●透明な宝石 住宅街の外れ。 ぽかぽかとのどかな陽が降り注ぐ中、とある施設の前に数人の男達が集まっていた。 「お前ら……準備はいいな?」 「はい、いしひでの兄貴!」 「いしひでって呼ぶんじゃねぇ! セキエイと言え!」 「さーせんっしたぁ! セキエイの兄貴!」 男達の会話は、色々な面で残念そうなものだった。 各々が、自然ではない色に髪を染め、あるいは無駄に棘のついた装飾を纏って武器を持つ、端的に言えば――チンピラ集団。 「こんな凶悪犯罪、例の『アーク』とやらも黙っちゃいませんよ。弟さんのワルさもなかなかッスけど、さすがセキエイさんはワルの中のワル。考えることが違いまさぁ!」 「へっへへ、そうかぁ? でもま、『ブラック・ダイヤモンド』の連中にゃ思いつきもしねーだろう……よっ!」 一際逞しい体格の男が得意げに笑い、重い鉄門の錠をがつんと殴る。鉄製の錠が粉々に砕ける様を見ながら、男の背後で二人の手下が呟いた。 「そこまで言うほど悪いか? この作戦」 「悪いっちゃ悪いが、定番というか……」 「何か言ったか?」 「いいえ、何でも」 セキエイと呼ばれる男、彼を称える手下が二人、冷静に眺める手下が二人。総勢五人の男達が、今まさに作戦を開始しようとしていた。 「俺達『ロック・クリスタル』の方が有能なんだってことを蝮の親父さんに証明するチャンスだ! キバって行くぜえぇ!!」 セキエイが鉄門を片手で軽々引く。そのまま正面玄関を突っ切り、真っ直ぐ走り抜けた先は――。 「はーっはっはっは! ガキ共、殺されたくなかったら大人しく……大人……しく……あれ?」 眼前に広がるのは、幼稚園のグラウンド。温もりを感じさせる木製や、明るい原色で彩られた遊具達が並んでいるが、職員や園児の姿はない。 「……あっ! セキエイの兄貴!」 「何だ! ガキ共を見つけたのか!」 「今日、日曜日です!」 「……」 セキエイの野太い咆哮が響く。作戦云々の前に、根本的な何かを間違えていた。 共に咽び泣く手下二人を眺め、もう二人が淡々と呟く。 「何度も言いかけたんだけど、あんまり人の話聞いてくれないからな」 「っていうか、気付けよ」 ●死んでも直らないから何とか 「……頭が痛い」 無表情のままこめかみを押さえる『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)。感情表現は極めて薄いながらも、彼女は猛烈な疲労感を纏っていた。 「相手は、チンピラ。『ロック・クリスタル』と名乗るフィクサード集団。日曜の幼稚園のグラウンドに侵入し、激昂し――遊具に八つ当たり。次々に破壊する」 ブリーフィングルームのモニターが明滅し、恐らく二十代前半、貫禄の薄い男達が映し出される。 「この全員にお仕置きをして、破壊行動を止めて欲しい」 イヴが何やら操作すると、モニターに映る五人のうち真っ白に髪を染めた男が最も大きく映し出された。 「小さい写真の四人は手下。リーダーはこれ、黒武・石英(くろむ・いしひで)。総勢五人。手下二人は割と冷静、あとの三人全員馬鹿」 言葉が辛辣なのか、それが真実なのか。後者だとすればあまりにも悲しい。 「いしひでは本名の読みを嫌がってかセキエイと名乗り、手下にもそう呼ばせている。……だから『いしひで』は禁句。呼んだ人は殴られると思う。馬鹿だけど弱くはない。いしひでは勿論、手下達にも油断しないで」 五人に関する資料を手渡しながら、イヴは続ける。 「元々の目的は、園児を人質とした立てこもり、だったみたい。でもその理由は不可解。同時期にここまで多くのフィクサード事件を感知するのも、異常。私達が知らない裏がありそう。本部にも、あまり有力そうな情報は届いていない」 何か、深刻な出来事の一端なのだろうか。不透明さは気に掛かるが、今回やることは既に決まっている。 ――とりあえず、この馬鹿達を殴って。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:チドリ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)22:25 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ある日曜日 がん。めきめき、ばきん。 鮮やかな原色に彩られた鉄が軋み、折れた。 「いしひ……せ、セキエイさん! 落ち着いて」 白く染めた髪を振り乱し機械の左手を奮う男、黒武・石英の手により、ジャングルジムが紙のよう折り曲げられていく。 「うるせえ! 何もせずに帰れってか!? 『マーク』ってのが来ねぇと全部無駄になっちまう……手柄だって取られちまうかもしれねぇのによ!」 「セキエイさん、『アーク』ですよ、『アーク』」 「うるせえっつってんだろ高山ァ!!」 怒りに任せ再度拳を振るう。ぐにゃりと折れたジャングルジムは、ただ鉄棒を乱雑に組んだ鳥篭のようになっていた。 理不尽な罵声を浴びた手下、高山がやれやれと肩を落とす。彼が陽光に満ちた平和極まりない青空を仰いだ、その時だった。 「そこまでだーわるものどもー!」 園舎から響く幼い少女の声。気付いた手下が視線をそちらへ向ける。 「とうっ!」 ぴょんっ、しゅたっ! そこには、園舎からグラウンドへ降りる僅かな段差を大袈裟な身振りで飛び越えた『ひーろー』風芽丘・六花(BNE000027)がいた。 グラウンドへ雪崩れ込んできたのは彼女だけではない。 「子供を泣かす奴は嫌いなんだ」 さらに言えば、年を食ってれば食ってるほどに。 簡潔で静かな感情を瞳に宿す『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(BNE000288)は、現場へ踏み込みながら片方の刃をくるりと回す。 彼に続き、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)もグラウンドへ足を踏み入れた。ジャングルジムが壊れかけているのを見つけ、彼女は胸を抑える。 (ひとつだって、壊させたくない) 遊具は、子供達が慣れ親しむ大切なもの。むやみに壊すなどあってはならない。ニニギアの穏やかな笑顔が一転、その縁に確かな敵意を覗かせる。 「おおー、スゴイ。チンピラとかモヒカンって架空のナマモノじゃなかったんだねー」 珍しいものを見る目の『キーボードクラッシャー』小崎・岬(BNE002119)、そして『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)。彼女は初めての依頼に緊張を見せつつも六花に習って胸を張り、ずばり言い放った。 「そこの頭の悪そうな人達、覚悟するのーっ!」 「……否定は出来ねぇが、一緒くたにしなくてもいいだろ!」 「俺もか……勘弁してくれ」 いしひで達の顔色を窺い、もごもごと反論する高山と伴野。しかしルーメリアは尊大さを失わずつんと顎を上げ、彼らを目線で見下ろしたまま。 高らかな宣言、そして続々と現れたリベリスタ達にフィクサード達は破壊の手を止めていた。 「ほ、ほら! 俺の作戦は完璧だったろ? な!」 ぽかんと口を開けていたいしひでが我に返り、本来の目的を思い出す。 「来たな、『アーク』! お手並み拝見といこうじゃねぇか!」 ●遊具防衛 相手のの言動の端々に、『ロストフォーチュナ』空音・ボカロアッシュ・ツンデレンコ(BNE002067)は首を傾げていた。 (背後関係が気になるわね……) 捕虜に出来れば、とは思うがどうしたものか。考える彼女の隣を風が抜ける。 否、それは風ではない。鷲祐だ。 後方の『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)を一瞥、彼との位置関係を確認。そして自身の持つ素晴らしい速度で駆けた鷲祐がいしひでへ肉薄する。 「俺もお前も、昔はガキだった」 それは簡潔な真実だ。鷲祐の銀色の眼は、愚かに育った男をしかと捉える。 幻影を宿しながら振るわれる二対の刃は防御を介してもなお弱点を突くもの。しかしいしひでが咄嗟に構えた腕を貫くことはない。 (堅い……!) その堅さは力量差のためか、両方の力に秀でているのか。確かな手応えに鷲祐の顔に苦みが差す。 『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)はジャングルジムへててててっと駆け出した。駆けながら矢を番え、田辺へ放つ。ごく小さな硬貨すら食らう精密射撃は彼の腕へ深く食い込んだ。 「ちっ! 小娘、何しやがる!」 「子供達のドリームキャッスルは意地でも守るのですぅ!」 負けじと田辺はマリルへ矢を撃ち放ち、彼女もまた苦痛に顔をしかめた。しかし臆すことなく堂々と、田辺を睨みつける。 遊具を守る。子供達のために。それが8人の総意であった。 (なるほど。それが『アーク』) 伴野が具合を窺うよう羽をばさりと伸ばす。そして未だ侵入地点に留まるリベリスタ達へ、序盤のみの好機とばかりに炎を呼び起こした。効率良く打ち込まれた炎に数人が巻かれ、その強力さに眉を寄せる。 いしひでが鉄塊の如く突っ込んだ。その先にあったものは、鮮やかな空色とピンク色に塗られた滑り台。 「おらおらぁ! 『アーク』さんよ、今度はこっちを潰しちまうぞ!」 いしひでが滑り台の柱を殴りつけ、空色の柱にひび割れが広がる。ニニギアが小さく悲鳴を上げる傍ら、笹井が鷲祐へ迫っていた。 「セキエイさんに刃向かおうってのか? イイ度胸してやがるぜ!」 馬鹿とは聞いていた。実際、彼から感じる知性はかなり薄味。しかし力量も話に違わぬようだった。笹井は真正面から向かいながらも鷲祐の動きを的確に読み解き、その身へ痛烈な一撃を叩き込む。 まずは撃退だ。早期の各個撃破が叶えば相手が退くのも早まるはず――そう考え、空音は田辺へ剣を向ける。 リベリスタ達の攻撃は田辺へ集中していた。ニニギアも滑り台の前に滑り込み、田辺へ魔法の矢を放つ。高山が守りの印を結ぶが、田辺の負担はやはり重い。 集中攻撃が行われる中、六花は現場の中央でびしりと奇抜なポーズを取り、相手へ指を突きつけた。 「いしひで!」 呼ばれたいしひでが眉をぴくりと上げ、鋭い瞳を六花へ向ける。 「……今、何て言った?」 だが六花の台詞は終わらない。 「さぶ! ヤス! あとえどわーどにジョニー!」 彼女はそのまま笹井に田辺と、一人ひとりを指し示し告げた。手下達が顔を見合わせる。 「さ、さぶって俺?」 「ヤスじゃねえよ!」 「あ、俺えどわーどなんだ」 「ジョニーか……」 「待て待て、お前ら二人だけ何かカッコ良くねぇか? ずりぃぞ!」 手下達は六花が勝手に付けた名に悲喜こもごも、といった様子だった。六花の挑発に乗せられたのみではなく、元からどこか真剣さを欠いているような節が窺われる。 「オマエラはこの六花様と愉快なリベリスタ達が成敗してやるのだバーカバーカ、おまえのかーちゃん、でーべーそー」 さらに続けられたのは見事に典型的な挑発台詞だ。手下達のうち二人程が呆気に取られ、もう二人程が怒りに拳を握り締めていた。どの二人がそれぞれ誰なのかは言うまでもない。 「いよっ、六花ちゃん、カッコいいのー♪」 六花へ賞賛の拍手を捧げ、ルーメリアが神秘の矢で田辺を突く。岬も、六花と並ぶようグラウンド中央へ立った。 「やーい、いしひでー。……いひしで? いししで?」 滑り台を殴る手を止め、いしひでが岬へと振り返る。 「いしひでだ! ……あっ、違う、セキエイって呼べ!」 「えーっと、いひひでー」 「違う!!」 岬の挑発はいしひでの怒りを引き出すことに十二分の効果があったようだ。全身の血液が沸騰しているのかと感じさせる程、彼は真っ直ぐな怒りを岬へ向ける。 「様子を見るだけのつもりだったが、もう許さねぇ……このセキエイ様を怒らせた罪を思い知るんだな! 『アーク』!!」 怒り狂ういしひで、そして一連の様子を見てか、一人の男が目頭を押さえる。 「まんまと誘き寄せられたというわけですな。流石はロッククリスタルのセキエイです。しかし……」 ――セキエイ。 正道はジャングルジムへ身を寄せ、彼が望む名で呼びながら僅かに身を震わせていた。 「任侠道も堕ちたものでな、悲しいものです」 眼鏡を外し、覗いた眼からは涙が一つ。実は眼鏡と一緒に目薬が手の中に納められていたりする。 「私の知る親分は無用な破壊活動に酔いしれるような方ではありませんでした」 淡々と語る彼の声に、騒がしく暴れていたチンピラ達が反応する。 グラウンドが、ふと静まり返った。 ●蝮の親父とは 高山が正道を値踏みするよう注視した。 (確かに、蝮の親父はそういう人だ) 関心が正道へ集中する。彼に挑発以上の意図があったかは別として、手下のうち冷静な二人までもが正道の次の言葉を待っていた。 「そういや、『アーク』には機械の右腕を持つガタイのいい男がいるって聞いた覚えがあるな。ご本人だったりするのかねぇ」 正道のこれまでの活躍が、名声として本部以外にも噂として届いていたのだろうか。 「てめぇ……蝮の親父を知ってやがるのか。何者だ」 (いや、面識は無いンですがね) いしひでが問うが正道は答えない。嘘から出た真か、それとも。 「このような真似、蝮の子分、いえ、真の侠客たる者のやることではありませんッ!」 ともかく今は、破壊活動さえ止まれば良い。正道は勢いでまくし立てた。 「敢えて正面から挑む少女達の漢気を前に貴方方は侠客の端くれとして何も感じないというのですか!?」 いしひでが、そして彼の仲間達が正道を窺うよう耳を傾ける。 「さあ、戦いを始めましょう、いしひでさん。敢えて難敵に挑み戦い傷つき倒れていく我々を見て何かを感じて頂けるなら本望です!」 (いしひでって呼んじゃった!) (さっきまでセキエイって言ってたのに!) 「……やっぱり許さねぇ!!」 手下達が心の中で突っ込む中、いしひでの心の炎が再び燃え上がる。彼が正道へと肉薄する寸前、鷲祐がその背後に身を躍らせ刃を閃かせ、目にも留まらぬ速さで連続して叩き込むよういしひでの肌を切り刻んだ。 だがいしひでが睨むのは六花、正道、そして岬だ。呼び名に余程執着があるらしい。彼が「こいつらを叩きのめせ」と命じ、田辺と笹井が応じる。マリルが再び正確な矢で田辺を射止めるが、田辺はマリルではなく岬へ照準を合わせた。 素早く弓を構え、岬とその周辺を巻き込む強力な光の弾を撃ち込む。笹井は自身の思考力を圧力とに変換し叩き潰しにかかった。後先をまるで考えずまさに『暴れる』彼らは、攻撃に躊躇がない。そしてその攻撃は、重い。 痛みのため、岬の眼に薄く涙が滲み出る。しかし彼女は彼らを引き付けることを忘れない。 「幼稚園の遊具はジャンプさせるとチャリんてなったり、たおすと経験点とお金が入るようなものじゃないんだよー」 「ゲームかよ!」 敵もまた、突っ込みを忘れなかった。 グラウンド中央には六花とルーメリア、ジャングルジムの前にはマリルと正道、滑り台の前にはニニギアが陣取っている。中でもマリルはあと一撃で朽ちそうな遊具を守るため頑として身を張り続け、ニニギアが幾度か癒しの力を届けていた。 「マリルちゃん……! 全力で癒しますねっ」 当のマリルは、時に鋭い苦痛を味わいながらも口を結んで耐えた。 「こんなおバカでも組織の一員になれるのですねぇ。賢いあたしには全く理解できないですぅ!」 彼女が張るものは身体だけではない。遊具を守りきるという、気概。 (マリルちゃん、見た目に寄らずオトコマエなの……) ルーメリアが、ほう、と息をついたのは、恐らく回復のためだけではなかった。 いしひでへ鷲祐が付いてまわり、田辺から一人ずつ片付けていく流れはなかなかに堅実であった。残る手下三人は比較的自由に動いていたが、集中攻撃を受ける者への援護に手は塞がり気味だ。そして、空音の神秘の矢を最後に田辺が膝を地に着ける。 次に狙われたのは笹井。 (荒削りな部分は感じるが……悪くない) 高山が、考えながら笹井へ癒しの符を当てる。 彼らが使用する技はリベリスタとほぼ同じ。六花が時折周辺をも巻き込む炎は伴野にも放つことは出来た。しかし、挑発せず攻勢に回る者達には遠距離をカバーする攻撃を行う者が多かったため立ち位置に大きな偏りも生まれず、甚大な被害を被ることはなく戦線を保っている。 いしひでが、岬の背後を取った。 「おイタが過ぎたんじゃねえか、嬢ちゃんよ!」 いしひでは武器を交差し、岬の肌をざくりと切り裂く。笹井達からも既に深い傷を受け味方からの援護で持っていた少女の身体がグラウンドの砂場へ沈み込む。 だが、まだ。彼女の、運命を削ってでも立つ意思がそれを許さない。 「……ボクはスロースターターなんだよー」 笹井が倒れたのを見、岬はいしひでへ全身の力を込めた一撃を加える。当たり具合は今一歩だがいしひでは確実に傷を蓄積していた。 手下二人が落ち、ジャングルジムの前にはマリルもいる。正道はその大柄な身をいしひでの元へ躍らせ、盾で押しつぶすよう殴りつけた。 彼を睨みつけ、いしひでが自らの獲物を正道へと構える。そこへ身を低く下げた鷲祐が駆け込み、勢いを殺さずトンと静かに地を蹴って、いしひでの身へ再び連続した刃を注ぎ込んだ。 (馬鹿を囲って自分の虚飾を楽しむ……。幸せな石ころだ) 見るものは、周囲と、下。そのなんと愚かなことか。 「そんな奴は俺の世界には不要だ」 再び目も眩むような素早さで、両手の刃がいしひでの身体へ幾度も吸い込まれる。 「うるせぇ、うるせぇうるせぇ!! てめぇら纏めてこの俺様が……!」 八対三、そしてリーダーである自分の疲労の濃さ。戦局の不利を悟りながらも、なお暴れようともがくいしひでに高山が声をかける。 「今日はここまでにしましょう、セキエイさん」 「高山! てめぇ、誰にモノを言ってると思ってんだ!」 「蝮の親父さんに知られたらどやされますよ」 高山は、ぐっと言葉を詰まらせたいしひでと正道を順に見やる。 渋々退き始めるいしひで。そして伴野もグラウンドの出口へ向かっていた。フィクサードの一人だけでも捕虜に出来たらと思っていた空音が彼らを追おうと数歩走りかけたが、伴野は手近なのぼり棒に武器を向けてリベリスタ達に言い放つ。 「セキエイさんに付き合ってくれたことには感謝する。だが、これ以上は追うな」 追ったら何がどうなるか。それは、述べるまでもない。 ●また元の日曜日に きい、きい。 元の静けさを取り戻した日曜のグラウンドで、ブランコが揺れる。 「幼稚園の遊具ってこんなに小さかったのですねぇ」 ブランコの片方にマリルが座っていた。小柄な彼女であっても、これは園児用のブランコ。深く膝を曲げねば座ることは出来ない。 「こんなに、小さかったかなぁ。ふふ、足が下に着いちゃうわ」 マリルの様子はニニギアを始め、他のリベリスタ達の顔も綻ばせる。小さな遊具の窮屈さに混じる違和感、そして懐かしさは一層胸に染み入るようだ。 「幼稚園児のために明日もがんばるのー」 遊具は幾つかが傷を受けつつ、破壊には至らなかった。むしろ適度に攻撃が分散したからこそ残ったのだろう。本格的な修復は出来ないが、ルーメリアは遊具達の傷痕を撫でる。 騒乱に満ちていた幼稚園は、穏やかな陽の下、翌日を待ち再び眠りについた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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