●芸予要塞上空にて落『弾』注意報発令、直ちに――。 さざ波。 煉瓦造りの壁。 壁の上に停まった鳥が、ちろちろと鳴き、そして。 空から降ってきた3m近い鉄塊に潰された。 ただの鉄塊ではない。 赤とシルバーでカラーリング。『翼の生えた蜥蜴』を彷彿とさせる流線型ボディ。先刻まで光の宿っていた双眼。 それはこれまでの間、『機竜』と呼ばれていた。 だが何故機竜が空から降って来たのか。 その理由は、今まさに上空で展開されていた。 全長70m超。旅客機並の『機竜空母』が悠然と空に浮かんでいる。 赤とシルバーのカラーリング。でっぷりとした腹が印象的な機竜である。 高度にして700m。周囲には大量の小型機竜と中型機竜が飛び交い、複雑な立体陣形を組み立てていく。 だがその飛行は平静なものでは決してない。 今も尚戦闘中だからだ。 そう、戦闘である。 小型機竜同士が正面から激突し、互いの首に噛付き合い、更に背から突き出た機銃を全力射撃。相手のボディをがしがしと削り合い、力尽きて落下する。 下は海だ。端の方には小島があるが、陸地からは遠い方が都合が良いとばかりに彼らは海上空で戦闘を続けている。 中型機竜が悠然と構え、小型機竜の群に無数のホーミングミサイルを放てば、相手側の中型機竜が出張ってミサイルによる格闘戦が始まる。 戦力は全く互角であった。 そう、相手にもまた、機竜空母が居るのだ。 蒼とシルバーのカラーリング。こちらはごつごつとして、大きく穂を掲げたような背びれが印象的だった。 それぞれ、ボディのどこかに文字が書かれている。 赤の機竜空母には『ミッドウェイ』。蒼の機竜には『マジェスティック』。 両機は前へ突き出た『顎』を大きく開くと、強烈なエネルギー砲を発射し合った。 空中でぶつかり合う膨大なエネルギー。 彼等は今、この世界を破壊せんばかりに交戦中だった。 ●第三勢力 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)がデスクに並べたのは、これまでアークが戦闘してきた機械生命体アザーバイト『機竜』に関するデータである。 機銃と近接格闘を武器とする小型機竜。これはリベリスタと8体8の空中戦を行った際ギリギリの勝利を収めた。 次に、二回りほど大きな中型機竜。機銃の他に対多ホーミングミサイルを備え、命中性能と火力にリベリスタ達はひどく手を焼いていた。 そして機竜空母。自己修復能力と広域破壊兵器を備え、体内に大量の機竜を格納していた。苛烈な抵抗を掻い潜り、内部コアを破壊することで撃破に成功した。 「この三パターンの機竜が全て出現し、現在……小島上空にて交戦直前の状態にあります」 交戦直前、である。 つまり冒頭での凄惨な戦闘風景は未来のものであり、まだ起こると決まったわけではないのだ。 「戦力はほぼ互角と見ていいでしょう。ですから、彼らが戦闘を行えば必ず周囲に大きな被害が出ます。戦域が小島上空だけならまだしも、これが海を渡って本州まで広がったが最後、神秘秘匿は勿論人命も多く失われるはずです。この戦闘を可及的速やかに『終わらせる』のが、今回の任務になります」 びしり、と和泉は言い切った。 終わらせることが任務である、と。 「無論、二つの勢力に真っ向からぶつかった所で歯が立たないのはお分かり頂けると思います。ですから、『どちらか片方の勢力に加担して』戦闘を一気に終わらせて下さい」 デスクの上にチェスの駒を数個並べていく。 白黒同数の駒に、新たに将棋の駒を数個付け加えた。 「現在、戦力は拮抗状態です。だから広がるなら、傾けて押し流してしまえばいい……という理解でいて下さい」 勝った方はどうするのか、と言う問いに対し、和泉はやや不安げに睫毛を伏せた。 「戦闘が終了し次第消滅する……とされています。それは予知で確認済みのことですが、理由は分かりません。ただ少なからず、この戦闘を終わらせさえすれば現問題は解決すると言うことです」 最後に全ての資料を手渡し、和泉は深く頷いた。 「判断は皆さんに預けます。どうか、宜しくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月24日(木)23:20 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●RE:フロンティア アクセスファンタズムに直結したイヤホンマイクにほんの一瞬ノイズが入る。 『未確認機竜の戦闘区域は未だ拡大中。一分後には居住区域へ到達すると予想されています。結界による間接避難誘導は行っていますが戦闘の傷痕まで隠すことはできません。明日の日常と世界の平和をあなたに託します。ご武運を……光翼隊離脱! 3、2、1』 あなたの視界を、弾丸の嵐が覆った。 赤と青の小型機竜同士が互いに噛付き合い、バチバチとスパークを起こす。 それを全て覆い潰すように中型機竜のミサイル攻撃が蹂躙し、編隊を組んだ小型機竜が迎え撃つ。 いつまでも続きそうな拮抗状態を破ったのは、いかなる機竜でもなく、見たこともないような血色の鎖であった。 ブルーカラーの機竜たちがみるみる拘束され、かろうじて保たれた浮力だけでじたばたともがく。 その間を突き抜けるようにして『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)が弾丸のように上昇していった。 敵か味方かなど判別はつかない。攻撃すべきか迷っているレッドカラーの機竜たちに、七布施・三千(BNE000346)は二本指で略式敬礼を送った。 「なんとか敵じゃないと分かってほしいんですけど」 「タワベル無いから言葉で直ってわけに行かないけど、やった分は解って貰えるんじゃないかな」 「やった分とは?」 三千が首を傾げたその途端、前後左右上下とあらゆる角度から機銃攻撃が叩き込まれた。 ウェスティアと三千は翼をややコンパクトにまるめて回避行動。 一瞬反応の遅れた三千をひっつかんで急速回転をかけるとそれまで居た場所から離脱。一気にマジェスティック側へと螺旋飛行する。それでも避けきれない分はどかどかと当たった。 慌てて聖神の息吹を展開する三千。 「ブルーカラーは間違いなく未確認かつ危険こっちを撃ってくる。レッドカラーは敵じゃないけど味方でもないから巻き込むことに容赦が無い、と!?」 「そゆこと。ちょっと無茶に飛ぶから舌噛むよ!」 回復を受けながらもウェスティアは必死に葬操曲・黒を展開。覆いこもうとする機竜たちを無理やり拘束し続ける。 複雑にもつれた糸のように、もしくは乱れ流れた髪のように無数の鎖が飛んでいく。 だが全てを抑え込めるわけではない。味方を盾にして眼前に飛び出してきた中型機竜が腹部から無数のミサイルを放出。まるで目がついているかのごとくウェスティア達を追尾し始めた。 「やば、ロックオンされてるぅ!」 急カーブや急上昇をかけて二本ほど引き剥がす。背後で聞こえる爆発音に顔を青くした。 撃たれ弱いウェスティア達ならあっという間に消炭だ。 だが無情にもミサイル群は彼女達へと徐々に距離を詰めてくる。両腕で顔を覆う三千。 と、その時。 「ろっくろーるっ! あ、間違えた!」 細長い発光体がきりもみしながら急接近。ミサイル群と彼等の間へ割り込むと、光の翼を大きく広げて手を翳した。 突如走る大量の雷。ウェスティア達をロックしていたミサイル群が空中で誘爆。 咥え煙草を吹き捨て、『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)がギターを担いで見せた。 「露払い係参上。消耗する前にアレに突入しましょ」 くいっと顎でマジェスティックを指示す。 意図を察してかブルーカラーの機竜たちが一斉にこちらへ照準。 20ミリ機銃を滅茶苦茶に乱射してくる。 「おーおー派手だなぁ。まあアレだアレ、とりあえずドンパチなら余所(おうち)でやれって」 群から外れて続々と突撃をしかけてくる機竜。『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は身体を僅かに傾ける寸避けで一機をかわすと、後続の機竜にショットガンを叩きつけた。 「ほんと、是非是非」 若干凹んで広がった装甲の隙間。そこへ二発三発適当に叩き込む。 爆発四散する機竜をよけて更に直進。 彼に並ぶようにして『華娑原組』華娑原 甚之助(BNE003734)と『アンサング・ヒーロー』七星 卯月(BNE002313)が直進飛行。 中型機竜が自らの真上を通過された所で反転、ミサイル発射。 無数のミサイルが飛来。だが甚之助は煙草でも取り出すかのような何気なさで護符をばら撒いた。 「でも俺、こういうの嫌いじゃないぜ」 空中で子鬼に変化する護符。変化した端からミサイルにぶつかって爆破していく。 適当な機竜に目星をつけて喜平と同時にアルシャンパーニュを叩き込む。光がぱっと飛び散り、機竜の目の色が変わった。 それぞれの翼に手をかける。 「雑魚ってやつはチョロいねえ」 「ハイヨーシルバー、つってなあ!」 守護結界を展開。まさか味方機が突っ込んでくるとは思わなかったのか、ブルーカラーの機竜たちは混乱した。 誤って道を開ける者、味方不信に陥る者、状況を見抜いて攻撃してくる者など反応は様々である。 そんな中、尻尾部分に捕まっていた卯月がそっと甚之助にインスタントチャージをかけてやった。 「戦争するのは勝手だが、それで周囲に被害を広げるなど論外だ。早期に決着をつけてやろう」 これで何度目になるのか。『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)は奇縁を感じて額を拭った。 「よその世界で戦争までおっぱじめんじゃないわよこのマシン帝国めッ!」 視界に入った機竜に片っ端から神気閃光を叩き込んで行く。 反撃に出ようとした機竜たちだが、狙いがブレてアンナへ一向に当たらない。 敵陣を突破するという状況で、ショック状態というのがここまで有用なものだとは。 「…………」 そんなアンナの後ろを静かについてくる『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)。 度々回復を受けながら暗黒を蒔いていく。 視界の端に墜落する機竜の群を見て、彼女にしては酷く珍しい表情をした。 「堕ちる――」 ●突入、機竜空母マジェスティック ブルーカラーの巨大飛行物体である。 形としては気球式飛行船に近く、ラグビーボールに蜥蜴の顔を接続したような、ひどくアンバランスな恰好をしていた。 脚や翼、銃座等は無いのかと思ったが、なんのことはない。 『警告、来るぞ!』 卯月から全体通信。途端に周囲の空気が凝固。細かい氷の粒になって襲ってきた。いわば大気そのものがぶつかってきたようなものだ。 小・中型の機竜群を突破し、空母突入圏内に入った段階である。 レッドカラーの機竜たちはまだその段階ではないのか突入してきてはいない。 「明らかに僕達狙いです。気を付けて!」 即座に聖神の息吹をかける三千。事前にクロスジハードで底上げしているだけあって氷に足を取られたメンバーは少なかった。 「重圧に圧倒に虚弱って所ですね。準備なしに突入したら危なかったかもしれません」 「そこへ来て準備がイイのが俺達アークってわけだよ」 寝そべったような態勢からショットガンを乱射。眼前の氷幕を次々に破壊しながらマジェスティックの甲板へと到達。面接着でしっかり両足を固着させるとそのまま側面を奔り始めた。 深淵発動……してから、妙なことに気が付いた。 知っているか知っていないかで言えば、喜平はこの構造をよく知っていた。 なんのことはない。約100年前に用いられていたような船舶技術であり、今でもよく使われる飛行機の構造に近かった。 違いがあるとすれば、装甲に全く継ぎ目が無く、まるでそういう形の外皮であるかのように形が保たれていることだ。先刻かるく射撃を当ててみたが、すぐに自己修復している。この機竜空母が自らこの形をマテリアライズしているのかもしれない。ちなみに小型機竜に関して言えば、可動域を作るべく装甲に継ぎ目が必要だったようだ。 程なくしてハッチを発見。腹部中央に両開きの大型ハッチがあった。動かす場所だからか継ぎ目はある。 「はいっ突入ぅー!」 後からカッ飛んできた杏がギターをフルスイング。ハッチの中心に叩きつけると同時に大量の電撃を放出した。ぼろぼろと砕け散るハッチ。 だが砕けた傍から徐々に修復を始めている。突入するなら今しかない。 するりと潜り込んだ喜平が先んじて内部の小型機竜に射撃。 「お仕事御苦労さま、お願いしてもだめだろうから力づくでいいよね?」 「意外と修復が早いわ。突入したら一直線にコアルームに向かって!」 じわじわと塞がって行くハッチ。 機内に全員入り切った時にはもう修復が終わっていた。 周囲を大量の小型機竜が取り囲む。スリープ状態になっていたものや、修理中なのか翼や銃器をオミットした機竜が多い。 容赦なくチェインライトニングをばらまく杏と、ダメージ無視で葬操曲・黒を振りまくウェスティア。 「さて、ここはあたしが食い止めるわ」 「あれだね、ここは任せて先に行くといいよ!」 「それ、私も一度言ってみたかったんだよね」 機竜に次々とトラップネストを仕掛けて回る卯月。陸戦の方が手馴れているのか、あえて敵群の中を駆け回るようにして気糸をかけていく。うけるダメージもかなりのものだが、そこは三千が底が尽きるまで回復し続けた。 「頼むわ。私達はこのまま奥に行く」 垂れそうになった額髪を撫で付けるアンナ。 前に経験した『帝国印の機竜空母』大鳳は内部を機竜だけの格納庫のようにしていた。 だがこれは少し違う。格納庫部分は意外と少なく、小型の警備機竜はいるが……その……何と表現すべきだろうか。 「ドア、ついてるのよね」 格納庫の端に人間が使うような両開きのドアがついていた。迷わず蹴破る。 艦内にはこちらの侵入を知らせるかのように警報が鳴り響いている。 そして。 『艦内各位、艦内各位! 機内に敵機潜入! 数は……8人! 人間だ! 繰り返す、潜入した敵は人間だ! 生身の人間がハッチを破って突入している!』 「……は?」 「人の声……っていうか人か!? こっちの世界と同じ言葉喋ってるぞ!?」 「考えるのは後、行くわよ!」 驚きというのは続くものである。 やや広めの廊下を走る甚之助とシャルロッテ。アンナもそこに続いて回復支援に努めていたのだが。 「何だこいつら……!」 「止まれ! 止まらないと撃つ!」 「銃が効かない! 化物だ!」 行く手を阻もうとする敵の殆どが人間だった。 強いて言うならイギリス系の人間で、体つきと服装からして軍人のようだった。 彼等はこちらではL85と呼ばれる軍用小銃を装備していた。艦内だからか装剣し、できるだけ射撃はしてこないが、正直撃たれても大して痛くないのだ。 一応彼等もアザーバイドではあるらしくリベリスタに有効な攻撃だったが、いかんせん攻撃力が低く蚊程にも感じない。 「戦慣れしてねえ連中だなぁオイ。こんな狭い場所でデカいチャカ振り回しやがって」 甚之助は子鬼をばらまいて黙らせ、とっとと先へと進んで行く。 悲鳴と血飛沫を上げて倒れる兵隊達。 そんな中、シャルロッテは一種特別な反応を見せていた。 「飛行機、堕ちてたよ」 向けられた小銃を素手で掴んで捻り上げる。 彼女自身から這い出た闇が兵士を取り囲み、首や腕を容赦なく締め付けていった。 だと言うのにシャルロッテの目は平静そのもので、敵を見ていると言うより『嫌な思い出のある写真を見つけてしまった』ような目をしていた。 「……ば、化物……」 「人、乗ってるんだね。乗ってるのを、落としてたんだね。殺して、たんだよね?」 「シャルロッテさん!」 アンナが呼びかけるも、シャルロッテは視線すら寄越さなかった。 「この人達は、お仕置きするから。先に行っていいよ」 飛行機事故って悲惨なんだよ、と小声で呟いた。 通路を覆うように闇が膨らむ。 シャルロッテ自身の感情が爆発しているように見えて、アンナは目を反らした。 「行きましょう」 コアルームへと続く道を走る。 コアルーム前に陣取っていた兵隊達は脆かった。 甚之助はまず上着を相手に放り投げる。視界を遮りつつ懐からドスを引っ張り出し、鞘を捨てて兵士の一人に突き刺した。そのまま扉へ突入。 ぶち破られた扉を抜け、甚之助はニヤリと笑った。 巨大な正十二面体が青白い光を放ちながら宙に浮いている。エネルギーを贈っているのか、上下の装置から伸びたコードにも光が伝っていた。 「見つけたぜ……割れろオオオオオオ!」 血相を変えて後ろから追いかけてくる兵士達にアンナが神気閃光。 その隙に甚之助は十二面体を殴りつけた。 一発でヒビが入り、広がり、そして――。 ●チャンネル『フルメタルラグーン』 アクセスファンタズムから通信。短いノイズ。 『機竜空母マジェスティックの崩壊を確認。連鎖してブルーカラーの機竜群も崩壊、消滅しました。ミッドウェイも消滅を開始……あ、れ?』 きれかけた翼の加護を味方にかけなおしつつ、三千はゆっくりと降下。 ウェスティアに抱えられるようにして、ぐてっとした杏も降下を始める。 「何あれ……」 「さあ……」 消滅するミッドウェイ。その頭部だけがぽろっと外れ、中からアダムスキー型の未確認飛行物体が吐き出されたのだった。 ジグザグな高速飛行を初め、ついには姿形さえ見えない状態になって消えた。 「なーんか、嫌な予感」 ひゅるひゅると落下するシャルロッテ。 目を瞑る。 風に自らが煽られる中、何かをじっと考えていた。 そんな彼女を横から浚うようにキャッチする卯月。光の翼を羽ばたかせ、空中でブレーキをかけた。 「無事か?」 「……ううん」 傷一つないシャルロッテは、ばらばらと落ちていくマジェスティックの破片を見下ろして呟いた。 ゆっくりと追いついてくる喜平。 「なんだい、イイ所持って行くじゃないか……なんてね」 頭の後ろで手を組む。 「さて、この穴……どうやって塞ごうかねえ」 空にぽっかりとあいた巨大なディD・ホールを見上げ、喜平は苦笑した。 ほぼ自由落下していたアンナと甚之助は、地上40mという非常にギリギリなラインで翼の加護を受けた。死に物狂いで制動をかけ、芸予要塞付近の野原へ転がったアンナは、乱れに乱れた前髪を無理やり押し上げて叫んだ。 「っっっだああこれだから神秘ってやつはあああああ!!」 「元気だねェ、『お仕事終わったぞワーイ』って喜べよ。若いんだから」 同じ状況を味わっている筈なのに平然と石壁の上に腰掛けている甚之助。煙草を咥えるとジッポライターで火をつけた。 転がる距離があと5mあったら壁に激突していたことに気づいて唖然とするアンナ。 それを無視して紫炎を吐き出す甚之助。 「さて……これからどう転がるかねえ」 空に昇った煙は、大気に紛れて消えた。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|