● 「フォオオオオオオ!」 走る。 「フォオオオオオオオオオ!!」 走っている。 「フォオオオオオオオオオオオオ!!!」 走ってくる。 純白に輝くブリーフ的な物を頭部に装着した黒いマッチョが、雄叫びを上げて大地を疾走していた。 ● 「――というわけだ」 「どういうわけだよ!」 当然のようにツッコまれた。 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は誤魔化すように視線を逸らしたが、咳払いの後、再びリベリスタ達へ視線を向けて落ち着いた声色で話し始めた。 「わかった、もう少し詳しく話そう。以前、不可解な姿をしたエリューションが出現したのは知ってるか? 少なくともアザーバイドでは無いが、とはいえノーフェイスとも言い難く、他のエリューション・タイプとも言えない……特殊な特徴を数多く兼ね備えた奴らのことだ」 ああ、と集まったリベリスタ達の内から声が上がる。彼らの中にはその存在と交戦経験のある者がいるのかもしれない。 「詳しくはその事件関連の報告書を確認してみてくれ。 それで、だ。コイツ等の多数の特徴の組み合わせを鑑みるに、人為的な追加工程の上に成り立つ『研究の結果』としてこのような存在が生まれたのだと推測できるらしい。 よってアークは、コイツ等を『キマイラ』と呼称することにした」 「キマイラ……」 ブリーフィングルーム内にざわめきが起こる。神話やフィクション作品などで耳にする名を冠した新たな敵の出現に、リベリスタ達の表情には様々な色が見られた。 「ハイ真面目パート終わり。というわけで、さっきのアレが件のキマイラなんだが」 「……全国のキマイラさんに謝った方がいいと思う」 正面のモニターに大きく映し出された、ブリーフ的なサムシングを被った異形(へんたい)にリベリスタ達の熱い視線――もとい、白い目が向けられる。 伸暁がやけに薄い資料ファイルを手にし、その紙面に視線を走らせた。 「何々……コイツはとにかく常に走り続けていて、止まるということを知らない。 でも同じ速度で併走したり何らかの乗り物に乗らなくても、こちらの攻撃は当てることができるようだ」 もちろん遠距離や近距離の概念は考慮しないといけないけど、と伸暁が一言付け加える。 「加えて、コイツはバッドステータスの効きが少々悪い。それを頼りに戦うのは厳しいだろうな」 続けて資料をめくろうとした伸暁だったが、元より資料がA4用紙一枚で済んでいたためにもうめくりようがなかった。 「見た目はアレだが全体的な戦闘能力は高め、油断は禁物だぜ。 ――ああ、ちなみにコイツ、君達の下着を剥ぎに来るらしいぞ」 「…………え?」 最後の問題発言に目を点にするリベリスタ達をよそに、伸暁はそそくさとブリーフィングルームを後にしたのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:力水 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月13日(水)23:57 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●パンツ (キマイラ……フェイトがないだけでせんめつ対象なのに、人の手で人造の命をつくるなんて、主への冒涜です。 だからロズ、この悪魔を速やかにさばきます。 主よ、その為に罪をおかすロズをお赦しください) 地に膝をつき、祈りを捧げるシスター服姿の『祓魔の御使い』ロズベール・エルクロワ(BNE003500)の頬を撫でるように、季節外れの冷たい風が吹き抜けた。 金の髪を夜風になびかせつつ、祈りを終えたロズベールは瞳に力強さを湛えて立ち上がる。 でもノーパンだった。 詳しく言うと下の方がとてもスースーしていた。 かぼちゃズボンと白タイツのおかげで見た目にはわからないが、改めて言うとノーパンだった。 「なんだか……へんな感じですね。むずむずしちゃいます」 敵の攻撃に備えるためとはいえ、やはり下着を身につけていないと落ち着かないのだろう。 彼がすらりと伸びたやや色白の脚をもじもじとさせていると、その肩に『奇術師』鈴木 楽(BNE003657)の手が優しく置かれた。 「ほう……穿いてこなかったようですね。実はね、私もなんですよ」 シスター服の少年の背後からタキシード姿の仮面紳士が周囲に感づかれないよう、そっと語りかける。 伏せ目がちに顔を赤らめる少年の様子に、楽の口角が笑みを形作る。 「なるほど、お二方は着けてないのでござるな」 「ぬっ!?」 「わ、っ……!?」 ひそひそと話し合っていた二人の側に忍者らしくこっそりと現れたのは『おとこの娘くのいち』北条 真(BNE003646)。 桃色の髪に赤いくりっとした瞳が愛らしい。だが男だ。 「くっ、私達が穿いてないと知られたからには……っ」 「あ、いや、お二方とも相談の時に『下着は着けてこない』って言ってたではござらぬか」 「……ああ、そういえばそうでした」 思い出したように楽がぽんと手を打つ。 「真は、その、下着を着けてきましたか?」 思わず小声で尋ねるロズベールに釣られたのか、真も小声になりながらもしっかりとした口調で答える。 「拙者はあえて下着を付けて、敵を誘き寄せるつもりでござる。人より実践の経験が少ない拙者が皆の役に立つのなら」 「真は、男らしいんですね」 「ふむ……」 我が身を賭そうとする真の覚悟に、ロズベールと楽が感嘆の声を上げる。 えへへ、と可愛らしく照れる真であったが、彼が何を穿いてきたのかはまだ誰も知らないのだった。 一方こちらは女の子グループ。 「暑くなってきたから変態さんも増えるのかな? あ、でも製作者の人が変態さんなんだよね、たぶん」 いまいち目的が読めない敵に『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)が素朴な疑問を口にする。 「そういうことになるのかのぅ……ともあれ、放ってはおけぬのじゃ」 隣にいた『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)が応えるが、その表情にはどこか不安が見受けられる。 (わしは着物じゃし、あんまり線が出るのはつけないんじゃが……細かったりして取られると恥ずかしいしの……) そんなわけで与市が今日穿いてきたのは一般的な女性用下着。下着の線が出ていないかどうか、何度も着付けの確認を繰り返していた。 ちなみにティセが穿いてきたのは大人しめな白いOバック。知らない人のために解説すると、Oバックとはお尻に当たる部分が一部切り取られている下着である。 ……大人しめと言えるかどうかは個人の判断によるところが大きいかもしれない。 「べ、別にたいした意味はなくて、単に尻尾があるから、ですよ」 恐らく半ケツまでならオッケイなのだろう。きっと。 「マッチョなのは評価しますが、顔はブリーフですか……」 キマイラなので格好は仕方ないですが、と溜め息混じりに呟く『Fuchsschwanz』ドーラ・F・ハルトマン(BNE003704)だったが、 「……何処がキマイラ……? 変態が……ブリーフかぶった……だけのような……」 『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)が首をかくり、と傾げる。その言葉に改めて想像を膨らませるドーラ。数秒後、目のハイライトが薄くなり始めたところでハッと我に返ると、 「……うん、一気にやっちゃいましょう」 「変態……ころころ……すべし……慈悲はない……」 同意するように、こく、と頷く梨音の口元が嗜虐の形に歪む。サディスティックロリは止まらない。 「……ストレス発散しに来た! いぇーい見てるー?」 どこから見ているかも分からない六道の研究者達にしっかりアピールする『名無し』氏名 姓(BNE002967)の姿は、白のYシャツに黒のタイトスカート&タイツそしてヒールと、白と黒のコントラストが姓の容姿と相まってシャープな印象を与えている。 「こういう変態系はこれで相手した方が様になるだろ」 とは本人の弁である。 「あと、これは女装じゃない。女の子の格好だ」 キリッ、とカメラ目線で決める姓。そういうものなのだろうか。 そんな穿いてたり穿いてなかったりなリベリスタ達だったが、次々と競技場内部へと足を踏み入れていく。 リベリスタ達の下着の行方はいかに……! ●疾走するブリーフ 「最初にメンバーを見たときは私以外全員女性ですかやったー! なんて思ったんですけど、実際によく見てみたらそうでもなかったんですね、いやでもコレだけ女性が多ければ十分嬉し」 「フォオオオオオン!!」 「あ」 仲間達に翼の加護を与えつつ気分良く話していた楽が、突然の横からの衝撃にきりもみ回転しながら何故か真上に吹っ飛んだ。 どちゃ、というイヤな音を背にしながら走り去った黒い影を目で追うリベリスタ達。夜間ではあるが、まばらに点灯しているライトのおかげでそれを見逃すことはない。 チ、という姓の舌打ちが小さく響く。 彼らの視線の先には、純白のブリーフを頭に被った黒いマッチョがいた。 ようするに、 「変態でござるな」 真の言葉に全員一致で頷くリベリスタ達。あ、一応キマイラです。 「敵は一体ですが、なんとも恐ろしい相手ですね。気をひきしめていきましょう!」 ドーラの激励を受け、リベリスタ達が手はず通りに陣形を形成する。すぐさま前に出たティセの元へ、先程の攻撃からすでにトラックを一周してきたキマイラが突撃を仕掛けてきた。 「変態退散!」 仲間の中でも一、二を争うスピードの持ち主ゆえか、ティセはするりとそれを躱しつつ勢いをそのままに壱式迅雷を叩き込む。 だがティセのクローは僅かにキマイラの脇腹をかすめただけに終わった。 「っ、速い!」 崩れかけた体勢を整えつつ、キマイラから視線を外さずにティセが呟く。 あっという間に走り去ったのも束の間、再びキマイラがリベリスタ達へと接近する。 「これならどうでござるか!」 集中を高めた真がキマイラを視界の中心に置き、頭部の白いブリーフ目がけてブラックジャックを放つ。 しかしキマイラは走りながら器用なサイドステップでこれを躱し、そのまま真へと迫る。 思わず身構える真だが、彼の横からナイフを構えた梨音が飛び出した。 「ざしゅざしゅ……する」 速度を乗せた梨音のソニックエッジがキマイラの肩口を袈裟懸けに切り裂き、返す刃でさらに引き裂いた。 「フォ!?」 梨音の攻撃にキマイラは少しよろめいたが、強引に体勢を立て直すと真へとタックルを強攻する。 「ぐうっ!」 ドン、という音と共にはね飛ばされる真。しかし直撃は避けられたらしく、身体のバネを利用して真はすぐさま起き上がる。 さらに後方からは与市と姓の攻撃が飛ぶ。 「当たるかはわからぬが……」 「……狩ってやる!」 高次の集中から繰り出されるアーリースナイプとピンポイントが流星のようにキマイラを追い、着弾する。 「あ、当たったのじゃ」 着弾に安堵の表情を浮かべる与市の隣で、何故か股間に吸い込まれていったピンポイントを見て、よし、とガッツポーズを決める姓。 その様子に首を傾げる与市。とはいえ、キマイラの動きが止まったわけではない。 股間の痛みを誤魔化すように内股を擦り合わせながら走り来るキマイラの頭部が、突然光を放った。 「んっ……!?」 「目くらましでござるか!」 光輝くブリーフに思わず顔を背けたロズベールと真の間を、次の瞬間、風が通り抜けた。 ●盗んだパンツと走り出す ――ふわりと太ももを撫でる、吐息のような感触。 それは例えるなら草原を駆ける一陣の風。 この草原の先には一体何があるのだろう? そんな事を考えながら見上げた青空には、黒光りするマッチョが映っていた――。 「あ、ぅ……」 「ふわあ……」 がくりと崩れ去るロズベールと真。なんだか映像化できないような表情をしている。 「し、主よ、お許し下さい……」 「これがぶりふぃっしゅごっどはんど……く……くつじょくでござる……」 「二人とも、大丈夫ですか!」 腰が抜けているのか、立ち上がれない二人に楽が駆け寄り天使の歌で回復を施すが、 「こ、これは……!」 彼らの様子を見た楽の表情が強ばる。 「ど、どうしたのじゃ……?」 「何があったんですか?」 不安げに尋ねる与市とドーラに向き直った楽は真剣な表情でこう告げた。 「……二人とも、穿いていませ」 ぱかーん。 楽の頭に姓の投げたヒールが直撃した。再び昏倒する楽。 「報告せんでいい! というかロズベールは元々穿いてないじゃないか!」 「あれ……」 梨音の指さす方向には、右手の人差し指で下着らしき物をくるくると回しながらスキップ気味で駆ける変態(キマイラ)の姿がある。 「一体どんな方法で脱がせ……じゃなくて、どうしようもない変態ですね!」 ティセの額に浮かぶ怒りの四つ角。しかしキマイラが手に持っている――あ、今頭に被った――下着を見たティセが不思議そうな表情をした。 「あれ、でもあれ女の子用の下着じゃ……」 真の方を振り返るティセ。 「へ? 女物? 下着に男物と女物があるでござるか?」 「……え?」 リベリスタ達の間に、戦慄が走る。 ●その時研究員は その1 「あの少年、女物の下着を身につけておったようだぞ」 「男の娘の鑑ですな。いやしかしブリーフでもよかったかもしれぬ……」 ●閑話休題 「な、なるほど。下着にそのような種類があったとは」 「本当に知らなかったんですね……」 あの後、真に対してティセによる丁寧な下着講座が行われていた。 目をぱちくりさせながらメモを取る真。これでまた彼の『男らしさ』への道も一歩前進したことだろう。先は長そうだが。 しかし、そうこうしている間にもキマイラとの戦闘は無論続いている。 「で!」 下から振上げる様な足技から放たれるアデプトアクションでキマイラの逞しく太い腕を払いのけ、 「終わったかい!?」 軸足側のヒールを傷つけることなく絶妙なバランス感覚で脚を戻した姓が二人に声をかけた。 「ぱ……し、下着を被った途端、動きが良くなった気がするのじゃ」 義手と一体になった弓で矢をつがえ、与市が矢を放つ。 しかしキマイラはむさ苦しいポーズをバッチリ決めながらもそれを回避、狙いを与市へと定め距離を縮めていく。 さらに上腕二頭筋を強調するようなポーズを決めると、キマイラの身体がワセリンを塗りたくったような輝きを放ちはじめた。 「なんて濃い空気中のブリフィッシュエ――じゃなくてパワー!」 「知っているんですかティセさん!」 なんだかノリノリでツッコむ楽。 「あ、いえ、言ってみただけです」 返答はちょっと素っ気なかった。 そして、どこかエレガントな姿になったキマイラが通常移動がダッシュですと言わんばかりのスピードで突っ込んできた。 「ひゃっ……!」 慌てて避けた与市の横を、まるで地面を突き穿つような足使いでキマイラが駆け抜けていく。 風にあおられ、ちらりと覗く白襦袢。 与市の背後へと走り去るキマイラの手には下ろしたての黄色い下着が握られていた。間髪入れずそれを頭に被る変態(キマイラ)。 「取られたのじゃ……」 がく、と肩を落とす与市。 「女の子になんてことを……っ、せあっ!」 十数m先でUターンしたキマイラを視界に捉え、再度突撃が来ると踏んだ姓がタイミングを合わせて、アデプトアクション――跳び蹴りを放った。 キマイラの厚い胸板に突き刺さらんとするヒールキック。 「フォオオオ!」 ほぼ同時に姓の下着を奪おうとキマイラの太い腕がカウンターの要領で伸びる。だが姓は揺らがない。 (残念だったな! 下に着てるのは水着(競泳女性用)だ!) 姓の蹴りとキマイラのB・G・Hの衝突が、音となり戦場に響く。刹那の静寂の後、姓が蹴りの反動を利用してキマイラから距離を取った。 キマイラの方はといえば蹴りを受けて仰け反った姿勢から動かない。だがその手には、紺色の布切れが見える。 「なっ!?」 バッ、とスカートを押さえる姓。キマイラが手にしていたのは、競泳水着の下半身だった。そして破いた水着を王冠でも被るように仰々しく頭に載せるキマイラ。 もはやまごうことなき変態である。 「くっ……どうして僕だけ……」 スカートを押さえたまま、姓がひとりごちる。 確かに、同じく水着を着ている梨音は何故か狙われていなかった。 ●その時研究員は その2 「ククク、例え水着だろうと服の下に着ていれば下着! キマイラの獲物である事は道理なのだ」 「ふふふ……我等が創造したとはいえ恐ろしき怪物よ……」 ●そんなわけで 服の下に着ている水着=下着。 水着だけ=水着。 「私は……これしか着てないから」 マントをはだけてスク水を見せ、妖しく微笑む邪悪ロリ。 下着じゃないから恥ずかしくないとは良く言ったものである。 よくわからない敗北感に打ちひしがれる姓をよそに、キマイラは次の戦いを始めていた。 と言ってもドーラの下着を狙っているだけなのだが。 「だけってなんですか大問題ですっ。きゃああっ、来ないで、お願いだから近寄らないでくださいっ!」 逃げ惑いながらもスターライトシュートを撃ちまくるが、ブリフィッシュパワー(仮)を纏った黒いゴムのような筋肉がそれを阻む。そして何故か息が荒い。 「フォハァ……ハフハフ」 もうなんなんだコイツ。 しかしそこに割って入ったのはロズベール。その手には白いビキニブリーフが握られていた。ちょうどキマイラが最初に被っていたブリーフと似ている。 「ほら、あなたと同じです。なかまですよ」 キマイラに見せつけるようにブリーフを広げるロズベール。ちなみに彼の私物である。 さらに発光スキルによりブリーフ共々光輝くロズベール。どこか神々しささえ感じられる。 キマイラもそれに目を奪われたのか、輝くブリーフに思わず手を伸ばした。だが次の瞬間、 「でも、あげません」 ばりっ、とロズベールがキマイラの目の前でブリーフを破り捨てた。解除された発光スキルの残滓と共にブリーフが散り逝く。 例えるならそれは地に落ちる桜の花びらの様……なんてことはなくブリーフはブリーフだった。 「フォ、フォオオオオ……」 しかしキマイラにはどういうわけかダメージ大だったらしい。 ショックでブリフィッシュパワー(仮)が抜けたのか、漲っていた黒々しい肉体が少し萎んだように見える。 「い、今のうちに下着を狙うのじゃ」 着物がはだけないように気をつけながら、与市がキマイラの額、つまりパンツ等が幾重にも重なった部分へ狙いを定める。 「……まあ何にしても、どうせこの矢は当たらないわけじゃが」 ポジティブなネガティブらしく苦笑を見せつつも与市の1$シュートが空を駆ける。 でもそれフラグ発言ですよ与市さん。 サクッ、と小気味良い音と共にキマイラの額に矢尻が綺麗に突き刺さり、そして当然のようにブレイクした。 パンツが。 ハラリと落ちる姓の水着と与市のパンツ。 「すきあり、です。あなたの度し難い罪も魂も、ロズがいただきます」 のんびり訥々とした口調とは裏腹に、十字架を模した鉄槌が暗黒の魔力を伴ってキマイラの脳天に続けて打ち付けられる。 真のパンツが夜風に舞った。 ブリフィッシュパワー(仮)も奪ったパンツも失ったキマイラの体型は、すっかり元の標準マッチョに戻っていた。 「フォオオ……」 蓄積したダメージのせいでふらつきながらも再び走り出そうとするキマイラ。ふと足下を見ると、そこには梨音がいた。 そして彼女は微笑みを崩さぬまま、『ちょうど目の前にあった良さげな急所』へと躊躇なくナイフを突き立てた。 背後から聞こえる男性陣の悲鳴にも似た呻きを意に介さず、 「……ばいばい」 梨音はそのまま、ナイフを斬り上げたのだった。 ●パンツ・エンド 「何のために作ったんですかね、こんなキマイラ」 敵の残骸が残っていれば回収しようと考えていた楽だったが、戦闘後、遺体やブリーフまでもが蒸発するように消えてしまった。 「六道の研究員もまた変態ということでござろうか? 拙者じゃ理解できぬ存在がなんと多いことか……」 はあ、と破れたパンツを手に溜め息をつく真。 「あ、そうだ。男の人はみんな、今日は何も見なかったことに……」 ね、と念を押すティセに男性陣が首を縦に振る。 「じゃ、これで解散かな。僕も着替えないとだしね」 しっかり替えのボクサーパンツを準備していた姓が競技場内の更衣室へと消えていく。それを合図にリベリスタ達は各々下半身を気にしつつ帰路についた。 ちなみに、その日吹いた夜風はどこか優しさを含んでいたそうな。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|