● いつも見ていたのはその小さな背中だった。 伸びた背筋は小さな背を誤魔化すかのようで、直ぐにでも折れてしまいそう。 少しばかり鋭い目つきに、ゆるく縛った髪。 斜め前の席に座る彼女。僕の大好きな彼女。 「あの、好きです、付き合ってください」 「ええと――長田くん、だっけ?」 髪を指先でくるくると回す彼女、そのあとの事はあまり覚えてない。 裏庭で拾ったボールペン。 漫画に出てくるヒーローの様になれた。戦う力がみなぎってきた。 これなら、彼女を――彼女を? ごめんね、と小さく言った彼女を守る?ああ、なんで。 スキニナッテクレナイナラ、コロスシカナイジャナイカ。 「長田くん、なに?裏庭になんて呼びだして……あと、誰、その後ろの人」 「僕の事、好きになってくれないなら」 殺すしかないじゃないか。 背後で僕のトモダチが頷いた。 ● 「青春って時にはバイオレンス」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はドヤ顔で一言。 その言葉にリベリスタ達がしばし沈黙したのを見て、少し頬を紅潮させ咳払い。 「アーティファクトで戦闘能力を得た一般人がいる。振られた逆恨みってやつで相手を殺しそうになってる」 アーティファクトは小さなボールペンだと言う。 その能力は持ち主が思い浮かべる戦う能力を与えるというもの。 又、そのアーティファクトにはノーフェイスを従えることができる。 友達と称されたノーフェイスは年齢性別も様々。 彼はその『友達』を五人従えているという。 「アーティファクトの名称はない。けれど呼ぶのには困るから――そうね『キライくん』。今決めた。 そのキライくんを使用しているのは長田君。中学二年生」 片田舎の公立中学。 緑豊かなその場所でひっそりと行われる青春の1ページのはずが残念ながら素敵な青春にはなってはくれない。 爽やかな風が吹く5月。悲しいかな、新学期のチャイムと訪れたのは殺戮。 愛しい彼女に告白した裏庭にもう一度呼び出して今度は殺すしかないよね、だなんて明らかに馬鹿。 好きになってくれないから殺すだなんて、短絡的で仕方がない。 青少年の主張、愛とは時に残酷である。 言ってる場合か!と思わずつっこみも入れたくなってしまう。 「アーティファクトを持って逆恨んじゃってる以上、倒すしかないでしょ」 腹パンでもお説教でもしてらっしゃい。 イヴは白けた目でリベリスタ達を見送った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月16日(水)23:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 好きです、付き合ってください。 そんな甘ったるい告白台詞。 「ま、これも青春ってヤツだな」 からからと笑ったのは『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)であった。 青春、なんと甘酸っぱい言葉であろうか。 爽やかな学校生活。思い出の一つとして笑いあえるならいい。 「2人共、絶対に護り抜いてやるさ!」 その言葉に頷いた『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)は色々ありますねと笑う。 「ただ、失恋したからと言って、振られた相手に復讐しようなんていけませんね」 「恋愛ってよくわかんないけど、これはなんか違うよねー」 京一の言葉を聞いてうんうん頷いた『』山川 夏海(BNE002852)は大人になれば分かるのかなと首をかしげる。 まだ11歳の彼女には分からない気持ちだったのだろう。 「子供じゃあるまいしって感じ……」 お嬢さん、貴女に言われちゃ長田君も悲しんじゃう。 「手に入れた力で付き合いを強要するのでしょうか?」 どちらにしても見過ごせないので阻止しましょう。 京一の言葉に夏海は頷いた。 一方、何処か切なそうな表情を浮かべている『Fuchsschwanz』ドーラ・F・ハルトマン(BNE003704)は甘酸っぱい想いを胸に少し詩的。 「恋が叶わず砕け散ってしまう心……其れは仕方ないと思います」 だって、心は硝子だもん ――ドーラ。 心の破片を拾い集めて修復は可能。ならば修復するしかない。 ドーラは気合十分だ。 そんな詩的な言葉を前に『八咫烏』宇賀神・遥紀(BNE003750)がまるで夜叉の様な笑顔を浮かべる。 「大好きな女の子に振られたから殺す、ね」 アーティファクトの影響?硝子の少年時代の愚行?少しオイタが過ぎる行為にはオシオキが必要だ。 「お兄さんが調教しよう、ふふふ」 あの、お兄さん、その、怖いです。 遥紀の恐ろしい言葉を前にため息をついてる青年一人。 『闇上がり』比況 真駕籠(BNE003808)はとても肩がこっていた。 何を隠そう、彼、真駕籠くんは初めてのお仕事なのだ。それが恋愛の縺れ。ましてや一方的な縺れ。 「もういっそ二人死ねばいいのに……説得とか」 やっぱりリベリスタって肩がこる。 罪のない彼女まで長田の所為で死ねと言われている!長田、お前の罪はでかい様だぞ! 「手に入れた自分の力に酔い、トモダチの存在が残り僅かの自制心も狂わせているのね」 ああ、やだやだ。 『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)からすれば振られたから殺すなんて理解が出来ない。 殺意なんてものは世の中幾らでも飛び交っている。 彼女も今まで色々な事件を見てきたのだ。一度振られた位で相手殺しましたーじゃじゃーん、なんてやられたらたまったもんじゃない。 ● 裏庭。 覗いてみれば彼女と長田君とオトモダチがこんにちはしている。 強結界をかけたエルヴィンに続き遥紀も強結界をかける。二重強結界。なんか強そう! 『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)はその様子を見てため息。 「回復に専念できるのは私だけですから、頑張ります」 そう決めた麻衣。 長田が動いた――と思いきやその前に瞑が風になっていた。 「うちの動きはリベリスタの中で圧倒的だよ」 確かに素早すぎて風になった。瞑は素早く長田君と少女の間に割り込んだ。少女呆然。 エルヴィンも彼女と長田の間に割り込み爽やかに笑顔。 「彼女を悪いヤツから救い出す、ヒーローの参上だ」 これは惚れる。思わず彼女も胸キュンであった。 不敵に笑ったエルヴィンに思わず長田くんも足をとめた。状況の把握ができていない。 決して違えぬ血の掟を自身に刻み込み運命すらも味方につけた夏海も彼女を庇うようにと前に立ちはだかる。 「排除する。それが私の唯一の掟」 後ろに座り込んだ彼女は目の前に居るリベリスタたちを見て呆然と口を開く。 背後からとてとてと走って行ったドーラが彼女の傍に座り、しっかりと目を見て一言。 「彼は今、邪悪な力に心の弱さを付け込まれ利用されています」 「ま、漫画?」 彼女の言う言葉はご尤もである。 だが、ドーラは続ける。彼は絶対に助けるから私たちの指示を聞いてほしい。 この状況、絶対にYesかはいしかないだろう。 後ろで京一が使用した翼の加護によりリベリスタ達に小さな翼が宿る。 こんにちは、と少女の前に立った京一に彼女も素でこんにちは、と返した。 体内の魔力を循環させた麻衣は魔道書を胸に抱いて背後から仲間たちの様子を見守っている。 同じく体内の魔力を循環させた遥紀は幻視で翼を隠し、未だにいい笑顔。 「少年、なかなか良い壊れ具合な!イっちゃってるぅ!」 肩が凝っていたはずの真駕籠さんも風になる。其のまま前衛に飛び出した彼。 彼女からすると夢の様な世界。ああ、これは夢だ、きっと夢だわ。長田も夢だわ。 長田からすると誰だよこいつら、である。 「誰だよ!」 そういいながら長田も体内の有りもしなさそうな魔力を活性化させる。 後ろに居たトモダチもぽかんとしていらっしゃる。 「誰でもいいでしょ」 笑った瞑が動いた。強そうなトモダチへと澱みなく繰り出す連撃。 やはり風となっている瞑であった。 しかしトモダチも黙っていない、何処から持ってきたかバールの様なもので瞑を殴りつけようとする。 だが早い―― 彼女はさらりと其の攻撃を避け、元の位置へと戻る。 「問うよ、本気で惚れた彼女を殺すつもり?」 「だって、好きになってくれないんだもん!」 あほだった。 そんな長田の様子にため息をついたエルヴィンは体内で魔力を循環させる。 子供じゃんか、そう思ってしまった夏海であったが彼女は其のまま暴れる蛇を繰り出してトモダチを巻き込んでいく。 「一気にいくよっ!」 其の隙をついて遥紀が少女の手を取った。 「ごめんね、突然で驚くよね、君を護りに来たんだ」 先ほどまで浮かべていた夜叉の様な笑みではない、優しい子供に語りかける様な微笑み。 戸惑っていた彼女だが、やはり中学生。目尻に浮かんだ涙を手の甲で拭い遥紀を見つめる。 「安心して、ね?」 終るまで待っててと目線を合わせて頭を撫でた遥紀に彼女は頷く。 できるならこういう人とお付き合いしたいと彼女も想ってしまうだろう。少なくとも今の時点で長田は論外だ。 いまだ射程圏内にいる彼らを庇うようにリベリスタ達は立っている。 「待てよ!彼女を何処に連れていくんだよ!」 思わず彼女を追いかけようとした長田の目の前に真駕籠が立ちはだかって笑った。 「おおっと、ここから先は通行止めってなァ?」 「通せよ!好きな人返せよ!」 返したら殺すじゃないですか、と白い目をする麻衣を余所に騒ぎ立てる長田は輝くオーラを纏った攻撃を目の前の真駕籠へと繰り出す。 其れに続く様にわらわらとトモダチが飛び出してくる。 「そちら、サラリーマン風の方がいきますよ!」 仲間たちに力を与えてた京一の的確な指示に夏海は頷きさらりと避けてしまう。 それにしても長田のトモダチはサラリーマンだとか老若男女幅広い。 何処となくお洒落なOL風のトモダチが近づいていく中、後衛位置に立っていたドーラがお前を蜂の巣にして遣るとでもいう勢いで攻撃を繰り出す。 Oerlikon cannonという名のイカした武器から発砲された其の攻撃にOLさんだけじゃなくサラリーマンさんや後ろのランドセルの坊やにもぶち当たる。 「破片をかき集めてあげますっ」 硝子のハートの欠片をかき集めるドーラはいい笑顔。 澱みなき攻撃を繰り出す真駕籠はちらり、と背後に居る少女の様子を見る。 最初に死ねといってもなんだかんだで気がかりではあるのだ。 「一先ず手に入れた力と無機質なトモダチを置いといてもう一度考え直して」 さらっと告げた瞑に長田は拗ねたような視線を送る。 リコーダー片手に走ってきたランドセル坊やを攻撃で全力であしらいながら瞑は笑う。 厨二病こじらせているけれど其れがなければただの男の子じゃない! 「本来であればうちらが護るべきかわいいかわいい男の子さ」 「か、可愛いっていうな!殺すぞ!本気だぞ!」 「じゃあさ、人を殺そうとするなら殺されても文句は言えないよねー?」 にっこりと笑った夏海の拳がめりめりとサラリーマンなトモダチに食い込む。 OL風の女が繰り出す攻撃は麻痺付き。だがそれすら無効にしたエルヴィンは笑って盾になっていた。 目の前の女子中学生的なトモダチが京一の目の前に来る。 飛び回る鴉が彼女のお下げ髪を突き、彼女がやだやだと首を振った。 「弱そうですね」 「あれは弱そうですね」 頷いた麻衣は後ろをちらり。戻ってきた遥紀と並び頷きあう。 回復は万全である。 「長田さん!心はガラスの様なものです!」 大きな声で攻撃を繰り出しながら告げたドーラに長田も負けずと叫び返す。 「僕のハートすげえ脆かったみたいにいわないでよ!」 ついでに繰り出されたフレアバーストで辺りが燃え上がる。夏海とエルヴィンの体を炎が支配する。 ――が、回復はお任せあれと言った所だ。 麻衣のブレイクフィアーで直ぐ様に回復されてしまう。 サラリーマン風のトモダチがものすごい速さで走りこんでくる。 「通行止めつってんだろォ?」 笑った真駕籠の攻撃を受けてふらついた所に瞑のソニックエッジが入る。ダブルソニックエッジ。澱みなさ過ぎて敵も唖然である。 其のまま動かなくなったきっとリストラされたサラリーマン……失礼、ノーフェイスを見て長田が呆然とする。 「唖然としてる場合じゃないよ?」 笑った夏海の強烈な拳がOLの頬に入る。彼女が下がった隙を見てドーラがOLへと撃ち込んだ。 「長田、お前、カッコ悪いな!」 そう告げたエルヴィンに長田が顔を赤くする。彼の胸ポケットでボールペンが少し揺れた。 「ふ、ふふふ、振られたから!?」 「違う!彼女を傷つける事がお前の望みなのか?」 お前はどう思ってるんだよ、彼女の事! そんな言葉に長田が顔を赤くする。 「だって好きになってくれないんだもん!」 二回目だ。 その言葉を嘲笑うかのように鴉が周囲を飛び回り、お下げの少女を突いている。 「だからって、復讐はいけませんね」 全体攻撃に大体巻き込まれていたかよわい少女が地に伏した所で、背後をちらりと仰ぎ見た遥紀が彼女と目があったので笑いかける。 惚れるならこういう人が良いね! 「お前ー!彼女に色目使うなよ!」 「使ってないよ」 爽やかなスマイルが突如何処のヤンキーですか、というふうに曇る。 「長田さん!貴方の心は一度砕け散っただけで終ってしまうのですか?」 「もう僕の心ボロボロだよ!チクショー!」 長田の言葉にドーラは仕方ないですねと言わんばかりにもう一度ハニーコムガトリング。 後ろに隠れていたであろう教師風のトモダチにぶち当たり尻もちをつかせる。 「お前、ノーフェイス……友達、どこで集めた?」 「いたんだよ!」 だって友達だから! こいつ、馬鹿だろ――エルヴィンは思う。 ああ、馬鹿だわ――同じく麻衣も思う。 尻もちをついていた教師的ルックなトモダチがチョークを飛ばしてくる。見事に額に入った京一とエルヴィンが額を抑える。 もう一度言おう。回復は万全だ。 負かされたと言わんばかりに歌いあげる遥紀。壁役になっていたエルヴィンのHPも万全と言った所だ。 「お友達はもうそろそろいなくなっちゃうね」 にっこり。 そう笑った遥紀に驚いた様に周囲を見渡す長田少年。 夏海の繰り出したオロチでリコーダーでつついてくる小学生やOLは地に伏していた。 「だ、だけど、僕、負けねーよ!」 叫んだ少年が繰り出した強烈な一撃を受けたエルヴィンが鼻で笑う。 「お前、彼女の事好きなんだろ?いいのかよ!周りの死屍累々なトモダチに彼女傷つけられて!」 「だって、だって!」 「嫌だろ!」 嫌だけど、好きになってくれないんだもん! 馬鹿につける薬はないのだ。長田が与えた攻撃すらも普通に麻衣に回復されてしまう。 「子供だね!」 笑った11歳の少女が繰り出した拳が見事に教師にダイレクトアタック。 残るは長田、となった所に瞑が真剣な表情で向き合った。 「うちはただ、君の幸せになるチャンスを潰したくないだけなのよ」 しあわせ。その言葉を長田はもう一度呟く。 「よく考えてみ?彼女を殺してしまったらどうやって彼女を作る?」 他の女で妥協するのか彼女を作るのを諦めるのか。殺しって結構リスク高いんだよ。 じっと見つめる少女の瞳に長田はたじろいだ。 青春だ青春だと言っても殺しは殺し。 「理屈で考えられないっか。キミはまだ彼女を殺せる?」 そう聞いた瞑に長田は膝をついた。 だって、だって、好きなんだもん。 ● 「頑張るねえ、流石リベリスタ」 欠伸を噛み殺した真駕籠はお説教モードに入った仲間たちを見つめて、伸びをする。 アーティファクトを頂戴と手を伸ばした瞑に長田はそっと手渡して項垂れた。 「彼女、欲しいんでしょ」 「欲しいです……ていうか、彼女しか居ないです」 好きで仕方ないと行った様子の長田に首をかしげた夏海は隣に座る。 「んっと、あまりうまく言えないけど。好きになってくれないからって殺す?」 おかしくないかな、と真顔で言う彼女に長田は膝に顔をうずめた。 「そうやって生きていけるとして、あなたの周りに誰か残るの?」 「残らない、です」 「よね、誰も好きにならないし近づきたくないもん。長田君はそんな人好きになれる?」 まあ、良く考えるといいよ、と肩を叩いて離れた夏海。 ぼんやりと空を眺めていた真駕籠は長田の方をちらりと仰ぎ見て笑う。 「また一線飛び越えてきな?人を辞めたいなら、な!」 今回は運悪く止めに入ってしまっただけ。所詮はどうなろうが関係ない。 つまりは一人でも殺したらお前の命狙ってあげる、よろしくね、ということだろうか。 背筋に走ったぞくっとする感覚に長田は首を振った。 誰しも辛い事があれば、逃げたくなる気持ちはあります。 そう告げた麻衣は優しい笑みを浮かべた。 「1回恋に破れたからと言って、暴力はいけませんよ?」 女心を理解できるとは思えません。 その言葉が衝撃的だったのか長田は顔を赤くして立ち上がり麻衣を睨みつける。 「たった一回の機会で諦めるのも勿体ない。もっともっと、恋愛の為にチャレンジしましょうよ」 彼女の言葉に、でも振られた、と告げようとした長田だが、彼女が視界にちらついたためかその言葉を口にせず口をぱくぱくと金魚の様に動かした。 「おや、反抗的な瞳。まあ、良いから座れやクソガキ」 ヤのつく人かとでもいいたくなるようなドスの聞いた低音ボイスと微笑み。 思わず座った長田の前にガラの悪い兄ちゃんになった遥紀は目線を合わせて更に笑みを深める。 「アホか手前、好きなら何でもしても良いのか?あ?」 「いや、あの」 「反省しねーと素っ裸にして海に沈めるぞコラ」 泣き出しそうな顔をした長田に苦笑を浮かべたエルヴィンが肩をたたく。 「少女を守るのは少年の役目だ!辛くても苦しくても、踏ん張って食いしばって」 「踏ん張って、食いしばって?」 「好きな人の前でカッコつけてみせろよ、長田!」 長田は小さく頷いた。 一方で何が何だか分からない彼女に京一は不思議そうな表情で問う。 「長田君とは知り合って間もないからと告白をお断りしたそうですけど」 「え、あ、はい」 それだけですか?と問うた京一の言葉の心理は、友達を長く続ければ脈があるのか、ということであろう。 何処か悩んだような素振りを見せた彼女は困った様に笑った。 「馬鹿な子だよね、もっと仲良くならなきゃ長田くんのこと分かんないじゃん」 なんか変なお化けみたいなやつで分かったけど。 その言葉を聞いて京一は笑う。 マイナスイオンを使用したエルヴィンは彼女の目の前でしぃと指先を口元に持っていき笑う。 「二人の秘密、だ」 ひょこりと顔を出したドーラは微笑んで彼の事をよろしくお願いします、と頭を下げる。 きっと知らないから、こうなってしまっているんだろうと思う。 ならばもう一度チャンスをあげたい。 彼女は小さく頷いた。 歩き出した仲間たちから少し離れ、長田の耳元で彼女はそっと呟く。 「Ich drücke dir den Daumen.貴方の成功を祈っています」 風が吹く。 彼女と向き合った長田は何処か恥ずかしそうに目を逸らした。 「私の事好きなの?」 「うん、好き、大好き」 そっか、と彼女は笑う。 馬鹿な長田君、彼女が優しく微笑んだ。 これからもう一度始めよう?だから、さあ、その手をとって。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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