● 「ねぇ、ゆかり。好きな人っている?」 「え。うーん……。そういう悦子はどうなの?」 「私ー? えぇ……私はねぇ……」 恥ずかしそうに目元を赤らめながら悦子は教室の中を見渡し、一点で視線を止めた。 「……」 その視線の行く先に、愕然とする私。 「……昨日告白されて、付き合ってるんだ」 はにかむ笑顔。 親友の幸せを祝ってあげなければ。 「そ……そう……。よかったね」 驚きで血の気が引きそうになる頭、戦慄きそうになる唇を抑えて、そう告げるのが精一杯だった。 ● あの日から、下校時は3人で帰るのが決まりになった。 悦子は、彼と並んで歩く。その後ろをオマケのようについていく私。 『一人で帰るからいいよ』と言った提案は、『えー、3人で帰った方が楽しいじゃん!』という悦子の声に却下された。 見たくないのに。 あんなに幸せそうな二人の笑顔。 見たくないのに。 彼が悦子を見詰める姿。 見たくないのに。 二人が、そっとお互いの手に触れる仕草。 見たくないのに。 私の好きな人が、他の女に愛を囁く姿――。 ● 「あれ、今日は悦子いないの?」 放課後、彼は私に声をかけてきた。 「うん、さっき先生に呼び出されてたみたい。――待ってる?」 できれば、声をかけないで欲しかった。 悦子、彼に言ってなかったのかな。 「んー、じゃあ一緒に帰ろ?」 「……え?」 そう帰ってくるとは思っていなかった私は、突然の提案で拒否する都合のいい言い訳を考えることも出来ず、彼と一緒に帰ることになった。 「ゆかりちゃんって、いつも静かだよなー」 今日は、いつも悦子がいる場所に私が居る。 彼と肩を並べて歩く。 夢だったことが、――こんなに苦しいなんて。 「悦子はさぁ、いっつも喋ってばっかで、俺の話聞いてくんねぇんだよねぇ」 確かに、悦子は割とお喋りで、自分も聞き手にまわることが多い。 けれど、口下手な自分はそれで救われている事もかなりある。 「ゆかりちゃんなら、俺の話もちゃんと聞いてくれんのかなー。なんてね?」 喋り終わりと同時に、顔を覗き込むように微笑まれた。 やめて。苦しいから、顔を見たくないのに。 「案外悦子って気遣いできないっつーかさぁ。今日も俺に連絡くんなかったし。ちょっと寂しいよねぇ」 立ち止まる彼。私の前に立って、少し拗ねたような顔をしている。 どうしてそんな顔を見せるの、私に。 「ねぇ、ゆかりちゃん。俺と付き合ってくれない?」 「――え?」 あまりの展開に驚き、少し背の高い彼を見上げた。 その時、私の唇に、何かが重なった――。 「え。え、え……」 何が起きて、こんな話になったのかさっぱりわからない。 けれど、私のファーストキスは親友の彼氏に奪われたのは確かだ。 しかも、彼は私の親友を酷く言い、私に付き合ってくれと言った。 信じられない。信じられない。信じられない。 「悦子とはそのうち別れるから、もーちょっと待っててくれない? 取りあえずは、もー1人の彼女って事でさ」 へらっと笑ったその笑顔。 こんな男を好きだったなんて。 こんな男が、悦子と付き合ってるだなんて。 こんな男が、私と悦子と、同時に付き合おうとしてるだなんて。 信じられない。信じられない。信じられない――。 「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 私が叫んだ瞬間――辺りを光が包み込んだ。 ● 「今回は……アーティファクトの回収もしくは破壊と、一般人の救出のお仕事よ」 『もう一つの未来を視るために』宝井院 美媛(nBNE000229)は、資料を配布するとスクリーンに画像を映しだした。 「現場に居るのは、この2人。男子学生が『佐藤司』、女子学生が『三橋ゆかり』。 二人とも高校生よ。 アーティファクトは、三橋ゆかりが所持していて、彼女の感情の高ぶりをきっかけに発動するわ。 そして、アーティファクトに操られたゆかりは、司を殺そうとしているの」 詳しいいきさつは資料を確認してね、視たものを纏めておいたから。と、続けると、美媛は画像を変更する。 「これは、司の恋人でゆかりの親友の『新庄悦子』。 当日、皆が現場に辿りつくころに学校を出て、司とゆかりに追いつこうとしているわ。 処理が長引けば、彼女も現場に遭遇することになる。 親友がアーティファクトの力を以て自分の恋人を殺そうとしているところを目撃すれば、更にややこしい事になるわ。 だから、少しでも早く終わらせて頂戴」 リベリスタ達が現場に向かうために立ち上がる。 「それにしても……世の中にはとんでもない男の子がいるものね……」 美媛は部屋から出て行く彼らを見送ると、一つため息をついた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:叢雲 秀人 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月03日(日)23:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●ダメ男に狂わされた行く末は 眩い光が司とゆかりを包む。 その光がゆかりのブレスレットに吸収されたように消え去ると、辺りには今まで存在しなかったものが出現していた。 「え、なにこれ?」 司はきょろきょろと辺りを見回した。 其処に居たのは、火の塊、水の塊、地面の砂を渦のように巻きあげた、風の塊。 そして――それらから自分の身を護るように立ちはだかる、金髪の女の子――。 「なに? なにが起きてんの?」 混乱し、更に挙動不審に辺りを見回す司。その視線が、一点で止まった。 『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)は、司を見詰める。 『庇い手の指示に従って退避せよ』 己の脳内に響いたその声に、司はこくりと頷いた。 「こっちに来てください」 リベリスタ内で最速の足を持つ、『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)に腕をぐい、と引かれると司はおとなしくそれに従った。 「何処に連れて行くつもり……っ」 ゆかりが、ブレスレットをつけた左腕を伸ばし、司を指差す。 すると、それに従うように、3体のエリューション達が司を追いかけようと動き出した。 ゆらり、と。緩やかな動き。 緩慢にさえ見えるのに、その動きを妨げることは出来ない。 炎のエリューションは、『夢幻の住人』日下禰・真名(BNE000050)の剣先を受け止め、司を追いかけることを断念する。 「おっと、そっちには行かねぇぜ!」 真名同様に、水のエリューションの前に立ちはだかったのは、『断魔剣』御堂・霧也(BNE003822)。 逃げ往く司の気配を背中に感じつつ、彼の心中は複雑である。 (司が真面目な野郎ならほろ苦い青春の一ページ……って感じで、振り返ればまだイイ思い出にもなったかもしんねーけどよ。 何てーか、同じ男として申し訳ねー……ってか、頭が痛い話だわ) 斬馬刀を翻すと、水の胴を薙ぎ払い、追従の道を塞いだ。 「何にせよ、二股掛けようとしたバカ野郎の自業自得って気がしねーでもねーが、俺達がリベリスタである以上、放置するわけにはいかねーわな」 自らを納得させるように呟いた。 「全く。とんでもねえクズ男だな……好かれてるのを良い事に、よくもまあ」 『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)は、自らの能力を高めつつ、ミリィに庇われ移動を開始した司を一瞥した。 本心からすれば、司は見殺しにしてもいいと思う。しかし、『こんなクズ男』のためにゆかりの手を汚させるのはどうか。 まずは、ゆかりを助けることが先決だと、風のエリューションを睨み付けた。 『極黒の翼』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)は、闇を纏う。 (んー、なんというかあまりこういう男は……。まあでも犠牲を出すのは避けたいところかな) 彼女の意見も、プレインフェザーと同様である。 「ま、さくっと終わらせてしまおうか」 フランシスカの声に頷いたアルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)は、仲間達の攻撃力を上げる力を解放した。 ターシャ・メルジーネ・ヴィルデフラウ(BNE003860)は、この戦いがアークの構成員としては初陣に当る。 SerpiroyalChrysoprasに、指先でそっと触れる。血のように紅い石を瞳に模した蛇は、ターシャを護る様に胸元を飾っていた。 「……届かない星屑に、手を伸ばしても辛いだけだ。 その先は悲しい破滅、鮮血の結末だからね」 だからこそ、ここで終わらせなければならない。ターシャは一つ息を吐くと、自らの命中率を高めて行った。 現場は一般人も往来する場所だが、そこには強力な結界が張り巡らされている。 いわば、世界と隔離された状態だ。 その環境を作りあげた、『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)。 ななせの心情の上でも、やはり司はどうでもいい存在である。 けれど、彼女が作った結界でも、悦子が現場に到着することは避けられない。 短期決戦で終わらせる。 ななせの巨大なハンマー。Feldwebel des Stahlesが、想いに応えるように輝きを放った。 『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)は、この状況を『少女マンガであるような関係』と表現した。 確かに、好きな人が親友の恋人だったり、三角関係に悩む主人公がその親友の恋人に言い寄られて更に苦悩する。 なんて言う話はよくあるかも知れない。 けれど、実際目の当たりにすると気持ちも萎えるというものだ。 ミリィの背を追いかけ、全力で逃げる司。 あのろくでもない男に抱く思いは、この場に赴いたリベリスタは皆同様のものだろう。 しかし、神秘が関わっているとすれば守りたくものも守らなければいけない。 それが、リベリスタたる使命なのだから。 ●悲しみと怒りが呼び出した力 E・エレメント2体を真名と霧也が抑え、風のエリューションとゆかりはフリーの状態だ。 ゆかりの持つAFの力が回復を担う麻衣に及ぶことを避けるため、彼女への射線を遮るように立つ、瑠琵。 天元・七星公主の引鉄を引くと、影人が顕現した。 「まずは風を攻撃するのじゃ」 主の言葉に従った影人は、まっすぐに風へと向かう。 影人の後を追い、プレインフェザーの気糸が宙を乱舞し、風と水へと突き刺さった。 フランシスカの暗黒が、痛手を抉るように風と水を攻撃する。 「王子様に選ばれなかった女の子は、お姫様になれずに魔女になって世界を呪う。 ……君らはさしずめ、魔女の使い魔か」 渾身の力で放たれたターシャの真空の刃は、風の背中から胸を貫いた。 畳み掛けられるような攻撃にたじろぐエリューション。 けれど、それは一瞬のもの。 風が身を震わせると吹きすさぶ風がエリューション達を癒していった。 ダメージから回復した水は攻撃へと転じ、ブロックに当たっていた霧也の胸を水の弾丸が貫いた。 かろうじて致命の呪いを受けずに済んだ霧也は、暗黒の瘴気を撃ち放つ。 一方、蠢く炎をブロックしていた真名は、風、水とは離れた場所で戦っていた。 そこは、ゆかりの近くでもあり、炎とAFの攻撃、双方を警戒しなければいけない場所でもあった。 しかし、緩慢な動きながらも、致命傷は受けずに居る。それは敵の百手先まで読み、確実な回避、確実な攻撃を行っているから。 先の先まで読めるのは、かつての能力の面影なのだろうか――。 そして、彼女の爪が炎の腹のうちにズブリと収まり――、するり、と抜き出された。 「邪魔、しないでよ――!!」 AFに囚われ、狂気に落ちた娘の叫び。 声に共鳴するように天が嘆きの声を上げた。 「う……ぁっ」 轟く雷鳴に混乱の淵に落とされたのは、2人――。 ターシャの真空の刃がプレインフェザーに襲い掛かり、彼女の胸を貫く。 「やべぇ。麻衣、頼む!」 水の攻撃を回避すると、霧也は叫んだ。 「わかりました」 麻衣が光を放つ。しかし、仲間達を包む異常の呪いは解かれ――ない。 「あぁぁぁっ」 フランシスカの手が高く上がり、全身から黒い瘴気が放たれる。 「ぐっ」 「きゃぁっ」 苦痛に呻くリベリスタたち。けれど、回復の手が仲間を救う前に、血を呼ぶ旋風が全てを包み込んだ。 旋風はリベリスタを上空まで巻き上げたかと思えば、次には地へと叩き落す。 体中にダメージを受け、立ち上がろうとするリベリスタ達を追い込むように水飛沫が彼らを撃ち抜いた。 「あ……っ」 この攻撃が止めとなり、ターシャとフランシスカが倒れる。 フランシスカは、辛うじて見えた光を掴み取ったが、ターシャは再び立ち上がる事は叶わなかった。 「くそっ」 叫んだのは、霧也か、プレインフェザーか。 暗黒を絡め取った気糸。二人の攻撃が風と水のエリューションへ炸裂した。 風の塊と水の塊の形がぐずぐずと崩れ始める。 瑠琵の弾丸は、4体目の影人を呼び出し、式達は一斉に風のエリューションへと襲い掛かる。 「とどめ、いきますね!」 最早形を留められぬほどに崩れた風を、ななせの渾身の一撃が打ち砕いた。 炎のエリューションが大きく身震いをする。 風が倒れた怒りだろうか。それを真名が見逃す筈はなく――。 「させないわよぉ? く、ふふふふ……」 狂気と真実の境を行き来するものだけが持つ瞳で見詰めると、僅かに、笑みを浮かべる。 美しい手につけられた爪が、炎の胸を貫くとその奥にある炎の塊を握り潰した。 E・エレメントは残る一体――水のみとなる。 怒り震える水は、大波を呼び起こし、霧也と影人たちを飲み込んでいく。 「ぐぁ……っ」 霧也の体を痺れが蝕んでいき、斬馬刀を取り落としそうになった。 「くそっ」 ザン、と地に剣を突き立て、霧也は麻痺と戦う。 倒れそうになる霧也、その横を風が凪いだ。 空を舞うのは、プレインフェザーのSTEEL《STEAL》MOON。 気糸を生み出すと水の肢体を切り裂いた。 「アンタの気持ちは確かに分かるが、これ以上はいけねーよ。 コイツのせいでコレからを棒に振るのも馬鹿らしいかんな」 霧也とプレインフェザーは、ゆかりを取り押さえようと掴みかかる。 けれど、最後に残ったゆかり――否、アーティファクト『念珠』は、最後の抵抗を試み、2人は爆発に巻き込まれて後方へ吹っ飛んだ。 「仕方ないのぅ」 瑠琵が呪印を展開する。幾重にも重なったそれは、ゆかりの体を戒め縛り付けていった。 「な……っ、何これ……! 離してっ、離してぇっ!!」 ゆかりの叫び声は悲痛にも聞こえるが、離してしまうわけにはいかない。 ななせがゆかりの腹を打つと、叫び声は途切れた。 「気絶しましたね」 「今のうちにAFの回収を」 無事、ゆかりからアーティファクトを回収したのを見届けると、真名が遠くへ視線を送る。 「そろそろ、来るわよ……」 千里を見通す眼で見つけたのは、悦子の姿。 ●作戦「エリューションより、その男が鼻に付くわね」 悦子の合流より前に、まずは記憶を消さなければと、プレインフェザーは司の前に歩み寄る。 「お、俺を助けてくれたんだ……ありがとうっ」 司の安堵した様子。そのほっとした顔をプレインフェザーは見詰めた。 「あー、やっぱ我慢できねえわ。アナログ方式で試してみてイイか?」 勿論、かなりの手加減の上で、ではあるが。プレインフェザーはその拳を司の頬に叩きつけた。 「ぎゃー!!」 大袈裟に吹っ飛ぶ司。 女性のように斜めに座り、なんで俺がっ等と叫んでいる。 「おっと悪い、コレじゃ消えねえみてえだわ」 それはそうだろうと、リベリスタの誰もが思ったことだろう。 プレインフェザーは、斜めに座ったままの司の前に膝を着く。 「人として、端くれだけど女として、言わせて貰うぜ。 お前、あんまナメた真似してんじゃねえぞ? この大ウソツキの卑怯者」 前髪を掴み、視線を合わせ言い放つその声は、まさしく本気の恐ろしさを秘めていて、司は危うく失禁しかけるほどの恐怖を覚えた。 「ここで三橋と新庄に全裸土下座させてもバチあたんねえと思うが……ま、後の判断は、当事者に任せるか」 髪を離し、ふん、と鼻を鳴らすとプレインフェザーは司の記憶を操作する。 その後ろで、真名は呟いた。 「一つの遊びに飽きたら、次の遊びを探すもの。 普通の話しよねェ……でも、そう言う事で遊ぶのは嫌いなのよ。 だから、他人事だけど、後悔させてあげる。 ――思うのだけど、貴方、女の乗り換え乗り捨ては……。 これが最初でもなければ最後でもないのでしょぉ? ……く、ふふふふふふ」 クスクス、と笑う。その口角は怪しげな笑みを形作っていた。 「仲の良い親友でも、男を見る目が無いところまで被らんで良いのにのぅ。 まぁ、まだ若いのじゃから良い教訓にはなるじゃろう。 司も司で団結した女の恐怖を味わう良い機会なのじゃ――この後に」 真名の傍らで、瑠琵も笑う。 魔眼の力を持つ2人がこれからしようとしている事は、奇しくも同じことであった。 司の記憶を操作し終え、次はゆかりの番である。 AFをはずされた彼女は、心を砕かれたかのように力なく地面に腰を下ろしていた。 その手に、細い指先が触れた。 「気休めにしかならないかもしれないけど、これをあげよう。 どうか今は、自分を癒して。そして、本当の王子様を探すんだ」 ターシャが取り出したのはアクアマリンとローズクォーツを連ねたブレスレット。 心を癒し、良い恋を運んでくれるようにと、準備したものだ。 そっと手首に嵌めると、虚ろな瞳のままゆかりはターシャを見詰める。 その瞳に写るターシャは、幻視で獣相を隠した女性でありながらさながら王子のような風貌で。 ゆかりは些か目元を赤らめたかのようにも見えた。 かくして、神秘に関する――司においては、プレインフェザーに殴られた部分もだが――記憶を消された2人は、悦子から声をかけられる。 「あ、2人で一緒に帰ってたのー? ずるーい」 「あー、悦子ー。だってお前が居ないときはゆかりと帰るでしょ、コレから美味しくイタダク予定だし」 「「は?」」 悦子と、ゆかりの声が重なった。 「え、なんで? お前ら二人とも大したことない顔してんのに俺と付き合えるだけありがたいって思えって。 そんで飽きたら捨てるだけだし、あー、歯向かっても捨てるけどね。 何、まさしくやり逃げやり捨て、みたいなー♪」 げらげらと笑う司。 その態度は、今までの司とは打って変わって下品で、中身のどうしようも無さを余す所無く表現していた。 「こいつ……こんなヤツだったの!?」 悦子が叫ぶ。 「うん、さっきね。私に付き合おうって言ってきたの。悦子って彼女が居るくせに、信じられない!!」 ゆかりは、悦子の怒りに応える様に叫んだ。 「はぁ? 三流女2人で怒ってんの? 捨てられたくなかったら大人しくしとけよな。 俺のこと、好きなんだろ~~~?」 にたぁ~っと笑う笑顔。その顔に、ゆかりと悦子は顔を見合わせ『キモッ』と呟いた。 「ほらほら、3人でかえろー。んでどっちかの家で朝まで……へぶしっ」 ゆかりと悦子の平手打ちが双方から司の頬に炸裂した――。 「「最低男!! 死ね!!」」 道端に倒れた司を捨てたまま、ゆかりと悦子は手を繋ぎ歩いていく。 「ゆかり、そんなブレスしてたっけ?」 「あー、これ? なんだろ、なんでつけてるんだろ?」 ゆかりは自らの手首を見遣る。そこには、ターシャに貰ったブレスレットが輝きを放っていた。 じっと見詰めた後、ゆかりはふっと微笑んだ。 「でも、これ見てると元気になるかも」 「えー、そうなの? ローズクォーツでしょそれ。やだー、私より先に彼氏つくんないでよー?」 「え、作るよ」 「ダメだってば、私が先に作るの――あんな男より、100倍」 「そうそう、あんな男より、100倍――」 2人はお互いを指差した。 「「いい男!!」」 笑いあう、2人の背中は、強く逞しく。 自分達を気にせぬようにと3人に魔眼をかけた瑠琵は、満足げにその姿を眺めていた。 「ほろ苦い経験も自業自得な結末も恋愛の内なれば、『恋愛に効く』と言う効能も強ち嘘とは言い切れんのぅ……」 「そーだなぁ。ゆかりも、悦子ってヤツも、今度はマシなヤツと恋愛出来ると良いな、ホントによ」 同じ男としても、司に思うことは多々あった霧也としては、そう願わずには居られない。 「ともあれ。――これにて一件落着なのじゃ♪」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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