● 「ねぇぼく」 「なぁにわたし」 がらんとした地下空洞の片隅で。 膝を抱えて座る2人は、言葉をかわす。 「ちゃんと来るかな」 「きっとくるよ」 「楽しい一日になるといいね」 「大丈夫、きっととっても楽しいよ」 くすくす、くすくす。全くずれない笑い声が、空洞を満たしていく。 彼は待っていた。彼女も待っていた。遊び相手がやって来るのを。 「あのひとには感謝しないとね。ねぇ、わたし」 「そうだね、こんなに楽しい遊び場を用意してくれるのはあの人以外にいないよ。ねぇ、ぼく」 わたしはぼく。ぼくはわたし。 どちらが話しているのか。そもそもどちらがどちらなのか自分達でも曖昧に。彼らは言葉をかわし続ける。 忘れないように。ぼくのことを。わたしのことを。互いが互いであるために。 「ねぇぼく」 「なぁにわたし」 終わりの無い遣り取りは延々と、続く。 ● 「揃ってるわね。……さ、今日の『運命』よ。急を要するから、どーぞよろしく」 珍しく背筋をぴんと張って。『導唄』月隠・響希(nBNE000225)は、リベリスタを確認次第即座に口を開いた。 「あんたらには話が終わり次第すぐ、とある都市の地下に向かって貰う。……ぽっかり空洞になってるのよ、そこ。 理由? よく分かんない。そんな所に街を作った奴等も結構アレだと思うけど。まぁ、旧軍の地下壕とか、元々の地形の関係らしいから、その辺は置いておいて。 今回、あんたらに向かって貰わなきゃいけない理由はひとつ。 敵が、この地下であんたらを待ってるから。……爆弾仕掛けててね。来なけりゃ都市ごと沈めてやろう、って言う心算みたい。全く、良い趣味してるとしか言いようが無いわ。 急を要するって言うのはそう言う事。悠長に待ってくれそうに無いから、多くの人員を裂いて作戦を練って、何て事は出来ない。 ……要は、あんたらに命懸けでその誘いに乗って貰おう、って話よ。此処まで大丈夫ね?」 何度も説明を繰り返す時間も惜しい。 そう言いたげに首を傾げたフォーチュナは、手早く手元の端末を操作していく。 「地下空洞には敵がうようよ居るけど、とりあえず其処は気にしなくて良い。フォーチュナを信じて、指定の道を進んで貰えれば大丈夫。 ……ただ、その後はあんたらに任せるしかない。状況は最悪でね、爆弾は4箇所ある。……その全てに、爆弾を護る奴等がついてるわ。 これが爆発すれば、都市は沈む。……3つ以上爆発するか、あたしが担当する地点と、名古屋さんが担当する地点が両方爆破されても、都市は完全に沈むから。 あ、因みに断頭台さんと逆貫さんのところが両方、でも結果は一緒ね。……ほんと、話してるこっちの気が滅入っちゃう」 肩を竦めたフォーチュナの瞳にはしかし、ふざけた様な色は欠片も無い。 操作を終えた端末が導き出した、空洞の深部のある地点を、その長い爪が示す。 「此処。あんたらが向かってもらう場所ね。……此処には、『二連星』ミザールとアルコルっていう、フィクサードが居る。双子。姉と弟。 でも、どっちが姉でどっちが弟かは分からない。見た目は一緒。声も一緒。因みに、どっちもナイトクリーク。 実力としても厄介な奴らなんだけど、こいつらのどっちかが、裏野部所属だった鍛冶師刃金が作った武器、『悪意の伴星』を持ってる。 詳細は資料に添付しといたけど、……まぁ、凶悪よね。『刃金の七つ武器』とか、そんなもん持ち出して来る位には、向こうも本気なのかもしれないけど」 「で、現場には他にも、敵が居る。 まず、爆弾であるE・ゴーレムを護ってる……『砂人形』『石人形』が5体ずつ。――幽霊でも見たみたいな顔してるわね。 あたしは良く知らないんだけど。……この2つの敵、あんたらは馴染みがあるのかしら。 これを作れる『砂潜りの蛇』黄咬砂蛇は、確かに死んだ筈なのよね。あたしも、報告書は読んでる。 ……でも、現に動いてる。まぁ、そっちの真相に関しては、あたし担当じゃないからさ。……生きて帰って来て、確認して頂戴。 次、双子の所持するアーティファクトが生み出す、爆弾エリューションが居る。 気分悪くなっても我慢してね。……そのアーティファクト、『生命導火線』は、エリューション1体と、作りたい数だけの一般人を取り込む事で効果を発動する。 エリューションの増殖作用を促進させた上で、一般人をエリューションの胸へと埋め込むの。勿論、一般人は生きてるわ。意思もある。喋れる。 で、所有者の設定したタイミングに従って、アーティファクトは爆弾を排出し続ける。 ……一般人が生きている状態で、一定の時間が経過すると、エリューションは爆発するわ。威力は高い。 でも、逆に言えば、一般人さえ殺せば、それはただのエリューションになる。……まぁ、精密射撃で殺す他無いけどね。助けたいなら考えても良いけど、結果は保証しないわ」 これぐらいかしら。深い溜息混じりに話を切ったフォーチュナの後ろから。 静かに控えていた『常闇の端倪』竜牙 狩生 (nBNE000016)は、その銀月の瞳に冷ややかな色を乗せて口を開く。 「今回は、私もご同行致しましょう。……状況はあまり良く無さそうですが、最善を」 宜しく。そう頷いたフォーチュナが、丁寧に揃えた資料を人数分、彼らの前へと差し出す。 「詳細は全て、こっちに乗ってる。……双子に関しては情報が少なかったけど、分かってる範囲で。 油断はしないで。あんたらが無事に帰って来る事を、願ってる。……頑張って来て頂戴」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月11日(月)22:35 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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