●承前 「あ、あ、ええと、草薙サン!」 不意に呼び止められた草薙神巳(nBNE000217)。 普段アーク内で彼が誰かに呼び止められることは、滅多にない。 振り返った先にいたのは、『導唄』月隠・響希(nBNE000225)。 かなり焦った表情で彼が何か言うよりも早く、一方的に捲し立てるように話しだした。 「今ちょっと良い? いや、駄目って言われても困るんだけど……その、ちょっと人手が足りなくてね、手伝って欲しいの。そんな難しい話じゃないからお願いしてもいい?」 彼女の話によれば、迷子になっているアザーバイドを目的地にまで誘導するのが今回の仕事らしい。 神巳のアークでの任務は殆どが陽動や最前線での囮役であり、それも命の危険が伴う内容が多かった。 その為このような仕事が割り振られた事は、今まで一度もない。 「お願い。今頼める人、草薙サンしか居ないのよ……!」 きょとんとした顔で、神巳は目の前の響希を見る。 確かこのフォーチュナの女性とは、殆ど挨拶程度しか交流したことがない。 それどころか、神巳は殆どの職員とも然して会話をしたことがなかった。 元々孤独癖のある神巳は、必要以上に相手と対話するのを避ける傾向にあるからだ。 「あ………」 「引き受けてくれる? 良かった。これ資料……リベリスタが集まったら皆に渡してね。ありがとう、今度お礼するから!」 何か言いかけた神巳だったが、それよりも早く響希は結論を出して彼に資料を渡すと、スタスタと去っていってしまう。 ぽつんと取り残された彼は小さく軽く頭を横に振り、指先でポリポリとこめかみを掻く。 「ま、いいか……」 神巳が同意の頷きをしたのは、相手がさっさと退場してしばらく後のことである。 ●依頼 「ワンダータイム静岡という、時村財閥の遊園地があるんだけど。 夜中にそこへ迷い込んだアザーバイドを探して、目的地まで誘導するのが今回の仕事なんだ」 リベリスタたちに響希から受け取った簡単な資料を渡した神巳は、事情を説明する。 「子供たちは別チャンネルから遠足に来た男女8人の子供たち。 俺たちが探し出して連れてくるのは、そのうちの3人の男女だ」 何れも小学生低学年程度の容貌で、その背中に様々な翼を生し綺麗な顔立ちをしている。 形容すれば天使のような子供たちなのだが、どうやらその3人は少しばかり事情が違った。 少しばかりやんちゃの過ぎる子供たちのようで、時間になっても集合場所に戻ることはなく、結果この世界に取り残されてしまう可能性が高いらしい。 しかも話し合いで言う事を聞くような子たちではなく、リベリスタが近づけば鬼ごっこをしようと言い出して遊園地内を逃げ回る事になるそうだ。 「……だがありがたいことに21時に子供たちが遊園地に訪れてから、帰る為の穴(ゲート)が出現するまでには3時間の猶予がある。 その間に俺と一緒に遊園地を逃げ回る3人を捕まえて、響希たちのいる集合場所に連れていけば任務完了だ」 思い出したように神巳は人差し指を出して、一言付け加える。 「ただし、力づくではなく。あくまで鬼ごっことして捕まえて連れて行くこと。 向こうの世界では単なる子供でも、アザーバイドなのでこちらの世界では強烈な力を持った存在だからね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ADM | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月20日(水)23:59 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●21:00 時村ランド、もといワンダータイム静岡入口。 夜の遊園地に集う人々は、全部で二つの集まりを呈していた。 ひとつは『導唄』月隠・響希(nBNE000225)が率いるリベリスタ達。 彼女達は比較的大人しめのアザーバイド達の保護が役割であり、どちらかというとほぼ遊園地で楽しむ事に重点が置かれている。 もうひとつの集団を率いていた草薙神巳(nBNE000217)は、集まった9人の彼女達と1人の男子リベリスタに注意する様に告げる。 「それじゃ、0時までに三人を捕まえて来る事。いいね?」 こちらの役割は鬼ごっこである。言わばアトラクションを使って逃げ回る悪ガキ達を、時間内に全員捕まえて来なければならないのだ。 でもそんな神巳の忠告なんて、『灰色の荒野を駆け抜ける風』霧里びゃくや(BNE003667)達の前では馬の耳に念仏でしかなかったのかもしれない。 「遊園地に行きたいかーいきたいぞー(ばんざーい) 異世界に行きたいかー行きたいぞー(ばんざーい) 美少年と戯れたいかー戯れたいぞー(ばんざーい) 女の子のマッパがみたいかーみたいぞー(ばんざーい)」 びゃくやの掛け声と共に、迷わずバンザイを繰り返す『合縁奇縁』結城竜一(BNE000210)と『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)。 此処にいるリベリスタの誰もが思った。 (((((((ダメだこいつ等。早く、何とかしないと………))))))) ●22:33 バラバラに逃げ出した悪ガキアザーバイド三人組を追って、それぞれ班分けして追跡するリベリスタ達。 唯一の女の子アザーバイド、アルが逃げ込んだのはハリウッドの技術を惜しげ無く投入した凶悪無比なる『お化け屋敷』。 そこへと向かう竜一のテンションは半端なく高い。いや周囲がびっくりする程。 「天然タイプで舌っ足らずなおバカさんな美少女とか! あざとい! アザーバイドだけに! あざど!」 もはや多少のギャグの寒さ等、お構いなしである。 「今日は思うままに動いていいよね! マッパも気になるし!」 これまで数多くの修羅場をくぐってきた竜一程の上級者になれば、もはや、マッパより半裸。 ないし、半裸より着衣。着衣によるチラリズムであろうとも、一向に構わないのだ。 どの方面に上級者なのかは、この時点で既に大きく疑問符なのだけれど。 「今こそ、その経験を生かすべき時……!」 依頼をこなし、美少女を愛でる。あまつさえマッパも拝めるかもしれない。 彼にとっては神様がくれたご褒美――正にパラダイスの様な依頼なのだ。 一方、そんな彼と行動を共にしているのは『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・マルター(BNE002558)である。 「少しでも早く……早く見つけてあげて安心させてあげなければなりません」 にしても、と少し困った様子で竜一に視線を向けるリサリサ。 「ただ結城様はちょっと……その……下心が見えてしまっているような………?」 隣にいた『新緑の梓巫女』神宮寺・遥香(BNE001988)に、それとなく助けを求めるような視線を送りながら『お化け屋敷』へと足を踏み入れる3人。 自身の勘とセンスを頼りにしらみ潰しに捜索へ駆け出した竜一。 「アルたんを救うのはこの俺だ!」 あっという間に他の二人を置いてズンズン先へと進んでいく。 だがこの『お化け屋敷』は完走率5%という非常に厳しい迷宮である。勘で探し出すにはあまりにも広大だった。 加えて『お化け屋敷』というものは、案外「本物」の幽霊屋敷よりも怖かったりするものだ。 恐怖させることを主眼点において構成された点で、よりその職人芸が光ってくる。 歩いていていきなり飛び出して来たぼろぼろの女に、思わずビクッと反応する遥香。 「わ!? ちょ、いきなりはやめてよ」 言いつつも彼女は自身の聴覚を最大限に高め、移動しつつ女の子の声を探した。 遠くから聞こえるのは「うぅ……」「ここ、どこ……??」という小さなか細い声。 「……聞こえた! こっち!!」 声に気づいた遥香はリサリサの手を引き、声のする方へと急ぐ。 謎のナマモノ(BNE000210)よりも早く彼女を見つけ出さなければ、危ない。 彼女達が見つけ出したのは、美しい黒髪に黒い瞳、白い翼、透き通る白い肌。 まるでどこかの人形のような美少女である。 もうすっかり迷子になってしまい、泣きべそをかいてしまっている彼女に遥香は優しく声をかけた。 「こんばんは! あたし、ハルカ。よろしくね」 「ふ、ふぇ……」 遥香から差し出された飴玉やクッキー等の洋菓子を受け取ると、アルは迷わず口の中に頬張る。 「……おいひい……、おねたん。あいがと………」 末っ子にとっては何て甘美な響きなのだろう。 これまでお姉ちゃんと呼ばれた事のない遥香にとって、初めての経験。 落ち着かせるようにリサリサが、アルの頭をそっと撫でた。 「もう大丈夫ですよ……一人で怖かったですね……」 先程までの心細さはどこへやら、洋菓子を口一杯にした笑顔のアル。リサリサは彼女へそっと手を差し出す。 「あちらでお友達が待っていますよ、ワタシと一緒にいきませんか?」 「うん、いくー」 コクコク頷いたアルのもう片方の手を遥香が握り、三人でお化け屋敷を出ようとする。 「ちょっと待ったぁぁぁっ!」 そこへ突然現れたのは、謎のモルぐるみ(BNE000210)である。 モルぐるみは可愛く手を振りながら、キュッキュッと愛嬌のあるヒップダンスを見せつつアルへと近づく。 「こえ、かわいい」 ニンマリして手を振るアルに、抱きついてむぎゅむぎゅ。頬をスリスリしだすモルぐるみ。 まぁ着ぐるみ越しなので傍目には違和感そんなないけれど、やりたい事はなんとなくセクハラっぽく伝わった二人。 「よしよし、いいこだね! 一緒に『メルヘンワールド』で遊ぼう! ハハッ……うぐっ!!」 ものすごく甲高い声で不審感を打ち消そうとしていたモルぐるみだったが、不意に衝撃に直面して言葉を失う。 アルがにこにこして他所向いた瞬間、飛び込んできた遥香が全力で肝臓へと腹パンをめり込ませたのだ。 「業界では御褒美だよね?」 ●22:46 最強絶叫系マシン『ハイパードリンドライバー』。 この超高層から捻りを加えて地面に堕ちるマシンに乗っている他のリベリスタ達にチラチラと映る人影。 それはファーを追いかけている神巳達リベリスタの姿だった。 「やれやれ、なかなか捕まってくれないな」 溜息をする神巳が追っていたのは、見た目だけはプラチナブロンドにブルーグリーンの瞳を持ち、白と黒の一対の翼を持つ絶世の美男子なのだが、中身はすばしっこい悪ガキそのものだった。 真っ直ぐに相対するように視線を向け、『ダンシィアオ』李紅香(BNE002739)が自身のバランス感覚を武器にレールを一気に駆け上がる。 「お前がファーか? 紅香と言う。捕まえに来た」 遊園地なんて初めてきた彼女にとって、夜で静まり返っているとはいえ、非常に楽しそうな場所に映ったのは間違いない。 彼らがはしゃぐ気持ちも分かる気がして、少しばかり共感を抱きつつもファーへと追いすがる。 紅香と同じくびゃくやもまた鬼ごっこらしく鬼に扮した口調で、自身の速度を最大限に高めてファーへと突貫した。 「鬼は鬼らしく人を食らわねばなー(ばんざーい)」 飛び込んでくる二人をひょいひょいとレールを盾にかわしながら、通り過ぎる乗り物を飛び越えてまた別のレールへと飛翔する。 無言で中指を立てて、挑戦的に口を歪ませるファー。 そこへゲーテと名付ける影を召喚し、影を足場にして背の翼で追いすがる『エアリアルガーデン』花咲冬芽(BNE000265)が現れた。 「曲弦師舐めるなーっ!」 飛び込んだ冬芽の手を、ファーは大きく飛んで後退する事で回避する。 無表情な顔が僅かに笑みを見せたところに、レールの両側から挟み込むようにして再度突貫する紅香とびゃくや。 「やんちゃ坊主! これ以上逃げるのはやめ、紅香と拳を交えようじゃないか」 「当てれば君の勝ち、避けれれば私の勝ち!」 「……面白い」 二人がそれぞれ手をかざして真正面から掴みにかかった所を、ファーは両手に力を込めて交差するように両拳を繰り出す。 時空を斬り裂き、びゃくやと紅香の腹部へと転移直撃する『超時空腹パン』が放たれたのだ。 本来ならば一撃で戦闘不能に陥るほどの威力。 だがこの日のびゃくやの情熱は運命をも手繰り寄せるほど強烈だった。 「みんなのマッパを見るまで……私の勇気は死なない!」 凄まじい程の執念で、その場に立ち続けているびゃくや。 紅香もまた負けてられぬと自身の内部の力を解放して『腹パン』を受けきっていた。 「別に……泣いてないし痛くないし……」 嘘である。正直腹が一撃でなくなったかと思うぐらい強烈だったのを必死に堪えていたのだ。 と、突然そこへレールの裏側から駆け上がった神巳が迫った。 三次元法則を無視した移動に躊躇し、慌てて上へと飛び退こうと飛翔しかけたファーだったが、待ち構えていたのは同じく上空のレールから逆さに落下してきた冬芽である。 「喰らえ、これが大人の本気だぁっ!><」 偉い人曰く、子供と相対するときは全力で相対せよ。を肝に銘じている冬芽から繰り出される全力腹パン。 四方をリベリスタ達で囲まれたファー、逃げ場はもう残されていなかった。 「チッ……負けた、か……」 炸裂する腹パンが、戦闘の決着を告げる。 ●23:17 『おっ♪ おっ♪ お~♪』ガッツリ・モウケール(BNE003224)は、ネットワークと自身の感覚をリンクさせコンピューターを意志で自由自在に使いこなす力を有している。 その力を持ってアクセスファンタズムから『メルヘンワールド』の照明を操作し、暗闇を多くして隠密行動が取りやすいように調整していた。 「鬼ごっこかお? あちきは嫌いじゃないし、いっちょ沢山遊んでくるお」 言いつつ仲間達と『メルヘンワールド』へと入って行くガッツリ。 色とりどりの可愛いドリンが皆を出迎えてくれるのだが、あちこちの照明が落ちていて全体的に薄暗いイメージ。 それでも惜しげもなく予算をつぎ込んだ感が満載の内容に、『胸に哀悼』斎藤・なずな(BNE003076)は唖然としている。 「相変わらず無駄に豪華だな、ときむらんど……」 しかし、今は可愛いドリンと戯れている場合ではないのだとクーラを探し始めるなずな。 念のため着替えは余分に用意し、年頃の女子の裸を不埒な視線から守ってみせると握り拳を固める。 その一方で、『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)が子供の割にややごつい外見で赤の髪と瞳。黒の翼を持つ迫力のある美男子を見つけ出す。 「逃さないのです! 膝小僧をぺろる……じゃない! 世界のため!……あってる?」 合ってない、多分どれも。 苦笑した『白虎ガール』片倉彩(BNE001528)が障害物を足場に真っ直ぐクーラへと駆け出した。 「捕まえたら大人しくついてきてもらいますからね」 やって来た彩へ、ニヤリと笑うクーラ。 一瞬で彩のチャイナの一部が破れかけ、彼女は慌てて近くのドリンを盾にして凌ぐ。 そのチラリズムを全力でガン見したロッテが大仰に追跡をかける。 「待ちなぁ! お遊びはこれまで……おとなしく捕まってくださぁい!」 盛大な追いかけっこ、のはずだがイマイチそのスピードが早く感じられないのは何故だろう。 ガッツリはそう感じつつも自身が用意した影の中に溶け込みながら、クーラの隙を窺っている。 「まっぱにするのは……おー……クーラも年頃の男の子だし、そう言うことに興味あるだろーしお」 どうやら気持ちはわからなくないらしい。 なずなは服を破り続けようとするクーラから、仲間を庇って守ろうとする。 「ロッテとガッツリはおっぱいだから服! 大事なのだ!!」 ……あれ、彩は? そして自分は?? なんかもう、結局全員ビリビリになる気がするけれども。 「片倉は……うん! 一緒に頑張ろう!!」 親近感を込めたサムズアップ。何だろう、目の前が濡れて何も見えないこの気持ち。 ロッテもなづなを庇おうとしている。でもそれは脱げないように守るのではなかったらしい。 なづなの方を向いて飛び込んだ所へクーラが念動力を放ち、二人揃って服がビリビリ。 「わぁ! 2つの山脈が……! 癒しなのですぅ!」 彼女のガン見する視界で互いに暴かれる、小さい山大きい山。 チャイナの中身が暴かれてしまっても、彩は気にせず前へ。 「怒らないですからね! 早くお縄につきなさい! お仕置きなんてしませんから!」 クーラはとことことドリンの合間をすばしっこい動きで左右に動き、彩はドリンや柱を足場に三次元的に最短距離で直進していく。 可愛らしい小ぶりな中身はもう殆ど見えているけど、相手は異世界の子供。だから気にしないと自分に言い聞かせて我慢を重ねていたのだ。 そこへ影からスッと現れたガッツリがクーラを挟み撃ち。 「社会の厳しさと悪戯したらどうなるかしっかり教えてやるお!」 不意打ちに驚いたクーラが反転し、ガッツリに念動力を放ってその巨大な山脈周りがビリビリにされてしまう。 それでも無視して前進し続けた彼女達は、二人掛かりでクーラを押さえ付けようとする。 更に猛然とタックルで襲いかかるロッテ、そして着替えを片手に追いかけるなづな。 「ほんぎゃああ!! 行かせないですぅ! まってクーラ様!」 なんかもー服ビリビリの女の子達にぎゅうぎゅうに身体押し付けられたクーラ。 「ロッテお前! お嫁に行けなくなるぞおおお!!」 クーラはもうなんかこー、幸せな顔でニマニマしてますが。 でもその後、しっかりロッテとなづなによってお尻ペンペン百叩きされて反省させられましたとさ。 色とりどりのドリン達の中に紛れてこそこそと動くモルぐるみ(BNE000210)と狼耳の少女(BNE003667)。 「桃源郷はここにあったぜー」 「あったぜー」 でも暗くてよく見えないからドリン達に紛れて前進。 もっとよく見たい! マッパ見たい!! その欲望だけが二人を突き動かす……あれ? 何か上から飛びかかってきた。 「不埒な輩には天誅!」 着替えを慌てて済ませた彩が、容赦なくおやつ替わりに腹パンを叩き込む。 『おやつに腹パンは入りません。これが彼女の最後の言葉だった』――というメールが、直後にびゃくやから仲間へ一斉送信された。 ●23:50 やっとの思いで子供達を連れ、順に大観覧車へと集まってきたリベリスタ達。 もうすぐお別れ。その空気を敏感に感じ取ったのだろう子供たちの表情が、少しだけ暗くなる。 「何とか時間内に間に合ってよかった」 溜息を吐いて安堵する神巳。 正直何人か此処にいなかったり、何かがおかしい気はしていたりするけれど、あまり深く突っ込んじゃいけない気がしたらしい。 クーラを物凄く冷めた目で見つめる冬芽は、ファーと集合までサバイバルゲームを存分に楽しんでいた。 「全力でお相手できて、楽しかったですっ!」 照れたように頷くファー、彼も充分楽しんでいたようだ。 紅香には上の兄妹(姉妹?)はいるが下に誰も居ない為、やんちゃな弟でもできた様な気分だった。 「坊主、お前にこの赤い糸をやろう。土産だ。向こうでも……今日のこと、また思い出してくれ」 ゲームの後、彼女がファーに教えたのはあやとりである。 この不思議な遊びに興味を示したファーは、始終紅香の織り成すあやとりの動きを感心して見つめていたのだ。 せっかくの遠足だしと、他のアトラクションを回ってアルと楽しんでいた遥香とリサリサ。 リサリサはそっとアルの頭を撫でる。かつて自身の母親からそうしてもらった記憶を頼りに。 「たのしかったです……さよなら、またね」 「おねたんたち……あいがと」 寂しそうに涙ぐむアルにそっとハンカチを当てて、優しく涙を拭く遥香。 着替えを済ませて帰還していたクーラ組も、手を振って三人組を見送った。 なんか未だにほぼ全裸の人が混ざっているような気がしなくもないけれど、そこを気にしたら負けである。 異世界への遠足。迷子と言うアクシデントに見舞われたものの。 幼い子供達は、普通では絶対に得られない素敵な思い出と共に、自身の故郷へと帰って行く。 ゲートが閉じた後。満天の星空だけが静かに、灯りの消えていく遊園地を照らしていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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