下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






ミイラと討伐

●とあるコンビニエンスストアーにて。
 店長が、怒っていた。
 っていうか、強面の店長が、明らか新人っぽい店員さんに、ガンガン怒っていた。
 一つ前のお客さんのレジ打ちをしている際に、新人さんが何か、ミスをしてしまったらしい。
 とか、別に何でもいいのだけれど、「店長さんがガンガン怒ってる」は、まさしく「ガンガン怒ってる」なので、えーわーこれ、何かどーしよー、って、芝池は全然関係ないけど、ちょっとどうしていいか分からなくなって、一旦レジに並ぶの辞めようかしら、と思った瞬間、見ろよ、お前のせいで、お客さん並んで迷惑じゃねえか! とか更に店長さんが怒りだして、わーどーしよー、自分が一番迷惑なのに気付いてないどーしよー。
 って。やっぱりそこはとりあえず、レジに並ぶのを、やめることにした。
 更に、お会計しないことには品物は持って出られないので、買おうと思っていた品物を、こっそりと各棚へと戻し始めることにした。
 とかいうその「こっそり」は、自分でも「自分がこんなにこっそり出来るとは!」と、驚くくらいの「こっそり」で、何せそうしないと、あのガンガン怒ってる店長さんに見つかろうものなら、「見ろよ! お前のせいでお客さんが、商品、棚に戻し始めてんじゃねえか!」とか、また、凄い怒られるんじゃないかとか心配で、別に怒られてるのは自分じゃないのだけれど、とにかくやたら怖くて、そっと乾電池を棚に戻した。
 瞬間。
「こらっ!」
 とか背後から囁くように短く言われて、どきぃっ! と、心臓が跳ね、体が震える。
「え、すいませ」
 って振り返ったら、アーク所属のフォーチュナ、仲島の端整な顔がある。
 とか、何かそんなわけがない、と自分に言い聞かせ、一旦顔を戻した。
 まだ手に持ったままだった乾電池も、そっと戻した。
「何でそれ、買えばいいじゃない」
 聞き覚えのある、覇気なーい感じの声が、言う。
「はーいや何か、レジが混んでるんで」
 芝池は諦めて、仲島が今そこに居る現実を、認めることにした。「別にそんなに急ぎでもないし」
「でもあの店長さん、迷惑だよね」
 って、すかさず仲島が、声を潜めるでもなく、もー言った。
 芝池は「いやいや」と、だいぶ焦って、思わずレジの方をチェックする。
 と、ガンガン怒られてる新人が、そのままレジ横のバックヤードに、首根っ子引っ掴まれて引き摺りこまれているところで、いや、何したらあんなに怒られるんですか、と芝池はもー、全然どうしていいか分からない。
 って、多分、レジに並んでいた他のお客さんも、雑誌を立ち読みしていたお客さんも思っていたらしく、何か皆で茫然と、閉まった扉の方を見た。
 途端、ガーン、とか凄い音がなった。
 ドコン、ガコン、ガコン、とか、立て続けに、鳴った。
「ねえねえ、それでさ、話があるんだけどさ」
 って、一人だけ全然どーでもーいーですーみたいな顔の仲島が、言った。「仕事の話なんだけどね。また資料作って欲しいの」
「いやいや、それより何か凄い音してますよ、大丈夫ですかね」
「さー?」
「いやいや絶対中でぼっこぼこにされてますよね」
「いや分かんない」
 とか、むしろ、ぼっこぼこにされてたら何か? くらいの顔をしている美形を、ちょっと、眺めた。
「いや、ぼっこぼこにされてますよね?」
「うんまあ何でもいいんだけど。依頼の話、していい?」
「いや駄目ですよね。この状況で、駄目ですよね」
「何でよ」
「いや何でって」
 そしていきなり、不気味にシーンとかし出したバックヤードの扉と仲島を交互に見つめる。「何か駄目ですよね」
「でね。今回の依頼も、敵エリューション討伐とアーティファクトの破壊っていう、良くある普遍的な感じのやつなんだけどね」
 とか全然聞いてませーんみたいに、仲島は話しだした。
 そして、棚に並ぶ乾電池を、種類別に、向き等もキチンと合わせて並べながら、
「敵は、フェーズ2のE・アンデットが2匹と、フェーズ1のE・ゴーレムが4匹でね」
 とか何か、続ける。
「で、場所は某所にある洋館なんだけど、そこには地下にも部屋とかがあるのね。今回は探索場所をその地下に絞って貰っていいんで、そこで、敵エリューションとアーティファクトを見つけて欲しいわけ。ちなみに家の持ち主は、刑務所に居るから不在なので、そこは気にして貰わなくていいから」
「え、あれ何ですか」
「ん? だから、今回は探索場所をその地下に絞って貰っていいんで、そこで、敵エリューションとアーティファクトを見つけて欲しいって」
「いや、その後です」
「家の持ち主は、刑務所に居るから不在?」
「ちなみに、敵ってE・アンデットなんですよね」
「うん」
「え、それって何か、ヤバくないですか」
 とか言ったら何か、何考えてるか全然分からない表情で、ぼーっとか、見つめられた。
「うんいやそこであんまり見つめないで貰えますか」
「で。アーティファクトなんだけどね」
「あはい」
「小瓶入りの液体でね。どんな人もたちどころに切なくなってしまう液体っていうのを見つけて、破壊して欲しいわけ」
「え?」
「だから、どんな人もたちどころに切なくなってしまう液体を見つけだして、破壊して処分して欲しいわけって何回言わせるのよ、耳大丈夫?」
「いやもう意味が分からないんですよ、切なくなる液体とか」
「こう何か、切なくなるんじゃない? いろんなことが。こう切なくて切なくて堪らなくなるんじゃな」
「いやもういいです」
「でも、見た感じでは分かりにくいから、舐めたりして試してみると確実かもね。まあ、リベリスタの人達なら、液体の効果はさほどでないと思うし、出ても軽く泣いちゃったりする程度だと思う。あと、回復も早いだろうね。持っても数分程度じゃないかな」
「数分程度でも、切ない気分になるのは多分嫌ですけどね」
「そこはまあ、頑張って貰うしか」
「っていうか他に何か有効な方法があるなら、別に舐めなくてもいいんですよね」
「まあそれはそうだけどね」
「あと、凄いシーンとしたまま誰も出てこないんですけど、これ何か大丈夫なんですかね」
「いやまー大丈夫でしょ。何か喋ってるだけじゃない」
「だと、いいんですけど」
 ってそんな、仲島みたいにドライに割り切れない芝池は、ちょっと何かそわそわして、扉を見つめる。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:しもだ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月17日(木)23:48
■目的■
敵エリューションを全て討伐すること。
アーティファクトを破壊すること。

■エネミーデータ■補足
E・アンデット「ミイラ」×2(フェーズ2)
包帯ぐるぐる巻きのミイラ。
―攻撃行動―
腕を振りおろして殴りつけてくる。
黄ばんだ包帯を巻き付けて締め付けてくる。
E・ゴーレム「内臓」×4(フェーズ1)
明らかに今ミイラと化しているやつの中にあったやつですよね? みたいな物体。
液体的な物を滴らせながら、とりあえず、浮いている。
―攻撃行動―
突進してくる。
人体に当たると、服の上からでも軽くダメージを負い、
尚且つ、毒を貰ったりすることがあるので注意。
また、体の何処かから、体の何かを、びちょっと飛ばして来たりする。
これも人体に当たると突進された時と同様の効果を受ける。

■アーティファクト情報■補足
「どんな人もたちどころに切なくなってしまう液体」×2(小瓶入り)
ちょっと舐めると、異様に何か切なくなって、泣きだしてしまう液体。
見た感じでは分からないので、試してみると確実かも。とのこと。
また、リベリスタの人達ならば、液体の効果はさほど出ず、
数分程度で回復するので、ご安心を。とのこと。

■場所情報■補足
某所にある洋館。
地上二階・地下一階。
敵は地下に集中して出現。小瓶もその階にあると思われる。
地下の部屋数は4つ。
住人は刑務所に入っているため不在。
監視カメラ、監視セキュリティなどはなく、電気も通っている。

尚、その他の一般人等も、今回の依頼には出現しません。


■STより
お目に止めて頂き、幸いです。
とりあえず、わりとゆるーい依頼なので、自由なプレイングでいろいろと遊んで頂ければと思います。
皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げております。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)

神城・涼(BNE001343)
クロスイージス
姫宮・心(BNE002595)
インヤンマスター
高木・京一(BNE003179)
ソードミラージュ
災原・闇紅(BNE003436)
デュランダル
水無瀬・佳恋(BNE003740)
レイザータクト
日暮 小路(BNE003778)
ダークナイト
御堂・霧也(BNE003822)



 地下に灯るこの何か、微妙なオレンジ色の灯りはについて、この薄ーい暗さは、念のために持ってきた懐中電灯の明かりをつけるべきラインなのかどうか、『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)が地味に葛藤してるその前で、『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)が不意に、
「それにしても、住人は刑務所って、一体何があったんでしょうね」
 とか、言った。
 そしたら、その斜め前くらいを歩いていた『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)が、「そうですね」とか何か頷いていて、「今回は家の持ち主が刑務所にいますから、家捜しするのには安全なんですが。実は、私も少し、それに関しては気になってたんですよね」
 って、そんな事言うなら、俺だって実は若干気になってたりしたけど、とか、全然素知らぬ顔をしながらも、翔太は、微妙に耳とか、すませた。
「私達は知らなくていいことなんでしょうけれど」
 佳恋が、同意を得たことで多少勇気が出ました! みたいに、「敵の情報と鑑みると、やはり……」と付け加える。
「そうですね、やはり、脱税とかでしょうかね」
 京一が、言った。
「はい、私もそう思」
 って、佳恋は一旦は頷きかけたのだけれど、遅れて脳が出した違和感の指令にハッとしました! みたいに、「え」と呟き顔を上げる。
「脱税……え? 脱税?」
 俄然、話の方向性が行方不明だ。
 翔太は思わず顔を上げ、脱税的な要素……って、え、ありました? みたいに、佳恋を見た。
「脱税……まあ、なくは、ないですよね」
 佳恋が、どういうわけか若干申し訳なさそうに、言う。
 でもまー確かにそう言われれば、意外と脱税ってゆー可能性も。
 あるんじゃないかとか、わりと自然に腑に落ちた。かというとそうでもない。
 相変わらず、いやーえー脱税ー? って、地味ーに引っ掛かり続ける翔太を横目に、佳恋が、
「とにかく敵討伐の後に、アーティファクトの捜索をするんでしたね」
 と、これはもう話を変えるしかない、みたいに、言う。
「気を抜くわけには行きませんが、シンプルな依頼ではありますよね。良いことです」
「いや確かにさー。目的だけなら割とよくあるモンだと思うけどさー」
 『断魔剣』御堂・霧也(BNE003822)が、若干顔とか引き攣らせながら、口を挟んだ。「問題はアーティファクトでしょ。切なくなってしまう液体って何だよ。マジで意味わかんなくね?」
 そしたら何か、ずかずかと先頭を行く『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)が、
「意味分かんないですよね!」
 って凄い勢い良く言って、おーやっぱそー思うよなー! とか何か同意しよーとか思ったそこですかさず、
「勇者さんっぽい人が一人も居ないなんて、非常に意味分かんないですよ、どういうことですか!」
 って気付いたら何か、話が全く見えない物になっていた。
「え?」
「まあ最終的には私は戦士ではなくて騎士なので、あんまり偉そうな事は言えないんですけど」
 とか、そこのルールが全く分からなかったのだけれど、小柄な彼女が何だかちょっぴり悲しそうだったので、
「お、おうそうなんだ大変だな」って、霧也はとりあえず何か励まそうとして、でも多分全然聞いてない心は、
「ですのでまあ今回は我慢するです!」
 と、一人でさっさと立ち直り、更に「では皆さん、引き続き、ずかずか行きますよー!」と仲間を叱咤し。
「あ、その前に」
 そこでふと何かを思い出したみたいに一瞬立ち止まった心は、天井に向かい手を掲げると、
「ぱーふぇくとがーど!」
 とか何か声を上げた。
 全員の視線がハッしたように、向く。その場が一瞬、シーンとした。
 なんて全然気づいてないよ、私! みたいな心は、うん、よし、みたいに、何か凄い一人だけ納得して、またずかずかと進み出す。
「とは言え、まずはミイラが先だな」
 はい、今のなしです、みたいなノリで、霧也が話しを戻した。「小瓶探してる間に狙われたら目も当てらんねーしな」
 そしたら何か、凄い遠い目をして、『働きたくない』日暮 小路(BNE003778)が、「ミイラですか」とか何か、呟いた。
「棺に眠るミイラ。ずっと寝てていいと言われているミイラ。私はミイラになりたい……」
「え?」
「っていうか、ミイラって棺がデフォルトじゃないですかー。ずっと寝てていいって言われてるんだから寝てればいーのに、権利を放棄して彷徨い出てくるとかまったく理解できねーですよ」
 途端に何か、意味不明な小芝居は終わったのか、ぐにゃーんって何か、いつもの「眠そう」な顔つきに戻った小路が、言う。
「だいたいあたし、今朝夢で見たんですよ。今日働くといいことがないよ、小路や、って」
 それで隣を見たら、凄い虚ろな目をした『深紅の眷狼』災原・闇紅(BNE003436)と目が合って、むしろびっくりするくらいのノーリアクションだったので、あ、言う人間違えましたーみたいに前を向き、「小路や、って」と、霧也に言う。
「いやもうその確実昔話のお祖父さんみたいなやつ、誰だよ」
「夢に出たその人は小豆色のジャージを着ていましたがきっと神様に違いありません。そんなわけであたしは今日も無用な労働はしなくていーんです。危険は他の人が見つけてくれます! 当然あたしの危険も防いでくれます、仲間ってすばらしー!」
 って言ってる内にテンション上がっちゃいましたーみたいに万歳した小路は、またどういうわけか、横とか向いちゃって、冷たーい、を通り越して、あれこれ、無言で殴られたりしますかね、みたいな空気にちょっと固まる。
「ま、どうでも良いわ……あたしはあたしのしたいことするだけだしね」
 やがてガン見していた視線を逸らし、闇紅は、言った。
 それから、反対の隣で、お腹を押さえてうんうん言ってる『冥滅騎』神城・涼(BNE001343)を見やる。
「あとアンタ、大丈夫?」
「うん大丈夫じゃないかも」
 わりと死にそうな声を出し、涼が言った。「やばい。途中で何か、消えてたら、ごめん」
「と、涼の具合も確認したところで。ちょっとあの先の部屋に何か、感じるんだけど」
 超直観を発動する翔太が、前方の扉を指さし、言う。
 彼の口調はのんびりとしていたけれど、ESPを発動し、同じように何かを察知したらしい佳恋は、「はい」と、やや緊張した面持ちで頷いた。
「えー、何処ですかー。ここですか?」
 と、俄然、全く警戒心のない感じで、最前線の心が、ドアをどんどん、と叩く。いやもういちいちリアク大きいですよ、大丈夫ですか、みたいに、背後の霧也があわあわしてる間にも、扉の向こうから、ガンガンッと激しいノック。
 あ、居る。
 と、誰もが思ったその瞬間。
「おー! 敵はっけーんです!」
 躊躇いもなく心が、ガーンと扉を開く。
 ぶわ、と眼前にミイラ。っていうか、振り下ろされる、腕!
 とか、重厚な装備をつけながらも、そこはフライエンジェ。おっと、と背後にふわっと飛行し、回避した。
 戦闘が、始まる。




「ぱーふぇくとがーど!」
 前衛に立つ心は、小柄な体で、むん、と重厚で大型の盾「ラージシールド」を突き出した。「ブロックは任せて下さいデス!」
 言い終わらない内に、ガツンと、振り抜かれたミイラの腕が、そこに激しくぶつかる。でも、私、めげないデス! めげないデス! とばかりに、彼女は堪える。堪える。堪える。
 とかやってる後ろから、京一が、味方全員に向け、翼の加護を発動する。
 ふわ、と皆の体が浮いて、動きも軽やかになったそれをすかさず活かし、翔太が後衛から飛び込んで来た。
「壁役も大変だな」
 凄まじい勢いと、驚くような体のしなやかさを見せながら、覇気のない軽口を叩く彼は次の瞬間、壁を蹴り、敵を撹乱するように動いた。
 え、え、どこどこ、どっから来るの! みたいになってる相手に、ブロードソードを振り上げると、狙いを定め、一気に斬り付けた。
 ずさ、と鋭く刃が食い込む。肉の厚み、あるいは包帯の繊維の目にも、磨かれた剣は、勢いを止めず。
 ぶさ、と真っ二つに叩き切った。
 とか、上半身の半分を斬りつけられて、べろん、と何かもう、グロテスクに、でもまだ足はあるんでよたよた、とか歩いてる敵に対し、
「しょっぱいこうげきー!」
 同じくブロードソードを振り回し、というか、ブロードソードに若干振り回されながら、心が突進する。
 途中に、ジャスティスキャノンを発動すると、強い力のこめられた十字の光が、バシンッと、ミイラの体を撃ち抜き、どた、と背後に倒れた。ところを、とどめ、とばかりに、剣で突き刺す。
 一方、もう一匹のミイラと対峙する佳恋は、メガクラッシュを発動し、応戦していた。
「エリューション相手に手加減する理由もありません、全力で行かせていただきます!」
 白鳥の羽を思わせる、巨大な白い長剣「白鳥乃羽々」に、全身のエネルギーを集中させると、その力の宿った武器で、腕の当たりをガツッと、一閃。
「さぁ……潰しあいましょう……」
 続けざま、ふふふ、と薄っすら怪しい笑みを浮かべた闇紅が、小太刀と共に飛び込んでくる。
 トップスピードを発動する彼女の体は、駆け抜ける疾風が如くミイラに飛びかかり、ソニックエッジの威力を存分に発揮する小太刀の刃は、幾度となくミイラの体を斬り付け、斬り付け、切り裂き。
 でも何とかかんとか、かんとかかんとか、本当にぎりぎりでたまに攻撃を交わすミイラに、
「死にかけてるくせに……一々かわすんじゃないわよ面倒ね……」
 でも何かちょっと若干嬉しそうっていうか、むしろ若干のSっぽさを醸し出しつつ、闇紅は笑う。
「そろそろ、とどめといくわよ」
 一旦、踊るような身のこなしで、回転し距離を取ると、改めてソニックエーッジ! 
 今度は横に敵の体をミンチにしちゃうと、最後にバツン、と首を落とした。
 その頃、部屋の出口の所では。
「私も積極的に戦闘! しません!」
 って、思いきった宣言をしちゃった小路が、むしろ驚くほど積極的に、京一と霧也を盾にし、ずずい、と下がった所から、チェイスカッターを発動した。
 誘導性の真空刃で、とりあえずポカン、と浮いている内臓さん達を、シュンシュン切り裂いていく。
「おー……、ホント浮いてんだな。っていうか、浮いてるだけじゃん。しかも何か垂らしてやがるし」
 って言った瞬間、あ、じゃあ動きます! みたいに、内臓が、突然霧也に向かい、突進してきた。
「ぐお!」
 慌てて霧也は斬馬刀を振り回す。のだけれど、かすって当たらず、わー何か滴ってる奴が顔面にー!
 と思った所に、ぴゅ、と飛んできた、京一の放った式符の鴉が、ずさと敵を射抜いてくれて、何とかべっちょり張り付かれの刑は免れたようだった。
「チッ」
 すかさず背後の小路が、小さく舌打ち。
「っておま、今、チッつったろ、チッって!」
「いえ、気のせいです。っていうか、敵、来てます」
「くそー! おめーらうぜーわ! さっさと闇に飲まれて消えちまいな!」
 完全に八つ当たりな感じで、霧也が、暗黒を発動する。体中から溢れだす、仄暗い瘴気。彼の生命力の力ともいうべきそれが、ぶわああ、と内臓達を包み込み、やがて、消滅させた。
 とかいうその間にも。
 意外と早めに戦闘を終えていた闇紅は、部屋の中を適度に物色中だった。
 とか、こちらも意外と早めに戦闘を終えていた翔太は、バックアタックを警戒しながらも、あー何かやってる人いるーみたいに、ちょっと眺めている。
 彼女がゆっくりーと覇気なく振り返った。
 目が、合った。
「別に……サボってるわけじゃないわよ……」
 途端に、闇紅が、言った。
「うん何もまだ言ってないけど」
 翔太は、わりと無表情に、答えた。
 独特の静けさが、二人の間にちょっと流れる。
「あとその小瓶、明らかに怪しそうだけど、誰かに試すなら、エリューションを倒してからってことで」
 今しも、虚ろな瞳のままに、唐突に彼女が、その小瓶を誰かにぶつけそうな気配もあったので、翔太は思わず、そう、釘を刺した。
 そしたら何を思ったのか、ふらふらーって彼女が翔太に小瓶を差し出して来る感じだったので。
「いやうん、俺は飲まない」
 そっと、その手を押し戻しておくことにした。




 でもわりとしつこいっていうか、何か良く分からないけど、ゆらーって引き下がらない闇紅に、「いやだから、飲まないんだって」とか、翔太は若干切れ出し、切れても尚追い詰められ、追い詰められるからには後退り、追いかけられ、走り出し。
 それで気付いたら翔太は今、何か凄い、走っていた。
 トップスピード、バーサス、トップスピードの無言の戦い。っていうか、めっちゃ無言の戦い。
 っていうか、何でいきなりこんな事になってるのか、そもそもどうして飲まないって言ってる自分にあの小瓶の液体を飲ませようとしてきたのか、そんな彼女の意図が全く分からず、むしろ、あの虚ろな瞳からは分かるはずもなく、だからこそ怖い、というか、得体が知れないので、とにかく逃げるしかない気がした。
 でも、実際の所、意外と闇紅は何も考えてなくて、アーティファクト探すとかあんま興味なくて退屈なので、じゃあ追いかけましょうみたいに追いかけてるだけだったので、逆にこれ、いつやめよーかしら。とか思いながらも、屋敷を一周してまた、皆の居る部屋の前。
 ちら、と見たら、幾つかの候補を前に、仲間達がシーンと沈黙し合っていた。
 足を止める。
 あ、終わり? みたいに足を止め振り返った翔太が、無言で戻って来た。
「始まるみたいね」
「あー俺全然探してねーわそういえば」
 って二人が入った瞬間。
「じゃあ、私が!」
 これいつまでも無言じゃ駄目だ! みたいに、やっぱりそこでも最前線隊長の心が、名乗りを上げた。
「おい、姫宮、お前にだけいいカッコさせるかよ、俺も行くぜ!」
 若干びびりながらも、背伸びしたい15歳、霧也も同時に手を上げる。
 瞬間。「あ、じゃあどうぞどうぞ」
 さ、と心が、ビックリするほどの呆気なさで、引いた。
「えっ」
「さあ、遠慮なさらず、どうぞデス!」
「じゃあ、こっちの液体から行きましょうかー」
 小路がのんびりと、小瓶を選別し、差し出した。
「くっそ……はめられたっ!」
 と二人の少女をにらみながら、「でもまぁ、やるって一度言った以上は、やってやんよ、このやろう!」と、乱暴にも男らしさを、見せた。
 そしてぐび、っと一気に。
「ん? 以外と行ける味?」
 皆がシーンと見守る中、小瓶の中身を飲んだ霧也は、意外にも普通な感じでことん、とそれを置いた。
「別に何ともねえな。ハズレかな?」
「チッ」
「チッつーな、お前は、チッて! だいたい、あれだよ、毒見役、神城腹痛で無理で足りてねえんだから、おめーもやれよ、意外と大丈夫だよ、ほら、これ」
 と、今度は小路に無理矢理小瓶の中身を押しつけた。
 そこで、朝からずーっと謎の腹痛で、やっぱりまだまだ謎の腹痛の涼が、う、と腹を抱え、蹲った。
 それを暫し動きを止めて見ていた霧也が唐突に。
「あ、何だろう、この気持ち……」
 とか呟きだして、
「何だろう、あの腹を抱えて蹲る格好、やばい! 凄い切ない……! やばい、仕事しに来たのに、朝からずっと腹痛になってるとか、凄い切ない!」
 って胸の当たりを押さえて、眉をへにゃん、と歯の字に。
 あ、薬当たったな。
 とか思ってる仲間達の前で、小路がとうとうと語りだす。
「御堂・霧也。15歳。彼はこれから、更に幾多の切なさに出会い、大人へと成長してゆくのだ。そう彼はまだ、本当の切なさを知らない……」
「やめろその意味不明なナレーション! よけい泣け……く、くそう、ううう」
 そしてすっかり、口元を押さえ、泣きだしてしまった。
「わーい御堂さーん。大丈夫ですかー?」
 一体何処から出して来たのか、枝のような物で彼の横っ腹をつんつん突き、心配してるのか、喜んでるのか、良く分からない声で心が言う。
「でも本当に……。ああ、何て切ない姿なんでしょう」
 そしたらいきなり、佳恋がそんな事を言いだして、泣きだした。
 え、と仲間の目が彼女へと向く。
「他のやつ舐めてたよ」
 翔太が、凄いふつーに言った。
「うん、舐めてたわね」
 覇気なく闇紅が同意する。
 何ということだ。騒動の隙に、そんなガッツを彼女が見せるとは。
 いや、これでアーティファクトが見つかったのだから、良かったのか?
 とか京一が、若干心配して佳恋を見つめていたら。
「あと俺、すげえ思ってたんだ。姫宮のひんにうの切なさは半端ねえって。やべえよ。すげえ切ねえよ……うう、うううう」
「……え?」
 とかいうさくっと爆弾発言のくだりも、相変わらず冷静に見守っていた翔太は、「ふうん」と、頷く。
「切なくなってしまう液体ね。持ち帰ったらダメってのは惜しいな、親友達に試したかったのに」
「え、切なくさせて、どうする気ですか!」
 ハッ、身の危険、みたいに体を両手で守りながら、小路が、言った。
「大丈夫だよ、小路には飲ませねえよ、めんどくせぇ」
「じゃあこの二本がアーティファクトってことで。そろそろ引き上げましょう」
 もーいーわよねーみたいに闇紅がさっさと帰って行こうとする。
「ちょ、介抱するの手伝って下さいよ!」
「つか何か」
 ちょっと小さく笑いながら、翔太は呟く。
「これ切なくなる液体つーか、飲んだこいつら二人の姿がだいぶ切ないわ」



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■

そういうわけで。
結果は成功でございます。皆様ご苦労様でございました。

当シナリオにご参加頂いた皆様には、誠に感謝です。
また機会がありましたら、ご参加、お待ちしております。