● 研ぎ澄まされた刃は銀色に輝いていた。 柄に巻かれた柄巻は、暗い青色で彩られ、壊れてしまいそうな程に細いくせに、刃先が捕らえたものは綺麗に分断される。 とは言うものの、綺麗に保管されているだけで、もう何かを切るだなんて。 ――あと、あと、どれくらい待てばいい? どれくらい待てば、主が迎えに来てくれる? ――軟らかいものが切れる。そんな鈍い音が幾度と無く響いていた。 あれでもない、これでもない、と。 何かを探しているようにして、刃はいったりきたり。 刃の周りには犬型のエリューションビーストが囲んでおり、狙いは刃を持つ、その少女。 まだ年端も行かぬ、ベビーフェイスを持った少女が日本刀を握っていた。 しかし、普通に見ていて動きはおかしい。少女は紛れもなく一般人であるのだ。 けれどその動きは桁外れの早さと反射神経。そして殺傷能力を持っていた。 理性を無くした猛獣の檻の中で、少女は踊るようにそれらを切り刻んでいく。 「……」 (やだあああ!! 怖いよおお!!! 誰かああ助けて!! たすけてえええええ) 少女の目は虚ろに、目の前の敵さえ見てはいない。 口からは耐えず唾液が漏れながらも、激しく揺れる体をあとに、地面へと落ちていく。 けれど、目は、心は彼女のものだった。 舞う鮮血の中で少女は刀によって笑っていたが、涙だけは事実を訴えていた。 これでも無いって思ったのか、刃は少女の体を止めた。 だらりと切っ先が地面に着くと同時に、エリューションが一斉に少女の体に噛み付いた。 噛みつかれ、千切られ、中身が露出しようとも少女は叫ばない。 ただ、ただ、目の前の一点を見て動かなかった。 (え、やだ、やだ、それは、それだけはああああああ!!!!) 少女の声の無い叫びは、通じない。腕だけが動き、刃はその頭を胴から切り離した。 巻き起こる血風。そして、肉を無くした残骸は無残にも地面へと崩れていく。 その場に残ったのは、緋色に染まった刀だけ――。 ● 「こんにちは、皆さん。急ぎのお仕事です」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は集まったリベリスタ達にそう言う。 モニターには、なんの飾り気も無い日本刀が映し出された。 「所謂、アーティファクト。妖刀ですね。名を、青渇といいます。これが一般人の少女の手中にあるのです」 その刀は、数日前まで普通の刀だった。 名家の宝として由緒正しく保管され、受け継がれてきたが、ある日を境に意思を持ち始めたという。 その境とは、少女が刀を持った日だ。 興味があったのだろう。飾られているそれを、躊躇い無く掴んだのだ。 「意思のある刀は少女の体だけを支配しています。心は……彼女です。 このままだと、いずれ少女が増殖革醒の影響を受けるか、刀に殺されてしまいます」 少女は革醒してもフェイトは得られない。 リベリスタが介入しない限り、破滅の一途なのだ。 「少女は一般人の本来の力以上の力。皆さん並みの力を持っています。刀を握る腕は特に力が強く、離させるには腕を切る覚悟が必要かもしれません……」 それが夢で見た未来の話だった。 刀は実際にしゃべる訳では無い。だが、意思はある。 「意思は、探しているのです、主を。けれど少女はそれにはなれない。 皆さんも触れれば青渇に支配されるかもしれません。でも、支配することもできるかもしれません。 今から行けば、まだ間に合うのです。でも時間が少ないです。時間を越えれば少女は刀に殺されます。 エリューションに囲まれたその中で少女は踊らされています。 ですが、お気をつけて、日本刀は誰彼構わず斬るのです」 それが例え、持ち主であろうと。 「犬型のエリューションは総数十三体。 フェーズは1と2が入り乱れています。力の強さは、体の大きさに比例していますので、それは伝えておきますね」 肥大した体は犬本来の可愛さも無く、いうなれば地獄の番犬とでも言っておこうか。 獲物を求め、血走った目は完全に我を忘れている。鋭い牙や、爪には注意が必要そうだ。 おそらく夜なのだろう。辺りは暗く、街頭の光さえ乏しい。闇に隠れた月の光は、リベリスタの目には優しくは無い。 「それではよろしくお願いします」 杏里は深く、頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月02日(土)23:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●こんな意思でもなんでもなくて (いやだ、こんなの、いやだよおおおお!!!) 思考は彼女。 次から次へと移り変わる視線から、断片的過ぎる情報を頭の中で整理していく。 そう、今。私は――? 鼓動はいつも以上に早く動く。けれど、息はあがる事も無く、感じる体はいつもよりも軽い。これて本当に自分の体なのかと思う。 (主の体? 嗤わせる。今や我が物である。主探しの旅、道ずれとなり、犠牲となるのを光栄と思え) そう、頭の中で響く声に逆らえなくて。月下で踊り狂う、人形として成り果てた少女が一人。 嗤う刃の思うが侭に、狂わされ、血に染まって、真実の涙は未だ絶えずに流れ続けている。 見るに耐えない光景に、足音が近づく。 獣のそれか。 はたまた、違う人かモノか。 (誰か、誰も良い、助けてええええええええ!!!!) 届かぬはずの叫び声は、夢見る少女が掬い取った。それは既に伝達された。 起こる未来の上。強引に、新たに、力づくで上書きするのは、そう、リベリスタの役目である。 罪も無い一般人。絶対に死なせない。そう心に誓った、ホーリーメイガス。 「それでは、皆さん。相談通りにいきますよ!!」 『鉄壁の艶乙女』 大石・きなこ(BNE001812)が両手を広げて、仲間へと翼を送る。 制限時間は刻一刻と迫る。もう、この一回の翼の付与を次行う時があれば、それは少女の命が消えている時かもしれない。 次々と前へと出る仲間の背中をその目で送り届けながら、きなこは次の詠唱へと入る。 少女――浅村りとの目には彼らが見える。ドクンと鼓動が早まった。嫌な汗が全身を濡らしていく。だって。 (人?! 人、駄目だよ!!? 逃げて、じゃないと……私、殺してしまうよおおおおおお!!) 斬った数だけ、流した涙。 それは、また増える。 青褐の刃が向いたのは、『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)だ。 胴が裂かれ、着ていた服さえ一刀両断されて。歴戦に投じた身があらわになる。 舞姫は一瞬だけ痛みに苦い顔をした。けれど、それを見せないように、表情を見せないようにして下を向いた。 そして。 「ぜっんぜん、平気です!!」 (な、な、な……なんで……なにして……!?) 顔をあげ、笑って、顔を斜めに傾けて可愛く見せて。大丈夫だよって。 見えたりとの顔は無表情だった。こんなに月明かりが綺麗だっていうのに、目に光さえ灯らない。ただ、綺麗な涙が流れていた。 それを目で追いながら、舞姫の体は犬によって跳ね飛ばされていく。その光景を見ることなく青褐はりとの体をくるりと回し、後方から噛み付こうとしていた犬を斬った。 「助けてあげるからもーちょい待ってなよ!」 舞姫の声に続いて、声が響く。強く、力強いその声。 (!?) 『下剋嬢』 式乃谷・バッドコック・雅(BNE003754)は静かに力を貯めながら、まっすぐにりとを見ていた。 後方できなこが翼の加護を放った、その背中にあたる翼の暖かい感触を感じつつ。 「聞こえてるんでしょ!? 助けに来た!!」 聞こえているよって、言えたらどれだけいいか。 安心してもらいたいから。雅の声は確かにりとには届いている。だが、それを阻むようにして、りとと雅の間に犬が立ちはだかった。 まるで己の餌を死守しようとしているような、いや、新たな餌を見つけた喜びもあるかもしれない。 「ふむ、始めよう」 妖刀なんて、今となっては珍しくも無いが。危険なそれを放置しておくのは、見逃せない。 暗い、暗い青が彩るその刀は、月明かりに反射して不気味に光っていた。 そして、目を瞑って。辺りを包んだのは、強決壊の透明な膜。それを放ったのは『アウィスラパクス』 天城・櫻霞(BNE000469)だ。 その前方、元気よく走っていく『サムライガール』 一番合戦 姫乃(BNE002163)がランスを振り上げた。 「邪魔でござるよ、犬共!!!」 痩せ身の体、そのどこにこんな力があるのかは神秘だが。 りとへと背を向けながら、姫乃は己の前方の犬を薙ぎ払っていく。 けれど、横から、斜めから。犬は姫乃の体に噛み付いて、その綺麗で柔らかい肌に傷を与えていく。 流れる血、治らない傷。それでも、倒れることは無い。 軽く舌打ちした『Friedhof』 シビリズ・ジークベルト(BNE003364)が神秘をその体に纏う。 姫乃の血がシビリズの体にまで着いていく。 此処は檻。 犬の、目が狂気に染まった獣の檻。 次の一手を放つために、シビリズがそう行動した瞬間に、その体は最も巨大な犬の体に跳ね飛ばされてしまう。 「ガッ!?」 ベキベキっと、体の中で嫌な音が聞こえた。もしかして肋骨が数本イったか。 大通りの店のシャッターを粉砕しながらシビリズの体は勢いを失って止まる。咳き込み、吐いた息に混じる血。けれどシビリズの口は横に裂けていったのだ、楽しいって。 そんな吹っ飛んでいたシビリズの体を入れ替わるようにして、飛んでいくのは漆黒の閃光。 『ティファレト』 羽月・奏依(BNE003683)は直線状の犬をそれで攻撃していた。けれど意識が向いているのは犬ではなく、りと。 『絶対に私達がお姉ちゃんを助ける! 約束する!』 己より歳を重ねているりとへ、テレパスを送っていく奏依。確実に届いていく声に、一般人であるりとは一瞬訳が分からなくて混乱しかけたが、もう目の前で起こっていることが現実だと受け止めはじめていて。頭に響く声だって、一つでなくて。 (これはこれは、なかなか面白い者達が訪れたではないか) (!? だ、だめ!? な、なにするの!? あの人たちは傷つけちゃ駄目ええええ!!!) そんな葛藤さえ起こっている。 姫乃が薙ぎ払った、その逆方向で『Trapezohedron』 蘭堂・かるた(BNE001675)は同じく犬を薙ぎ払う。 肩口を噛まれたか、流れる温かい血が頬をかすめていく。けれどかるたは手の動きを止めない。 邪魔、邪魔です、とでも言いたげな瞳で、ただ映すのは強襲型携行砲台【Trapezohedron】によって吹き飛ばす犬の数。……ってそれ重火器!? すうっと吸い込まれるように、りとの体を使って青褐の刃が天へと向けられた。 「人としての道を失った革醒者か、面白い!! 少女が欲しいか? ならば我を押さえてみよ!!!」 りとの声であり、りとの声では無いその声で、刃が高らかに咆哮した。 高く掲げられた刃から血が滴り落ちる。どれだけ斬ったか、りとの体は赤く染まっていく。 ● 何人も斬った 何人も殺した わたしも、所詮は同じ血塗られた刀にすぎない 青褐の一番近くに位置をとっていた舞姫。揺れ動くその刀をずっと見ていた。 必ず助けますから、もう少しだけ、頑張ってください、ねって、声をかけても反応が無くて。 本当に届いているのかなって不安になるけれど、信じることしかできない。 使ってくれる人を探す刀か でも本人の自業自得とはいえあんな怖い思いをさせちゃだめだよ 奏依が牙を剥く。 綺麗な顔をしていても、光る牙の切れ具合は一級品。 たった一体だけだけど、噛み付いて、噛み付いて、小さな一体の命を根こそぎ吸い取る。 周りで、仲間の血が舞い散っているが、犬によってなのか青渇によってなのかもう、分からない。 うっかり触っちゃった彼女は間違いなく不幸だけど 世間知らずな刀も不幸ね 集中を積み重ねる雅。 常に踊り続ける的を眼で追いながら、泣く少女が見える度に刀を攻撃しにいきたい衝動にかられたが、まだ、まだ――。 長い、長い十秒が過ぎていく。 かの妖刀村正は、権力者の不運に何度も関わったため曰くがついたとか かるたが動けば、戦鬼烈風陣の嵐。 どれだけ吹き飛ばしたか分からないが、大通りに連なる店や壁に、エリューションの死体がくっついてはずれ落ちる。 フェーズ1ならそんなものか。だけど、立ちはだかるフェーズ2が二体。 噛みつかれ、引き裂かれ、体力が飛んでいく。 面白い。もとより私は闘争こそ至高と思っていてな 私の“正気”と貴様の与える“狂気”。仮に触れたらどちらがより上回るのかな? ヘビースピアを振りかぶり、一体一体潰していく。 ヘビースマッシュに切り替えて、大きな一体へと打ち落とし。 ギャイン! と大きな声をあげて跳ね回るのを楽しく見ているシビリズの体力はすれすれの状態。 けれど、そのときの彼が一番怖いって知ってた? さて、終わらせよう……結末がどんな形になったとしてもな 口を真っ赤に染めて。それこそ吸血を用いるヴァンパイアの本来の姿か。 背後に輝く月からの逆光で櫻霞の表情は読めないけれど、犬の動かない抜け殻の上で櫻霞の紫の瞳が光る。 別に心が悪でないのにフィクサード扱いになってしまうのは 嫌なのでござるです りとの近いところで戦っていたから。 背に青褐の刃が突き刺さり、腹部から刃の切っ先が出ている。それでもギリリと奥歯を噛み締めて、前方の迫る敵を薙ぎ払った姫乃。 痛いなんて言わない。きっとりとの心のほうが痛いはずだから。 何としても制限時間内に彼女を救出しますよ! 戦場が見渡せる、後衛にいたきなこは仲間に敵がどこにいるのか呼びかけていた。 声がかすれるほど叫びながら、それでも己の役目は全うするのだ。 神秘に呼びかけて、送る歌は勝利の歌か。仲間の傷を治し、でも与えられた致命がなんとも歯痒い。 ――誰か、誰でも良い。もう、もう帰りたい。 ● 犬の大半が減ったものの、やはり大きな犬は残る。けれど、時間もそう余っている訳では無い。 「もう、耐えらんない!! いく!!」 雅が叫んだ。そのときにはもう体は動いていた。アイコンタクトで櫻霞と合図を送り合って。 五十秒集中した雅のリボルバーが唸る。轟音と共に、放った早撃ちの弾丸。 それとほぼ、同時。 「この程度で剥がせるとも思わんがな……」 櫻霞の、二回目のピンポイントが放たれた。 (な、に!? 我を壊すか……!?) 焦った青褐がりとの体を最大限にまで振り回した。犬にも眼をくれず。刃はリベリスタ達へと向く。 「か、く、せぃ、しゃあああああああああああああああ!!!!!」 りとの声が震えながら叫んだ。 強化されてると言えども、その体は普通のもの。 限界を超えた動きをする彼女の体はぶちぶちと音を立てて崩壊している。けれど、表情さえ刃の支配。 りとの、怒りの顔で横に振りかぶった刃。そのすぐ近くには舞姫と姫乃が居る。 一閃。 二人の胴を切り裂いて、血風を起こしながら、その軌跡が赤く赤く。 そこで二人のピンポイントとバウンティショットが柄にぶち当たる。 りとの体がその二色の勢いにバランスを崩しながら倒れようとした頃。 「あんまり調子に乗るなら千本ノックしますよ?!」 刃じゃ峰じゃなくて平らな部分で。 きなこが刀を持つ腕に抱きついて、その体を止めた。更に舞姫が腕を伸ばし、りとの腕と青褐を握った。 ダメージを負った今なら、きっと、離せるかもしれない。櫻霞も刀を握り、力をこめる。 「いくでござるよ!!!」 響いた姫乃の声。 姫乃が刃を握って、もちろん、血が手から流れたが。 舞姫が腕と柄を握って。 櫻霞が柄を握って。 きなこが腕を握って。 「せーのぉっ!!」 青渇を離れさせようと、一気に捻った。 ドクンッ そして、触れた、青褐。 きなこ、舞姫、姫乃、櫻霞の体が一度だけ動いて、静止した。 かなり手荒に引き剥がしたものだから、りとの手の皮が青褐の柄にこびり付いているものの。 ずるりと落ちたりとの体を奏依が受け止めて、抱きしめた。 「……ん、ぅう」 意識はあるようだ。りとは奏依の腕の中でぐったりと力無く。 「みな……さん?」 それよりも、だ。 奏依が心配そうに見上げたものの。頭上で青褐を持ったまま動かない四人。 「ちょっと、これ、どうすんのよ……」 雅が親指の爪を噛んだ。きっと、おそらく、青褐との葛藤が始まっているのだろうと思う。 そんな時だが、まだ犬の退治が終わっていない。 奏依はすぐさまりとを抱えて走り出す。 残り、二体。それをとりあえず三人で倒さなければいけない。少しばかり――劣勢というやつか。 ――武器が持ち主を操るなんておこがましいにも程がありますね 「う、ううぅ、」 きなこは、精神無効のおかげか。頭を押さえてその場に崩れた。 ――主を求めるその思いは大した物だが、意味も無く殺しては折角の刃が汚れて行くだけだ。 お前には強い力がある、妖刀だからと言うだけでこのまま破壊されるのは余りにも報われない。 護りたい日常がある、その為に少しでも多くの力が欲しい。お前は主を強く渇望していたな。 四人の中でも、櫻霞は鉄心の恩恵があった。人一倍強く握り、かつ、殺戮衝動に支配されていない。 己をもって、己の意思で、青褐を握りしめる。 (グゥッ!? 我を押さえ込むか、男!!?) ――少なくとも利害は一致するだろう、こんな人間でも認めてくれるというならお前の刃を俺に預けてはくれないか? (小癪な!!?) 舞姫と姫乃の体が、櫻霞の体をど突き、その手を青褐から離れさせた。 その間にも、巨体の犬が咆え、狙うは姫乃。 その牙で、噛み付こうとした瞬間だった。振り向いた舞姫が姫乃が、ひとつの太刀を右手と左手で持ち、その犬の顎ごと切り落とした。 ――貴方は何を望む? ただ闘争を求めるなら その刃に相応しき剣技を以て応えよう 地獄の底、修羅の道の果て、共に砕け散るまで 貴方の存在に意味を与えてみせます 殺戮の兇刃では無く、守るための力として 溢れる殺戮衝動が止まらない。 青褐を振り上げて、その犬の頭蓋骨を砕かんばかりに叩き落とす。 ――この刀さんは悪なのでござるですか? 悪のアーティファクトなら破壊するしか手が無いでござるですが そうで無いなら自らの力を自制してみせよ! そんなものでは、主の成り手も見つからないでござるですよ! その瞬間。 「少女が支配されてるのは、見るのは嫌だな」 「手間、かけさせてんじゃないわよっ!」 「だから、役立たずの不用品です。まあ、一体の犬を倒したのはどうもです」 シビリズが、ヘビースピアを持ち、それを青褐の刃へと振り落とした。 雅が、リボルバーを構え、弾丸を腕ごと射抜く気で撃ち放つ。 かるたが、砲台を持ち上げ、その刀を砕こうと。 「我が、我が主、何処、何処ぞ」 姫乃の声で。 「斬る、殺すための、我が存在、主よ、主よ!!」 舞姫の声で。 それが青褐の叫び。 金属と金属がぶつかりあって、奏でたのは高い高い音の轟音。 持つ手を無くした青褐が地面へと落ち、刃とコンクリートがぶつかって再び音が響く。 ――我が、求めるは、ただ斬ることのみ。それを成し遂げられる主は――ッ!! ● 大通りの道に、青褐は刺さっている。 「んでさ、青褐。何がしたいんだ?」 それに近づいて、雅は柄を触って持ち上げた。頭の中に、青渇の意思が入り込む。 ああ、これは少しまずい。 油断すれば、意識ごとブラックアウトで起きたころには仲間斬ってるかもしれない。 (何がしたい? 斬りたい、斬りたい。我は斬る、主のために。今は亡き、主のために。我は殺すために斬ることを望む主を探す) 小さい世界を見てるんだなと、雅は落ちそうになる意識の合間でにやりと笑った。 「……大人しくしてりゃ、世界をみせてやるよ?」 (ふん) そこでブラックアウトした雅の視界。殺戮衝動が雅を本来の彼女から狂気へと変える。 けれど、すぐに鉄心が護る櫻霞が、再び青褐を雅の手から離した。 腕の中で雅の体を捕らえ、青褐は地へと落ちた。 その二人の姿を遠くから、りとは見つめていた。 「あなたちは……いったい……?」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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