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お前等、ちょっと脱げ

●乙女の憂鬱
 木々の生い茂る閑静な林、そこを抜けると一つの洋館があった。
 ここは8人の少女達が住まう場所、だが、ちゃんと生活するには先立つものが必要である。
 ゴスロリ系の格好に身を包んだ彼女達が、真面目にレジを叩いたり、カウンターで頭を下げる様子は無い。
 彼女達の食い扶持は別にあるのだ。
「お姉ちゃん達は?」
 水色のアリスドレスに身を包んだ幼女、愛(めぐみ)が傍にいた幼女に問う。
「お仕事中だよ、邪魔しちゃダメだからね?」
 問いに答えた幼女の名は空。
 こちらはパステルピンクの甘ロリに身を包んでいる。
 直ぐ傍には最年長の女性であり、皆の親に近く、姉でもある涼子の部屋があった。
 ドアノブに掛かった看板には『お仕事中、急用以外入るべからず!』の文字。
 この時ばかりは涼子や他の姉達が自分の相手をしてくれないのを、二人は理解している。
 がんばって! と愛は真面目に応援するのだが……何をしているのかを知っている空は、素直に応援できない。
 でも、倒れないで欲しいとは思っているのだとか。
 
「出来たっ! 麗、任せたっ!」
 常は紫色のゴシックドレスに身を包む涼子だが、今は違う。
 タンクトップにホットパンツ、額には冷却ジェルシートが張り付く。
 ヴィジュアル系に近いゴスパンクスタイルの狙撃手、麗も今日は似たような格好だ。
「了解した」
 受け取った原稿用紙には下書きのみ、後は何かの指示が細々と書かれている。
 麗はインクに浸したペンをグレーのラインへ這わせていく。
 狙撃と同じ、丁寧で寸分のズレもない精密機械の如きペン入れ。
 その上で素早いのだから、まさに神業というところだろう。
「涼子お姉ちゃん、ここのトーン指示何? 読めないよ?」
 何時もは赤いゴスロリのワンピースに袖を通す剣士、留美も同じ格好である。
 高飛車な口調も、今はすっかり家仕様。ただの妹だ。
「あっ、ごめん、32番張って!」
 指示を受ければ、デザインカッターがうねりを上げる。
 音速の太刀筋で極めた素早く細かな動きは、的確に必要な分のシールを切り出し、原稿と一体化した。
 修羅場モードのお仕事も今日はラスト、サクサクと仕上げ終え、凌ぐ事に成功だ。
「おつかれ~、私お茶いれてくるよ。何がいい?」
 ぐっと背伸びをし、留美は立ち上がると二人へオーダーを確認。
「冷たいレモンティーお願い~」
「私は何時ものコーヒーを」
 わかったと返事をすれば、留美は扉の向こうへ。
 暫くしてトレイに透き通った紅茶と、暖かなコーヒーを乗せ、戻ってきた。
「でも困ったわね……」
 まったりとティータイムの最中、涼子はどんよりとした表情で呟く。
「どうしたの?」
 留美の問いに、小さく溜息が零れた。
「だって、新作描けてないのよ? 今日のは粗を取ったり、継ぎ足したりだし」
 涼子は所謂同人作家だ。
 それも某イベントやらでは壁際サークル、どこぞの店での委託販売も常のこと。
 時折商業誌にも顔を出し、その二つから捻出される利益が生活費や必要な出費をまかなっている。
 総集編や、ちょっとしたオマケ冊子で繋ぐにはそろそろ限界が来ていた。
「でも、いい掛け算浮かばないんだろ?」
 麗はパイポを銜えつつ問う。
 煙草でないのは、皆に煙たがれる為仕方なくらしい。
「そうなのよ! 最近『キタッ!』ってアニメやゲームないし、既存のネタで凄いの浮かばないし……」
 先に断るが、涼子のジャンルは所謂BLである。
 BLという範疇であれば何でも食べる、その貪欲な守備範囲は多数のファンを惹きつける要素の一つだろう。
「いいネタがあればいいな」
 他人事の如く呟く麗に、真面目に考えろと二人の視線が刺さる。
 そして……一つの妙案が浮かぶのだ。
「……私ってば天才かも」
 はて? と首を傾げる二人へ、早速涼子は説明を始めるのであった。
 
●援護要請
「せんきょーよほー、するよっ!」
 満面の笑みと共に腰に手を当てVサインをする『なちゅらる・ぷろふぇっと』ノエル・S・アテニャン(nBNE000223)。
 傍には兄もいた。
「ほんとうは、ノエルだけでだいじょうぶっていったんだよ? でも、お兄ちゃんが、どうしてもしゃべりたいっていうから、こまかなことはおまかせするの」
 若干舌足らずな口調で説明するノエル。
 早速と言わんばかりに、おぼつかない手つきでコンソールを叩いた。
「まえにね、イヴおねえちゃんが皆におねがいしたことがあったんだけど、しっぱいしちゃったの。でもね? そこのお姉ちゃんたちが、おねがい聞いてくれたら、みんなのおねがい、きいてくれるかもしれないの!」
 以前の依頼結果をスクリーンに映し終えると、何故かノエルは右へガクンと首を傾げる。
「でもね? おわった後、みんなすっごくクタクタになってて、大けがみたいになっちゃうかもしれないって、ノエルにはみえたの。そのお話をお兄ちゃんにしたら、お兄ちゃんはわかるみたいだから、せつめいしてくれるんだって」
 早速というように、ノエルの兄、紳護が前に出た。
「洋館に住まう8人の少女がいる。彼女達に協力して欲しいと伝えたところ、勝負で勝てたらということだったが……残念ながら敗北した。だが、ノエルの話したとおり、協力次第では再検討してもらえるそうだ」
 前置きを終えると、紳護は黒いファイルに入った資料を集まったメンバーへ配っていく。
「その……用件はだな。モデルをして欲しい、ということだ。……男同士の同性愛じみた作品のだ」
 リベリスタ達は凍りつくか喚起するかの二択。
 少なからず、紳護は表情が引きつっていた。
「オーダーはそこに書かれている内容だ、ただ、場合によっては色々と精神的な負傷で行動できなくなる場合がある。注意してくれ」
 何をどう注意しろというのだろうか? 説明を終えると、紳護はノエルの手を握り、扉へと向かう。
「俺はノエルの護衛任務がある、後は任せた」
 野郎、逃げやがった。
 かくしてリベリスタ達は罰ゲームの様な仕事をさせられる事に、紳護に恨みを抱きながら。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:常陸岐路  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年06月02日(土)23:39
【ご挨拶】
 始めましての方はお初にお目にかかります、再びの方にはご愛好有難う御座います。
 ストーリーテラーの常陸岐路(ひたちキロ)で御座います。
 依然綴らせていただきました『淑女の舞踏会』の続編? みたいなものです。
 別に以前の話はまったく知らなくても問題ありません、腐る海へ身を投じる勇気が必要です。
 えぇ、そこの蝶々腐人殿はごゆるりとお楽しみ頂ければと思います。
【作戦目標】
・涼子のオーダー3点に応える。
1:S男の娘×Mイケメン を描きたいから、戦いでミスったMイケメンをお仕置きするところがみたい。(お仕置き内容は一切の妥協を許さない)
2:イケメン同士の取るか取られるかのプライドを掛けた一騎打ちと、その後のイチャつきがみたい。(シブイ中年おじ様や、ロマンスグレーのおじ様でもまったく問題なし。筋肉美はただの戦闘メインになりそうだから却下らしい)
3:男の娘同士でイチャイチャしてるけど、お互い男の娘と言い出してないので、モヤモヤしているところに終止符を打つようなシーンが見たい。(美女装(イケメンさんとか)でも可)
【戦zy……観賞場所】
1:洋館にある、中世風のお部屋。
2:洋館にある裏庭、季節のお花が所々に咲いてます。あんまり花を散らすと、留美が激怒し、凶悪なソニックエッジを叩き込んでくるのでご注意を。
3:洋館にある中庭、綺麗な薔薇が沢山咲いてます。その中央に白いテーブルと椅子があります。
※その他小道具が必要ならば、ご準備頂くでも、涼子や麗、留美に言いつけて準備させるもOKです。
【追加ルール】
・オーダーと違った人材が演じるとマイナスになりますが、上手くカバーできれば、帳消しも可能です。
・ボディタッチや脱いだりすると、依頼の成功率は上がっていきますが、参加者の精神ダメージが増大し、何故かHPに影響を及ぼします。
・1と2はスプラッタ上等な勢いでガチでやりあって下さいとのオーダーです、妥協するとブラックコードで締め上げられたり、対物ライフルの狙撃というツッコミが入ります。
・万が一、男性がいなかったら、男装しても問題なし。いなかったらであって、男性がいたら覚悟しろだそうです。
・腐話が出来る人がいると、涼子のテンションが上がるので成功率は上がります。でも、オーダーはこなさないと駄目です。
・本作戦において記録された情報の一切は彼女達に渡ります。その後、沢山ニヤニヤされて何度も再生されます。
・初キス相手が男となっても、アークは一切の責任を負いません。
・例えそっちに目覚めても、アークは一切の責任を負いません。
・というか、そういう事に関する全てにおいてアークは一切の責任は負いません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
ホーリーメイガス
クロリス・フーベルタ(BNE002092)
覇界闘士
李 腕鍛(BNE002775)
プロアデプト
宵咲 刹姫(BNE003089)
マグメイガス
セレア・アレイン(BNE003170)
クリミナルスタア
阿倍・零児(BNE003332)
ダークナイト
高橋 禅次郎(BNE003527)

●ご挨拶
「あ、これ依頼の最中に書いたコ●1の新刊っす」
 到着すると同時に『理想狂』宵咲 刹姫(BNE003089)はお決まりの挨拶と、一つの冊子を差し出す。
 どれどれと涼子が目を通せば、相手がどんな存在なのか理解し、がっしりと手を取り合う。
「これも資料として無償提出させて貰うっすよー♪」
 発酵という名の捏造を経て生まれた念写映像に、ブリーフィングルームでの阿鼻叫喚の相談具合。
 腐れし者達には、この上ない材料だ。
「宵咲さん、流石ね~」
 発酵物を手に、ぱっと明るい微笑を浮かべるのは『┌(┌^o^)┐の同類』セレア・アレイン(BNE003170)である。
 金髪の眼鏡をした凛々しい青年が触手を口にして咽る姿。はてさて、どこからこれを引っ張り出したのか? 腐界に住まう者の力は恐ろしい。
 さぁ、地獄の幕開けだ。

●禁断のお仕置きTime
 一つ目のオーダー、その役目を受け持つのは『ごくふつうのオトコノコ』クロリス・フーベルタ(BNE002092)と、『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)である。
「設定を考えてきた」
 禅次郎の言葉に女子3人が一斉に振り返る。
「「「続けて続けてっ!!」」」
 声がハモりやがった。
 彼の提案した設定はこんなもの。
 圧倒的な戦力差でどうにもならない中、本営からの命令は一つ『勝利か死か、他に道は無い』
 しかし命令に背き、全軍へ退去命令を出し命を助けた結果、大敗北。
 失意の中帰国した禅次郎は、主人であるクロリスに呼び出される。
 そしてこの将校風の格好。
「いいわぁ……そういう軍人キャラ、いいわねぇ。カッコいいのに甘くて優しい、いいフレーバーねぇ」
「くぅぅぅっ! 禅次郎ちゃん、センスあるっすよぉっ!!」
「高橋さん凄いわ、そんなドツボ設定を出せるなんて……」
 所謂王道的なものかもしれない。だが、それは最高の素材で行う事で王たる魅力を発す。
 筆者は心の中で十字を切り、彼の冥福を祈りながら筆を取らせて頂こう。
 
「お仕置きって一種の、信頼関係を軸に成り立っている確認行動だと思うんです。信頼がなければただの暴力。ですがお仕置きする側は愛ゆえの鞭というか、非情になることで愛と信頼の深さを再認識する。ここが大切だと思うんですよ。逆に、される側は相手に捨てられないかという不安と、信頼の上でお仕置きに身を任せることが出来るという、矛盾する飴と鞭からくるバランスがキモなんじゃないかなぁ、って思うんです。」
 撮影の間際、そんな持論を紡ぐセレアに二人も頷く。
 そして、本番開始。
「お仕置き……しないとですね♪ それとも、お仕置きしてほしいからわざと撤退したのかな?」
 クロリスは、禅次郎の顎に手を添え、視線を合わせる。
 椅子に座らされた彼の両手は後ろで手錠に繋がれ、抗う事は出来ない。
「違います、兵を無駄死にさせない為ですので。兵力は武器と違い、育てるモノ、時間が掛かるのですよ?」
 落ち着いた視線で返し、言葉を跳ね除ける。
 クロリスは目をゆっくりと細めながら、指先で胸板をなぞり上げた。
「じゃあ、ボクがする事に……何も感じないって事だよね?」
 鎖骨の辺りまで上り詰めた指が、襟から潜り込み、ぱつりとボタンを外していく。
 ジャケットのボタンが外れ、前を開くと肩から滑り落とし、腕の辺りで弛んで留まった。
「何されると思ってます? 言ってくれればその期待も考慮しますが……」
 今度はYシャツのボタン、細い指が器用に一つ一つ解き、彼の胸元を開いていく。
 胸元と彼の瞳と、何度も視線が行き交い、何かを試すかの様だ。
「そんなものありませんよ」
「そう? それなら別にいいんだよ?」
 ボタンが外れると共に、クロリスは唇を耳元へ寄せる。
『だって、考えるだけだから』
 悪戯っぽく囁くメロディが、禅次郎の鼓膜を擽った。
 びくりと体が跳ねたのも束の間、クロリスの細い指が晒された上半身の中央を滑りながら、薄皮を削り、小さな痛みが甘い刺激と交じり合う。
「痛い……だけかな?」
 クスクスと笑いながら再び指は踊る。
「それ以外に……何があると……っ?」
 何かを堪える様に反論する禅次郎だが、既にクロリスの手中に納まっている。
 つぅ……と、指先が体の輪郭を辿り、精錬された凹凸を確かめ、不意に傷つけていく。
(「落ち着け、俺はMではない。痛みにも慣れている」)
 戦う以上、痛みとは常に共にある。
 それに快楽を求めるはずがない。禅次郎は頑なに拒絶を繰り返す。
(「そうだまずは素数を数えて落ち着こう。12345678……だ、駄目だ」)
 それはただのカウント。
 心の中で抗う最中も、クロリスの責め苦は止まず続くばかり。
 再び爪が傷つけた場所は少々深く、ぽつりと真紅の雫が零れる。
「っは……ぁっ!」
 クロリスの口角がゆっくりと上がり、肌を伝う赤を指先が掬い、ちろりと舐め取っていく。
「さてさて、今の正直な感想はいかがかな?」
 愉快そうな微笑に、禅次郎はキッと睨む視線で表情を引き締める。
「この程度ですか?お嬢様。これではお仕置きになりませんよ」
 強がりか、お強請りの裏返しか……きっとクロリスは見抜いたのだろう。
 彼の体へ重なる様に身を乗り出し、細い膝が彼の内股へ割り込んでいく。
 意地悪な微笑を浮かべると、緩慢な動きで首筋に迫り、唇が触れる。
 白く尖ったナイフが血管を包む肉を引き裂く、ぶちりと響いた瞬間、痛みと得も知れぬ『何か』が背筋を走った。
「いただきます♪」
 しつこく何度も何度も啜る水音を響かせ、空気と混じった淫靡な響きが皮膚を伝わって脳にまで届くだろう。
 
●ちょっとまて
「霧島、覚悟はできたか? いくぜ……」
「おう、ツァイン、大丈夫だ。俺、帰ったら嫁に結婚してって言うんだ、いくぞ!!」
 一つ目からフルスロットルの映像を目の当たりにし、脂汗を浮かべる『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)とツァイン・ウォーレス(BNE001520)。
 既に逃げ場は無い、やらねばならない。覚悟を決め、裏庭へと歩き出す。

「会いたかったぞ霧島、今日こそ決着をつけてやる!」
 気に食わないわけでもない、離れたいわけでもない。
 だが、認めきる事は出来ない相手。拮抗した力というのは、何時崩れてもおかしくない。
 相手を上回りたい、もっと先へ進みたい。
 互いを互いの目標とし合い、そんな事も互いに知らず、今日という日を迎えた。
「はん! ここであったが百年目! 今日こそケリをつけててやんよ!」
 これが最後の戦い、伸るか反るか。
 互いに得物を構えると、薔薇園を駆け抜ける。
「うらっ!」
 俊介の振るう刃に光が灯り、超常的な破壊へと変わって行く。
 ツァインは抗う様に純粋な力でブロードソードを振るい、切り払う。
「どうした! その程度かっ!?」
「何をっ!」
 シールドバッシュをバックステップでかわす俊介に、踏み込んでの薙ぎ払いで追い討ちを仕掛ける。
 花染で受け流すと同時に回し蹴りを放ち、庇い手の様にバックラーで受け止め、反撃の突きが迫った。
「っと!」
 ぐっと身をそらし、強引にバック転回避。
「逃さ……っ!」
 切りかかろうとしたツァインへ着地と同時の切り上げる刃が迎え撃ち、たまらずバックラーからは甲高い音が響く。
「まだまだぁっ!」
 勢いに流れた体へ追い討ちの横一閃が迫り、ツァインの防御が間に合わない。
 辛うじて鎧を纏った腕で庇い手をし、ダメージを押さえる。
「……お前はいつもそうだ、俺の上を軽く超えていくっ!」
 腕に響く鈍痛、それに顔をしかめながら吐き捨てた思い。
 それに俊介は目を見開き、驚いてしまう。
「何いってんだ!! 超えてなんかいない! 俺は……俺だって、背中で守られるのは嫌なんだ!!」
 治癒するだけが自分の存在ではない、こうして戦えることを示したかった。
 それは何故かすれ違いを生み、伝えたかった言葉が遠ざかる。
 俺は戦える、誰かに守られるのではなく、お前と並んで戦えるのだと。
 しかし、もう言葉で話すには遅いのだ。ツァインが飛び退くと同時に、俊介も後退する。
 睨みあう両者、ところでやたらと肌が露出しているのは先程からセレアと刹姫が飛び道具を放ち、ちょこちょこと服や鎧を吹っ飛ばしているからである。
 理由? そんなものその方がいいからに決まっているだろう。
 そんな中で見せる互いの構えは、次の一撃が答えとなりそうだ。
「ツァイン! 貴様は、俺のー……!!」
「お前は……俺のぉぉーーッ!!」
 一陣の風と共にすれ違う二人、放たれた一閃。
 崩れたのはツァインだった、振り返る俊介はすぐさま彼の元へと駆け寄っていく。
「ごめん、こんなこと、したくなかった。けど! こうしないと、分かってもらえないって思って!!」
 彼の手を握り、呼びかけるが反応は鈍い。
 それでもツァインの笑みは明るかった。
「俺は……お前になりたかったんだよ……俊介……お前の事が」
 反対側の手が俊介の頬に触れ、見つめると共に崩れ落ちる。
 それが何を意味するのか? 勿論分かっていた。
「ツァイン? おい、ツァイン!? 起きろよ、起きてくれよ!! やだ、こんなのは……!! 好きだって、いえなかったじゃねぇかっ!!! ばかやろぉぉぉぉぉっ!!!!」
 こうして男同士の友情は悲劇をもって締めくくられ……。
「「「違う!」」」
 俊介の体に刹姫のオーラの糸が束となって直撃し、絡みついたところへセレアの矢が吸い込まれていく。
 ツァインは涼子のコードに絡め取られ、動けなくなったところを麗の狙撃で腹部をぶっ叩かれた。
「ごはっ!? な、何が違うんだ……?」
 よろよろと起き上がるツァイン、腐女子3人は不満げな表情を浮かべている。
「何で命取るか取られるかになってるんですか」
 セレアの言葉に二人の頭から疑問符が浮かぶ。
 オーダーは『取るか取られるかの戦い』だ、一体命以外何を取るというのか? とんと見当がつかない。
「わかってないっすねぇ、この時の取られるはアレ以外ないじゃないっすか」
「ねぇ、ホントよね~?」
 顔を見合わせるセレアと刹姫、頷く涼子。
「じゃあ何取るんだよ?」
 訝しげに問いかける俊介に3人は満面の笑みで応えた。
「後ろ」
 俊介とツァインは凍りついた。
「これは、タチとネコを決めるモノであって、命の取り合いじゃないのよ?」
「そうっすよね! 涼子さん!」
「うんうん、でも結果としてはタチは霧島さんかな?」
 何を話している?
 男二人の額からは滝の様な脂汗が沸き立つ。
「じゃあ介抱した後、ベッドルームから続きっすね」
「任せなさい、客間のいい部屋があるから」
 逃げようとした二人は再び糸と弾丸に捕まる。
「「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」」
 この先を知るものは少ない。
 
●甘い告白
 虚ろな俊介とツァインを放り投げ、腐女子3人とクラリスは『女好き』李 腕鍛(BNE002775)と『Average』阿倍・零児(BNE003332)をとっ捕まえ、撮影前の仕上げに入っていた。
 有無を言わさぬメイクアップでより一層、男女の境界線が崩壊し、一見すれば完全に女の子である。
 先に終わった腕鍛は現場に先に向かい、零児の姿を待った。
(「……うん、普通に似合ってるでござるな」)
 素で声を掛けたくなりそうな仕上がり具合の零児が、扉の向こうから姿を見せる。
 白い椅子に腰を下ろし、見つめる視線がかなり合う。
(「へ、平均的に、平均的に……」)
 世間一般の女子らしい反応、今目の前にいるのはとても大好きな女友達。
「おまたせっ」
 当たり前の事だと自己暗示に沈め、自然な微笑を浮かべた。
 並べられた隣の椅子へ零児が座ると、凛々しく執事っぽい格好をキメた麗が二人へケーキの皿を並べ、紅茶を淹れていく。
 黙々と手際よく終われば、ごゆっくりどうぞと静かな言葉で締めくくり扉の向こうへ消える。
「た、食べよっか?」
「ぁ、うん」
 不慣れな事で互いにぎこちない、けれど腕鍛からすれば存外悪くない景色が見えていた。
 こうしてカップに口を付ける仕草も、ありふれた仕草を頑張る零児の努力により、男であることを忘れてしまいそう。
「ほら、あーん」
 心擽られたか、腕鍛から先に動いた。
 小さく切ったケーキをフォークに刺して、零児へと差し出す。
 当たり前な事と、零児は自分を誤魔化しきるまでの一瞬に恥らうが浮かぶ。
 小さく開いた口で受け止め、フォークから抜き取っていく。
「ん、おいしいよ」
 甘い、当たり前な感想。
「ふふっ、じゃあ私にもして?」
 求める言葉は予測し切れていたのか、小さく頷くと腕鍛へ同じ様にフォークを差し出した。
「はい、あーん」
 ぱくりと食いつき、違った甘みが口の中に広がっていく。
「そっちも美味しいね」
 腕鍛の微笑みに、こくりと頷く零児の表情にも笑みが浮かぶ。
(「女装するという事は、中に女心があるという事。そして女としての感覚を磨いていく過程で、やっぱり男性との恋があるわけで……でも本能的には女性に恋しちゃうのも当たり前、と考えると、男の娘同士の恋って実は理にかなっているんですよねぇ。李さんをここに置いたのはいいチョイスね!」)
 今にも鼻血を足しそうなのか、鼻元を手で覆うセレアの評論は欲望塗れながら打算的でもある。
 冒頭でも述べたとおり、腕鍛は女好きである。目の前にいる零児は彼のお眼鏡に適っていた、つまり零児=女と擬似的に見る事も出来るはずだ。
 零児も平均的を守ろうとすれば、平均的な女子に傾倒することになる。結果として女になろうとするのと同義、つまり、今回のメンバーでは適材適所の選択といえよう。
 緩やかなひと時も過ぎ去り、腕鍛がちょいちょいと零児に手招きをした。
 何か? と思いつつ身を乗り出すように近づいたところで手を握り、軽く促すようにして彼を膝の上へ座らせていく。
(「後ろから見るとまんま女の子だ」)
 ゆっくりと腹部へと腕を回し、包み込もうとする。
 零児からは驚いた様子はあるも、抗う様子は無い。
 それならとしっかりと抱きしめてしまえば、零児の首筋へと顔を近づけていく。
 緩やかな呼吸が過敏な肌を擽り、小さく跳ね上がった。
「ご、ごめんなさいっ……ぼぼぼ、僕は男ですよっ!」
 我慢しきれなくなった瞬間、真実の告白が響く。
 だが、腕鍛の腕は解けない。
「知ってるでござるよ。同じなのはな荘に住む阿倍・零児殿……こうやってするのひそかに狙っていたんでござるから」
 前日6千回も練習した殺し文句を、つっかえる事無く紡ぐ。
 それは我慢して演じているものなのか、本当の事なのかは見ている者としては分からない。
「それ……てっ」
 一気に紅潮していく頬、零児は耳まで熱くなった様な感覚を覚える。
「零児殿が欲しかった……」
 追い討ちの言葉がぞわりと背筋を駆け上がっていく。
 これで終わり……と、思いきや、何やら刹姫からカンペが出ている。
『振り向かせてガバーっと抱きしめてキスっす!キス!』
 一片たりとも容赦せず殺しに掛かった。
 だが涼子も期待の眼差しを向けている、クライアントのオーダーには応えねばならない。
 グッと肩を引き寄せるようにして振り向かせれば、互いの唇が重なる。
 男性らしい硬さの少ない体は、認識さえしなければ勘違いできた。
 今日味わったキスの味はとても甘い洋菓子の世界。
 
●後日談
 成功、クライアントは大喜びだ。
 刹姫とセレア、クラリスも大興奮で脳内に映像を焼付け、涼子と仲良くなった三人は映像のコピーをお土産に貰っていくぐらいであった。
 男性陣は死屍累々と絨毯の上に沈み、起き上がれるまで長い時間を要する程で、精神ダメージは計り知れない。
 その映像を元に作られた新作は大盛況、一気にスランプを抜け出した涼子はまだまだ上り続けるだろう。
「お~っ、これはあの時のシーンっすねぇ! これはイケるっすよ!」
「ホントねぇ、あら、ベッドルームの話、かなり描き込んでるのね? 二人がみたらどうなるかしら」
「わっ、こんなに露骨に……ちょっと恥ずかしいかも」
 腐の乙女達は嬉々として到着したお礼の同人誌を楽しむ。
 勿論、男性達にもちゃんと彼ら宛ての名前をきっちり書いて、真昼間に送りつける温情付であった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 如何でしたでしょうか?
 もっとあれもこれもと詰め込みたいところがありましたが、入りきらず少々無念です。
 しかし、私の伝え方が悪かったようで、俊介さんとツァインさんを勘違いさせてしまったようで申し訳ないです。
 もう少し詳しく書くと『プライドを掛けた、男同士のタチネコのタチを取るか取られるかの戦い』といったところでしょうか?
 禅次郎さん、申し訳ないですがアークでは一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
 ここに関しては腕鍛さんや零児さんも該当するかもしれないですね。
 ではでは、ご参加いただきありがとう御座いました。
 私、とてもとてもとてもとてもとても楽しかったです。