●杵築最終決戦 『マスタープラトン』。 最大で半径100mの一般人をE・エレメントに変換し、所有者の寿命と引き換えに従属させるアーティファクトである。 この所在が、とても派手な形で露見した。 瀬戸内海は小島、杵築神社上空に独特な光と共に浮かび上がったのだ。 ある者――黄泉ヶ辻『特別超人格覚醒者開発室』は至高の大隊を生み出すプラントとして。 ある者――六道『斬鉄剣客組』は戦乱の世を作る為。 ある者――裏野部『ヘビーアムズ団』は破壊と暴虐の為。 ある者――巨大機竜は自らのコアだったものを取り返すため。 其々の組織が今、一斉に現地を目指す。 『マスタープラトン』を巡り、壮大な争奪戦が起ころうとしていた。 ……が、なんだか浮いた連中がそこに混じっていた。 六道は『ホワイトマン』率いる魔剣開発チーム。 彼らはこの状況でなんと――。 ●悲劇を回避したい? 残酷な未来を消したい? じゃあギャグでしょ! 『突如その所在を明らかにした『マスタープラトン』を巡り、いくつかの組織が動き出しました。このうちどの組織の手に渡っても大変なことになるのは明らかです。よって我々はやや規模の大きな作戦を立ててこれを阻止することになりました』 ……というガハラさんの説明をラジカセ(ラジオチューナーとカセットテープが一緒になった昭和のハイテク機器)で流しきった後、アイワ・ナビ子(nBNE000228)はぱちんと停止ボタンを押した。 「まあ……こういう状況でなんで私ら呼ばれてるんでしょうねえ。あ、フォーチュナだからだ!」 自分で呟いて自分でハッとするナビ子。 「私達の任務はですね、この機会に乗じてさり気に突っ込んできた『ホワイトマン』を迎撃することなんですよ。でもねぇ……」 虚空を見つめるナビ子。 どうやら『ホワイトマン』は魔剣ソードオブニートというアーティファクトを回収、使用しているらしい。 これは一般人を強制的に味方につけるという恐るべきアーティファクトクトであり、さりげにアークが『ホワイトマン』から最初に守った魔剣でもあった。 「フィクサードとかなら『えいやー死ねー』つってボコせるんですけどねえ。いやー、一般人だからなー、困ったなー、チラッチラッ」 ナビ子は態々擬音語まで出しながらこちらをチラ見。 そして、そそっとダンボールを引っ張り出してきた。 「と言うわけで、今日だけ……ホント今日だけなんで、魔剣シリーズ借りてきたッス!」 そこに並べられたのはかつて『ホワイトマン』の部下から回収した魔剣シリーズである。 具体的に言うとコンビーフの缶をクルクルするやつとかから揚げ串とかチワワとか電柱(電柱!)とかだった。 とても武器には見えないが、今までアークを幾度も苦しめてきたヘンテコ魔剣たちである。 「これを使って、一般人を無傷で足止めしまくるんスよ! 反動は我慢でどうにかなるレベルの奴にとどめてあるッス」 彼等は小島南部の市街地を移動し、杵築神社へと(かなりバラバラに)進行している。だが侵攻ルートは抑えてあるので、網を張ることは可能だ。 「ってことであとは……よろしくゥ!」 ●限定ギャグ空間ひっろがるよー! 剣の柄頭がパクパクと開閉した。 『我は働かなき魔剣……ソード・オブ・ニート!』 剣の柄がシャベッタァー! とか言う訳じゃなく。 『だがどうした訳だレイ、話しかけても応えぬし……ううむ!』 困ったように唸る魔剣。 彼(?)を握っている少女はと言えば、先刻から目を渦巻きみたくグルグルさせながら歩いている。その割には背筋はピシっとしており、ふらついている様子はない。 『何者かに洗脳されたか……いかんな、24時間以上前のことは覚えておらん。何せ我、脳味噌無いから……はうあ!?』 「…………」 がしゃんと柄を蹴っ飛ばす少女。魔剣はゴメンナサーイと言いながらアメリカンクラッカーの如く振り回された。 彼女の名は『アラシノ・レイ』という。どんな漢字を書くのかは不明。 が、本当に注目すべきはソコではなかった。 「レイちゃん俺は何したらいいかな、八百屋なんだけど!」 「レイちゃんの為なら俺死んでもいいぜ! 魚屋だけど!」 「レイちゃんぺろぺろ! レイちゃんぺろぺろ! 三浪中の受験生だけどぺろぺろーッ!」 小島周辺にいたであろう住民の皆さん(これでも一部)がレイにぞろぞろとついて来ていた。 レイは口をパクパクとさせると、明らかに本人ではない男性声で喋り出した。 「『私について来い一般人共。お前達はよき盾でありよき矛である。アークのリベリスタどもが邪魔をしようとも、貴様等が盾ならば手出しはできまい。ククク……そしてマスタープラトンをわが手に納めるのだ。アーユーレディ!?』」 「「イエーイ!!」」 「『さあ行け、私の為に死ねぇ!』」 「「イエス・マイ・レイちゃーん!!」」 うおーと言いながら土煙をあげて一斉ランニングを始める一般人の皆さん。 小島東南部の市街地は今、激戦区だってことを忘れさせるくらいのカオスに陥っていたのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月15日(金)23:04 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 9人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●なんかもう負ける気がしない マスタープラトン争奪戦に揺れる瀬戸内海。杵築神社を中心に数々の死闘が繰り広げられてるってゆーじゃなーい? 「でもここだけギャグ空間ですから……残念!」 ぎゃいーんとギターをかき鳴らす和服のオッサン。何だか遠い過去を懐かしむような顔をしつつ、目の前の行列に加わった。 何の行列かって? それはね。 「レイちゃんぺろぺろ! レイちゃんぺろぺろぉー!」 「レイちゃんを邪魔するヤツはおじさんぶん殴っちゃうから。全力で殴っちゃうからね!」 「はい俺の筋肉、この子に一生ついていくのかいいかないのかいどっちなんだいぃぃぃ行くゥ!」 魔剣ソード・オブ・ニートによって大量に扇動された一般人の群だった。 その先頭を悠々と歩くポニテの少女、アラシノ・レイ。というかその偽物。 「『将来の保険として隠しておいてよかったぜソードオブニート……まあ間違いなくアークが邪魔してくるんだろうが……ん?』」 偽レイはなんだか奇妙な感覚に捕らわれた。 強いて言うなら魔剣が何かを主張する時の感覚である。 さっきまでガタガタ騒いでいた魔剣もガムテでぐるぐる巻きにして沈黙しているのでコイツじゃない。 となると。 「プリンッ、バーリアー!」 民家の屋根に上った『刹那たる護人』ラシャ・セシリア・アーノルド(BNE000576)が、ちっちゃいティースプーンを掲げてそンなことを叫んだ。 いや、別に頭がおかしくなったんじゃない。 その証拠に、彼女を中心に半径数十メートルというバリアが展開され始めた。 なんかこう、ぽよんぽよんしてる台形バリアである。 ビシリとスプーンを(くるくるしながら)突きつけてくるラシャ。 「見つけたよ偽レイ。一般人もろともここからは一歩も進ませない。あとプリン奢れ!」 「『何言ってんだお前……つうかそれ、魔剣プレインシェイカーか!?』」 「はいそのとー、り」 振り向くと電柱がいた。 電柱がシャベッタァァァァ……じゃなく。 「うわマジで展開したよプリンバリア」 電柱の後ろに隠れた(ホントはあんま隠れられてない)『Le blanc diable』恋宮寺 ゐろは(BNE003809)だった。 「『ゲ、魔剣電柱――!』」 「はい正解。偽レイ、ワンポイント獲得」 ぐいん、と電柱を後ろ向きに倒すパイルバンカーのように水平に構えピックを前方に押し出すようにシュート。咄嗟に剣でガードする偽レイ。悲鳴を上げるニート剣。 「『ぐおっ!?』」 「伊達に見学してなかったぜぃ」 思い切り突き飛ばされ民家の壁に激突。ゐろはは器用に電柱の端っこを腕で止めるのも忘れない。 「まずは足止めさせてもらうぞ、偽レイ!」 何処からか飛び出してきた『廃闇の主』災原・悪紋(BNE003481)がGペン片手にふつーのパンチ。 「カモン阿殺、ツープラトンじゃ!」 途端、悪紋の画像が(画像がね)劇画調に差し替わり、偽レイを壁にばこーんとめり込ませた。放射状に広がるヒビ。 「『テメェ分かってんのか、こっちには一般人がいんだぞ! おいコンビニ店員、プッチンするアレ大量に持って来い!』」 「OKレイちゃん任せるんだぜぇ!」 プリンバリアに押しやられていたコンビニ店員(45歳芸人志望独身)がサムズアップしながら走ってくる。 プリン的なものだけは通してしまうというのがプリンバリアの欠点だ。 これで攻略完了だと偽レイが思ったその時。 『からあげ~。あげたての~、からあげだよ~』 若干調子の外れた歌げなものが聞こえてきた。 ぶいーんと通り過ぎる軽トラック。 まあそれだけなら『なんだ通りすがりのから揚げ屋さんか』で済むのだが。 「ぐっ、これは……!?」 「そうだ……お腹がすくだろう?」 なんだかすごくイイ顔をした『剣姫』イセリア・イシュター(BNE002683)がコンビーフの缶をくるくるって開ける穴の開いたあの……ええと、アレ、鍵みたいなアレを持っていた。 「フッ、何の因果か……剣姫にして剣鬼のイセリアのてにこいつが握られることになるとはな」 「それだけでは、ない」 空腹で死にそうな一般人の皆さまが次に目にしたもの。 それは、揚げたてのから揚げが無限量産されていく様である。それだけなんだけど……それだけなんだけど、なんか、もうっ! 「今は夕方、夕ご飯前……こんな時間にそんなものを見せられては……!」 「ああ、これに付いてくるがいい」 魔剣から揚げ串を顔の前で水平に構える『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)。 「大事件と聞いて本部にはせ参じた所『分かってるから』みたいな顔でこの仕事を紹介されたが……いい、これは騎士だからな」 冷静に考えたら剣姫剣鬼と惟騎士のコンビがから揚げ屋さんと化しているこの事実は壮絶なものがあったが……。 「駄目だ、耐えられん!」 「からあげください!」 「からあげペロペロォ!」 「『あ、おい待てお前ら!』」 一般人の皆さんが大量に流れていく。 偽レイはぎりぎりと歯噛みした。 「『まさか俺から回収した魔剣を逆に利用してくるとはな……だが、あの白服達はこの魔剣を持つべくして持っていた連中だ。それ以上のマネがお前らにできるか?』」 「フ、愚問」 悪紋はGペンを強く握りしめると、天に掲げて見せた。 「レェェェェェェッツ、劇画・イン!」 ゲキガインって言っちゃった。 ●魔剣チワワ×魔剣マッスル=? から揚げ屋さんを追いかけていた一般人たちだが、中には意志の強い人達や元々お弁当持参してた人達なんかはトラックを追いかけることなく、こりゃヤベェと偽レイの元へ戻ろうとしていたりした。 「レイちゃんまだ居るかな!」 「大丈夫だこの路地を曲がればすぐに……!」 どたどたと路地を曲がる一般人の皆さん。 が、彼らははたと足を止めた。 「皆!」 「夏の準備は!」 「「OK!?」」 ビキニ姿の山川 夏海(BNE002852)とキャットガールの『ものまね大好きっ娘』ティオ・ココナ(BNE002829)が道のど真ん中でポージングしていた。 ポージングって言うか、ダブルバイセップスしていた。 夏海の手にはダンベル型の魔剣マッスル。ティオの手にはチワワの尻に剣刺したと言う驚異の武器魔剣チワワが握られている。 『周囲の人間を強制的に筋トレさせてしまう』という魔剣マッスルと、『周囲の人間を強制的にメロメロにさせてしまう』と言う魔剣チワワが並んでいたのである。つまりどういうことか? 「「オゥケェェェェイ!!」」 一般人の皆さんが一斉にダブルバイセップスした。 おじさんもおばさんも。子供からお年寄りの皆さんまでこぞってブートキャンプ状態である。 「筋トレしようね、今すぐしようね!」 「レイちゃんこと気になるけど後にしようね!」 「しょうがないね、筋トレしようって言ってるもんね!」 この際、夏海とティオが無駄に(無駄ではないけど)巨乳であることはもう関係が無かった。できれば関係したかったが、もはや眼中にすら無かった。 みんな筋肉とチワワの虜なのだ。 「彼女と海に言ってもモヤシじゃ恥ずかしいよね。でも大丈夫。筋肉は一日にしてならずだけど、夏までの時間があればマシになるんだよ!」 ラットスプレッドからモストマスキュラーまでの流れをぎゅぎゅっと決めつつニッと歯を見せる夏海。 以前のマッスル騒動では目立たなかったが、夏海もむっちりしつつも内在的には筋肉のある子なので、意外とこういうポーズがサマになっていたりした。 「筋肉は嫌? でも適度な筋肉は代謝を上げてくれるるうえに痩せれる。そしてずっと健康的!」 「健康的だにゃ~」 とりあえず同じようなポーズをとってみるティオ。 「疲れてきた人にはドリンクサービスだにゃ~」 「あ、はいご丁寧にどうも」 「はいいいよその調子!」 「こ、こうですか」 「筋肉輝いてるよ!」 「こうですか!?」 「いっぱい筋トレしたらご褒美に撫でてあげるにゃ~」 「ありがとうございます!」 急きょブートキャンプ場と化した路地。 一般人は、まるで美人のインストラクターさんがいるからって通ってる間にいつの間にかマッスルになってしまったおじさんのごとく筋トレに嵌り出したのだった。 ●魔剣お線香×魔剣スギ花粉=? 夏海とティオのメロメロブートキャンプはそれなりの効果を発揮していたが、やはりそこを抜けてくる者も少なくない。既にマッスル済みな人とか、やたら頑固な人とか。 そんな人たちがどうしたのかと言うと。 「……ええと、どうなったんじゃったかのう」 「あー……どうだったかのう……」 おじいちゃんになってふがふがしていた。 その横でお茶啜る『エターナル・ノービス』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)。 って言うかゴス婆さん。 「ひゃっひゃっひゃ、ワシの目が黒いうちはここから一歩も進ませんぞい!」 「いやもう碧なんじゃが」 「……え? そうだったかい? どれ、もっとよく見てみい」 「これゴス婆さん、それペコちゃん人形じゃよ!」 「なんじゃって? ぺこにゃん音頭?」 「ぺーこぺーこにゃーんにゃーんぺーこにゃーん……へっくち!」 『薔薇の吸血姫』マーガレット・カミラ・ウェルズ(BNE002553)が突然くしゃみをした。 メイの持ってる魔剣お線香(っていうかお線香)の煙がくすぐったかったからではあるまい。 「ボクは花粉症じゃないからそういうのよくわかんないんだけどくしゅん。そんなにひどい物なのかなくしゅん。くしゅん、くっしゅん! う、うわー! 目が痛いかゆい鼻水が水道の蛇口みたいにはふはふは……!」 木刀から黄色い粉をまき散らしながらくしゃみを続けるマーガレット。彼女が持っているのは魔剣スギ花粉である。 「で、でもこれってただの老人虐待じゃくっしゅん! ずび、うええ……もうみんなヨボヨボで、ぐしゅ、ええと……ふが……ふがふが……」 そしてマーガレットもおばあちゃん化した。 「ぶえっくしゅ! なんじゃマーガレットどんや……え? なんでワシらこんなところにいるんじゃったっけ?」 「んー? ……ええと……なんだったかしらねえ。確か、魔剣……杉田智和」 「違う気がするのう。魔閃光がどうとか言っておったような……」 「なんじゃったか……これ、爺さん。しっとるかい?」 「あー? わしゃしらん!」 「あんたが知らんかったら誰がしっとるん!」 「知らんがな! わしに聞かれても……ふえ、ふぇ、ふぇっぐじゅ!」 「へーっぐじゅ!」 「ぶうぇっへ、へっぐ!」 「ヴぇヴぇえ……げふげっふ!」 「もうええわ皆もっと花粉症ひどくなったらええわー!」 できれば。 できれば現状を詳細に書き記したい所だが。 麗しのロリバ……幼女のメイやインテリキャラな節があるマーガレットがぐじゅぐじゅのしわしわになってる様を描いたが最後色んな層から怒られるかもしれない。 なので、想像で補って欲しい。 なんだかとても酷い状況なんだって、思って欲しい。 ●魔剣から揚げ串×魔剣コンビーフ 『ぶえっくしょい! なんじゃいそりゃ、ワシが何したんじゃ!』 『やかましいわ! ボクばっかりぐじゅぐじゅは嫌だー!』 『口調ブレすぎじゃのう』 『ワシが未だに営業で稼げてるの、なんでじゃろーう』 『なんでじゃろーう』 『こらジジイギター弾くのやめんかい!』 通信機越しに老人同士の喧噪が聞こえてくる。 「どうやら、向こうはうまく行ってるようだな」 「これらも負けていられないな。少なくとものラインは死守する」 イセリアと惟は背中を合わせつつ、沢山の人々にぐるりと囲まれていた。 から揚げ串を正眼に構える惟。 「これ、騎士なれば」 コンビーフのあの、くるくるする、あの、アレを大上段に構えるイセリア。 「剣姫にして剣鬼、イセリアの名にかけて」 二人のアイキャッチが左右からシャキーンと流れた。『カッ』でも可。 「「このから揚げを売り続ける!!」」 「「ヒトツクダサァァァイ!!」」 老若男女(特に若い層)が一斉に飛び掛ってくる。 「そう慌てることはない。この新作から揚げはタダだ! 衣はカリッと中はジューシー。なくなる心配はないから一列に並べ、ちゃんと並べば一個おまけにサービスするぞ!」 「一個サービスだと!?」 「並ばいでか!」 イセリアがコンビーフ開ける時のアレをぶんぶん振り回しながら号令をかけると、一般人の皆さんは一糸乱れぬ動きで一列に並んだ。ちゃんと蛇行コースを作るくらいの連携っぷりである。食欲とは偉大なものだ。 「よく並んだな……いいだろう。ただのから揚げだけでは心もとないし飽きるだろう。唐辛子やレモン、マヨネーズも用意している。どうしてもと言うならパンもあるから唐揚サンドができるぞ!」 「パンは試食に入りますか!?」 「……入らない」 「おいコンビニ店員今すぐ超熟持って来いコラァ!」 「はい喜んでぇー!」 「五枚切りの山形な!」 向うからぞろぞろと行列を作っては唐揚に被りつく一般人の皆さん。 惟とイセリアは目くばせをし合い、そして同時に彼方の空を見た。 「あとは、上手くやれよ……」 ●戦闘シーンが無いと番組として成立しないってプロデューサーが言うから仕方なく挿入してみたシーンがむしろ伝説になるという皮肉 「うおー、なんとかホールドじゃー!」 顔の線が五本くらいに増えた悪紋が偽レイの腰を正面から掴んでブリッジしつつドカーンと地面に叩きつけた。 「『はぐお!?』」 一瞬白目になる偽レイ。 腕を離して解放されたかと思いきやゐろはが電柱を(電柱を!)上からズドンと叩き落としてきた。 モーション的には花瓶とかで人の頭を叩く感じだったが、なんつっても電柱のアホみたいな重量がかかっているのだ。偽レイは魔剣ニートでガードしたが(無論魔剣は悲鳴を上げたが)、そんなのお構いなしよって勢いで悪紋が拳を握りしめた。 「待たせたな、お遊びはもうおしまいだぜ……」 「というかプリンですよプリン。最近のプリンで良かったのはスタバのプリン的飲み物にチョコレート味のカキ氷乗ったものかな。久々にプリンは飲み物ーって感じがしたんだがあれ、カレーは飲み物って言葉よりプリンは飲み物って言葉をはやらせたい。ストローで飲むのもいつもと違う触感でいいしな。あとプリンとチョコレートというのも相性がいい。そう考えるとプリンにカラメルを合わせるのは当然の事だろと思わないか?」 「『おい後ろのお前五月蠅いぞ!』」 「プリンの定番と言えばプッチンのやつだ。プリントカラメルの定番的組み合わせというのが良い。プリンに初めてカラメルソースをかけた人は偉いな。私などハッピーサイズを一人で食べてしまうのだがそう考えると二個くらい行けそうな気がする。ちなみにあのプリンはケミカルプリンといって厳密にはプリンじゃない、ゼラチンで固まっているようだ。あ、底の突起は折らない方だ。むしろ早く食べたい」 「『だめだコイツ全然聞いてねえ!』」 「まって今牛乳プリンについて語るから」 「『やめろテメェ尺があと何文字残ってる思ってんだ!』」 「まーそうだよね」 「巻き展開が御所望か。話が早いぜ」 ていっと同時に身構えるゐろはと悪紋。 「『クソッ、魔剣ニートがもっと働いてくれれば……!』」 『甘いな若造!』 べりっと魔剣のガムテが剥がれる。 『我はソードオブニート。働かなき魔剣! 戦闘力など……ある筈があるまい!』 「『だろうな畜生! おい、俺を倒しても第二第三の俺が――』」 「「やかましい!」」 二人の別次元メガトンパンチが炸裂。 偽レイは凄い早さで吹っ飛んでいき、そしてお空の星になったのだった。 かくして、一般人を巻き込んだ一大騒動は一人の死者も出すことなく、強いて言うなら一部の筋肉痛と食べ過ぎと脱水症状を起こすのみに留まった。 だが彼女達の戦いが完全に終わったわけではない。 杵築神社にて待つと言う、全ての真実のために。 というか、シリアス展開を軽くぶち壊すために、行くのだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|