●哀ある限り戦います 「ねぇ、これどーお?」 女の甘い声が響けば。 「いいねいいねー。あー夏が待ち遠しいぜ」 鼻の下を伸ばした男がそれに答える。 最近暑くなってきたこともあり、デパートの水着売り場にはこのようなカップルの姿も珍しくはない。 「海でもプールでも早く開かねーかなー。もう暑いんだしさー」 「そんなこと言ってぇ、アタシの水着が見たいだけでしょお?」 「あ、やっぱわかるー?」 あははうふふ―― なんだこいつらイラッとする。 笑う男の肩が急に掴まれた。訝しげに振り返る男、その目が驚きによって大きく見開かれる。 上げられた悲鳴は女のもの。それはそうだ――誰だって驚くし悲鳴も上げるだろう。 目の前には三人の男女。その誰もが派手な戦隊物のような衣装を着ている。 赤とピンクの混じった戦闘服の女に、7色の輝きを放つラメスーツの男、更には白黒のツートンカラーの男。 派手な衣装もさることながら、カップルの目線はもう少し上を見上げている。つまり彼らの頭だ。 そこには―― 派手なピンクのふさふさ。7色のふさふさ。パンダカラーなふさふさ。 ――つまり、全員アフロであった。 「な、ななななんだこいつら」 すっかり怯える男にずいと近寄り、激昂した表情で詰め寄ったのはピンクのアフロ女だ。 「一つ! 人世の……あー忘れたしめんどい!」 腹ぱぁん! と謎の音を響かせて。腹部への強い衝撃に男が泡を吹いて倒れる。 ひっと悲鳴を飲み込む女に同様に詰め寄り。 「二つ! いいから殴らせろ!」 腹ぱぁん! カップルが並んで床に転がる。どうやら死んではいないようだが―― 「レインボー! パンダー!」 「イエス、デンジャラス!」 呼ばれた二人が気絶中のカップルに近づきごそごそと―― 僅かな時間の後、アフロ達は場を離れデパート内を闊歩する。 「許すまじカッポー! 奴らの放つ熱が地球温暖化の原因なのだ! 天誅!」 肩を怒らせ歩くアフロ集団。デパート内各地で悲鳴が上がる。 彼らの立ち去った場所で―― 気絶したまま、アフロを装着させられたカップルの姿があった―― ●撲滅戦士アフロデンジャラスの歌 沈む夕日の中に たたずむロンリネス 戦う為に 生まれたやつら 一つになった気持ち 虹のアフロ装着 溢れる私怨 力に変えて カップル発見 アフロの指令 撲滅戦隊アフロレンジャー 砕け愛を 壊せムード その毛で! 哀の力で進め 奇跡の戦士その名は ア・フ・ロ ア・フ・ロ アフロ! デンジャラ-ス 昇る朝日の中に 駆けゆくロンリネス 滅ぼす為に 生まれたやつら 一つになった怒り パンダアフロ装着 溢れる涙 憎悪に変えて カップル確認 アフロに捧ぐ 撲滅戦隊アフロレンジャー 砕け恋を 壊せ雰囲気 その毛で! 哀の力で進め 奇跡の戦士その名は ア・フ・ロ ア・フ・ロ アフロ! デンジャラ-ス ●哀とはどのような色をしているのでしょうか 「というフィクサード事件が起こるわけデーして」 『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)が手を振る。 「さっさと行ってアフロを撲滅して来てクダサーイ」 なげやりである。 「もうさっきの歌には突っ込まないけどさ……せめて説明をくれ」 リベリスタの言葉にはいはいと頷き。 「資料嫁」 誤字である。 『撲滅戦隊アフロレンジャー』 アフロデンジャラス、アフロレインボー、アフロパンダーを筆頭とするフィクサード集団。 その行動目的は地球の平和の為にカップル撲滅である。 ……どういうことだよ。 「デパートで手当たり次第に殲滅対象のカップルをサーチしてマース。人気のない場所におびき寄せる必要がありマースね」 屋上が封鎖中で人がいないのでおすすめデースとロイヤー。 「ただしおびき寄せるには、とっても目立つ熱々のカップルが必要になりマースね」 まぢかよ。 フリでもなんでも、ラブラブして下さいネーと含み笑いをしつつ。 「エーこんな連中デースが色んな意味で残念なことに、かなりの実力を持っていマース。特に彼らの攻撃には特殊な力がありマーシて」 その攻撃には二種の力が宿るという。 一つは必殺。彼らの力は問答無用で相手の心を折る。 そしてもう一つは―― 「彼らにやられた者はアフロになりマース」 ――え? 「4.5日外れまセーン」 リベリスタ達は、重傷だけは負うまいと心に決めたという。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月10日(日)23:05 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●時にはアフロの話をしようか 「――ロストブレッシングアフロデンジャラスギャラクティカなんとかー! ……ソウルフルッ!」 「デスパレートからの――パニッシュ!?」 少年漫画のような効果音を響かせて――なぜか正面アップでアッパーしてるのに後方にエビ反り状に吹っ飛んでいった『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)。小宇宙的な演出である。 錐揉み状に吹き飛んだ彼は危険な角度で落ちていく……が、不思議な事に後頭部を地面に叩きつけられる音はしなかった。 代わりにしたのは、ふわっという優しげな音。 「デンジャラスギャラクティカなんとか……恐ろしい技です……」 なぜか解説ポジションの『第26話:壁の中にいる』宮部・香夏子(BNE003035)。それにしてもこの子棒読みである。 リベリスタ達とアフロレンジャー達。その視線の集中する先にあるのは気絶した翔護―― いや、もこもこふわふわにぎざぎざの混じったアフロウルフ翔護であった。 ●恋は遠い日のアフロではない 話は遡る。 「そう、このオレSHOGOが。そして本日のSHOGOガール・波多野ちゃんが。悪い悪党を根こそぎパニッシュ☆」 あれ、あんまり変わらない。周囲に☆を振りまいてカメラ目線でキメ顔登場の翔護。恋人見ろよ。 カップル撲滅を掲げるアフロレンジャー。それを誘き寄せる為の即席カップルではあるが、黙っていればイケメンの翔護の隣を歩くのは『狂気と混沌を秘めし黒翼』波多野 のぞみ(BNE003834)。色気たっぷりスタイル抜群の美女である。 「今日はよろしくお願いしますね泰邦さん♪」 色気をたっぷり振りまいてのぞみが笑う。美男美女のカップル、自然と注目を集めそうなものだが…… 「まずは恋人ロールを楽しんじゃおうぜ! 水着とか見に行こう、紐っぽいやつ」 翔護の言動と一音節ずつ振りまかれるキメ顔に、一般人はそそくさと距離を置いていた。素である。 そんなデート中の二人を見つめる影。 ピコピコピコ…… 二人の護衛としてコッソリ後をつけている香夏子である。 ピコピコピコ……「残影剣! 残影剣! ツインストライク!」 「……はっ。携帯ゲームの世界に引きこもってる場合ではないのです」 見つめてもいなかった。携帯ゲームを投げ捨て二人を追う香夏子。そんな彼女の今日のスタイルは…… イエローアフロを装着し、その小さな体に詰まっているのは溢れる愛と勇気とカレー臭。 「今日の香夏子は正義の忍者戦士『アフロニンジャ』。愛と勇気とカレーのために戦うのです」 勿論名前は今決めました。 走る香夏子。揺れるアフロ。アフロから突き出すあほ毛がここにいるよと主張している。 彼方を見通す鷹の目が、視界の隅にそれを映した。 アフロ。アフロ。アフロの集団。 「見つかったみたいだぜ波多野ちゃん――」 振り返った翔護は急に身体に抱きつかれて硬直した。 「ココじゃダメですよ、泰邦さん」 のぞみの艶っぽい吐息が耳をくすぐる。 「続きは屋上で……ね」 ウィンク一つ。これみよがしに抱き合い意味ありげな言葉を漏らし……演技だとわかっていても並の男では抗えないだろう。 もっとも、こういうことに慣れていそうな翔護ならば問題はないだろう―― 「……あ、はい」 SHOGO、実は打たれ弱いの。 「アフロデンジャラスより各員へ。獲物を速やかに狩るべし」 デパート内を疾走するアフロ集団。やだこわい。 「どうやら屋上に向かっているようなのです」 「む、レインボー・パンダーはそれぞれのルートで屋上へ集結。あたし達はこのまま追跡する」 「イエス、デンジャラス!」 メンバーが散開し、残る二人で後を追う。 二人で走る。 走る…… 「……あれ? 君、誰?」 振り返り、問う。 「香夏子はアフロニンジャなのです」 「あ、そっか」 頷き、走り続ける。 「あ、あのっ。これ……」 出会いは嵐のように訪れて―― 白黒のアフロを装着する筋肉質の男が立ち止まったのは、進路を塞ぐように現れた女性の為。 歳の頃は10代中頃か。恥ずかしげに頬を紅潮させ、はにかんだ口元からこぼれる八重歯が愛らしい。おどおどした態度に一所懸命の勇気を貼り付けて――少女の手に、握り締められた手紙。 ……まさか、な。まず最初に出たのは否定だ。彼女の気持ちをではない。自分がモテるはずがないという否定。 そのパンダーの手をそっと取り、手紙を渡した少女――スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)は、瞳を逸らさず柔らかな笑顔を魅せつけた。 「パンダさんは魅力的です。御自分を否定して殻を作り、縁を遠ざけてしまわないで下さい」 ――屋上で、待っています。 水色の髪をなびかせて。呟きと残り香がいつまでもそこに残っていた―― 屋上の扉が蹴破られる。そこで待っていたのは5人の男女だ。 「わぁ、ホントにアフロだ」 猫の耳をぴこぴこ動かして興味深げに呟いたのは『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)。 (でも、自前のアフロじゃないんだよね……) カップルへの嫉妬をアフロで表現する。そんなのはアフロへの冒涜だ。 アフロレンジャーなら、もっとアフロを愛すべきなのだ! (あ、でもあたしはアフロになるのは勘弁です。アフロになんてなってたまるものですか!) 酷い話である。 ティセとスペード。その奥の翔護とのぞみを見やり、デンジャラスは拳を鳴らした。 「全員それなりに世を満喫してるオーラがぷんぷんする――憎い!」 完全に私怨だこれ。 ――沈む夕日の中に たたずむロンリネス―― その彼女の耳に届いたのは、歌だ。アフロレンジャー達で作ったデンジャラスのイメージソングである。 「……全然なっていないな。歌というのがどういうものかわかっていない。流れるようなハーモニーを成してこそ、耳に残るようなフレーズになるというものだ」 「誰だ!」 現れた5人目は歌のお兄さん……じゃない、『Voice of Grace』ネロス・アーヴァイン(BNE002611)である。 「師は言っていた。嫉妬ほど、誇れる自分から遠ざかるものはないと」 言葉は歌うように紡がれる。耳に心地よい美声故に、心を揺さぶる効果も強い。 「曲作りも女としてのレベルもまだまだだ。人を羨む前に、自分の惚れっぽさを治したらどうだ」 師より賜った正素の太刀を抜き放ち、ネロスは強く言い切った。 「突然のお呼び出し、申し訳ありません」 スペードは柔らかな笑みで出迎える。 「い、いや、自分は……」 「私は、パンダさんのことが好きです」 直球で伝える好意。それは素直な気持ちだから。 「もっともっと、パンダさんのことを知りたいです」 だから響く。 自信を持って貰いたい。 好意を届けたい。 そう出来たら、嬉しい。 ――お友達から、始めましょう? 「おぃおぃ、なんて茶番だぃ?」 鼻で笑うレインボーに。 「嫉妬で暴れるのも十分茶番なのです」 隣で香夏子が呟く。いつまでそっち側にいるの? 「大体男2人に女1人なんて、結局チーム内でミソ作って解散する構成なんだ! ……って隣の人が言ってました」 「いや、そんなことは師も俺も言っていなかった」 翔護の言葉に真顔で答えるネロス。 情報共有、効率上昇。待ち時間の間にのぞみは全ての準備を整え終わっている。 「さて、そろそろ始めましょうか」 「恋人達のひとときを粉微塵にしようなんて、オレ達チームSHOGOが許さない!」 のぞみの宣言に重ねて。翔護はキメ顔で銃を抜く。 「それじゃいくぜ、キャッシュからのー……パニッシュ☆」 ●深く愛しいアフロ世界 「――パニッシュ!?」 そして冒頭である。 デンジャラスの開幕虚空が周囲を巻き込み翔護に直撃。 HP満タン→直撃→HP0(Over Kill)←今ここ うん、仕方なかった。 「飛んで行きましたね……☆だけに……☆だけに」 巻き込まれるのぞみをかばい、香夏子も少なくない傷を受ける。デンジャラスは速度と破壊力特化。長期戦は難しい。 もっとも戸惑いは両陣営共にである。 「何してるのパンダー!」 デンジャラスより先に動くはずのパンダーは動かない。 戸惑っているのだ。なにせ女の子からの告白なんて齢48になって初めてである。 攻撃を仕掛けるには目の前の少女を横切るしかない。だが、少女の顔をまともに見れないパンダーの足は鈍い。 「モテてるパンダさんなんてパンダさんじゃないよ!」 先手必勝。傷つく言葉を投げかけつつ、足を止めたパンダーにティセが素早く斬りかかる! 疾風迅雷、怒涛の連打が動きの鈍いパンダーの芯を捉え叩きのめした。 「おぃおぃ何やってんスかパンダーさん。そんな可愛い子がパンダーさんに惚れるわけないじゃないスか」 ティセの拳がレインボーをも巻き込むと、レインボーは下がりながら悪態をつく。いや、嫉妬かもしれない。 「あ? 今なんてったレインボー」 「ぃやぃや、在り得ないッスよねマヂで。ガチで。だってパンダーさん女の子と付き合ったことない歴=年齢でしょ?」 へらへら笑うレインボーに何か言うより早く。 「パンダさんを、いじめないでください……っ!」 スペードの言葉に、誰よりも驚いたのはパンダーだ。 「虹色アフロさんは確かにモテそうですが、最終的に振られてるのは性格に問題があるからだと思いますっ!」 絶句。 「スペードお姉ちゃん、そんなにパンダさんが好きなんだ」 ティセの後押しも重なって、レインボーは唇を噛み締めて術式を組み立てた。 「まとめて吹き飛べよ!」 「味方もろともですか……やれやれ、コレだから嫉妬は怖い」 レインボーの放つ炎が味方ごと炸裂すると、感慨深げに言葉を吐きのぞみはパンダーにガトリングを向けた。 「さあ、私のアームガトリングを味わってくださいね♪」 獄炎の混乱の中、連続する銃撃が敵の身を削る。 「恋人たちの黄昏、ただずむロンリネス~」 アレンジした歌を口ずさみ。巻き上げられた螺子がネロスの身体を突き動かす。 狙うはパンダー。素早い連撃がその身を激しく打ち叩く。 「私怨の血潮 駆け巡る戦士達」 歌は続く。戦場に響く剣戟はそのコーラス。 「くそぅ、認めないし、許さないよ!」 再び術を紡ぐレインボーに。 「ふむ、その焦り様こそパンダーに恋人オーラを感じ取っている証拠じゃないかね」 突然の声に振り向き、瞬間焼きつく光がレインボーを襲った。 物質透過の力で床に潜んでいた『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)は、レインボーが焦り防御の疎かになる最後のタイミングを見逃しはしなかった。 「さて……予見しよう」 プロフェッサーは言葉を紡ぐ。それは相手を呑み込む言葉だ。 「お前さんは以後、何も出来ずに完封される」 「もう、何してるのよ!」 仲間は足止めを受け、戦っているのは自分だけ。デンジャラスは頼りにならない仲間ごと敵を吹き飛ばさんと駆け出す。 破壊力を伴う足が強く地を蹴り、目指すは新たな敵にして、もっとも恋人オーラを放つオーウェンだ。 壊す壊す。カップル撲滅! 雄叫び上げて拳に業炎が纏わりつき、そしてその首に気糸。 ……気糸が巻きついた。 「――!?」 一気に締めあげられデンジャラスが動きを止める。 気配なき隠形。 影より姿を現したは影。『影なる刃』黒部 幸成(BNE002032)は影に潜み罠を張る。 影を変幻自在に操るその動きはプロフェッショナル。気づくべくもない。 「また珍妙な手合いが出たものに御座るな……」 ――仲間をやらせるわけにはいかんで御座るぞ。 「さすが癒し系アイドル忍者なのです」 同じニンジャとして負けてられませんと、ニンジャ式ハイスピードを終えた香夏子が動き出す。 加速! そしてニンジャ式ライアークラウン! いわゆる手裏剣の術がパンダーの身体に突き刺さる。 「まだです! まだ香夏子のアフロは尽きてません!」 ここからが本番とばかりに、香夏子の猛攻が始まった。 「惚れっぽそうなうえに、男運まで悪そうなピンクアフロさんですっ」 「放っといて!?」 スペードの噛みつきが身動きの取れないデンジャラスを襲い悲鳴(別の意味で)が上がる。 そんなスペードをティセが見つめていた。 (パンダーさんのどこがいいのかなぁ?) 歳だし。イケメンじゃないし。アフロ燃えるし。 やっぱり興味があるのはイケメンだよ。 そりゃあスペードお姉ちゃんみたいに好きってはっきり伝えたりとか羨ましいけど。 オーウェンさんは彼女いるんだよねぇ。ネロスお兄ちゃんもモテそうだし。 幸成お兄ちゃんはアレだけど。 つまり何が言いたいかって? 「あたしは恋人募集中の独り身です。カップルはちょっと羨ましーです!」 (自分はまだ恋人持ちというわけでは御座らんからな……) ――まだ。 ティセの呟きに対して強調したか否か。幸成は縛り上げたデンジャラスに近づく。 「自分が幸せになれぬ原因を幸せなカップル達のせいにする……斯様な心持ちでいるうちは、幸せになどなれるはずもなし」 痛い所を突かれ、デンジャラスがぎりりと歯を食いしばる。 「自分を高みに上げるでなく、他人を自分の位置まで下げる考えでは、幸せなど到底掴めぬもので御座るぞ」 「さて山口君」 「本名は止めて!?」 リーディングで読み取ったレインボーの名前を呼びかけ、オーウェンが語りだす。 「あのお嬢さん、お前さんと結婚を前提にしたお付き合いがしたいようだが」 当然虚言。 だが食いついたレインボーに指で示した先で、ティセが笑顔で手を振っていた。 「レインボーさん、カッコイイ! そのアフロも凄い似合ってます」 子供っぽくも愛らしい少女に褒めちぎられ、自分大好きなレインボーは満面の笑顔。 「イケメンなら何をしても許されるよね。でも世間に迷惑をかけないイケメンになって欲しいな」 にこにこ顔のティセ。 「二度と迷惑かけないって誓わないとアフロに火つけちゃうよ? アフロって凄い良く燃えるんだから。フィクサード相手になら何やっても構わないし」 ……あれ? 雲行きが怪しくなってきた。にこにこ笑顔が一層怖い。 「怖いか? だがお前さんは動けん」 頬を引きつらせる山口に、オーウェンは涼しげな顔でそう告げた。 包囲されてようやく反撃に出たパンダーがのぞみを叩く。弱点をつく素早い一撃は深く傷を残して。 「なかなかやりますね。でも、やられてばかりじゃないですよ!」 けれどのぞみは自身を癒す力を紡ぐ。山口……もといレインボーが封殺されている以上勝利は確実に思えたが―― 瞬間、爆音を響かせて。 「アフロの神よ! あたしに力をぉ!」 幸成の放つ縛を力で引き千切り、デンジャラスは周辺のリベリスタ全てに襲いかかる! ――腹ぱぁんっ! 激しい掌底が傷ついたのぞみの身体をまともに吹き飛ばし。 地を削り転がった先でのぞみが…… いや、アフロポニーが倒れていた。 狙われたのはのぞみだけではない。 幾人かは攻撃を避けたが、激しい一撃はネロスの体力を削り、更にスペードに襲いかかる。 「――あっ」 腹部への衝撃。激しい一撃に吹き飛ばされ地に沈む。意識は朦朧とし、最早立ち上がる力はない。 「――どうして」 呟きはスペード。彼女の目の前で、身代わりとなったパンダーが息を吐く。 「……嬉しかったから、かな」 男は目を閉じる。その身体にすがり、零れ落ちる涙もそのままにスペードは大きくその名を叫んだ。 ……死んでません、念の為。 「何故悲恋を生み出すので御座るか! 地球平和などという戯言で、許されるものではない!」 あれ、幸成が熱い。 迫力に圧されたデンジャラスの身体をその気迫にて縛る。 「というか、パンダー殿以外は異性とお付き合いできる所までは行っているので御座ろう。それでなおカップルを憎むなど、パンダー殿に申し訳ないと思わんので御座るか!」 あれ、戻った。 「愛の匂いを逃しはしない~」 迫るはネロスの歌。そして剣。 ――一閃。 「微笑み忘れたアフロ達為に今、ジャッジメント」 最後のフレーズは倒れ行くデンジャラスへの手向け。 「後は一人だけなのです」 香夏子がそちらに目を向ければ。 「夕日の下にて口付け。あれは忘れられない経験であったな」(ピンナップ参照) 「やーめーてー!」 縛り上げられた山口君の前に座り込み、オーウェンの長い話が綴られていた。 ●嗚呼世界よアフロなれ 「んーアフロですか、ソウルを感じますね。何気にかっこいいかも♪」 「パニッシュもし終わったし、デートの続きしちゃう? 紐っぽい水着買うところから」 特に気にした風もなく、のぞみと翔護は平壌運転です。 「自分を大事にしよう。あと歌を練習しようか。女を磨け、そうすれば男の方から寄ってくるさ」 女にとって最大の財産といえる美貌を持っているんだからな―― 笑いかけるネロスに、デンジャラスは熱っぽい視線を向けて頷いている。結局惚れっぽさは治らなかったらしい。 「夏の日の思い出といえばな――」 「まだやってるんだね……」 「これは、独り身にも辛いもので御座るな……」 ティセと幸成の視線の先で、オーウェン劇場はまだ終了してないぜ。 「香夏子は知っているのです」 面々とは少し離れた先で、香夏子はそれを見ている。 「傷が癒えたら、どこか一緒に遊びに行きたいですね……」 眠るパンダーを膝枕して。スペードが柔らかく微笑んでいる。 その様子を見つめ、香夏子は振り返った。 「これが天下泰平こともなし、なのです」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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