● 「しかし貴様も人が良いね燈篭。『アレ』の要請に二つ返事で頷くなんて」 「……別に他にやる事もなかったし、それに」 「それに」 「お前が『暴れたい』と言っていただろう、揚羽」 地の底に空いた空洞。 その一つ、何らかの部屋であったのだろう場所で、岩に目を書く揚羽を燈篭は見やった。 艶やかな金髪は肩の辺りで揃えられ、フード付きのパーカーの下にショートパンツ。 すらりと伸びた足と、薄く笑いを浮かべるその顔は未分化な少年の如く。 「あはぁ、ボクの為に受けてくれたって言うのか。それは嬉しいな」 「気に入らないロケーションだったか?」 「いや。いいんじゃないか。ボクは好きだぜ、こういう派手なの。どうせなら街中で存分ってのもいいけどな」 「街中に行くか?」 「いいねえ。けどアイツとの約束守らないと泣いちゃうぜ?」 「地獄から這い戻ってきた奴がその程度で泣くか。……お前はあいつの肩を持ちたいのか、嫌なのか」 「んー? 嫌いじゃない」 「そうか」 「……何、拗ねてんの燈篭」 ケラケラ笑った揚羽は立ち上がり、傍らの青年の指を弄ぶ。 「ボクはさあ、砂蛇ちゃんも刀花ちゃんも黒鏡面ちゃんも、血蛭ちゃんもミザールちゃんもアルコルちゃんも嫌いじゃない。それぞれ楽しくやって笑ってんならそれで良いよなって思う。けど『好き』だって言ってるのは」 「私だけだな」 「……分かってるんじゃないか」 「たまにはお前も拗ねろ」 冗談か本気か分からない声音で告げられた声が、空間に響く。 存在しているのに気配の薄い集団と。 明らかに人ではない、砂と石の塊と。 多数の人影が存在するはずの空間で、人として動いているのは二人だけ。 揚羽が燈篭の指先に歯を立てて、笑う。 「いつかさあ、二人で死ぬ時もすごく派手に行こうな」 「爆弾を使いたい?」 「いいねえ。もし使う時はこんな地下じゃなくてさ、街中で一斉に破裂させようぜ――」 ● 「さてさて、厄介で面倒な依頼ですよ、皆さんのお口の恋人断頭台ギロチンです。皆さんには至急、とある地方都市に向かって頂く事になります」 いつも通りの表情に乏しい薄ら笑いで――ただし目は次の言葉を選ぶ様に時折忙しく瞬きながら、『スピーカー内臓』断頭台・ギロチン(nBNE000215)はモニターを映した。 「この都市の地下には、旧軍の地下壕として掘られたものと天然の洞穴が合わさった巨大で複雑な空間が存在します。何故こんな空洞の上に街ができたのか、詳しい事は分かりませんが、どうやら地下に何か埋まっているのか地盤自体に何かがあるのか、神秘と親和性が高い場所らしいのでその辺りが関係しているのかも知れません。ですが、今回問題となるのはそれじゃないです」 かちりかちり、端末のキーを叩く。 「地下に仕掛けられているのは、爆弾です。どうやら『敵』は、この爆弾を爆破して街を崩落させるのが狙い……というか、その『狙い』を示唆してぼくらアークの人員を誘き寄せるのが目的の様子です。当然ながら目的が誘き寄せとはいえ、無視したならば爆破は躊躇わないでしょう。故に、大勢をまとめて編成する時間がありません」 爆発したらどうなるのか。 ギロチンは肩を竦める。街が沈む、と。 「地下空洞は『石人形』と『砂人形』で溢れていますが、それぞれの爆弾の付近に行く方法はぼくを含めたフォーチュナが気合で探しておきました。爆弾付近までは安全かつ手早く急行できると信じて下さって結構です」 付近『まで』は。 目を細めたリベリスタに、ギロチンは頷いた。 「爆弾は全部で四箇所。その全てに、フィクサードの護衛というか爆破要員が付いています。三つ以上が爆破されれば街はあっという間に沈むでしょう。もしくは、ぼくが視た位置と陽立さんが視た位置で爆発すれば、他の二つを阻止しようとも街は完全崩落です。そしてぼくらが成功しても、メルクリィさんと月隠さんが視た場所が爆破されれば同様です」 頭が痛い、と言わんばかりに、軽く眉を寄せる。 「けれど、それは仲間を信用して頂く他ない。……皆さんに向かって頂くのは、『燈篭』と『揚羽』というフィクサードが率いる集団です。燈篭が持つ『離魂鎌』は裏野部所属だった鍛冶師刃金が作った武器で――詳細は資料に書いてありますので向かう最中に読んで頂くとして、まあ悪趣味です」 刃金は魔剣妖剣の類を多数製作し、その内の七つが特に良い出来栄えとして『七つ武器』と称されているのだが、離魂鎌はその一つ。 それ所か、この爆弾事件に絡んでいる者はほぼその『七つ武器』の関係者であるという。 「……『砂人形』と『石人形』も七つ武器の一つ、『運命喰らい』を所持する『砂潜りの蛇』黄咬・砂蛇の操る、操っていた物なのですが……彼は既に、アークのリベリスタによって倒されているはずです。死んでいるはずなんです。けど」 実際にこの人形達は動いているんですよね、と溜息。 話が多少逸れたが、そちらと関係の深そうなフィクサードには別班が当たる。 だから皆に向かって貰うのは、先の二人だ、とギロチンは前を向いた。 「燈篭はナイトクリーク、揚羽はマグメイガス。……戦法に関してはあまり情報がありません。揚羽の方は少々愉快犯気味な傾向があるという程度でしょうか。それぞれ実力は高いので、決して油断はしないで下さい。そして今回、彼らはこんな宣言をしています――」 ● 『なあ、アーク。知ってんだぜ、どうにかして視てんだろ? ――あいつにとってはどうだか知らないけど、ボクらにはこれは"遊び"なんだ。遊びにはルールが必要。って事で安心しろよ、ボクらは勝負が付くまでコレを爆破したりしない。負けたら止めてやるよ』 『もし、私たちが敗北しそうになったとして、腹立ち紛れにこれを爆破する等と言う無駄な心配は不要だ』 『そうそう。そんな下らない事考えないで、全力で掛かって来いよ。じゃないと殺しちゃうぜ?』 『お前らが勝手に攻撃して爆破するというなら止めないがな』 『はは、自殺志願か。それはそれでいいな。派手だ。……待ってるぜ?』 「街が全部沈むなんて、中々ない大法螺ですよ。皆さん。ぼくを嘘吐きにして下さい。街が沈む未来を嘘に変えて下さい。……厳しい状況ではあると思いますが、どうか。無事で、帰ってきて、下さいね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月11日(月)22:40 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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