●漆黒の宝石 「……なるほど、事情は分かった」 かつん、と機械の手が酒の入ったグラスをテーブルに置く。 薄らと笑いを浮かべたのは、未だ貫禄には遠い若さと軽薄さを兼ね備えた一人の男。 「つまり、だ。蝮の親父さんに『俺はアイツとは違う』ってのを見せる時だな」 「当たり前っす! 俺らにゃロック・クリスタルの連中なんか目じゃねーっすわ!」 「こんな計画、きっと連中には思いつきませんよリーダー! さすがです!」 安物のソファに腕を掛ける男を、やはり十把一絡げに『チンピラ』で言い表せそうな柄の悪い二人が大袈裟に持ち上げた。 そんな手下AB、名は加藤と北野を余裕の目付きで眺め、リーダーと呼ばれた男は薄い紙の束を放つ。 「フン、お前らもブラック・ダイヤモンドの一員である事を誇りに思えよ。 このコール様があんな兄気取りのクソ野郎なんかといつまでも同じに見られて堪るかってんだ。なあ?」 台詞の後半だけ忌々しげに吐いて、コールは卓を囲む残った二人にも目を向けた。 微妙な空気を放つその内の一人、手下Cこと芥子が間を置いて口を開く。 「……ねえコールさん。これって本気ですか」 「当たり前だ。なんだ、ビビったのか?」 「いや、まあ、ビビったといえばこの上なくビビったけど」 最後の手下Dこと小西がまだ何かを言おうとするのを断ち切り、コールは笑った。 確かな勝利の確信を、その顔に浮かべ。 「ッハ、伸し上がるのはロック・クリスタルの連中なんかじゃねえ、俺らだよ!」 「当然です、つーか様子見なんて生温い位ですよ!」 「やっちまいましょう!」 盛り上がる二人と、ますます調子に乗るリーダーを横目に、テンション的に取り残された二人は揃って顔を見合わせる。 その手には、『バスジャック』と汚い字で書かれた紙の束が握られていた。 「……なあ。そんなに斬新な計画か。これ」 「最近は使い古されて特撮の怪人でもやらない、って点では一周して斬新かもな」 割と冷静な二人の声がリーダーに届く事は、ない。 ●何とかは死んでも直らないから 「忙しい所なんだけど、ちょっと馬鹿を殴ってきて」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が真顔で言った。 いや、いつも真顔のような些か表情に乏しい少女ではあるが、それはともかく。 「とある馬鹿連中――『ブラック・ダイヤモンド』とか名乗ってるチンピラ集団。 そいつらが、保育園から帰る途中のバスをジャックしたの」 映し出された面々は、揃って夜の街に屯ってそうな柄の悪い青年たちだ。 「多分皆が行く頃には、不安がって泣いてる子供たちを彼らが頑張って宥めてる所だと思う」 何か微妙な空気が流れたが気にしない。 その内の一人、アッシュグレーに髪の色を抜いた目付きの悪い短髪の男をイヴは指す。 「これが一応リーダーらしい。名前は黒武・石炭。馬鹿だけど、今の所アークには存在しない能力の持ち主。詳しい事は資料に書いてあると思うけど、油断はしないで」 ぱさぱさと資料を配りながらイヴは端的に情報を告げる。 曰く、人目を避けた彼らが向かったのは町外れの小さな山の一角。 道途中の休憩スペースやトラックのUターン箇所も兼ねるそこは広く、戦闘に支障は無い。 「この馬鹿たちをやっつけてくれれば、子供達も泣き止むと思う。 手加減は必要ないけど、必要以上に痛め付けると怖がってまた泣くかも知れないから気を付けて」 殺したりするのは子供の前では良くないから、と、自らもその範疇に入るだろう少女は平然と言った。 「この連中が、何でこんな馬鹿な事をしでかしたのか、何を考えてるのか分からない。 ……馬鹿の考える事だから分からない、って言えばそれまでだけど」 ただね、とイヴは少しだけ不可解そうに眉を寄せた。 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 未だ何も、と少女は首を振る。 が、すぐにモニターに顔を戻してリベリスタに行動を促した。 「バスは免許を持ってるアーク職員がちゃんと送り届ける。後は気にしなくて平気。 思う存分、殴ってきて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:51 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●おとなげないおとな 麗らかな午後。 ブラック・ダイヤモンドは、子供の泣き声の大合唱の中にいた。 ああああああ゛あ゛あ゛ あああ゛ああ! おがあざーん! おがあざーん! あーん! あああああああああーん! 「ほーらかたつむり!」 「ほら犬耳!」 加藤と北野が必死で影絵的なものを作ったり自前の耳を動かしたりしているが、泣き止む気配はない。 耳を押さえて運転席に突っ伏す石炭の杜撰な作戦は、一応うまく行っていたのだ。 送迎途中のバスから保育士が降りたのを見計らい、運転手を蹴落としてバスを乗っ取る。 フィクサードである彼らにとって、それは実に簡単な作業であった。 そこまでは。 「さあ良い子たちー、お兄さんが紙芝居をするよ。『ある所に馬鹿がいました。馬鹿は何も考えないで保育園の送迎バスを狙ったので途方に暮れ』」 「てめぇ芥子! 今さり気なく俺をディスっただろ!?」 だが、異常事態に泣き出した子供らを宥めるのは――泣かせるのに特化してきた彼らには、少々難易度が高すぎた。特に人相の悪い石炭など、見ただけで子供が泣く始末である。 故に彼は今、耳を塞ぐか部下に突っ込みを入れるか以外にする事がない。 「……リーダー。怒鳴ると子供ら余計に泣くぜ」 石炭の怒号に、小西が疲れたように呟いた。 ――そんなフィクサードを遠目に、リベリスタは戦闘準備を整える。 「バスジャック……それも保育園のバスじゃと?」 「子供達は宝物なのに……。足りない頭で妙な事を考えるからよ」 『巻戻りし運命』レイライン・エレアニック(BNE002137)が眉を寄せれば、必死になって宥めているフィクサードの面々に『Krylʹya angela』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203) が頬に手を当てて呆れたように溜息を吐いた。 「あぁみんな泣いちゃってる……とりあえずあの怖い顔の人達をなんとかしないとぉ」 「あんな人相の悪い顔見せつけたら泣くのはあたりまえなのです!」 おろおろとした様子で見つめる『コドモドラゴン』四鏡 ケイ(BNE000068)の横で『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020) が憤慨した。顔が怖いのは別にフィクサード達の責任ではないのだが、それはそれ。 「ちっちゃい子巻き込むなんて許せねぇ!」 泣く子らに己の幼い弟を重ね合わせ、『鉄腕ガキ大将』鯨塚 モヨタ(BNE000872)も子供らしい真っ直ぐな怒りをバスに向けている。 「こんな事をするおバカさん達には、きっついお仕置きが必要だと思うな。うん」 「子供代表として鉄槌を下してやりましょ」 『おじさま好きな幼女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)がこくりと頷きながら言えば、『ナーサリィ・テイル』斬風 糾華(BNE000390)がその白い髪をかき上げた。 確かに、何の運命か任務を請け負ったリベリスタの大半が十代前半(一部外見年齢) 図体ばかりデカくなった、体は大人、精神は子供の集団に『お仕置き』を下すには実に良いメンバーでもあった。 「待ってろ、お兄ちゃんが今助けてやるからな!」 バスの内部にいる悪役に向け、幼いヒーローが剣を抜く。 ――そう。 幼い子供を巻き込む悪など、正義の味方に潰される為にいるのだから。 ●せいぎのみかた バスと子供たちの安全を考え、些か離れた場所で足を止めたリベリスタ達に真っ先に気付いたのは加藤だった。 「コールさん! 不審な集団がこっちに来てるっす!」 「ははは、アークの連中あっさりリーダーの罠にはまってますよ!」 北野もガッツポーズで戯言を抜かす。 「よく生きてて恥ずかしくないわね」 そのはしゃぎように思わず呟いた糾華の言葉は、幸か不幸か届いていなかった。 聞いていたとしても自分達の事だとは認識しなかったに違いない。 「よっしゃあ! やっと着やがったかアークど、も……」 「……どうしたの? 怖くなった?」 泣き声の大合唱のバスを降り、自信満々で口を開いた石炭の語尾が段々小さくなるのに、アリステアが首を傾げた。 が、石炭は身を震わせ、そして叫ぶ。 「何でこんな女子供が多いんだよ殴りにきぃだろうが!?」 先の通り、この場の面子はほぼ例外なく女性か子供。 中には石炭の二倍半ほど生きている女性や、そもそも還暦を軽くオーバーしている男の娘的なリベリスタもいるのだが、そんな差など彼らに分かるはずもない。というか彼らでなくても一見では分からない。リベリスタ怖い。 「え。保育園バス狙った時点で女子供に無闇に手を出さない信条捨てたのかと」 「馬鹿だな小西、コールさんにとっちゃ殴らなきゃ手を出した事にならないんだよ」 「ああ、そうだな、馬鹿だったな……」 芥子の棒読みにうんざりとしたように、小西は自身の武器を構える。 冗談のような会話を交わしていても彼らの動きに無駄はなく、荒事に慣れている事をリベリスタに知らしめるには充分であった。 「気は乗らねーっすけど、ガキでもアークだって言うんなら手加減しねっすよ」 「殴られて可愛い顔に傷付く前に帰ったらどうだ?」 ナイフを抜いて加藤が睨めば、北野も掌に拳を打ち付け凄むように見下す目線。 チンピラ集団に相応しい威嚇のオーラを纏った面々は、リベリスタと真っ向から相対する。 そこへ。 パッパー♪ 高らかに鳴り響いたのは、トランペットの音。 「そんなことはこの私が許さないぞ!」 金属の肌に陽光を反射させ、高所にて登場の機会を窺っていた『ザ・ジャーナリスツ』ソリッジ・ヴォーリンゲン(BNE000858)が石炭をびしっと指差す。TVならばSE付きで一気にカメラが寄っていた事だろう。ばばーん。ちなみにメンバー唯一の大人の男性枠(外見)でもある。貴重。 「あァ!? なんだテメェ!?」 「邪魔すんなら容赦しねぇぞコラァ!」 「全く、品がないのう」 ソリッジを怒声で迎える面子に肩を竦め、レイラインは全身の枷を解き放ち、更なる高みへと肉体を導く。ナイフを握りこんだ加藤も同様。速度に特化した戦士達の視線が一瞬絡んだ。 「石炭さんの、ば、バーカ」 「あァ!?」 「ひぃ! ご、ごめんなさぁ~い!!」 消え入りそうな声で挑発を試みるも、睨まれてあっさり縮こまったケイがそれでも俊敏な動きで一枚のカードを風切り投げ放つ。破滅を示すカードは身を掠るに留まったが、明確な攻撃となったそれに石炭が笑う。 「ぶっ潰すぞてめぇら!」 「あいよ」 軽い同意と共に小西が構えたショットガンが無数の光弾が放たれた。目前のリベリスタ複数を打ち据えたそれにエレオノーラが目を細め、援護の為ケイの背後へ走りながら全身の力をフル解放する。 「やっつけてあげるのです!」 びしっとフィクサードを指差したそあらは、最も近場にいた北野へと矢を放つ。展開した魔方陣は彼女の思い通り、鋭い一撃を彼に見舞った。 「若さに任せてかかって来なさい、石炭(セキタン)ボーイ!」 「俺はコールだってかセキタンですらねぇよナメてんのかロボット野郎がァ!?」 その横で、再び挑発にまんまと引っ掛かった石炭がソリッジへと向き直る。火花を散らすが如く交わる視線。自身のものとは違い、凶悪な暴力と言う魔を秘めた眼光をマトモに食らい、ソリッジは体力のみならず精神力まで削られる。 糾華の影がゆるりと伸びて、主に付き従うかの如く傍らに立った。戦場を眺めながら芥子は呪印を切って守護を付加する。 「無理しないでねー!」 「はっはっ、これでも昔はヤンチャしたものです」 声と共にアリステアから送られた癒しにぴっと指を立てて応じながら、ソリッジはじりじりと後退した。 「お母様方が見たらきっとがっかりするわよ」 「が、ガキがうるせぇっす……!」 「悪ぃな、坊主。寝とけ」 「そんなへなちょこ一撃で倒れるかよばーか!」 北野から放たれた炎を纏った一撃を受け流し、くるりと返す刃でモヨタはエレオノーラに注意が向いていた加藤を打ち据える。 大小入り乱れての戦闘が始まった。 ●あくやくだから バスと後衛から注意を逸らす為に皆が行った挑発は、実に効果的だった。 「言っておくけれど、バスジャックとか目新しくない上に卑劣漢と言われてもしょうがないわよ?」 「そうだそうだ」 「ちっちゃい子を使うなんておバカさんのする事なんだから」 「もっと言ってやれー」 「ンだとコラァ!?」 エレオノーラとアリステアの挑発にあっさり顔をそちらに向ける石炭。 合いの手は彼の手下二名だったが気付いていない。 先程からこんな調子で、石炭の強い一撃は前衛の間でうまくダメージを散らすように調整されていた。それでも時折深く入る一撃に誰かが膝をつきそうになれば、アリステアの呼ぶ優しい風が傷を撫で、そあらが世界に請うた歌声が力を与える。 「やーい下っ端ー! ばーかばーか!」 「馬鹿って言う方が馬鹿なんすよ!」 「いやお前は馬鹿だ」 「ほわああ!?」 一方、さり気なくモヨタに誘導され攻撃を食らいまくる加藤の援護に撃ち込んだ一発をケイにかわされ、小西が悪態と共に溜息を吐いた。前衛の三人がそれぞれ違うリベリスタを狙うせいで、一人ずつ潰すにしても満足に狙えない。それに、後ろにいる小西と芥子とて安泰ではない。 「子供達を盾に取るなど、許されざる行為じゃという事を頭に叩き込むが良い!」 「ぐっ!?」 レイラインによって芥子の頭に叩き込まれたのは、教訓ではなく鈍器。何かだいぶ嫌な音がした。ゴリィとかゴギィとか。夕食の団欒中とかには流れちゃいけない音だ。 「……俺まで馬鹿になったら困るんですよね」 よろける芥子は一番酷い有様となっている。他のメンバーが三人を抑えたと見た所で間に滑り込んだ糾華とレイラインから攻撃を受け、更に回復の合間にそあらとアリステアから矢が飛んでくるのだ。お陰様で芥子の回復は、自分で手一杯と言う状況。 「子供を泣かせて、恥を知りなさい!」 「やあ、正論過ぎて何も言えません」 糾華の発言と共に自身の内部に植え込まれたものを防げないと悟ったか、軽い口調と苦笑を返して芥子が両手を挙げた。次の瞬間、炸裂した衝撃が彼の脇腹を抉り強かに地面に打ちつける。 血を吐き咳き込む彼に差し出されたのはマイク。腕を辿れば、輝く笑顔のソリッジがいる。いや、輝いているのは機械化した皮膚だったかも知れない。 「爆発の感想を一言!」 「死にそうです」 「遊んでんじゃねえっす!?」 「おおっと」 刃をするりとかわし、後ろに舞い戻るソリッジと入れ替わりにケイの気糸が加藤を縛り上げる。 「なっ!」 「そ、そんな怖い顔で睨まないで下さいぃ……!」 気弱な声とは裏腹に、加藤を締め上げる糸は強く緩まなかった。抵抗に振り上げられそうになったナイフを持つ腕に、鋭い一撃が突き刺さる。 「がっ……!」 「――ね、加藤ちゃん。動きを封じられたら次に何が起こるか。少し考えないと駄目よ?」 背の翼も相俟って天使の如く微笑んだエレオノーラが優しく告げる声も聞こえたかどうか。彼の放ったダガーによって意識を失った加藤は地面へと倒れこんだ。 ●おぼえてろー 「オイラの勝ち!」 石炭が己の過ちに気付いたのは、モヨタの剣が北野を切り裂いてから。 加藤は地に伏し、北野は傷に呻いている。ちらりと後ろを振り返れば、芥子も意識を失ったのか動いていない。対するリベリスタは、各所に傷は作ってはいるものの全員が健在。 どちらが優勢かは、彼でも分かった。 「おバカなことはもうやめてこの人達を連れ帰るといいのです」 腰に手を当てて言い切るそあらに、石炭は拳を握り締める。 が。 「止めとこうぜリーダー、相打ち覚悟で突っ込む所じゃねぇだろ」 皆の読み通り、まだ冷静な判断力を残していた小西がそれを制した。 彼の体力も限界が近付いていると悟った石炭は大きく舌打ちをする。 「しかたねぇ、ここは引いてやるぜガキ共!」 「……わ、わあ、最後まで偉そうです……」 「負けたくせにばっかじゃねえのコイツ」 モヨタのストレートに残酷な言葉にまた青筋を立てかかった石炭であったが、芥子を背負った小西に促され、他二人を両脇に抱えるとリベリスタ達に背を向ける。 「これを機に、少しは真っ当に生きるといいわ」 「こんな馬鹿が真っ当に生きられるとでも、嬢ちゃん。……まあ、俺らの役目は済んだんでね」 エレオノーラの言葉に自嘲し小西が肩を竦めた。 まるでこの期に及んでも狙いは外れていなかったとでも言うように。 彼らの犯罪は食い止められたにも関わらず、それ自体には意味がなかったかのように。 ――そう、彼らは戦闘の最中『一度もバスへと注意を払わなかった』のだ。 果たして本当にバスと子供を狙っていたとしたなら、そんな事がありえただろうか。 本気でリベリスタを打ち倒す気であったのならば、冷静な後衛が前衛を窘めない等という事がありえただろうか。 だが、疑問を口にする前に二人は斜面を駆け始める。 「蝮の親父さんはこんな甘くねぇぞクソったれ!」 後に残ったのは、石炭の負け惜しみ。 それと、バスから覗く好奇心に満ちた無数の目だった。 ●めでたしめでたし 「よいこのみなさん、怖いのによく頑張ったのです!」 「ふふ、わらわが来たのだから当然ではあるがのう」 こっそり持ち込んでいたお菓子を配り、瞬く間に周囲に子供の垣根を作ったそあらが頭をわしわし撫でる横で、レイラインが腕を組んで勝ち誇る。が、一人の子供がまだ泣いてるのを見て怪我でもしたのか!?と慌てて駆け寄った所から見て、内はそこまで心穏やかではなかったのだろう。大丈夫だと頷く子供に向けたレイラインの笑顔は、今度こそ安堵したものであった。 「あーはいはい。皆さんお元気でよろしい!」 どうやら登場の仕方がヒーローっぽく見えた様子で、ソリッジは男の子たちに大人気。すげーかっこいー!などと言われながら体中に引っ付かれている。正直戦闘より疲労が激しいが、そんな事はおくびにも出さない。だってジャーナリストだから。理由になってなくてもそういう事だから。 「みんな、怖くなかったか?」 モヨタの方もそれは同様で、北野を打ち倒した勇姿は子ども達の胸に深く刻まれたらしい。年恰好が近い分、尊敬の念を含めた目で見詰められて少し照れたように笑った。 そうこうしている内に、フィクサード撃退の報を受けてやってきたアーク職員がハンドルを握る。お別れの時間だ。 「ばいばい、またね」 「気を付けてね」 すっかり笑顔になった子供達に向けて、バスから降りた糾華とエレオノーラが手を振る。 小さな沢山の手が、彼女らの手に応えて窓を彩った。 「うーん、いい風だね」 「そ、そうですね……」 端に立って町を眺めたアリステアが、頬を撫でる五月の風に嬉しげに微笑む。 賑やかに坂道を行くバスを眺め、ケイもほっとした様に笑った。 リベリスタの視界の下、守るべきものも倒すべきものも含んだ町へと、子供達は歓声を上げ帰っていく。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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