●動脈、断たれて 日本リベリスタの本拠地、アーク。 多数のリベリスタを抱え、日々エリューションと戦いを繰り広げる組織である。 だが、そのアークとて単独で機能しているわけではない。戦うには物資が必要で、補給がなければ戦える兵はいない。 大御堂のような企業を始めとして、アークに物資を下ろす企業は少なくはない。そういったバックの支えによって毎日の戦いが助けられているのだ。 ここに一台の大型トラックがある。 このトラックはアークに武器関連を卸す企業の輸送トラックだ。白兵武器、銃器、弾薬。そういった様々な物資が満載されている。 しいておかしな点を上げるとすれば。現在このトラックは主道を外れた山奥に止められていること。そして運転手が縛り上げられ、コンテナの中へと転がされているということ。 品物が品物だけに護衛がいなかったわけではない。だが、襲撃者は護衛など物ともしなかっただけである。 「フォックストロットの兄貴。全員捕まえてコンテナに転がしておきましたぜ」 現在トラックを囲んでいるのは白いスーツに身を包んだ一団だ。全員が崩した着こなしをしており、その雰囲気は決して堅気に見えるものではない。 「ご苦労。非戦闘員に怪我はさせてないな?」 「勿論ですぜ」 フォックストロットと呼ばれた男。細く鋭い目つきをした、神経質そうな男だ。無造作に撫で付けた長髪にスーツに合わせた純白のパナマ帽。ニヤニヤとした笑みを浮かべた彼は部下である男からの報告に、満足げに頷いた。 「オーケーオーケー、それでいい。今回のターゲットとはいえ、カタギ。怪我をさせちゃ蝮の旦那に申し訳が立たないからな」 白い集団は全部で六人。それぞれが熟練を感じさせる身のこなしをしており、フォックストロットを中心に規律正しい行動を行っていた。 「しかし本当にアークの連中は来るんですかね?」 部下の男の疑問に、フォックストロットは律儀に答える。 「当然だ。ちょっと組織的な活動をしてる奴なら誰でも知っている。アークの連中はエリューションある所、不思議とかぎつけてくる。必ず来るさ」 そういうと彼は隣に立つ、ひょろりとした長身ながらも引き締まった肉体を持った男に目線を向けた。 「その時は青大将の先生にも働いて貰わないとねぇ」 青大将と呼ばれた男は、その言葉に対して無言で頷く。 「俺達は蝮の旦那のおかげで現在もやって来れてるんだ。きっちり恩返しとして、受けた仕事はこなしてやろうぜ。商品には手をつけるなよ、あまり迷惑をかけるもんじゃねえ」 ただの強盗にしては物資を重要としていない、そのような雰囲気である。彼らの目的は、物資ではないということなのだろうか。 が、その直後にフォックストロットはニタついた笑みを浮かべ、冗談めかして言った。 「ただまあ……これから使う弾薬分ぐらいは、ちょろまかしても構わねぇよな?」 ●アークにて 「どうにも大変でいけないね。猫の手を借りたい位忙しいってのは冥利なのかも知れないが」 アークのブリーフィングルーム。いつものようにミッションに呼び出されたリベリスタ達は、妙に忙しそうな雰囲気を漂わせた『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が待ち受けていた。 「キャットハンズオールフリー、何せラヴ&ピースが一番だから。沙織ちゃんも情勢を調べてるらしいけどね」 どういうことかと尋ねると、伸暁は疲れを滲ませる声音で律儀に答えてくれた。 「フィクサードの活動が急に活発になったのさ。何が原因かは分からないけれど、五月病のこの時期にこれだけのやる気を出せるあいつらはリスペクトしてもいいぐらいだな」 リスペクトはともかく。伸暁の切り出した依頼は、フィクサードに関わるものだった。 「アークに装備を卸してくれてる企業があるんだけどさ。そこの輸送トラックがどうやら強盗に遭ったみたいでね? そいつをちょちょいと奪還してきて欲しいのさ」 お使い感覚であっさりと言ってのける伸暁。詳細を問うリベリスタ達に、伸暁はポケットに捻じ込まれていたくしゃくしゃの資料を放った。 「説明してる時間が惜しくてね。その資料を見てくれればいい。ざっと説明すると、敵はフィクサードの団体。六人いるらしく、中には未知のスキルを使う奴も混ざっているらしい」 不穏なワードの混ざる伸暁の説明。伸暁はさらに言葉を続ける。 「相手は『チームフォックストロット』と言われるフィクサード集団。裏社会にて、金次第で色々行う傭兵集団みたいな奴らさ。実力は折り紙付きだ、エースってやつさ」 伸暁にしては少ない言葉で切り上げる。それほど状況は切羽詰っているのだろうか。ほとんど追い出すように、伸暁はリベリスタ達を送り出した。 「いいかい、今回の目的はあくまでトラックの回収と人質の救出だ。最悪、彼らは無視しても構わない。無事に帰ってきてくれよ。健康なまま完璧な仕事。それがお前達に要求されるエクストリームレスキューなのさ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:36 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●コール&レスポンス その道は山間を通る迂回路である。三高平が生まれる前、そこにあった町へ向かうには主要だった道路の一つ。 しかし生まれ変わり、新しく整備された巨大都市にとってはすでにキャパシティを越えたこの道は、新たに整備された大通りに役割を奪われ、今は滅多に人の通ることもない場所だ。 本来静寂に包まれているはずのその道は、今現在響き渡る声に支配されていた。 「私達はアークから来た者です。人質を解放しては頂けないでしょうか?」 片手に拡声器を手にし、声をあげるのは『錆びない心《ステンレス》』鈴懸 躑躅子(BNE000133)。その目線は距離を置いた先にある車両……今回の回収目標である輸送トラックの前、白いスーツに身を包んだ一団へと向けられている。 「おいおい、なんだいそりゃ。まるで俺達が立て篭もりを行う犯罪者みたいじゃねえか?」 躑躅子の呼びかけに答えるは、集団のリーダーらしき男。サングラスを掛け、スーツを隙無く着込んだ男、フォックストロットだ。 ニヤついた表情を浮かべ、その態度はあくまで飄々。呼びかけに対しての反応もまるで本気を感じさせることはない。 「あまり変わらないと思うのですけどね~」 おっとりと小首を傾げる『特異点』アイシア・レヴィナス(BNE002307)。彼女の反応も当たり前のことであり、実際眼前の一団が行っているのは強盗、拉致といったれっきとした犯罪なのだ。 「貴方達は何故このようなことをするのですか?」 「さあねえ? 一体何故俺達は物資を強奪した挙句、そこに追っ手がくるまで悠長にしてるんだろうねえ?」 躑躅子の呼びかけは続くが、フォックストロットは飄々とするばかり。時間ばかりがじわじわと経って行く。 「どうしたアーク。言葉だけで解決するなんてまさか思ってるんじゃないだろうな? だとしたら、決してお前達がこいつを取り戻せることはねえよ」 背にしたトラックを背中越しに指しつつ、白服の男は答える。 交戦は避けられない。それが確定した時、躑躅子とアイシア、それに今まで黙していたツァイン・ウォーレス(BNE001520)はお互い目配せを交わす。 「話は終わったか? ……それじゃ、おっぱじめようぜ!」 「もう一つだけ……虫のいいお願いですが、万が一私達が全滅しても人質に危害を加えぬよう、お願いします」 ツァインの言葉と共に、躑躅子も拡声器を投げ捨て、共に走り出す。 「それをさせないのがお前達の仕事じゃねえのか? まあ……見せてもらうとしようか、お前達の実力を!」 会話を行いつつ距離を稼ぎ、行われた特攻に対してフィクサード達は動じることはなく陣形を組み、攻撃を開始した。 「シュート!」 フォックストロットの号令と共に、突撃銃とサブマシンガン、三つの銃口より砲火が生まれ、射撃音が山間に響く。 雨霰のようにばら撒かれる大量の銃弾。その弾幕を正面から盾を以て受け止め、三人は突き進む。銃弾が金属板をしたたかに打ちつけ、甲高い金属音を奏でる。いくつもの弾が守りきれない身を傷つけるが、彼らの歩みは止まることなく、フィクサードへの接近を果たした。 「どいて頂きますわ」 極限まで集中力を練り上げたアイシアの一撃が銃兵を庇いにかかる盾兵と振るわれた。片手剣とライオットシールドの衝突が火花を散らす。衝撃は抑えきれず、盾兵が弾き飛ばされ、銃兵が無防備に剥き出しとなった。 即座に他の盾兵がカバーに入ろうとしたその時、一陣の疾風が戦場へと飛び込む。 「アークでーす! 人質と荷物、受け取りにきましたー、なんてね!」 側面より新たに、戦場を掻き回しに一団が突入してきたのだ。『さくらさくら』桜田 国子(BNE002102)の、その持ち前の俊足を生かした特攻により、彼を守る盾役がいなくなった銃兵へと銃が突きつけられる。 一発二発と銃弾が撃ち込まれる。銃兵はそれをかわす事が出来ず被弾するが、相手も歴戦のフィクサード。その程度で怯むことは無く、即座に体勢を立て直そうとする。 「おおっと、まだまだいるぜ!」 国子からわずかに遅れて突入してくるは『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)が割り込むように襲い掛かる。脚力には一歩譲るものの、その剣速は決して劣ることはない。次々と繰り出される剣が銃兵を傷つけていく。 「人数少ないから伏兵いるとは思っちゃいたけどね。思ったよりいい連携するじゃないの、あんたら」 突入してきた翔太に銃を向けようとするフォックストロット。その時、今まで微動だにしなかった男、青大将が首を僅かに林の方へと向け、促す。その合図に反応し、他の盾兵が素早く防御体勢を取った。 その瞬間、林から数条の閃光が戦場を切り裂いた。青大将が察知していなければ、かなりの被害を出していたと思われるその攻撃は盾兵によってかろうじて凌がれる。 「残念、気づかれたか?」 射線を辿る位置に立つのは、『不動心への道程』早瀬 直樹(BNE000116)。奇襲班の最後の奇襲として放たれた矢は防がれたが、その佇まいには決して油断することが出来ない気迫が篭っていた。 「ようやく本気になってきたみたいだねぇ。ほらかかってこいよ、胸貸してやる!」 リベリスタ達へフォックストロットが叫ぶ。その言葉はここからの戦闘の激化を告げるものであった。 ●アタック&サプライズ 開幕に奪ったリードは瞬く間に奪い返されていた。 最初は電光石火の奇襲により、整わなかった体制もフォックストロットの指示の元、みるみると陣形が整えられていく。 「さあ、いきます!」 躑躅子が左右一対の盾を構え振り回せば、盾兵が同じく盾で受け止める。ツァインやアイシア、翔太も剣を持ち連携を持って銃兵を狙えば相手も連携を組み、銃兵を護る。銃が火を吹き、盾が鉛弾を受け止め、逸らす。 武器と盾、鉄と鉄。数多の音が山間の通路に響く。お互いに高い守備力を誇る編成同士、激しい攻防が繰り広げられる。 「おとなしく引き下がってもらおうか」 「そう簡単に行くほど世の中甘くないぜ、兄ちゃん!」 直樹が次々と矢を放ち、フォックストロットが銃撃を返す。激化する戦闘はお互いの体力を奪い去っていく。 無尽蔵の耐久を誇るかと思われる相手も、いつまでも支えきることは出来ない。だが同様に、リベリスタ達も耐久力に誰もが優れているわけではなかった。 「ぐぁっ……!」 銃弾を受け、直樹が膝を付く。間合いを遠く持つ彼も、銃の射程から逃れられるわけではない。相手の主体となる攻撃はあくまで射撃。この戦場全てがテリトリーなのだ。 「あんたら、このままだとジリ貧だぜ? いいんだぜ、引いても。俺は止めたりしないぜ?」 ニヤついた笑みを浮かべたフォックストロットがリベリスタ達へと劣勢を伝える。しかしリベリスタ達の闘志は萎えることはない。 「冗談じゃないぜ。お前達を倒さないと人質を助けることは出来ないからな」 「その通りです~。わたし達が引くわけにはいかないですからね」 翔太が、アイシアが、口々に返す。そう、まだ心は折れたりはしない。何故ならば。 ――本命は、この攻撃ではないから。 突如、フィクサード達の背後のトラックの側の地面より、何かが舞い上がった。 「今だ! 貰ったよん!」 翼を広げ、飛び出したのは『ライアーディーヴァ』襲 ティト(BNE001913)だった。彼女はそのまま宙を舞い、運転席へと近づこうとする。 その能力により地面をすり抜け、強襲。トラックを奪い撤退。最初からリベリスタ達の作戦はそれだったのだ。 ――しかし、その作戦は完全には成功することはない。 何故ならば、フォックストロット達はリベリスタ達の事を知っている。アークの事。『万華鏡』の事。……作戦行動にあたる際の人数の事。 「やはりまだいたか、伏兵が!」 フォックストロットが銃口をティトへと向け、今まで動くことのなかった青大将が彼女へ向かい音も無く疾走する。銃撃が、凶拳が、彼女を狙う。 「させるかよ!」 「行かせねえよ! ウチのモン、きっちり返して貰うぜ!」 リベリスタ達も発覚は予想のうちではあったのだろう。即座に翔太とツァインが間に立ち塞がり、進路と射線を塞ぎにかかる。 大量の銃弾がツァインへと凄まじい勢いで叩きつけられる。鉛の集中豪雨はツァインの肉体を傷つけ、活力を奪う。 一方青大将を止めにかかる翔太は、その進路を塞いだかと思った。……その時、青大将が何かを蹴り上げる。 「な――!?」 翔太の視界を奪ったもの、それは……弾薬箱。フォックストロット達が使い潰した弾薬の空き箱。それが翔太の眼前へ飛び上がり、視界を塞ぐ。青大将はそのまま、箱を引っつかみ翔太の頭へと叩き付け、被せる! 「どけ」 ぼそり、と呟く青大将の拳が視界を奪われた翔太の後頭部へと叩き込まれる。盛大に吹き飛び、地面へと叩きつけられる翔太。 「くそっ、まだだ!」 ツァインも翔太も覚悟を決めたリベリスタ。これぐらいで力尽きることはなく、即座に立ち上がるが時既に遅く。青大将はティトへと肉薄する。 ――だが。リベリスタの手札はまだ尽きてはいない。 「――すまないな。邪魔をしようってんなら、まずは俺を倒して行って貰おう」 地面からずるりと抜け出すように現れた一人の浅黒い肌を持つ男。『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)。彼はその二つ名の如く影の化身のように、青大将の進路へと立ち塞がる。 「昭和生まれの連中よ。時代錯誤なファッションのあんたらには負けねえよ」 最終防壁。この戦いの終焉は今、そこへと近づいていた。 ●スナッチ&エスケープ 「邪魔だと言っている」 「うおっ……!?」 間に立ち塞がる影継へと無造作に足を踏み出した青大将。その独特なひょろ長い長身と腕から繰り出された最初の一撃は、一切の躊躇いなく影継の目を抉りに放たれた。 いきなりの致命打を狙った一撃をギリギリ避けた影継は、即座に手にした鉄槌を青大将へと振り抜く。一方の青大将は危なげなくその一撃をいなし、間合いを計る。 「厄介だな……早めに頼む!」 「わかってるよん!」 状況は長く維持出来ないと判断した翔太の叫びに、力いっぱいティトが応える。トラックの運転席のドアを開け放ち、飛び乗ったティトは手早く運転席のコンディションを確認し始める。 その間に状況は刻一刻と変化していく。 「悪いけど足止めさせて貰うからね!」 奪取班を護るため、国子が銃弾をフォックストロットへと叩き込む。盾兵が護る彼へと痛打を与えることは叶わない。しかし盾兵の消耗は最早限界に達しつつあった。 彼ら三人、護りの精兵とはいえ自分の倍の数の相手の攻撃を受け続けるのには限度がある。また、銃兵も最初の奇襲によりコンディションが万全とはいえない。フィクサード達にも徐々に焦りの色が見え始める。――フォックストロットと青大将、二人を除いて。 「参ったね、こいつは。なかなかどうしてやってくれるじゃない」 緊張感のない軽い調子で呟きながら、フォックストロットはひたすらリベリスタ達へと銃弾をばら撒き続ける。 「私達が引けば、護れない人達がいます。ですからフォックストロットさん。貴方達から今、逃げる訳にはいかないんです!」 躑躅子が叫び、振り上げた盾を目前の盾兵へと叩きつける。盾と盾がぶつかり、凄まじい金属の衝突音を響かせる。受け損ね、ぐらついた盾兵を見たフォックストロットが号令を上げた。 「アウェイ!」 その指示を聞いた盾兵が突如、じわじわと戦線を下げ始める。フィクサード達は決して総力戦で潰しあいをしたいわけではない。消耗をすれば、引くこともあるのだ。 一方、万全の状態の青大将は、進路を塞ぐ影継を持て余しつつあった。 「もう一度言う。どけ」 「させねえ、って言ってんだよ!」 変幻自在の拳と一撃必殺の鉄槌が空間を切り裂き、お互いに痛打を与える。しかし斜堂一族の伝承者たる彼も未だ発展途上。フィクサードとして修羅場をくぐり続けてきた、青大将に単機で勝てる見込みは高くはない。 だが、この場合は違う。実力が違うのではない。勝利条件が違うのだ。 トラックが排気を吐き出し、エンジンが唸りを上げた。 「準備オッケー! 脱出するよん!」 ティトがエアブレーキを解除し、アクセルを思い切り踏みつける。急激に活力を与えられたトラックは吸気の嘶きを上げ、猛烈に発進した。 「今はお仕事優先ってな。――俺達の勝ちだ」 交戦を行っていた影継が後ろへと跳躍し、ずぶりとトラックの荷台に沈み込み、消えていく。さすがの青大将も加速する車両に追いつくことは出来ず、消え行くトラックを見送ることしかできなかった。 「……いやあ、なかなかやるじゃない。してやられたねえ」 バツが悪そうにフォックストロットが呟く。すでにその場にリベリスタ達の姿はない。 トラックの発進と同時に、速度に自負持つ国子が負傷者を連れ逃走を先導したのだ。その鮮やかな引き際に、フィクサード達はむざむざと離脱を許すしかなかったのである。最も国子はその自慢の脚力を逃走にしか使えないことに、歯噛みしていたようだが。 「フォックストロットの旦那、追撃はしなくていいんですかい?」 部下の一人がフォックストロットに声を掛けるが、彼は頭を振って否定した。 「いや、俺達の目的は果たされたから追撃はいいさ。彼らは人質と物資を回収した。俺達はアークの実力を確認することが出来た。お互いWIN-WINで完璧じゃね?」 へらへらと冗談めかして言った後、フォックストロットは彼ら部下に指示を出す。 「さあ、さっさと撤収しようか。これだけデータを取れば、蝮の旦那の要求には十分応えただろう。――いやあ、想像以上にやるね、彼らは。これから楽しくなりそうだ」 心底楽しそうにくっくっと笑うフォックストロット。彼が期待するのは、これから先に起きる何かなのだろうか。 数刻後、山道には戦いの痕跡は何一つ残っていなかった。 その事実を知る者は、被害にあった人質達。実際に戦ったリベリスタ、フィクサード。あとは山間の森林のみである。 これから起きるかもしれない何か。それを予感させる前哨戦の一つが、ここに終演を告げたのだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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