した真実。その意識は既に消え失せている様だ。 引き続き腕を狙って弓を構えたよもぎ。 「もう一撃!」 更に鋭い矢に襲われ、右腕をだらんとして凶悪な眼窩の闇を彼女へと向けたアザーバイド。 チャルシアは竜一の背後に移動し、一度集中を挟むことで相手へ確実に威力が通るよう試みている。 「確実に狙うの……」 自身の魔力の高揚を感じながら、シェリーは新たな魔力の矢を精製していた。 「……以前ほどでないにしろ、この魔力を内に掴み取る感覚。高揚せずにはいられないな」 更なる一撃。ひとつひとつは致命的な打撃でなくても、リベリスタ達の攻撃は確実に『花子さん』の体力を削っている。 刹姫も竜一の反対側に周り、アザーバイドを前後に挟むようにして挟撃する。 「これ以上、好き勝手させる訳には行かないんすよ!」 蛇腹剣を巧みに動かし、敵の動きを正確に予測した上で隙を突いた一撃を叩き込んだ。 祈は重傷を負った真実へひとまず癒しを送り、ひとまず危険な状態から回復させた。 「流血が酷いわね……決着を急がなくては」 彼の傷の状態を見るに、早く止血処理を施さなければまた危険な状態になると祈は判断する。 祈の発言を受けて前へと飛び出すエクリ、時間は余りないとなれば全員で攻撃するより道はない。 自身の拳に凍てつく冷気を纏わせ、素早く横側からアザーバイドへ繰り出す。 「わざわざ上位世界から降りてきて、馬鹿にするにも程が有るんじゃないの!?」 しかし、相手を氷結させるには僅かに至らない。 それでも確実に『花子さん』の体力は今までの攻撃で大きく削れていて、その動きは徐々に鈍りつつあった。 そこを廊下の後方で構える珠姫とベルガの銃弾が襲う。 「ここで終わらせる」 「まだまだ!」 次々と発射される弾丸も更に敵の生命を奪いにかかっていたが、敵の動きが完全に止まることはない。 『花子さん』は奇妙な叫び声を発しながら左手を振るって暗黒の瘴気を作り出し、それを廊下側のリベリスタ達へと放つ。 しかし後衛のリベリスタの殆どが散開して位置していた為、よもぎと祈の二人だけが瘴気の直撃を受けるに留まる。 それでもその威力は強大で、その一撃によってよもぎが深刻なダメージを受けてその場に沈んでしまう。 いくら彼女がその体質で精神への影響を防げていても、純然な威力に対して抗う事はできなかったのだ。 祈は辛うじてその場で倒れるまでには至らなかったが、相当の衝撃に身体が悲鳴を上げている状態である。 竜一は後方の様子を確認し、鋭い連撃を左右の剣から立て続けに見舞う。 「チッ、不味いな……急ぐぞ!」 大きく斜めに傷が走り、苦悶の表情を浮かべ出すアザーバイド。 肯いた刹姫が気糸で狙いを定め、急所目掛けて投げ込む。 数度の攻撃でやっと怒りに火が付いた『花子さん』は、急に凹んだ眼窩を彼女へと向けた。 刹姫はそれに合わせて誰も範囲攻撃の巻き込まない位置へと後退する。 「あたいが惹き付けるっす!」 アザーバイドの狙いが、刹姫に向いた事で戦闘の勝敗はほぼ決しようとしていた。 シェリーが「Time to make the sacrifice」と告げて魔力の矢を叩き込んだのを皮切りに、一斉に全員が攻勢へと転じたのだ。 剣が、魔力が、銃弾が、黒き塊が次々と炸裂して敵を畳み掛ける。 必死で刹姫を狙う『花子さん』だったが、しっかり防御を固めた上に祈の癒やしが重なり、相手を落とすには至らない。 「都市伝説は今日此処で終わらせるわよ」 祈の声に合わせてアザーバイドへ飛びかかったのは、集中に集中を重ねたチャルシアの黒い殺意。 ついに倒れていく敵を前にして、何故か表情が晴れないシェリー。 「この程度の敵を圧倒できないとはな……泣きたくなる」 一人拳を固く握り締めると、消えゆく『みすぼらしい四肢』と呼んだ存在の最後を見つめていた。 戦闘後、珠姫達は女子トイレの子供の搬送をアークに手配していた。 「間に合わなくって、助けられなくてごめんね」 小さく謝る珠姫の視線の先にある犠牲となった小学生。 せめてその子の顔だけでも綺麗にしてあげようと、そっとハンカチで拭う刹姫がいた。 「間に合わないから仕方が無いなんて思えないっす……」 心に去来する理想と現実のギャップに、心が小さく痛む。 チャルシアもそれは同じ、彼女を見つめ小さく黙祷を送る。 「……知らない子でも、人が死ぬってのはちょっと悲しいの」 腕組みをして考え込むベルガ。 「しかし、宿直していた校内で生徒が犠牲になったとあれば責任問題は免れ得まいな……」 アークの情報操作に期待するしかないとしても、自身が何もできない事にやや歯痒さを覚えている。 重傷者の対処をしていた祈は冗談ともつかない事を想像していた。 女子トイレの花子さんは、アザーバイドだった。 ……なら、男子トイレのヨースケさんもそうなのだろうか? 「まさか。ね」 苦笑して考えを振り払い、竜一と共に気絶したよもぎと真実を抱えてその場を去っていく。 撤収するエクリの表情は陰鬱で悲哀を帯びている。 (どうして近付いたの。無視して帰ってればこんな事には……) そんな風にぐるぐるした思考が頭の中でリフレインし続ける。 きっと今夜は眠れぬ夜を過ごすことになるだろう。はっきりそう自覚したエクリ。 決して答えの出る事のない彼女達の心の葛藤。 今夜の闇はまるでそれ等全てを覆い隠すように、漆黒の様相を呈していた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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