●乙女の憂鬱 木々の生い茂る閑静な林、そこを抜けると一つの洋館があった。 ここは8人の少女達が住まう場所、だが、ちゃんと生活するには先立つものが必要である。 ゴスロリ系の格好に身を包んだ彼女達が、真面目にレジを叩いたり、カウンターで頭を下げる様子は無い。 彼女達の食い扶持は別にあるのだ。 「お姉ちゃん達は?」 水色のアリスドレスに身を包んだ幼女、愛(めぐみ)が傍にいた幼女に問う。 「お仕事中だよ、邪魔しちゃダメだからね?」 問いに答えた幼女の名は空。 こちらはパステルピンクの甘ロリに身を包んでいる。 直ぐ傍には最年長の女性であり、皆の親に近く、姉でもある涼子の部屋があった。 ドアノブに掛かった看板には『お仕事中、急用以外入るべからず!』の文字。 この時ばかりは涼子や他の姉達が自分の相手をしてくれないのを、二人は理解している。 がんばって! と愛は真面目に応援するのだが……何をしているのかを知っている空は、素直に応援できない。 でも、倒れないで欲しいとは思っているのだとか。 「出来たっ! 麗、任せたっ!」 常は紫色のゴシックドレスに身を包む涼子だが、今は違う。 タンクトップにホットパンツ、額には冷却ジェルシートが張り付く。 ヴィジュアル系に近いゴスパンクスタイルの狙撃手、麗も今日は似たような格好だ。 「了解した」 受け取った原稿用紙には下書きのみ、後は何かの指示が細々と書かれている。 麗はインクに浸したペンをグレーのラインへ這わせていく。 狙撃と同じ、丁寧で寸分のズレもない精密機械の如きペン入れ。 その上で素早いのだから、まさに神業というところだろう。 「涼子お姉ちゃん、ここのトーン指示何? 読めないよ?」 何時もは赤いゴスロリのワンピースに袖を通す剣士、留美も同じ格好である。 高飛車な口調も、今はすっかり家仕様。ただの妹だ。 「あっ、ごめん、32番張って!」 指示を受ければ、デザインカッターがうねりを上げる。 音速の太刀筋で極めた素早く細かな動きは、的確に必要な分のシールを切り出し、原稿と一体化した。 修羅場モードのお仕事も今日はラスト、サクサクと仕上げ終え、凌ぐ事に成功だ。 「おつかれ~、私お茶いれてくるよ。何がいい?」 ぐっと背伸びをし、留美は立ち上がると二人へオーダーを確認。 「冷たいレモンティーお願い~」 「私は何時ものコーヒーを」 わかったと返事をすれば、留美は扉の向こうへ。 暫くしてトレイに透き通った紅茶と、暖かなコーヒーを乗せ、戻ってきた。 「でも困ったわね……」 まったりとティータイムの最中、涼子はどんよりとした表情で呟く。 「どうしたの?」 留美の問いに、小さく溜息が零れた。 「だって、新作描けてないのよ? 今日のは粗を取ったり、継ぎ足したりだし」 涼子は所謂同人作家だ。 それも某イベントやらでは壁際サークル、どこぞの店での委託販売も常のこと。 時折商業誌にも顔を出し、その二つから捻出される利益が生活費や必要な出費をまかなっている。 総集編や、ちょっとしたオマケ冊子で繋ぐにはそろそろ限界が来ていた。 「でも、いい掛け算浮かばないんだろ?」 麗はパイポを銜えつつ問う。 煙草でないのは、皆に煙たがれる為仕方なくらしい。 「そうなのよ! 最近『キタッ!』ってアニメやゲームないし、既存のネタで凄いの浮かばないし……」 先に断るが、涼子のジャンルは所謂BLである。 BLという範疇であれば何でも食べる、その貪欲な守備範囲は多数のファンを惹きつける要素の一つだろう。 「いいネタがあればいいな」 他人事の如く呟く麗に、真面目に考えろと二人の視線が刺さる。 そして……一つの妙案が浮かぶのだ。 「……私ってば天才かも」 はて? と首を傾げる二人へ、早速涼子は説明を始めるのであった。 ●援護要請 「せんきょーよほー、するよっ!」 満面の笑みと共に腰に手を当てVサインをする『なちゅらる・ぷろふぇっと』ノエル・S・アテニャン(nBNE000223)。 傍には兄もいた。 「ほんとうは、ノエルだけでだいじょうぶっていったんだよ? でも、お兄ちゃんが、どうしてもしゃべりたいっていうから、こまかなことはおまかせするの」 若干舌足らずな口調で説明するノエル。 早速と言わんばかりに、おぼつかない手つきでコンソールを叩いた。 「まえにね、イヴおねえちゃんが皆におねがいしたことがあったんだけど、しっぱいしちゃったの。でもね? そこのお姉ちゃんたちが、おねがい聞いてくれたら、みんなのおねがい、きいてくれるかもしれないの!」 以前の依頼結果をスクリーンに映し終えると、何故かノエルは右へガクンと首を傾げる。 「でもね? おわった後、みんなすっごくクタクタになってて、大けがみたいになっちゃうかもしれないって、ノエルにはみえたの。そのお話をお兄ちゃんにしたら、お兄ちゃんはわかるみたいだから、せつめいしてくれるんだって」 早速というように、ノエルの兄、紳護が前に出た。 「洋館に住まう8人の少女がいる。彼女達に協力して欲しいと伝えたところ、勝負で勝てたらということだったが……残念ながら敗北した。だが、ノエルの話したとおり、協力次第では再検討してもらえるそうだ」 前置きを終えると、紳護は黒いファイルに入った資料を集まったメンバーへ配っていく。 「その……用件はだな。モデルをして欲しい、ということだ。……男同士の同性愛じみた作品のだ」 リベリスタ達は凍りつくか喚起するかの二択。 少なからず、紳護は表情が引きつっていた。 「オーダーはそこに書かれている内容だ、ただ、場合によっては色々と精神的な負傷で行動できなくなる場合がある。注意してくれ」 何をどう注意しろというのだろうか? 説明を終えると、紳護はノエルの手を握り、扉へと向かう。 「俺はノエルの護衛任務がある、後は任せた」 野郎、逃げやがった。 かくしてリベリスタ達は罰ゲームの様な仕事をさせられる事に、紳護に恨みを抱きながら。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月02日(土)23:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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