●ある人物の、ある人物との会話 「色々と便利ですよ。大きな組織というのは交渉等も面倒でしょう?」 「その点、我々にはそういった面はありません」 「開発競争などをしている相手とは、その辺りの落とし所の決定なども余計な計算でしょうしね」 「お互いに浮ついた言葉は無しにしましょう」 「頼りにしているとか背筋がむず痒くなりませんか?」 「お互いによいビジネスをしましょう。ほら、しっくりくるでしょう?」 「御安心下さい。我々は何でも見ています。何でも聞いています」 「ですが貴方がたが望むのであれば、何ひとつ覚えてなどいませんよ」 「結構。基本料金はお安くしておきますよ。何か希望ありましたら、追加報酬という形で」 「もちろん其方も勉強させて頂きます。郷に入ったら郷に従え。日本のことわざ、というヤツでしょう?」 「いえいえ、催促している訳ではありません。ですが、そちらの方が宜しいというのなら」 「大丈夫ですよ、金をやるから勝手に動くなという事でしょう? ああ、すみません。根が正直なもので」 「ですが、ある程度のプライベートというのは構わないでしょう?」 「もちろん、問題は起こしませんよ」 「フジサンとかアキハバラとか見たがってる子供たちもいましてね?」 それから暫しの会話があってから、男の言葉に彼女は頷いてみせた。 「成程。早速テスト、といったところでしょうか?」 「ええ、構いません。依頼し、報酬を払う。正式なビジネスです」 「日本は素晴らしいところです。貴方がたとは良い仕事ができそうですよ」 ●争奪戦 「以前確認された物と比べるとかなり小さめなんですが、賢者の石が確認されました」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言ってからコンソールを操作した。 リベリスタたちの近くのスクリーンに、地図と現地の写真らしきもの数点が表示される。 削り取られ地肌が剥き出しになった山の斜面。 大型のトラック等が通っていたらしい轍の跡。 「山砂とかの採取地だったみたいなんですが、今は使われていません」 無人で重機等もなく、所々に草なども生え始めている。 「石の正確な位置は特定できていません」 加えて、同じように入手を企んで動いているフィクサードたちがいるみたいなんです。 マルガレーテはそう付け加えると、再び端末を操作する。 画面が切り替わり、今度は数人のデータらしきものが簡素にディスプレイに表示された。 「『ソレッレ』 主にイタリアでの活動が確認されていた小規模のフィクサード組織です」 詳しい情報は不明だが、全員が女性、メタルフレームのスターサジタリーで構成されている。 「もちろん、其々が別の分野の技術も習得して組織として様々な任務に対応できるみたいですが……」 何故日本で活動しているのかは、現時点では判明していない。 「今回の任務では6人が動いています。分かったのは名前くらいで……すみません」 6人の名は、ケントニス、プレカツィオーネ、エスカ、リチェルカ、シルト、スナリャート。 「……不明な事ばかりで、すみません」 とにかく、充分に注意して現場に向かって下さい。 マルガレーテはそう言って、リベリスタたちを送りだした。 ●作戦前 スナリャート「……何でグルメ王とか用意してきたの? バカなの? 死ぬの?」 エスカ「いいじゃん、別に。っていうか、年上への言葉使いがなってないんじゃない?」 シルト「静かに……ツィオ、さん? 敵は?」 プレカツィオーネ「現時点では確認出来ず……来るのでしょうか?」 リチェルカ「だから私たちに仕事が来たんでしょうしね~出来たらその前に見つけてトンズラしたいけど」 ケントニス「それは流石に虫が良過ぎるでしょうねぇ……けど、今回は戦って倒せってわけじゃありませんし」 シルト「最優先は被害の最小化。回収出来ずとも撤退……宜しいのですか?」 ケントニス「はい、構いません。今回はつまり、お手並み拝見ですね」 スナリャート「なら、ブリスコラ先輩やタナトス先輩が来られた方が良かったのでは?」 エスカ「……何でブリおばちゃんとかには敬称付いてる訳?」 スナリャート「日頃の言動」 リチェルカ「あれよ、ザコをぶつけて油断させるっていう」 プレカツィオーネ「確かに攻撃能力という点においては、自分等は特に低めです」 リチェルカ「あ、や、そうじゃなくて」 ケントニス「其々が其々、役割を果たし組織に貢献する」 それが『ソレッレ(姉妹)』です。 穏やかで、けれど強い意志の篭められた老女の言葉に。 5人は静かに頷いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月25日(金)23:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●賢者の石 「そういえば賢者の石の実物って見た事ありませんね」 今回の為にと石のフェイクを用意した『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は、掌の偽物を眺めつつ呟いた。 「本物より偽物を先に手にとってしまう辺りがなんとも私らしいです」 この機会に本物の賢者の石を拝見しましょう。 気楽に口にした言葉はしかし、彼女の決意の表れでもある。 「イタリアの組織が日本で活動開始か」 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は考えこみつつ、それだけ口にした。 (なんらかの思惑を感じざるを得ないよなあ) その思惑が何処にあるか……今は推測するにしても、情報が少な過ぎる。 「ま、本人たちに聞くのが手っ取り早いか」 そう呟いてから、竜一はがらっと口調を変えた。 「それより、相手が、年齢層が気になるよね!」 合法ロリっていいよね! とか言いながら、竜一はモニカと捜索を開始する。 今回リベリスタたちは、三手に分かれて捜索を行うことにしていた。 もちろん離れてはいない。駆けつけられる距離を保ちつつ、である。 竜一とモニカで1チーム。 そして残りの6人が二手に分かれている。 「賢者の石を彼女等に渡せないが、態々此処に来た真意は何なのか……」 今回相対する事になる組織について考え込んでいた『Weiße Löwen』エインシャント・フォン・ローゼンフェルト(BNE003729)は、思い出したように同じ班の少女に話しかけた。 「お腹が空かれたか? 此れで多少は腹の足しにされると良いだろう」 そう言ってシュトーレンを少女に渡す。 彼の配慮の甲斐あって『悪食』マク・アヌ(BNE003173)の理性さんは、ギリギリオンライン状態だった。 ただ、彼女としては神秘でないとすぐお腹が空いてしまうらしい。 「賢者の石食べたい。おなかへった」 様子態度から察するに、あまり長くは持ちそうにない。 ……そんな彼女を見つつ。 「ソレッレ……イタリアで活動してた連中がどうしてまたコッチに来たのかね?」 (ビジネスとして活動してるとしたら依頼主が居るんだろーが……はてさて) 結論の出なそうな思索にはまりそうになった『断魔剣』御堂・霧也(BNE003822)はそこで、思考を中断させた。 「まっ、何にしろやる事は変わらねー」 立ち塞がるなら、斬り捨てる。 「……それだけの話だかんな」 自分に言い聞かせるように呟いて、少年は石の捜索を再開した。 ●観察者 「千里眼を持っている者は恐らくいないと思われます」 「その点はアドバンテージよね」 「此方の情報は伝わってないのでしょうか?」 「知らないのか、知った上で気にしない事にしたのか」 「それとも……誘っているのか」 「実際、3チームに分かれているとは言っても離れてはいません」 「成程、全員でルアーになるって? こりゃ負けてられないわ」 「だからといって、いきなり他の全ての可能性を失う選択肢を選ぶべきではありませんよ」 「因みに照合は?」 「メモワールさんが居ないので詳細は不明です。私の知識ですと2人組の両者のみ」 「男の方はアーク内でもかなり有名処よね。女の方も、ね……私たちと同じ、でしょ?」 「はい、ですが……男性の方が、E能力が確認できなくて……」 「変装した別人の可能性があるのでしょうか?」 「それか、ステルスじゃないの?」 「ああ、申し訳ありません。失念しておりました」 「対応は如何します? ノンナ(おばあちゃん)?」 「まあ、知らないふりが妥当でしょう。どちらもそれで気分を害するというタイプではないようですし」 ●魔石、捜索 「話には聞くが、実物は始めてだな」『何か食うとか言ってる奴いたけど美味ぇの?』 会話をしているのは、少女の両手に嵌った人形である。 だが、傍目からは……あたかも人形同士が語り合っているかのように感じられた。 というか、そうとしか見えなかった。 『ゴロツキパペット』錦衛門 と ロブスター(BNE003801) それが、少女と人形達の総称である。 「『っていうか食えんの?』」 そう言って、無表情な少女を挟むようにして、錦とロブが顔を見合わせる。 「賢者の石。渡すわけには行かないです」 『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)は、それがどういうものかを知らない。 だが、どういう使われ方をしたのかは聞いている。 「それにしても、みなさんすごく年が離れた姉妹なのですね。お母さんは大変そうです」 決意の後に続いた、どこか無邪気さの感じられる言葉に、少し目を細めつつ。 「わざわざ海を越えて来るなんて、向こうでの稼ぎが悪くなったのかねえ」 (それとも、此処がそれだけ有名になったて事か……) 『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)も今回の事について色々と憶測を巡らせた。 (まあ、閉じない穴なんて代物が出来てる訳だし、儲け話とかは結構あるのかもね) 極東の島国も様々な事件によって知名度を急上昇させつつあるという事なのかも知れない。 『無ぇなー。あークソめんどくせっ』「文句を言うな」 暗視能力等も活用して周囲を確認しつつ。ロブと錦が賑やかす。 現れたというのなら、その辺に転がってるのだろうか? 「しかし何だね、私等の格好って一際目立ってて良い感じだね」 壱和と一人と二体を眺めつつ付喪が口にした。 此方を発見した場合、敵は誰を狙ってくるのか? 遭遇戦ならば目立つ相手を狙ってくるかもしれないが、もしかしたら既に此方に気付いている可能性もある。 マクは捜索の時点で体のギアを入れ替えていた。 消耗は激しいが、実際戦闘になれば必ず手数を消費せずに高速戦闘が開始できるのも事実である。 捜索という点で大きいのは、モニカの透視と言えるだろう。 透視できる厚さには勿論限界があるが、地中深くに埋没していない限りは『透視出来ない存在』を探すという手段は一行の中では最も有効だった。 時間を掛ければ、確実に発見する事が可能だったろう。 そうならなかったのは、相手側がリベリスタたちにアプローチを仕掛けて来た為だった。 ●探り合い 「こんにちは。突然だけど、ちょっと話を聞いてもらえないかな?」 そう言って離れた斜面の上に姿を現したのは一人の女性だった。 ソレッレの一員であろうと推測したエインシャントが言葉を紡ぐ。 「Sehr angenehm, Sorelle...Ich Ancient Von Rosenfeld des "Orkus Palast", Seitdem besten Grüßen.」 「ああ、これはどうも。オルクス・パラストの……私共の相手は専らバチカンでしたが、あちらとも少々はありましたものね?」 エインシャントの言葉に応ずるように、落ち着いた声が響いた。 挨拶した女性とは違う声。 「長い付き合いになるかどうか分からないけど歓迎するよ。ようこそ日本へ、ってね?」 「突然なのに、冷静にありがとう。やっぱり分かってた?」 付喪の言葉に、姿を現した方の女性が笑顔で応える。 皆が言葉を交わす間に、モニカは能力を利用して周囲を確認した。 姿を現した女性の近くの斜面陰に、もう1名……今話しかけてきている相手で間違いない。 情報通りなら、あと4名いるはずだが……とりあえず其の2名について、さり気なく竜一に合図する。 こちらの気を引きつつ、他の者は捜索を続けているという可能性もある。 「一応、聞くが……ビジネスをするなら、アークとビジネスをする気はないのかな?」 言いつつ、竜一はモニカの合図した場をさり気なく確認した。 相手側は高所を押さえている 高低差があって一気に接近はできないが、ハイバランサーを活用すれば自分が最も早く接近できるだろう。 なら、自分の役割は当初の予定通り。変わらない。 (俺の役目は、肉の壁) 一方でモニカはイニシアチブを握る為にと用意した偽物の賢者の石を取り出した。 「賢者の石は貴方がたを誘う為のただの餌ですから、いざとなればこんな物破壊すれば済むだけです」 こっちは既に腐るほど持ってるんですから、こんなチンケな石一つに固執する理由は無いんですよ。 そう口にすれば、相手は考えこむような仕草をし、少し間を置いて陰に隠れていた1名が姿を現した。 「興味深いお話ではありますが……つまりは皆様方は賢者の石ではなく、我々に対して何らかの行動を行う為に此方にいらっしゃったという事でしょうか?」 戦いの準備なのか、それとも信頼させるための行動か? 即座に戦いが始まりそうという状況ではない。 だが、幾つもの言葉が交わされる度、両者の間に何かが張り詰めていくのも事実である。 そして此の状態が続くというのはリベリスタの側にとってやや不利だった。 相手は2名、此方はこのままだと殆んどの者が足止めされてしまう。 具体的には、出し抜く力が此方にないと割り切っているマク以外が。 「石が先が邪魔者が先か、どっちにしても黙って通すって事はないだろうね」 付喪は聞こえぬように呟いた。 「せっかくですし、名前を教えてもらえませんか」 壱和の問いに二人はそれぞれ、エスカとケントニスと応える。 なら、残りの4人は……プレカツィオーネ、リチェルカ、シルト、スナリャート。 「よぉ、美人の姉さん方。良い夜だな」 ……で、海外のフィクサード組織がうちに何のようだ? 霧也は訊ねながら、いつでも戦えるように構えを取った。 「口振りからして石だけが目当て……って訳じゃねーんだろ」 それをケントニスが肯定して、糸は一気に張り詰める。 即座に距離を詰めようとした竜一の前を、弾丸が横切って。 ほぼ同時に、モニカは3人の女性を確認した。 落ち着いた冷静そうな2人と、強い意志の籠った視線で自分たちの側を睨む少女。 竜一を牽制するように放たれた弾丸は少女の放った物だろう。 これで5人。残り一人は見当たらない。とするならば……石を捜索中なのか? どちらにしろ、この状況で、場面で。出来ることは決まっている。 リベリスタたちが戦闘態勢を整えるのとほぼ同時に、5人もそれぞれの武器を構え、あるいは照準を構え直した。 ●挨拶 竜一は更に距離を詰めながら二刀を振るって生じさせた真空の刃でエスカを狙う。 「折角来てくれたんだ、派手に歓迎しないと悪いだろ?」 付喪は同じく2人組を狙って召喚した魔炎を炸裂させた。 壱和は戦場全体を把握できる視野を確保し、機敏に動いた錦の口から銃弾が発射される。 「卿等には暫く、私と円舞曲の御相手をして頂こうか。」 エインシャントは新たに確認された3人組の側へと向かう。 霧也も向かいつつ、黒のオーラを収束させエスカを狙い撃った。 自分はまだ、前に立って戦える実力じゃない。 悔しくないと言えば嘘になるが、それでも依頼について、任務の成功について、冷静に考える部分を少年は既に内へと持っている。 モニカは前進し複数を狙える位置を取ると、強化改造した自動砲の照準を定めた。 トリガーが引かれるのと同時に発射され始めた銃弾が、フィクサード達に放たれる。 「2名に加えマグメイガスらしき人物も攻撃力が突出しているようです」 武器は構えたまま、フィクサードの一人が攻撃を行わずに口にした。 「ですが範囲攻撃という点で見れば、モニカと其方のマグメイガスが危険でしょう」 「了解しました。では、御手並み拝見と行きましょう」 ケントニスの言葉と同時に、様子を窺っていた他の3人も動いた。 エスカが手に持っていたサブマシンガンを構え、竜一とモニカに向かって引き金を絞る。 即座に降り注いだ弾丸の雨が2人を激しく打ち据えた。 ケントニスも素早い動きでオートマチックを構えると、無数の光弾を放って前衛たちを攻撃する。 どちらの攻撃も強力だったが、2人はそれを物ともしないだけの耐久力を持っていた。 3人組の一人、ライフルを構えていた少女は、言葉を受けてフレアバーストを放った付喪へと銃口を向けた。 正確な狙いを付けられた一発の魔弾が、付喪を傷つける。 もっとも、前者二人と比べるとその攻撃はやや劣っていると言えた。 少なくとも即座に致命傷を受けたり動けなくなるほどの威力はない。 とはいえ照準は絶対だった。直撃を避けるのはほぼ不可能な精度をその攻撃は持っている。 もう一人はそのまま攻撃せずリベリスタたちを真っ直ぐに見据え、最後の一人は彼女を庇うように位置を取ると距離を詰めるエインシャントへと銃口を向けた。 竜一はそのまま刃を振るい、敵と味方の距離が近付いたと判断した付喪は攻撃を爆炎から雷へと変更する。 続いて壱和が周囲の味方の効率的な防御動作を共有させ、全体の総合防御能力を向上させた。 「目的は撃退ではない。常に目を凝らせよロブ」『あいつら全部見てろってか?』 無表情な少女の両手では相変わらず錦とロブが会話し続ける。 もっとも、話しながらも錦衛門の口からは狙いすました銃弾が発射されていくのだが。 「卿等が此処迄、足を運んで来た理由は何だ……唯、石を回収に来ただけではなかろう?」 「其れを素直に口にすると思いますか?」 「成程。確かに此場において言葉は不粋」 恐らくはプレカツィオーネと思われる女性を庇う少女に向かってエインシャントは首肯し、幅広の剣を構え直す。 霧也は更に魔閃光を放ち、集中攻撃を受けてきたエスカは堪らず遮蔽へと身を翻した。 そこへ、更にモニカの放つ無数の弾丸が次々と着弾し斜面を抉り、砕き尽くす。 「やれやれ……確り集中攻撃なさる事で」 負傷しながらも冗談めかした口調で呟くと、彼女は反撃を諦めた様子で別の遮蔽へと転がりこむ。 (どうにも本気でないみたいだねぇ) 付喪は相手の後衛の動きに注意し、錦とロブ……或いは少女は『それ』以外の面に注意していて……気付いた。 相手の残ったもう一人と、ログオフしていたマクの動きに。 ●ソレッレの側 ソレッレの一員であるリチェルカは、離れた場で瞬間記憶とサイレントメモリーの能力を使用して賢者の石の捜索を行っていた。 モニカの透視能力と比べると、捜索範囲や速度は大きく劣る。 とはいえ彼女の担当は、広く浅くの物理的探索、調査系である。 それにプレカツィオーネの千里眼で未だ発見できていない以上、それらでは簡単に発見できない場所に目的の品はありそうだった。 推測の下、彼女は捜索を続け……結果、比較的短時間で目的の品を発見した。 「……これがお話の……」 眼鏡をくいっと直すと、アーティファクトでありアザーバイドでもあると言われる赤い魔石に手を伸ばす。 その直後、彼女は唸り声らしきものを聞いた。 う゛ぁあ゛ぁ…… ん? と其方を向いて……彼女は、絶句した。 「う゛ぁあ゛ぁ!!」 髪の毛の塊の中に顔があるような、そんなお化けのような何かが呻き声を上げながら襲いかかってきたのである。 ●マク猛襲 フィクサードらしき人物が赤い石を手にしたのを確認した瞬間、マクの理性さんはログオフした。 彼女はそのまま呻き声を上げながらフィクサード向かって突撃する。 三高平市の怪談として語られているという噂の、恐ろしげな動きで。 ショットガンでの攻撃は受けたものの、マクは気にせずそのまま牙をむき出し、吸血という名のガチ捕食行動に移った。 流石に再生と吸血による回復全てをもってしても相手の攻撃力には及ばなかったが、それでも負傷を充分に軽減するだけの力を、彼女の体は持っている。 「それマク 食べる 石」 彼女はひたすら相手、リチェルカに喰らい付き、リチェルカはショットガンでマクを攻撃し続ける。 負傷を軽減し、それでも倒れかけたマクは運命の加護をも費やして立ち上がり、フィクサードに喰らい付く。 そして、その間に優勢になった他のリベリスタたちが事態を確認した。 幾度目になるか……喰らいつき、反撃とばかりにショットガンのトリガーを引き……応酬の結果、マクが終に、力尽き倒れる。 だが、フィクサードの方も余裕はなかった。 リベリスタたちが迫ってくる。 自分は大きく負傷している。 ……結果としてリチェルカは賢者の石を諦めて囮にする事で、自分が撤退するという道を選択した。 「……全く、完敗だよ。お化けちゃん」 そう呟いた少女の足元で。 マクは呪文のように繰り返し続けた。 「石、食べる。邪魔する、食べる」 ●決着 「仕事でぶつからない限りは、好きに楽しんでおくれ」 付喪は用心しつつもフィクサードたちにのんびりとした口調で呼び掛けた。 「ぶつからないと良いねえ?」 私も家族持ちに怪我とかは、あんまりさせたくはないんだよ。 そう言えば、ケントニスがお気遣いありがとうございますと丁寧に口にする。 「ですが、そうも行かなそうですよ。残念ですが」 それでは、また。 そう言ってフィクサードたちは撤退し、その場にはリベリスタたちが残された。 「これが賢者の石か?」『金になりそうか?』 錦とロブが相変わらずの調子で、問題の魔石の方へと頭を向ける。 戦った相手の傾向等をマクスウェル殿に報告しなければと口にしてから、エインシャントは皆を促し……一行は賢者の石を手に帰路へと付いた。 「おなかすいた。石。美味しい石。たべる」 傷付いたマクの方はというと、寝言のように先程から同じ言葉を繰り返し続けている。 彼女を背負った竜一は、誰一人仲間が命を落とさなかった事に内心安堵しつつ……冗談めかして呟いた。 「だめだよ、たべちゃ」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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